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ILCSoft を用いた測定器シミュレーション

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 33-36)

第 4 章 測定器シミュレーション と PFAとPFA

4.1 ILCSoft を用いた測定器シミュレーション

ILDでは共通のシミュレーションツールとして、ILCSoft[8]と呼ばれ るソフトウェアパッケージが用いられている。このILCSoftにはシミュ レーションソフトであるMokkaやイベント再構成のフレームワークであ るMarlinが含まれており、ILDの検出器情報やPFAなどシミュレーショ ンに必要な情報やソフトを統一的に用いる事ができる。まずMokkaで測 定器シミュレーションを行い、その後Marlinで実際の実験で得られる種 類のデータを用いてイベントの再構成を行う。

図 4.1: ILCSoftを用いたシミュレーションの流れ。Mokkaで測定器シミュ レーションを行った後、Marlinでイベントの再構成を行う。

4.1.1 Mokka

MokkaはGeant4(GEometry ANd Tracking 4)と呼ばれる粒子と物質 の相互作用を記述する汎用ソフトウェアをベースにした、ILDで標準的 に用いられている測定器フルシミュレータである。粒子反応はモンテカ ルロ(MC)シミュレーションで行われる。モンテカルロ法とは乱数を用 いた統計サンプリングを何度も行うことにより近似解を求める数学的手 法であり、測定器シミュレーションの中核となる。MokkaにはILD測定 器のモデルがいくつかデフォルトで用意されているため、細かい設定を 一から行うことなく測定器シミュレーションを行う事ができる。また必 要に応じて検出器の構造や設定を簡単に変更する事ができるほか、個々 の検出器や、テストビーム実験で用いた試作機なども用いる事ができる。

ユーザーが設定する事は以下の3点である。

1. 測定器の構造。

ILC測定器のモデルを選択する他、必要に応じて細かな構造も設定 できる。本研究では主に検出層の構造と吸収層の厚みを変更して いる。

2. シミュレーションを行う粒子。

粒子の種類やエネルギー、射出方向などを細かく設定できる。

3. Physics List。

粒子が行う相互作用の種類についての設定である。

Mokkaで作成されるデータには粒子の飛跡が正確な位置に記録されて

おり、また粒子の反応過程も記録されているため、この情報を用いるこ とで再構成の一部を正確に行う事もできる。Mokkaでのシミュレーショ ンにおけるe+e →Zh →µ+µhのイベントディスプレイを図 4.2及び 図 4.3に示す。

4.1.2 Marlin

Marlin(Modular Analysis & Reconstruction for the LINear collider)

は、Mokkaで生成されたシミュレーションデータからイベントの再構成を

行うソフトウェアである。このMarlinの中には各検出器の再構成を担う

図 4.2: Mokkaにおけるe+e →ZH →µ+µHのイベントディスプレイ

[9]。上下に長く延びる2本の線がµ粒子の飛跡である。

み込まれており、それらを組み合わせて再構成を行う事ができる。Marlin では以下のような事を行う。

• Digitization

Mokkaに記録されている飛跡検出器やカロリメータでのヒットの位

置情報を検出器のサイズに合わせて出力する行程である。これによ り、実際の検出器のヒットと同様に扱う事ができる。

• Tracking

VTX、TPC、SIT、SETなどの飛跡検出器のプロセッサで得られた 粒子のヒット情報を元に、荷電粒子の飛跡を再構成する。

• Particle Flow Algorithm(PFA)

飛跡検出器とカロリメータの情報を組み合わせて各粒子のエネル ギーを求める。詳細は後述。

図 4.3: Mokkaにおけるe+e → Zh → µ+µhのイベントディスプレイ の断面図(左)と側面図(右)。[9]

• Jet Clustering、Flavor Taggingなど高次の再構成ツール

Jet Clusteringは多数のジェットが放出されたイベントにおいて、ど の粒子がどのジェットに由来するものかを識別するプロセッサであ る。Flavor Taggingはbクォークやcクォークを同定するのに用い るプロセッサである。

ここではカロリメータのDigitizationとPFAに集中して話を進めてい く。

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 33-36)

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