7.3 第 2 研究の結果
7.3.2 IRT モデルの比較
66
67
表 7.3 CS 分析の「個人総合満足度との関連度」と2PLM および GRM の識別力𝑎𝑗との相関係数
2PLMの
識別力𝑎𝑗
GRMの
識別力𝑎𝑗
2PLM<GRM の場合○
H29A教 - 0.890 ○
H29A生 0.863 0.925 ○
H29A保 0.859 0.928 ○
H30A教 0.492 0.837 ○
H30A生 0.917 0.941 ○
H30A保 0.861 0.952 ○
R1A教 0.682 0.918 ○
R1A生 0.833 0.916 ○
R1A保 0.941 0.944 ○
H30B教 - 0.850 ○
H30B生 0.819 0.925 ○
H30B保 0.874 0.941 ○
H30C教 - 0.867 ○
H30C生 0.752 0.897 ○
H30C保 0.484 0.826 ○
図 7.6 CS 分析の「個人総合満足度との関連度」と2PLM および GRM の識別力𝑎𝑗と の相関係数
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
H29A教 H29A生 H29A保 H30A教 H30A生 H30A保 R1A教 R1A生 R1A保 H30B教 H30B生 H30B保 H30C教 H30C生 H30C保
C S 分 析 と の 相 関 駅 数
2PLMa GRMa
68
(ⅱ)集団ごとの CS 分析の「項目満足度」と2PLM の困難度の反数−𝒃𝒋,GRM の境界値パラメタの平均の反数−𝒃𝒋,および GRM の3つの境界値パラメタ のうちの𝒃𝟐𝒋の反数−𝒃𝟐𝒋との相関係数
(ⅱ)の結果を表 7.4と図 7.7 に示す。各集団ごとに CS分析の「項目満 足度」との相関係数を示している。各集団の2PLM の困難度の反数−𝑏𝑗との 相関係数を青,GRM の境界値パラメタの平均の反数−𝑏𝑗との相関係数を橙,
GRM の3つの境界値パラメタのうちの𝑏2𝑗の反数−𝑏2𝑗との相関係数を灰色 で示している。困難度パラメタや境界値パラメタで反数(符号を反転させた 数値)を用いる理由の詳細は 7.3.5 で後述するが,CS 分析における項目満 足度と同様の挙動を表すためには IRT の困難度パラメタや境界値パラメタ の符号を反転させる必要がある。2PLM のデータが存在しない集団は,4件 法の回答を2 値型に変換し,EasyEstimation(熊谷, 2009)で推定を行ったと ころ,パラメタ推定が収束せず,項目パラメタが得られなかったため,欠測 としている。
識別力の場合とは異なり,どの集団においても高い相関を示したものは 無かった。まず,2PLM の困難度の反数−𝑏𝑗については,15 の集団のうち 5つの集団でもっとも高い相関係数であったが,3つの集団でパラメタが 収束しなかった。そこで,GRM の境界値パラメタの平均の反数−𝑏𝑗と,GRM の3つの境界値パラメタのうちの𝑏𝑗2の反数−𝑏𝑗2とを比較すると,11 の集団 で GRM の境界値パラメタの平均の反数−𝑏𝑗の相関係数の方が高い値であっ た。
69
表 7.4 CS 分析の「項目満足度 」と2PLM の困難度の反数−𝑏𝑗,GRM の境界値パラメタの平 均の反数−𝑏𝑗,および,GRM の3つの境界値パラメタのうちの𝑏𝑗2の反数−𝑏𝑗2との相関係数
2PLMの−𝑏𝑗 GRMの−𝑏𝑗 GRMの−𝑏𝑗2
2PLM-bjが 他より 大きい場合○
GRM-bj2<GRM-bj
の場合○
H29A 教 - 0.491 0.823
H29A 生 0.946 0.956 0.932 ○
H29A 保 0.947 0.961 0.953 ○
H30A 教 0.878 0.659 0.783 ○
H30A 生 0.977 0.974 0.969 ○ ○
H30A 保 0.952 0.959 0.957 ○
R1A 教 0.825 0.284 0.284 ○
R1A 生 0.969 0.974 0.966 ○
R1A 保 0.884 0.953 0.933 ○
H30B教 - 0.624 0.661
H30B生 0.979 0.973 0.963 ○ ○
H30B保 0.948 0.968 0.946 ○
H30C 教 - 0.210 0.145 ○
H30C 生 0.913 0.928 0.913 ○
H30C 保 0.889 0.887 0.864 ○ ○
図 7.7 CS 分析の「項目満足度」と2PLM の困難度の反数−𝑏𝑗,GRM の境界値パラメタの 平均の反数−𝑏𝑗,および,GRM の3つの境界値パラメタのうちの𝑏𝑗2の反数−𝑏𝑗2との相関係数
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
H29A教 H29A生 H29A保 H30A教 H30A生 H30A保 R1A教 R1A生 R1A保 H30B教 H30B生 H30B保 H30C教 H30C生 H30C保
C S 分 析 と の 相 関 係 数
2PLM-b GRM-b GRM-b2
70
(ⅲ)集団ごとの学校評価アンケートの合計得点(個人総合満足度)と2PLM で推定した特性値 θ および GRM で推定した特性値 θ との散布図 (ⅲ)の結果を図 7.8に示す。図 7.8は,同一回答者について,横軸に
は 2PLM または GRM で推定した特性値θをとり,縦軸には学校評価ア ンケートの合計得点(学校評価アンケートの 4 件法の回答の全項目の合 計。第 1研究における「個人総合満足度」。)をとった散布図である。青色 のプロットは 2PLM で推定したθを表し,橙色のプロットは GRM で推 定したθを表している。2PLM のデータが存在しない集団は,4 件法の回 答を 2値型に変換し,EasyEstimation(熊谷, 2009)で推定を行ったとこ ろ,パラメタ推定が収束せず,項目パラメタも特性値パラメタも得られな かったため,欠測としている。
2PLMで推定した特性値θとGRMで推定した特性値θを比較すると,
いずれの集団においても,GRM で推定した特性値θの方が合計得点との 対応が取れている。いずれの集団においても,2PLM で推定したθの方は,
GRMで推定した特性値θと比べると上位層と下位層が圧縮されたような 散布図になっている。
また,H30(2018)年度 B 高等学校の生徒および保護者のデータは,他
の集団に比べて回答の欠測が多く,合計得点と2PLM および GRM で推 定した特性値θとの対応があまりよくなかったが,回答の欠測が1つでも あった回答者を除いてみると,他の集団と同程度の対応が見られた。
71
図 7.8 学校評価アンケートの合計得点と2PLMθおよび GRMθ との散布図 0
50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H29A教 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H29A生 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H29A保 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30A教 θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30A生 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30A保 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
R1 A教 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
R1A生 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
R1A保 θ GRMθ2PLM θ
0 100
-4 0 4
合 計 得 点
H30B教 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30B生 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30B保 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30B生(除欠測)θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30B保(除欠測) θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30C教 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30C生 θ GRMθ2PLM θ
0 50 100 150
-4 0 4
合 計 得 点
H30C保 θ GRMθ2PLM θ
72
(ⅳ)集団ごとの2PLM で推定した特性値 θ および GRM で推定した特性値 θ との散布図
(ⅳ)の結果を図 7.9に示す。図 7.9は,同一回答者について,横軸に GRMで推定した特性値θをとり,縦軸には 2PLM で推定した特性値θを とった散布図である。2PLM のデータが存在しない集団は,4 件法の回答 を 2値型に変換し,EasyEstimation(熊谷, 2009)で推定を行ったところ,
パラメタ推定が収束せず,項目パラメタも特性値パラメタも得られなかっ たため,空欄になっている。
(ⅲ)の合計得点との散布図で確認したことと同様に,いずれの集団でも,
GRMで推定した特性値θと 2PLMで推定した特性値θでは,2PLMで推 定した特性値θの上位層と下位層の特性値θが圧縮され た形になっ てお り,特に上位層の特性値θが圧縮されており,それぞれ一定の特性値θの 値より上の数値が存在していない。
73 図 7.9 2PLMθと GRMθ との散布図 -4
-2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H29A教 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H29A生 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H29A保 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30A教 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30A生 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30A保 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
R1 A教 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
R1A生 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
R1A保 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30B教 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30B生 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30B保 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30B生(除欠測)GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30B保(除欠測)GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30C教 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30C生 GRMθ
-4 -2 0 2 4
-4 -2 0 2 4
2PLM θ
H30C保 GRMθ
74
(ⅴ)集団ごとの2PLM で推定した特性値 θ の標準誤差および GRM で推定 した特性値 θ の標準誤差との散布図
(ⅴ)の結果を図 7.10 に示す。図 7.10 は,同一回答者について,横軸 に GRM で推定した特性値θ推定の標準誤差(Standard Error;SE)をと り,縦軸には 2PLM で推定した特性値θ推定の SE をとった散布図であ る。特性値θ推定の標準誤差は,回答者の特性値θの推定の精度を表し(加
藤他,2014),この値が低いほど精度よく特性値θを推定できていると言
える。2PLM のデータが存在しない集団は,4 件法の回答を 2値型に変換
し,EasyEstimation(熊谷, 2009)で推定を行ったところ,パラメタ推定が
収束せず,項目パラメタも特性値パラメタも得られなかったため,空欄に なっている。
2PLMで推定した特性値θの SEと GRMで推定した特性値θの SE を 比較すると,いずれの集団においても,GRMで推定した特性値θの方が SE が小さい,つまり,特性値θの推定の精度がよい傾向が見られる。い ずれの集団においても,GRM で推定した特性値θの SE は,概ね 0.2~
0.3 付近に大多数が存在しているが,GRM で推定した特性値θの SE が
0.2~0.3にあるプロットの 2PLMで推定したθの SE の値は,0.2~0.6 の
範囲に散らばっており,やはり GRMで推定した特性値θの方が精度よく 推定されていると判断できる。
また,H30(2018)年度 B 高等学校生徒および保護者のデータは,他の
集団と比べて回答の欠測が多く,GRM で推定した特性値θの SE も数値 が高い(つまり,精度よくθを推定できていない)プロットが他の集団よ り多く見られるが,回答の欠測が1つでもあった回答者を除いてみると,
他の集団のグラフと同様の傾向を確認できる。
75
図 7.10 2PLMθの標準誤差(SE)と GRMθ の標準誤差(SE)との散布図 0
0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H29A教
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H29A生
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H29A保
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30A教
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30A生
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30A保
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
R1 A教
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
R1A生
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
R1A保
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30B教
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30B生
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30B保
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30B生(除欠測)
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30B保(除欠測)
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30C教
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30C生
0 0.2 0.4 0.6
0 0.2 0.4 0.6
2PLM θのSE
GRMθのSE
H30C保
76
(ⅵ)2PLM と GRM のテスト情報量
(ⅵ)の結果を図 7.11 に示す。図 7.11は,各集団の 2PLM およびGRM のテスト情報量のグラフで,横軸に特性値θをとり,縦軸にテスト情報量 をとったグラフである。2PLMのデータが存在しない集団は,4件法の回答 を 2値型に変換し,EasyEstimation(熊谷,2009)で推定を行ったところ,パ ラメタ推定が収束せず,項目パラメタが得られず,特性値パラメタも得ら れなかったため,欠測としている。
テスト情報量が大きいところは,回答者の能力パラメタの推定の精度が
良いところと解釈することができる(加藤他,2014)。言い換えれば,テス ト情報量の大きい特性値θの範囲が,精度よく特性値θを推定できている 範囲であると言える。
図7.11 を見てみると,全ての集団で 2PLM のテスト情報量が大きいθ
の範囲よりも,GRM のテスト情報量が大きいθの範囲の方が広いことが分 かる。
77
図 7.11 集団ごとの2PLM と GRM のテスト情報量 0
20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H29A教 特性値θ GRM2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H29A生 特性値θ GRM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H29A保 特性値θ GRM2PLM
0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30A教 特性値θ GRM
2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30A生 特性値θ GRM
2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30A保 特性値θ GRM
2PLM
0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
R1A教 特性値θ GRM2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
R1A生 特性値θ GRM2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
R1A保 特性値θ GRM2PLM
0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30B教 特性値θ GRM2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30B生 特性値θ GRM2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30B保 特性値θ GRM2PLM
0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30C教 特性値θ GRM
2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30C生 特性値θ GRM
2PLM 0 20 40
-4 -2 0 2 4
テ ス ト 情 報 量
H30C保 特性値θ GRM
2PLM