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検出層の構造比較

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 52-57)

第 5 章 ハイブリッド電磁カロリ メータの性能評価メータの性能評価

5.3 検出層の構造比較

検出層の構造による比較は、シリコン層とシンチレータ層の配置を変 える事による性能の変化について調べることで行った。まずは図 5.7の ように内側にシリコン層を並べその外側にシンチレータ層を配置するこ ととし、その層数の比率を変えてシミュレーションを行った。

図 5.7: 検出層の配置図。左が内側で、青がシリコン層を、緑がシンチレー タ層を表している。

その中で以下の2つの場合に分けて性能評価を行った。

• 検出層の条件のみを変更し全ての構造について同じ構造の吸収層を 用いた場合

• シンチレータ層の増加によって生じるECAL全体の厚みの増加を外 側の吸収層の厚みを削減する事で維持した場合

検出層の条件のみ変える場合は吸収層による影響を考慮する必要がない ため、シリコン層とシンチレータ層の性能の違いのみを評価する事がで きる。また放射長を維持できるため、シャワーの漏れの増大を防ぐ事が できる。一方、ECALの厚さを維持する場合は外側のHCALやソレノイ ドなど外側に位置する検出器等が外側に押し出されないため、ECAL以

更する場合においてシミュレーションを行った構造である。全ての構造 において検出層の層数は30層としている。また、SiECALとScECALを 比べると約40mmほどScECALの方が厚くなっており、HCALなどはそ の分だけ外側へ押し出されている。

Configuration Si層 Sc層 吸収層の厚み(内/外) ECAL厚 SiECAL[30] 30 0 2.1mm×20/4.2mm×9 185.0mm Hybrid[Si22+Sc8] 22 8 2.1mm×20/4.2mm×9 196.3mm Hybrid[Si16+Sc14] 16 14 2.1mm×20/4.2mm×9 204.8mm Hybrid[Si10+Sc20] 10 20 2.1mm×20/4.2mm×9 213.3mm ScECAL[30] 0 30 2.1mm×20/4.2mm×9 224.6mm 表 5.1: 検出層の条件のみ変更した場合の電磁カロリメータの構造。[ ]中

は検出層の数を表しており、例えば[Si16+Sc14]ならシリコン層 が16層、シンチレータ層が14層の構造である。

図 5.8はジェットエネルギー分解能のエネルギー依存性と層数比依存 性を表している。左の図は横軸が1つのジェットのエネルギーで縦軸が ジェットのエネルギー分解能である。この図において緑の点はScECAL、

水色の点はHybrid[Si22+Sc8]、赤の点はHybrid[Si16+Sc14]、肌色の点は Hybrid[Si10+Sc20]、青の点はSiECALを表している。また右の図は横軸 が検出層におけるシンチレータ層の割合を表し、縦軸はジェットのエネル ギー分解能である。

まず左の図から、ジェットのエネルギーが高くなるにつれて性能に差 が大きくなる事が分かる。またカロリメータのエネルギー分解能は本来 (3.9)式のように1/√

Eに比例して良くなるはずであるが、エネルギーが 高くなると性能が悪くなっていることが分かる。右の図からは、45GeV のジェットでは構造間で性能に差がないが、エネルギーの高いジェットに なるにつれてシンチレータ層の割合が増えると性能が緩やかに悪くなっ ていくことが分かる。低エネルギーで性能が同じであるのは、ジェット があまり密でなくPFAの粒子識別精度に差がないためであると考えられ る。しかしエネルギーが高くなりジェットが密になると、シャワーが他の 粒子のものと被ることでPFAの識別精度が落ち、性能が悪くなっている ものと考えられる。また当初の予想通り、この性能劣化はシンチレータ 層の方が顕著に見られる。

Energy of One Jet [GeV]

0 50 100 150 200 250 300 ) [%] j) / Mean(E jRMS90(E

3 3.5 4

ScECAL(30) HybridECAL(Si10+Sc20)) HybridECAL(Si16+Sc14) HybridECAL(Si22+Sc 8) SiECAL(30)

Sc/(Sc+Si) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 ) [%] j) / Mean(E jRMS90(E

3 3.5 4

uds91GeV uds200GeV uds360GeV uds500GeV

図 5.8: 検出層の条件のみ変更した場合のジェットエネルギー分解能のエ ネルギー依存性(左)と層数比依存性(右)

ンを行った構造の一覧である。シンチレータ層が増えるにつれて検出層 が厚くなるため、185.0mm±1.0mmに収まるよう吸収層の厚みを削減し ている。

Configuration Si層 Sc層 吸収層の厚み(内/外) ECAL厚 SiECAL[30] 30 0 2.1mm×20/4.2mm×9 185.0mm Hybrid[Si22+Sc8] 22 8 2.1mm×20/3.9mm×9 185.6mm Hybrid[Si16+Sc14] 16 14 2.1mm×20/3.6mm×9 185.4mm Hybrid[Si10+Sc20] 10 20 2.1mm×20/3.3mm×9 185.2mm ScECAL[30] 0 30 2.1mm×20/2.9mm×9 185.7mm

表 5.2: ECALの厚さを保った場合の電磁カロリメータの構造

図 5.9は、ジェットエネルギー分解能のエネルギー依存性及び層数比 依存性である。各点の色については先の場合と同じである。この場合も ジェットのエネルギーが高くなると、シンチレータ層が増加するにつれて エネルギー分解能は緩やかに悪くなっていることが分かる。しかし45GeV のジェットに対してはシンチレータ層が増加するにつれてエネルギー分解 能は逆に良くなっている事が見て取れる。これは検出層のみ入れ替えた

いエネルギーであればサンプリング比が良くなって性能面で有利になっ ているためであると思われる。

 これらの2つの結果から、ジェットのエネルギーが高くなるとシンチ レータ層が増加するにつれてエネルギー分解能が緩やかに悪くなるが、低 いエネルギーでは大きな差は見られないという結論が得られる。

Energy of One Jet [GeV]

0 50 100 150 200 250 300 ) [%] j) / Mean(E jRMS90(E

3 3.5 4

ScECAL(30), W=2.1mmx20/2.9mmx9 HybridECAL(Si10+Sc20), W=2.1mmx20/3.3mmx9 HybridECAL(Si16+Sc14), W=2.1mmx20/3.6mmx9 HybridECAL(Si22+Sc8), W=2.1mmx20/3.9mmx9 SiECAL(30), W=2.1mmx20/4.2mmx9

Sc/(Sc+Si) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 ) [%] j) / Mean(E jRMS90(E

3 3.5 4

uds91GeV uds200GeV uds360GeV uds500GeV

図 5.9: ECALの厚さを保った場合のジェットエネルギー分解能のエネル

ギー依存性(左)及び層数比依存性(右)

次に、内側にシリコン層を固めて配置する前後構造ではなくシンチレー タ層とシリコン層を2層ずつ、もしくは1層ずつ交互に並べる構造につ いて性能評価を行った。図 5.10は交互構造の配置図である。シンチレー タ層の間に挟む事でシンチレータ層のデメリットであるゴーストヒットを シリコン層の位置情報から解き、性能劣化を防ぐことを目的としている。

図 5.10: 交互構造における検出層の配置図

表 5.3は2層交互構造及び1層交互構造と、検出層のみを変更した前 後構造の場合のHybrid[Si16Sc14]、SiECAL、ScECALの構造である。

Configuration Si層 Sc層 吸収層(内/外)[mm] ECAL厚 SiECAL[30] 30 0 2.1×20/4.2×9 185.0mm Hybrid[Si16+Sc14] 16 14 2.1×20/3.6×9 204.8mm 2層交互[Si16+Sc14] 16 14 2.1×20/3.6×9 204.8mm 1層交互[Si16+Sc14] 16 14 2.1×20/3.6×9 204.8mm ScECAL[30] 0 30 2.1×20/2.9×9 224.6mm 表 5.3: 交互構造を用いる場合の電磁カロリメータの構造。SiECAL、

ScE-CAL、Hybrid ECALは検出層のみ変更する場合と同じ構造である。

Energy of One Jet [GeV]

0 50 100 150 200 250 300 ) [%] j) / Mean(E jRMS90(E

3 3.5 4

ScECAL(30) HybridECAL(Si16+Sc14) SiECAL(30)

Double Alternating(Si16+Sc14) Single Alternating(Si16+Sc14)

図 5.11: 交互構造と前後構造の性能比較

また図 5.11及び表 5.4はジェットエネルギー分解能のエネルギー依存 性について交互構造と前後構造を比較したものである。交互構造、前後 構造ともに高いエネルギーにおいてScECALの場合よりも良く、180GeV

まではSiECALと同等の性能である事が分かる。交互構造と前後構造を

比較すると、多少1層交互が良い傾向にあるものの有意な差は見られな かった。しかし前後構造においてHybrid[Si22+Sc8]はHybrid[Si16+Sc14]

RMS90 / Mean 45GeV 100GeV 180GeV 250GeV SiECAL[30] 3.70% 2.94% 2.98% 3.09%

Hybrid[Si16+Sc14] 3.66% 2.94% 3.00% 3.20%

2層交互[Si16+Sc14] 3.67% 2.95% 3.01% 3.16%

1層交互[Si16+Sc14] 3.74% 2.96% 2.98% 3.17%

ScECAL[30] 3.70% 3.03% 3.11% 3.24%

表 5.4: 交互構造と前後構造の性能比較。両者の間に有意な差は見られ ない。

影響が出ていると考えられるので、前半のシンチレータ層のSSAの不確 定性か、もしくは交互構造にすること自体がPFAに対して何らかの悪影 響を与えている可能性がある。今後はゴーストヒットの発生量とその影 響を定量的に評価し、どの領域でどのような理由により性能が左右され るのかを評価していく必要がある。

ドキュメント内 学位論文 Experimental Particle Physicsyushu University (ページ 52-57)

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