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HXI CdTe 両面ストリップ検出器の課題

ドキュメント内 master thesis fukuyama (ページ 89-109)

前章で、現在のHXI CdTe両面ストリップ検出器は250 V以上のバイアス電圧を印可 するとリーク電流が増大し、ノイズレベルが大きくなってしまうことが分かった。バイ アス電圧を250 Vまでしか印加できない場合、テール構造が大きくなり、レスポンスが 複雑になるという問題が生じる。そのため、CdTe両面ストリップで250 V以上の高バイ アス電圧まで印加可能な素子が存在するか、また、その様な素子が存在する場合、250 V 以上の高バイアス電圧を印加した際に、実際にテール構造などのレスポンスが改善する かを検証することが重要である。

リーク電流が急激に増大する原因の一つとして、HXI素子が大面積であるために欠陥 が入ってしまっている可能性が考えられる。結晶のインゴットやそこから切り出したウェ ハー上で局所的に欠陥が生じている場合、小型の素子を測定することにより、その中か らリーク電流増大などの問題がなく250 V以上の高いバイアス電圧を印加できる素子が 存在する可能性がある。また、欠陥のある小型素子のウェハーやインゴット上での位置 を特定できた場合、良質な素子を効率よく製造できるようになることが期待できる。

そこで、本章ではHXI CdTe両面ストリップ素子より小型の素子を100枚開発し、500 V までバイアス電圧を印加することでリーク電流の振る舞いを測定し、安定して高バイア ス電圧を印加できる素子があるかどうかを調べた。そのうち500 Vまでバイアスを印加 できたものの中から選定し、実際に検出器としての組み上げることでCdTe両面ストリッ プの高バイアス電圧状況下でのレスポンスについて調べた。

7.2 10mm CdTe 両面ストリップ素子 (mini HXI 素子 ) よる実験

本実験のために開発した100枚のCdTe両面ストリップ素子は、表7.1に示すように、

面積が10 mm × 10 mmとなっている以外、その他の寸法はHXI CdTe両面ストリップ EM素子と全く同じとなっている(mini HXI素子)。後に検出器に組み上げて試験を行う

79

ストリップ数/面 32 ストリップ寸法 7.95 mm×0.2 mm ストリップ間ギャップ 0.05 mm

ストリップピッチ 0.25 mm

ガードリング幅 0.925 mm

素子端-ガードリング 距離 0.5 mm

ため、100枚のうち52枚に読み出し基板をバンプ接合した。以後の試験はこの52枚を 用いて実施した。

7.2.1 10mm CdTe 両面ストリップ素子のリーク電流測定

実験セットアップ

mini HXI素子のリーク電流測定の実験セットアップを構築した。セットアップの概要

図を図7.1に示す。本実験のためにmini HXI専用のリーク電流測定ソケットを開発した。

ソケットの概要図を図7.1下の図中に、実際の写真を図7.2に示す。ソケット側の電極は 両面とも導電ゴムになっており、バンプ接合を通してストリップ電極に繋がった信号読み 出し配線に接触することでリーク電流を測定する。ソケットはアルミでできた静電遮蔽用 の箱の中に固定されており、このアルミの箱を恒温槽に入れて測定中の温度を管理した。

バイアス電圧の印加とリーク電流の測定にはKEITHLEY 237を用いた。KEITHLEY 237 の制御とデータ取得はノートPCを用いてLabView でソフトウェアを作成して行った。

過電流が流れることによる測定システムの損傷を防ぐため、電流リミットを1µAに設定 している。

実験方法

mini HXI素子をソケットに載せ、20Cに設定された恒温槽の中に入れ、始めに試験

的に50 Vずつ500 Vになるまで2分間隔でバイアス電圧を印加した。500 Vになり2分 たったところでバイアス電圧を0 Vに戻した。次に、20Cになったところで先ほどと同 様にしてバイアス電圧を50 Vから500 Vまで印加し、500 Vを印加したまま、リーク電

図7.1: 上:実際のmini HXI素子リーク電流測定系。下:mini HXI素子リーク電流測定 系の概要図

図7.2: mini HXI素子リーク電流測定ソケット。左上:mini HXI素子リーク電流測定用ソ ケット(測定時)。右上:ソケット 0 V側 (Pt電極側)。黒い部分が導電ゴム電極。左下:

ソケットH.V.側(Al電極側)。右下:ソケットに入れたmini HXI素子(ソケット上部取 付前)

流の大きさだけでなく、その時間安定性を調べることを目的として60分間リーク電流を 測定した。今回、ガードリングまで含めた素子全体のリーク電流を測定した。

実験結果

mini HXI素子52枚のリーク電流測定の結果、42枚の素子について、リーク電流が電

流リミットまで上昇することなく500 Vのバイアス電圧を60分間印加することができ

た。残り10枚の内8枚は500 Vより低いバイアス電圧でリーク電流が急激に電流リミッ

トまで増加し、500 Vを印加することができなかった。残り2枚の内1枚は500 Vを印 加した約20秒後にリーク電流が電流リミットまで急激に増加し、もう1枚は他のものと 違い急激な増加では無いが約50分後に電流リミットまで増加した。

図7.3に、各素子のリーク電流の分布を示す。ここで、500 V印加直後から1分間の平 均値をI1、500 V印可後59分後からの1分間の平均値をI60、60分間のリーク電流の平 均値をImeanと定義し、図7.3の上段から順に示してある。この結果から、リーク電流の 分布はいくつかの不連続なグループにまとまって存在する傾向が見られる。例えば、I1

では35 nA付近と60 nA付近に強い分布のピークが存在する。

I1の分布をもとに表7.2に書いた基準で、 測定した52素子をA∼Eの5つのグループ に分類した。グループごとに 全ての素子のI-V特性曲線を図7.4に、グループE以外の 全ての素子の60分間のリーク電流の時間変化を図7.6に示す。60分間におけるリーク電 流の振る舞いについて、グループA以外ではグループ内で似た挙動を示す素子が多数存 在していることが分かる。グループAに属する素子は他のグループに比べて数が少ない ので、単純に統計数が少ないために似た挙動の素子が少ないだけである可能性がある。

安定したリーク電流の挙動を示す素子を選定するために、グループごとにI1とI60の比 の関係を調べた。500 Vを印加できた42枚の素子のうち、29枚の素子においてI60/I1 <2 となった。また、このI60/I1の分布はグループによる大きな違いは見られなかった。詳細 に調べると、グループB、C、DではI60/I1 < 2に半分以上の素子が存在している。しか し、BとDには60分間に6倍以上の変化をする素子なども含まれている。一方、グルー プAには集中した分布は見られないが、全ての素子で約4倍以内の変化に押さえられて いる。I60/I1 <2とI60/I1 > 2の素子のグループごとの存在数を表7.3に示す。グループA 及びBに属し、かつI60/I1< 2となる素子は全部で13枚存在し、全体の24.5 %の素子に

ついて500 Vのバイアス電圧を安定したリーク電流で印加することができる。

7.2.2 実験結果とウェハーとの関係

得られたリーク電流の振る舞いの違いについて、ウェハー毎に分類した場合について 調べた。今回測定したmini HXI素子は10枚のウェハーから作成されており、その10枚 のウェハーはすべて同一のインゴットから作成されている。各素子のウェハー上での位 置情報は失われており、ここでの調査はウェハーごとの分別のみを行った。

[nA]

I1

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

0 1 2 3

[nA]

I60

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

entry

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 Distribution I60

[nA]

Imean

100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

entry

0 1 2 3 4 5 6

Distribution Imean

[nA]

I1

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

0 1 2 3

[nA]

I60

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

entry

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 Distribution I60

[nA]

Imean

20 40 60 80 100 120 140 160 180 200

entry

0 1 2 3 4 5 6

Distribution Imean

図7.3: 500 Vを印加したときの各mini HXI素子のリーク電流の分布。上段:500 Vを印 加してから1分間の各素子のリーク電流の平均値(I1)の分布。中段:500 Vを印加して 59分∼ 60分後の各素子のリーク電流の平均値 (I60)の分布。下段:500 Vを印加してか ら 60分間の各素子のリーク電流の平均値(Imean)の分布。各段の左右の図は全て同じも ので、描画しているリーク電流の範囲のみが異なる(右:0 nA∼1000 nA、左:0 nA∼ 200 nA)。ただし、500 Vより低いバイアス電圧で電流リミットの1µAまでリーク電流 が流れた素子は除外している。

Bias [V]

102

Leakage Current [nA]

1 10 102

103

1006-1003-14

1006-1003-16

1006-1003-18

1006-1003-19

1006-1003-20

Bias [V]

102

Leakage Current [nA]

1 10 102

103

1006-1003-1 1006-1003-4 1006-1003-5 1006-1003-6 1006-1003-21 1006-1003-22 1006-1003-30 1006-1003-31 1006-1003-32 1006-1003-35 1006-1004-6 1006-1004-7 1006-1004-16 1006-1004-17 1006-1004-18

Bias [V]

102

Leakage Current [nA]

1 10 102

103

1006-1003-7 1006-1003-11 1006-1003-12 1006-1003-13 1006-1004-1 1006-1004-2 1006-1004-3 1006-1004-4 1006-1004-5 1006-1004-9 1006-1004-11 1006-1004-12 1006-1004-13

Bias [V]

102

Leakage Current [nA]

1 10 102

103

1006-1003-8 1006-1003-9 1006-1003-10 1006-1003-24 1006-1003-25 1006-1003-26 1006-1003-27 1006-1003-28 1006-1003-29 1006-1004-10 1006-1004-15

Bias [V]

102

Leakage Current [nA]

1 10 102

103

1006-1003-2 1006-1003-3 1006-1003-15 1006-1003-17 1006-1003-33 1006-1003-34 1006-1004-8 1006-1004-14

図7.4: 各mini HXI素子のI-V特性。図(7.3)から500 V印加直後のリーク電流で分類し てプロットしている。最上段:Group A, I1 <20nA。中段上:Group B, 20nA <I1 <50nA。 中段中:Group C, 50nA<I1 <70nA。中段下:Group D, 70nA<I1。最下段:500 V印加 できなかった素子。

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

0 10

1006-1003-20

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

0 50 100 150 200 250 300 350 400

450 1006-1003-1

1006-1003-4 1006-1003-5 1006-1003-6 1006-1003-21 1006-1003-22 1006-1003-30 1006-1003-31 1006-1003-32 1006-1003-35 1006-1004-6 1006-1004-7 1006-1004-16 1006-1004-17 1006-1004-18

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

0 50 100 150 200

250 1006-1003-7

1006-1003-11 1006-1003-12 1006-1003-13 1006-1004-1 1006-1004-2 1006-1004-3 1006-1004-4 1006-1004-5 1006-1004-9 1006-1004-11 1006-1004-12 1006-1004-13

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

1006-1003-8 1006-1003-9 1006-1003-10 1006-1003-24 1006-1003-25 1006-1003-26 1006-1003-27 1006-1003-28 1006-1003-29 1006-1004-10 1006-1004-15

図 7.5: バイアス電圧500 Vを印加してから60分間の各mini HXI素子のリーク電流の 時間変化。図(7.3)から500 V印加直後のリーク電流で分類してプロットしている。最上 段:グループA, I1 <20 nA。中段上:グループB, 20 nA<I1 < 50 nA。中段下:グルー プC, 50 nA< I1< 70 nA。最下段:グループD, 70 nA< I1

表7.2: mini HXI素子のバイアス電圧印加直後のリーク電流による分類。

グループ リーク電流条件 素子数[個] A I1 <20 [nA] 5 B 20< I1 <50 [nA] 15 C 50< I1 <70 [nA] 13 D 70 [nA]< I1 11

E 500 V印加できず 8

2 4 6 8 10

0 1 2 3 4 5 6 7

distribution /I1

Ratio I60

Group A Group B Group C Group D

図7.6: I1とI60の比 のグループごとの分布。赤:グループA、緑:グループB、青:グ ループC、マゼンタ:グループD。グループはI1の分布から分類したもの。

表7.3: 各グループでのリーク電流の変化率による分類 グループ A B C D

I60/I1 < 2 2 11 9 6 I60/I1 > 2 3 4 4 5

図7.7: バイアス電圧印加後1分間のリーク電流の平均値値(|1)と素子を切り出したウェ ハー番号との関係。500 V印加直後にリーク電流が急激に増加した1006-1003-9番の素 子は98番のウェハーから、約50分後にカレントリミットまで増加した1006-1003-29番 の素子は102番のウェハーからそれぞれ作成されている。グループA、B、C、Dはリー ク電流の初期値I1の分布から分類している。

リーク電流の値とウェハーとの関係

リーク電流の値と素子を切り出したウェハーとの関係を調べた。図7.7にI1とウェハー 番号の関係を、表7.4にウェハー番号とその各グループにそのウェハーの素子が何枚含 まれるかを示す。グループEの素子を除くと、ウェハー番号100番から製造された素子 は全てグループAに分類されている。その他のウェハーに関しても1、2枚の素子が異 なるグループに属していることは有るが、多くの素子は同一のグループに分類されてい る。この結果から、バイアス印加直後のリーク電流とウェハーとの間には関係があると 考えられる。

一方、グループEに含まれる500 Vという高バイアス電圧を印加できない素子は100 番の様に全体的にリーク電流が低いウェハーにも、106番の様に比較的リーク電流が高 いウェハーにも存在しているが、106番と近い98番や106番よりリーク電流が高い素子 が多い102番には存在しておらず、ウェハーとグループEの様な振る舞いを示す素子の 間に明確な関係は見いだせない。

リーク電流の時間に対する振る舞いとウェハーとの関係

リーク電流の時間に対する振る舞いとウェハーとの関係を調べた。図7.8にI60/I1と ウェハー番号の関係を示す。ただし、グループEに属する素子に関しては除外している。

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