6.1 はじめに
6.2 各皮膜の総合評価 6.2.1 皮膜材料の生産性
6.2.2 各実験結果と生産性を含めた皮膜の総合評価
6.3 本章のまとめ
- 95 - Thermal spraying powder Cost [Yen/kg]
Al2O3 3,000
80%Ni-20%Cr 7,000
ZrO2+8%Y2O3 9,000
CoNiCrAlY 9,500
SUS316 3,500
Material Cost [Yen/100mL]
Polysilazane 9,700
6.1 はじめに
本章では内燃機関のピストンへ施す遮熱溶射皮膜の,第2章~第5章の評価 項目と生産性,コストを含めた総合評価を説明する.6.2の節では皮膜の生産性 とそれを含めた総合評価を,6.3の節では本章のまとめを記載する.
6.2 各皮膜の総合評価
この節ではアルマイト皮膜とそれぞれの遮熱溶射皮膜の総合評価を行う.
6.2.1の項では各皮膜の材料費から生産性を評価し,6.2.2の項では第2章~第5
章までの実験結果と生産性を含めた総合評価を行っている.
6.2.1 皮膜材料の生産性
溶射施工では,溶射の方法と溶射する面積が決まれば,コストもある程度の 見積もりが可能である.そこで各皮膜の生産性の評価を,皮膜材料のコストで 相対的に評価した.なおAPSとHVOFの施工費用はほぼ同じであると仮定し た1).アルマイトにおいては使用材料で最も高価であるポリシラザンのコストで 評価した.
①Al2O3,②ZrO2,③SUS316を構成する溶射皮膜材料のコストをスルザーメ テコ社のカタログ2)で調査した.その結果をTable6.2.1-1に示す.アルマイトは 市場にて販売されている物からおおよその平均の価格をTable6.2.1-2のように割 り出した.溶射皮膜で比較すると①Al2O3はトップコートの材料は安価であるが,
ボンドコートが必要になり,その材料費も安価とはいえない.②ZrO2はトップ コート,ボンドコートともに材料費が比較的高価である.③SUS316は材料費が 安く,ボンドコートも必要としないので一番低コストであった.
しかしアルマイトに使用するポリシラザンは100mLあたり9,700円と非常に 高価であり,溶射皮膜はそれと比較すると実用的な価格といえる.
Table6.2.1-1 Cost of the thermal spraying powders used
Table6.2.1-2 Cost of
Polysilazane that alumite used
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6.2.2 各実験結果と生産性を含めた皮膜の総合評価
Table6.2.2-1に各種実験結果と生産性・コストを含めた各種遮熱皮膜の総合的
な評価を示す.
①Al2O3は熱疲労特性に優れ,十分な密着強度を有しており,平衡状態の遮熱 性においても優れていた.皮膜としての熱伝導率もアルマイトより優秀な値を 示した.材料費も比較的安価であるが,クールテックなどの塗料を塗布すると 健全な状態を保つことができないなど,加工の自由度に若干の難があった.
②ZrO2においては熱サイクル試験後にミクロ割れが確認されたが,大きなは く離は生じず問題はないと判断した.密着強度はボンドコートの溶射方法が HVOFということもあり,非常に優れていた.平衡状態の遮熱性も①Al2O3と同 様に非常に優れていた.コストに関して,溶射皮膜の中でこそ高価であるが,
アルマイトに使用するポリシラザンと比較すると実用的なコストであった.ま たクールテックの塗装も問題は発生せず,加工自由度も良好であった.
③SUS316の結果としては,熱疲労特性に優れ,十分な密着強度を有していた
が,平衡状態の遮熱性,皮膜の熱伝導率ともに優れているとは言い難かった.
コストに関しては最も安価であり,加工の自由度も問題は無かった.
以上の評価から,②ZrO2が内燃機関のピストンへの遮熱皮膜の材料として最 も適していることがわかった.膜厚は厚い方が遮熱の面で特に効果的であった.
気孔率については標準的な数値では差が生じなかった.しかし,放熱性につい てはまだ改善する必要があり,本紙で行ったクールテックなどの放熱塗料を基 材側に塗布するなど,改善策が必要である.
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①Al2O3 ②ZrO2 ③SUS316 Alumite
Thermal fatigue property
◎ ○ ◎
No dataAdhesive strength
○ ◎ ○ ◎
Thermal barrier property
◎ ◎ △
No dataThermal conductivity
by laser flash
○ ◎ △ △
Cost and productivity
○ ○ ◎ △
Freedom of processing
△ ○ ○ △
Table6.2.2-1 Evaluation results and properties of the thermal spraying coatings
◎:Excellent, ○:Good, △:Pass
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6.3 本章のまとめ
本章では内燃機関のピストンへ施す遮熱溶射皮膜として,第2章~第5章の,
実験結果と生産性・コストの観点から総合的な評価を行った.その結果,以下 の事項が判明した.
1)アルマイトで使用するポリシラザンのコストと比較すると,①Al2O3,②ZrO2,
③SUS316の各種溶射皮膜は実用的なコストであるといえる.
2)各種実験結果と生産性・コストの観点から総合的な評価をすると,②ZrO2 が 最も内燃機関のピストンへ施す遮熱溶射皮膜に適していると考えられる.
第6章の参考文献
1)関根優志,園家啓嗣,中村正信:内燃機関のアルミ製ピストン頭部に適用す る遮熱のための溶射皮膜の特性評価,第65号,第6号,(2014),pp.276-282.
2)Sulzer Metco Thermal Spray Materials Guide (Sulzer Metco, 2016).
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