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本論文は「内燃機関のピストン頭部へ施す遮熱性・放熱性を有する皮膜に関 する研究」と題して,ピストンの製造を主とする企業と共同で研究を始めたも のである.そのため,内容的には「熱疲労特性に関する研究」,「皮膜の密着強 度に関する研究」,「遮熱・放熱性に関する研究」,「レーザフラッシュ法による 熱伝導率測定」,の標題の下,これらを第2章~第5章までの章を設けて基本的 な調査研究を行ってきた.そして,本章の直前には第6章として,「皮膜の総合 評価」を題する章を配して本論文をまとめた.その結果として得た知見を以下 に記す.

1)エネルギー供給や人々の生活が有限資源に依存してしまっており,有限資源 をエネルギー生産に使用することによって発生する温暖化,森林破壊という 環境破壊があるという事実を知りながらも,有限資源の使用量を減少させる ことは難しく,有限資源の一つである石油を大量に消費している内燃機関に も同様のことが言え,早急に内燃機関の燃費を向上させることは重要なこと であると言える.現在,内燃機関の燃費向上のために,ピストン頭部に施さ れているアルマイト皮膜,通称SiR-PAはいくつかの欠点が存在し,同等の性 能を持ちながらもその欠点を克服した手法が求められている.

2)内燃機関は長期的に見るとエンジンの稼動⇔非稼動の温度変化,短期的に見 ると燃焼時に加熱されて新たな燃料混合気によって冷却される温度変化にさ らされる.ピストン頭部に施す遮熱皮膜もそれに対して耐性を有していなけ ればならず,その評価を熱サイクル試験によって評価した結果,全ての皮膜 で肉眼レベルの欠陥は生じず,ミクロレベルで観察を行うと②ZrO2の皮膜で 微小な割れやはく離が確認されるのみであった.しかしミクロレベルでの割 れは低熱伝導率を得られる要因にもなり,現にアルマイト処理を施したピス トンはミクロ割れによって良好な遮熱性を獲得している.しかしそのミクロ 割れが成長し皮膜全体のはく離を生じさせる要因にもなりえるので,実機に よる試験を行う必要がある.

3)内燃機関内のピストンは吸気・圧縮・膨張・排気の4サイクル中に引張,圧

縮の荷重が加えられる.ピストン頭部に施す遮熱皮膜は圧縮が直接的な要因 となってはく離することは少ないので,引張荷重に対しての耐性が重要とな る.その評価を引張型ピンテストで行った.計算上,ピストンは2.5MPaの 引張応力が加わるのに対して,全皮膜が平均で15MPa以上の密着強度を有し ており,十分であった.

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4)ピストンが燃焼室から吸収し,下部に逃がしてしまっている熱量は,蓄積す るとエンジンの動作不良につながるので純粋なエネルギー損失になっている.

ピストンの温度をガスの燃焼温度に近づけ,追従性を向上させることで熱損 失を低減すると大きく燃費が向上できるとシミュレーション予測がされてい る.追従性を向上させるためには遮熱性・放熱性が重要であり,ヒーターを 用いた試験を行った結果,①Al2O3,②ZrO2の両セラミック溶射皮膜は高い遮 熱性を有しており,アルマイト同様の垂直方向のミクロ割れを有しているこ とが起因していると推測できる.両セラミック溶射皮膜を有した試験片の基 材側に,オキツモ株式会社製の放熱塗料クールテックを塗布することで放熱 性を向上させることができる.

5)ピストン頭部に施す遮熱皮膜は長期的な遮熱性と短期的な遮熱性の両方が重 要となる.長期的なものはヒーターによる試験で評価を行い,短期的なもの はレーザフラッシュ法と呼ばれるレーザパルスによって短時間で加熱を行う 熱物性測定法による熱伝導率測定で評価を行った.その結果,アルマイトは 皮膜のみの低熱伝導率は優れていたが,膜厚を稼げないことから,基材を含 めた熱物性値は基材が支配的になることがわかり,①Al2O3,②ZrO2の両セラ ミック溶射皮膜は基材込みの熱物性ではアルマイトを凌ぐ結果となり,② ZrO2は特に優秀な値を示した.

6)各実験結果およびコスト,生産性を含めた総合的な評価を行った結果,300μm

の②ZrO2の溶射皮膜にクールテックの塗布などの放熱性を向上させる付加加 工を施すことが最も有効的である.

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謝辞

本研究を行うにあたり,私の意見を尊重し,自由に研究をさせていただきな がらも,間違ったときは道を正し,辛抱強く御指導をして下さり,今までに経 験したことの無い海外での研究発表やTV撮影などを経験させていただいた山 梨大学大学院 総合教育部 工学域 機械工学系 園家啓嗣教授(工学博士)

に心よりお礼を申し上げます.私と園家啓嗣教授で研究の話をしている際に,

陰ながら見守り,時に二人では気付かぬことに助言してくださった中村正信助 手,阿部壮志助教に深くお礼を申し上げます.また博士論文の審査を担当して 頂く過程でいろいろ御指導いただいた山梨大学 大学院総合教育部の秋津哲也 教授,中山栄浩教授,石田和義准教授,小川和也准教授,小川覚美准教授の方々 に感謝いたします.

なお本研究を行うにあたり,多くのサンプルや資材を提供していただき,何 回にも及ぶ会合の場に参加して指摘,助言をしてくださったアート金属工業株 式会社の皆様に深く,深く感謝を申し上げます.

その他にも,多くの溶射を施工してくださったトーカロ株式会社さま,精密 な試験片を製作してくださった山梨大学付属ものづくり教育実践センターの先 生方,レーザフラッシュ法でお世話になった山梨県工業技術センター,長野県 工業技術センターの皆様に心よりのお礼を申し上げます.

最後になりましたが,若輩である私の指導の下で一緒に研究をしてくれた中 澤一貴くん,橋本竜一くん,浅川俊貴くん,小谷碧くん,一緒に園家研究室を 盛り上げてくれた後輩たち,長い学生生活を支えてくれた両親に深く感謝をし,

謝辞といたします.

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研究業績

Ⅰ.原稿論文(査読あり)

○(1) 関根優志,園家啓嗣,中村正信,内燃機関のアルミ製ピストン頭部に適用 するための溶射皮膜の特性評価,表面技術,第65巻,第6号,2014,pp.34-40

○(2) Masashi SEKINE,Keiji SONOYA,Takeyuki ABE,Masanobu NAKAMURA, Evaluation of the Properties of Sprayed Thermal Barrier Coating Applied to the Piston Head,International Journal of Mechanical Engineering and Automation, Vol. 3,No. 2,2016,pp.47-54

Ⅱ.国内外口頭発表論文

(1) 木村南,関根優志,炭素繊維強化複合材料の機械要素接合(その2),『第59 回塑性加工連合講演会』,pp.391-392,広島,2008年11月

(2) 関根優志,角田陽,堆積薄膜面の機械的特性評価,『2012年度精密工学会春 季大会』,pp.367-368,東京,2012年3月

(3) 関根優志,中澤一貴,園家啓嗣,中村正信,ピストンの遮熱溶射技術の開発,

『山梨講演会2012』,pp.98-99,山梨,2012年10月

(4) 関根優志,中澤一貴,園家啓嗣,中村正信,ピストンの遮熱溶射技術の開発,

『日本機械学会 関東支部 第19期総会講演会』,pp.309-310,東京,2013 年3月

(5) 関根優志,中澤一貴,園家啓嗣,中村正信,遮熱溶射皮膜のピストンへの適 用,『一般社団法人 日本溶射学会 第97回(2013年度春季)全国講演大 会』,pp.41-42,福岡,2013年6月

(6) 関根優志,橋本竜一,園家啓嗣,中村正信,ピストン用遮熱溶射皮膜の評価,

『山梨講演会2013』,pp.82-83,山梨,2013年10月

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