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クールテックを実際のピストンへ適用することを考慮すると,摺動箇所であ る側面への塗装は難しいと考え,ピストンの頭部および底部への塗装を想定し,

試験片はクールテックをFig.4.5-3のように無塗装,皮膜側に塗装,基材側に塗 装,両面に塗装したものを用意し,遮熱・放熱試験を行った.

Fig.4.5-3 Scheme of test piece of the thermal barrier test and the thermal dissipation test

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4.5.1 クールテックのガソリンへの耐性

クールテックを内燃機関の遮熱溶射皮膜の付加加工として施すには様々な耐 性を有していなければならない.もちろん2章で評価した熱疲労特性,3章で評 価した密着強度もその中に入るが,クールテックのような薄い塗膜は温度変化 による基材の膨張・縮小の変化への追従性が高く,数回の加熱ではく離しなけ れば問題が生じる可能性が低く,塗料自体が接着剤の機能を有しているため密 着強度も高い.よって今回の遮熱・放熱試験において問題が確認されなければ,

熱疲労特性,密着強度に関しては問題ないと判断した.

しかし,それ以外にも薬品耐性を持っていなければならない.燃料への耐性 はもちろんのこと,燃料が燃焼する際に発生する物質にも耐性を持っていなけ ればならない.一般的にガソリンエンジンは燃焼の際に蟻酸,酢酸を発生させ,

ディーゼルエンジンは希硫酸を発生させると言われているが2),樹脂はそれら薬 物に対する耐性を十分に有しているので問題はない.しかしガソリンのように 揮発性が高く,樹脂の溶剤となりえるものに対しては,十分な耐性を有してい るとは断言できないので,クールテックを金属片に塗布した後,ガソリンで満 たした容器に1週間浸し,経過観察を行った.その結果をFig.4.5.1-1に示す(1 日後と2日後でガソリンの色が異なるのは容器をシャーレからビーカーに変更 し,深さが変わったため).若干の脱色こそあったものの,7日後でもクールテ ックに大きな変化はなかった.ガソリンエンジンの混合気の質量比率は,ガソ リン:1,空気:15が一般的であり1),ピストン頭部に接触するガソリンは非常 に希薄であり,刹那的である.よって本試験の結果からクールテックはガソリ ンに対して十分な耐性を有していると判断した.

Fig.4.5.1-1 Resistance test to gasoline of COOL TECH coating

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4.5.2 クールテック塗布試験片の遮熱・放熱試験の結果

Fig.4.5.2-1 Results of the thermal barrier test and the thermal dissipation test

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COOL TECH Thermal barrier Thermal dissipation

Nothing

◎ ○

One side(Top)

△ △

One side(Base)

○ ◎

Both side

△ △

Fig.4.5.2-1にクールテックを塗布した試験片の遮熱・放熱試験の結果を示し.

Table4.5.2-1にその結果をまとめたものを示す.

皮膜側にクールテックを塗布した試験片は,塗布していない試験片と比較す るといずれも遮熱性が大きく低下してしまっていることがわかる.放熱性にお いても低下してしまっている.これはクールテックの特性によるものだと考え られる.クールテックには,例えばヒートシンクに塗装を行った場合,熱源か ら大きく熱を吸収し,外気に熱を逃がす作用がある.本実験でクールテックを 皮膜側(熱源側)に塗装すると遮熱性が大きく低下したのは,クールテックの 吸熱性が放熱性を上回ってしまったためである.

一方,基材側にクールテックを塗布した試験片は塗布していないものと比べ,

遮熱性こそ若干の低下が見られたが,放熱性が向上していた.セラミック溶射 皮膜はハイポロシティー化など遮熱性を向上させられる可能性があるので,本 実験の結果はセラミック溶射皮膜の高遮熱性を損なわずに放熱性を向上させる 付加加工として十分な結果を示した.

Teble4.5.2-1 Evaluation of the thermal barrier property

and the thermal dissipation property of the sprayed COOL TECH test pieces

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4.5.3 遮熱・放熱試験後の試験片の状態

Fig.4.5.3-1に遮熱・放熱試験後の試験片の外観を示す.左からクールテックを

基材面に塗装したもの,Al2O3面に塗装したもの,ZrO2面に塗装したものとなっ ている.Al2O3面に塗装したクールテックは肉眼で確認できるはく離が存在した.

クールテックはTable4.5-1を見てわかるように金属材料を基材とすることを推 奨された塗料であり,Al2O3面はZrO2面と比べて滑らかであったため,はく離 が生じたと考えられる.また気孔が存在するものに塗装された膜は,高温化で はその気孔内にある空気の膨張によって,はく離が生じるケースもあるので,

それも原因の一部と考えられる.

Fig.4.5.3-1 Appearance of COOL TECH after the tests

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4.6 本章のまとめ

本章では内燃機関のピストンへ施す遮熱溶射皮膜として,ピストン下部の熱 損失を低減させることができる遮熱性を有しているかの評価を行い,実験結果 から考察を行った.その結果,以下の事項が判明した.

1)①Al2O3,②ZrO2の両皮膜は高い遮熱性能を有していた.

2)溶射皮膜の一般的な気孔率の下限 5%と上限 20%では,遮熱性能に大きく影 響しない.

3)①Al2O3,②ZrO2 の高い遮熱性能はボンドコートを有することによる界面数 および界面熱抵抗の増加に起因すると考え,SUS316,Alを交互に積層させた 試験片を用いて遮熱試験を行ったが,界面数を増加させても遮熱性に大きな 変化はなかった.

4)高遮熱性を有する①Al2O3,②ZrO2 の両皮膜に放熱塗料であるクールテック を付加加工として施すと,皮膜側に塗布した場合,遮熱性を大きく損なって しまうが,基材側に塗布することで遮熱性をあまり損なわずに放熱性を向上 させることができる.

5)①Al2O3の皮膜側にクールテックを塗装すると,遮熱性を損なうだけでなく,

はく離が生じ,健全な状態を保つことができない.

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第4章の参考文献

1)長山勲:初めて学ぶ基礎エンジン工学,東京電機大学出版局,(2008),pp.39-40, pp.240-246.

2)社団法人自動車技術会:自動車工学-基礎-,精興社,(2004),pp.26-27, pp.30-33.

3)脇坂佳史,川口暁生:壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減,日 本機械学会誌,第119巻,第1174号,p.43.

4)小坂英雅,脇坂佳史,野村佳洋,堀田義博,小池誠:壁温スイング遮熱法に よるエンジンの熱損失低減(第 1 報),自動車技術会 2012 年春季大会学術講 演会講演予稿集,(2012),pp.5-10.

5)脇坂佳史,稲吉三七二,福井健二,小坂英雅,堀田義博,川口暁生:壁温ス イング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第 2 報),自動車技術会 2015 年 春季大会学術講演会講演予稿集,(2015),pp.154-159.

6)川口暁生,立野学,山下英男,猪熊洋希,山下晃,高田倫行,山下親典,小 山石直人,脇坂佳史:壁温スイング遮熱法によるエンジンの熱損失低減(第3 報),自動車技術会2015年春季大会学術講演会講演予稿集,(2015),pp.160-165. 7)西川直樹,高岸れおな,清水富美男,堀江俊男:壁温スイング遮熱法による

エンジンの熱損失低減(第 4 報),自動車技術会 2015 年春季大会学術講演会 講演予稿集,(2015),pp.166-171.

8)清水伸二,菊森一洋,坂本治久,玉置賢次:真実接触面積を考慮した結合部 接触熱抵抗の定量的測定法,精密工学会誌,第 71 巻,第 8 号,(2005),

pp.1026-1030.

9)築添正,久門輝正:金属接触面の伝熱機構,日本機械学会論文集,第37巻,

第299号,(1971),pp.1361-1368.

10)柳和久,塚田忠夫:等方性表面凹凸をもつ機械加工面の接触熱抵抗に関す る研究,精機学会誌,第48巻,第10号,(1982),pp.1317-1323.

11)伊藤義康,石渡裕,柏谷英夫:遮熱コーティング皮膜の組織と熱伝導特性,

日本セラミックス協会学術論文誌,第98巻,第6号,(1990),pp.561-566.

12)山根篤:放熱塗料技術,表面技術,第66巻,第6号,(2015),pp.236-239.

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第 5 章 レーザフラッシュ法による

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