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CdTe Schottkey ダイオード検出器のポラリゼーション 現象現象

ドキュメント内 master thesis fukuyama (ページ 33-36)

CdTe Schottkyダイオード検出器はエネルギー分解能、位置分解能、検出効率など様々

な利点を持っている。しかし、ポラリゼーション現象という、バイアス電圧を印加後、

時間の経過に伴ってスペクトルのエネルギー分解能が劣化し始め、その後ピークの位置 が徐々に下がるとともに形が崩れていく現象が起きる。これは、結晶中の深い準位に電 荷が蓄積することで、内部の電場が歪むことが原因と考えられている。同じCdTe結晶 にPt電極を形成したオーミック接合の素子では、ポラリゼーションが全く見られないこ とから、Schottky電極形成時に不純物が入り込むか、Schottky接合によりキャリアであ るホールの流入が制限されることが影響していると考えられる[15]。一方で、これまで の研究により、Schottkyダイオード検出器でも、高いバイアス電圧や低温という適切な 条件下で動作させれば、ポラリゼーション現象の進行が大幅に遅くなり、週程度のタイ

0 200 400 600 800 10001200 14001600 1800 0

100 200 300 400 500 600

119 - 120 min

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100 200 300 400 500 600

179 - 180 min

0 200 400 600 800 1000 12001400 1600 1800 0

100 200 300 400 500 600

239 - 240 min

図 3.9: In/CdTe/Pt ガードリング付き単素子のポラリゼーション現象。素子の大きさは

4.1 mm×4.1 mm×0.5 mm厚でガードリング幅は1 mm。ポラリゼーション現象を見や すくするために、温度20C、バイアス電圧50 Vという通常の動作条件と異なる高い温 度、低いバイアス電圧で動作させた。

ムスケールでは安定して動作することが分かっている。例として、図3.9に、4.1 mm× 4.1 mm× 0.5 mm厚のガードリング付きIn/ CdTe/Pt 単素子を、20C、50 Vで という ポラリゼーションが起きやすい条件で動作させたときのスペクトルの変化を示す。同じ 0.5 mm厚の素子を−20Cに冷却し、500 Vのバイアス電圧を印加すると、2週間程度は 安定して動作する[34, 35]。また、ポラリゼーション進行後でも、バイアス電圧を一度 0 Vに落とすことによって回復し(デポラリゼーション)、以前と同等の優れた性能を発 揮するようになる。

CdTe素子の電極面にアルファ粒子を照射すると、ほぼ表面で止まるために電子あるい はホールからの信号を選択的に観測することができる。渡辺修論2001[36]において、ポ ラリゼーションが進行している最中にこの実験を行ったところ、電子の移動速度は遅く なり、反対にホールの移動速度は速くなることが確認された。これは、CdTe内部に負の 電荷が蓄積する時の電場の変化で説明できることが分かる。佐藤修論2002[15]では、こ の結果を踏まえてポラリゼーション現象のモデル化を試みている。CdTe内に深いアクセ プタ準位が一様に存在すると仮定し、電荷蓄積の過程を定式化、電荷の収集過程を考慮 することで、ポラリゼーションによるスペクトルとリーク電流の変化を半定量的に再現 することに成功した。

このモデルでは、深いアクセプタがホールを放出することでイオン化することを仮定 している。アクセプタがホールを放出する過程は主に熱励起であり、そのためホールを 放出する確率はアクセプタ準位の深さと、温度に依存し、その典型的なタイムスケール

τdは次式の様に表される[37]。

τd = 1 sexp

[EA kBT

]

(3.4) ここで、sはホールを放出する頻度因子を、EAは価電子帯の上端から深いアクセプタ準 位までのエネルギー幅を意味し、kB、T はボルツマン定数と温度である。この温度依存 性が低温でポラリゼーションの進行速度が遅くなる理由であると考えられている。

また、深いアクセプタがホールを獲得し、電荷を解放するタイムスケールは、素子中 のホール密度pとホールの熱速度v、アクセプタがホールを捕獲する断面積σを用いて 次式のように表される。

1

σvp (3.5)

バイアス電圧を切るとホール密度pが大きくなるため、このタイムスケールがτdより短 くなるためにポラリゼーションからの回復が起きると解釈できる。ただし、ホール密度 pは、フェルミ分布関数と状態密度によって計算され、

p= 2

(mhkBT 2π~2

)32 exp

[Ev−µ kBT

]

(3.6)

のような温度依存性を持っている。ここでmhはホールの有効質量、Evは価電子帯の上 端のエネルギー、µはフェルミエネルギーである。そのため、低温ではポラリゼーショ ンからの回復時間が長くなることが予想される。

τdを決める深いアクセプタの準位EAに関しては、リーク電流の時間変化を用いた研 究[38]や、Pockels効果を用いた電場観測の研究[39]から、バンドギャップの中心付近

(0.6–0.7 eV)に存在すると考えられてきた。一方で、最近のわれわれの研究において、

赤外線をCdTe素子に照射する実験を行ったところ、アクセプタの位置は> 0.9 eVとい う、より深い位置に存在することが示唆された[40]。さらに、ポラリゼーションの進行 によるスペクトルのピーク位置変化のタイムスケールを、複数の温度で測定する実験を 行ったところ、EA =1.0 – 1.1 eVという値が実際の温度依存性を再現することが明らかと なっている[40]。

ポラリゼーションの進行と回復という2つのタイムスケールを求めることが出来れば、

適切な温度でバイアス電圧を印加する時間の長さと、バイアス電圧を落とす頻度および その時間の長さを調節することで、数年間のミッッション全体にわたり、ポラリゼーショ ンを制御し、一定の安定したスペクトル性能を維持できる。

4.1に信号読み出し基板がバンプ接合された実際のエンジニアリングモデル(EM)素子の

写真とPt Pad電極側の概要図を示す。本章で性能評価を行った素子は写真のEM素子で

はないが、読み出し基板上の配線パターンが異なる以外は全く同じ規格で製造された試 験素子である。SGD CdTe Pad素子の規格を表4.1に示す。この素子の信号読み出し基板 上の読み出し配線にASICを ボンディング接続して検出器を作成した。本章ではこの検 出器を用いて、主に以下の点に着目して評価試験を行った。

• 従来の製造方法で素子やバンプ接合に問題がなく、信号の読み出しが可能か。

• オペレーション条件下で安定した長期動作を保証可能か。

ドキュメント内 master thesis fukuyama (ページ 33-36)