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測定項目の設定

ドキュメント内 master thesis fukuyama (ページ 57-67)

5.2 EM 素子を用いたリーク電流測定システムの構築

5.2.2 測定項目の設定

以下に小規模リーク電流測定システムの構築に関する試験項目を示す。

• 測定手順

今回決定した測定手順のブロックダイアグラムを図5.3に示す。

• 測定時間の決定。

リーク電流測定時間は以下のすべてを満たすものの中で最適な時間を決定しなけ ればならない。

– SGDの動作温度での安定性を示すのに必要なだけの十分長い時間。

– ポラリゼーションが測定に影響を与えない時間。

SGD CdTe Pad素子の性能を把握する上で必要な測定時間を見積もった。前章で示し

た通り、20Cで約2時間以内のバイアス電圧印加であれば、ピーク位置の変化は0.1 –

0.2 %以下でありポラリゼーションの影響はほぼ無視できる。これより短いタイムスケー

ルで、オペレーション温度にスケーリングした際に最低約1ヶ月に渡る安定性を確認で きる時間を検討し、われわれは温度20Cで、バイアス電圧1000 Vを90分間印加する ことに決定した。20Cでの90分を−15Cと−20Cにスケーリングすると約20日間 と約50日間に相等する。

続いて、1素子のリーク電流を測定する小規模測定システムを構築した。そのセット アップの写真と概要図を図5.4に示す。本実験のためにSGD CdTe Pad EM素子用のリー ク電流測定ソケットを開発した。 ソケットの概要図を図5.4の下の図中に、実際の写真 を図5.5に示す。ソケット側の電極は 共通電極面であるIn面側は導電ゴムになっており、

直接In電極に触れる。読み出し基板がバンプ接合されたPt面側は素子を載せると読み出 し基板上の配線に金の針電極が接触する様になっおり、これによってガードリングまで 含めた素子全体のリーク電流を測定する。ソケットはアルミでできた静電遮蔽 用の箱の 中に固定されており、このアルミの箱を恒温槽に入れて測定中の温度を管理し た。バイ アス電圧の印加とリーク電流の測定にはKEITHLEY 237を用いた。KEITHLEY 237の 電源は電研精機社のノイズカットトランスNCT-F1 (300 VA)を通して取得した。このノ イズカットトランスは1次側と2次側は絶縁されたアイソレートトランスである。1次 側の電源はMHIの壁にあるアース端子付きのAC 100 V 60 Hzのコンセントから取得し ている。ノイズカットトランスを使用した理由は、測定を行った場所がMHIの工場であ り、他の作業で大電流が多く使用されているために電源のグランドラインにノイズが乗 ることが懸念されたためである。KEITHLEY 237の制御とデータ取得はノートPCを用

いてLabViewでソフトウェアを作成して行った。

また、作業手順のブロックダイアグラムの最後にある測定終了後のレポート作成に関 して、測定で取得したデータからファイル名などの引数を与えることで、レポートを自

図5.3: SGD CdTe Padリーク電流測定手順。橙枠の作業はわれわれ宇宙研側の作業で、赤 枠の作業はMHIによる作業。

動生成するプログラムを作成した。実際に作成されたレポートの例を図5.6に示す。こ のレポートは われわれ宇宙研側で紙媒体と電子媒体の両方で保管し、素子選定以降に問 題が発生した際に立ち返って確認できるようになっている。

5.2.3 小規模システムによる試験結果

今回の試験では、まず第一に正確にリーク電流を測定できる測定系の構築と、測定手 順の確立を目指したため、今後のスケジュールを考慮して、温度は20Cでのみ測定を 行った。

今回の測定した全40枚のSGD CdTe Pad EM素子のI-V特性曲線と、1000 Vを印加 して90分リーク電流を測定した際のデータを図5.7と図5.8に示す。40枚の素子のリー ク電流の振る舞いは、90分の間にリーク電流の値が増加から減少に転じる物や、単調増 加するもの、単調減少する物など様々であった。図5.8の上から2段目にある40 nA付 近までリーク電流が流れていて不安定な挙動を示している製造番号0907-2701-21番の素 子はソケットに載せる前の目視検査で‘欠け’が見つかった素子である。また、下から1 段目の山型構造が2つ見える 製造番号0907-2701-43番の素子は、目視では異常は見ら れなかったが、再測定をした際にも同様に不安定な挙動を示した。

測定結果について以下の点に注目し、解析を行った。

• リーク電流の値

• リーク電流の長時間安定性

• リーク電流の揺らぎ

• ACRORAD社のデータとの比較

リーク電流の絶対値

1000 Vを印加し始めてから1分間のリーク電流の平均値I1、89分後から90分後まで の1分間のリーク電流の平均値I90、及び全90分間のリーク電流の平均値 Imeanの分布 を、図5.9に示す。バイアス電圧印加直後ははばらつきがやや大きいが、90分間の平均 値Imeanで見ると、Imeanの中央値(18.2 nA)の±1σ(4.42 nA)以内に約75 %の素子が存在 し、±2σには95 %の素子が存在している。ここでσは全素子の平均値の中央値に対し て計算した偏差である。Imeanの平均値と標準偏差を求めるとそれぞれ18.7 nAと4.38 nA となった。

KEITHLEY 237 Al

三重同軸

+H.V. In電極

Pt電極 CdTe

恒温槽

導電ゴム

読み出し基板 ソケット

ノートPC

GPIB制御・データ取得

バンプスタッド 金針

A

Output HI Guard

Output LO

KEITHLEY 237

0 V

A

Output HI Guard

Output LO 電流

電流

AC 100V

2次側

AC 100V NCT - F1

アイソレートトランス

1次側

図 5.4: SGD CdTe Pad EM素子リーク電流測定用のソケットの概略図とソケットと2台 のKEITHLEY 237を用いた1素子リーク電流測定系の概要図

図5.5: SGD CdTe Pad素子リーク電流測定ソケット。左上:SGD CdTe Pad素子リーク電 流測定用ソケット(測定時)。右上:ソケット0 V側(Pt-Pad電極側)。素子を載せると重 みで素子を載せた部分が下降してリーク電流を測定するための針電極が出てくる。左下:

ソケットH.V.側(In-共通電極側)。黒い部分が伝導ゴム電極になっている。右下:ソケッ トに入れたSGD CdTe Pad EM素子(ソケット上部取付前)

図5.6: SGD CdTe Pad素子リーク電流測定レポート。0907-2701-37番の例。左:I-V特性 曲線(黒;試験印加、赤:20C測定)。右:リーク電流の時間変化(赤:測定値、青:リー ク電流平均値、緑:リーク電流の初期値と終了値を結ぶ曲線)。下段の表は右からリーク 電流の初期値、終了値、平均値、右グラフ青線に対する分散、緑線に対する分散。

Bias [V]

102 103

Leakage Current [nA]

1 10

0907-2701-3 0907-2701-4 0907-2701-5 0907-2701-7 0907-2701-8 0907-2701-9 0907-2701-10 0907-2701-11 0907-2701-12 0907-2701-13

Bias [V]

102 103

Leakage Current [nA]

1 10

0907-2701-14 0907-2701-15 0907-2701-16 0907-2701-17 0907-2701-18 0907-2701-19 0907-2701-20 0907-2701-21 0907-2701-22 0907-2701-23

Bias [V]

102 103

Leakage Current [nA]

1 10

0907-2701-24 0907-2701-25 0907-2701-26 0907-2701-27 0907-2701-28 0907-2701-29 0907-2701-30 0907-2701-31 0907-2701-32 0907-2701-33

Bias [V]

102 103

Leakage Current [nA]

1 10

0907-2701-34 0907-2701-35 0907-2701-36 0907-2701-37 0907-2701-38 0907-2701-39 0907-2701-40 0907-2701-41 0907-2701-42 0907-2701-43

図5.7: 各SGD CdTe Pad EM素子のI-V特性曲線。最上段:素子番号0907-2701-3から 0907-2701-13の I-V特性曲線(ただし今回測定していない 0907-2701-6は除く)。中段 上:0907-2701-14から0907-2701-23のI-V特性曲線。0907-2701-21は欠けが見られた素 子。中段下:0907-2701-24から0907-2701-33のI-V特性曲線。最下段:0907-2701-34か ら0907-2701-43のI-V特性曲線。

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

10

15 0907-2701-12

0907-2701-13

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

10 15 20 25 30 35 40

0907-2701-14 0907-2701-15 0907-2701-16 0907-2701-17 0907-2701-18 0907-2701-19 0907-2701-20 0907-2701-21 0907-2701-22 0907-2701-23

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

10 15 20 25 30 35 40

0907-2701-24 0907-2701-25 0907-2701-26 0907-2701-27 0907-2701-28 0907-2701-29 0907-2701-30 0907-2701-31 0907-2701-32 0907-2701-33

Time [sec]

0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500

Leakage Current [nA]

10 15 20 25 30 35 40

0907-2701-34 0907-2701-35 0907-2701-36 0907-2701-37 0907-2701-38 0907-2701-39 0907-2701-40 0907-2701-41 0907-2701-42 0907-2701-43

図5.8: バイアス電圧1000 Vを印加してから90分間の各SGD CdTe Pad EM素子のリー ク電流の時間変化。最上段:素子番号0907-2701-3から0907-2701-13の時間変化(ただし 今回測定していない0907-2701-6は除く)。中段上:0907-2701-14から0907-2701-23の時 間変化。0907-2701-21は欠損が見られた素子。中段下:0907-2701-24から0907-2701-33 の時間変化。最下段:0907-2701-34から0907-2701-43の時間変化。

leakage current [nA]

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 1 2 3 4 5 6

Distribution I1

leakage current [nA]

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 1 2 3 4 5 6 7 8

Distribution I90

leakage current [nA]

5 10 15 20 25 30 35 40 45 50

0 1 2 3 4 5 6 7 Distribution Imean

図5.9: 1000 Vを印加したときの各SGD CdTe Pad素子のリーク電流の分布。上:1000 V を印加してから1分間の各素子のリーク電流の平均の分布。中:1000 Vを印加して89分 から90分後の1分間の各素子のリーク電流の平均の分布。下:1000 Vを印加してから 90分間の各素子のリーク電流の平均の分布。

/Imin

Imax

0.9 1 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 1.7

0 1 2 3

図5.10: SGD CdTe Pad素子でバイアス電圧印加90分間のリーク電流値の1分間平均の 最大値と最小値の比Imax/Iminの分布。

リーク電流の長時間安定性

90分間のリーク電流の長期的な時間変化に関して調べた。先ほど求めた1分間のリー ク電流平均Itのうち、最大のものをImax、最小のものをIminと定義した。ImaxとIminの比 Imax/Iminの分布を5.10に、Imax/Iminとはじめの1分間の平均I1の関係を図5.11に示す。

図5.10の分布の平均値は 1.16で標準偏差σは0.12であった。平均値±1σ内に全体の 9割の素子が存在している。図5.11ではI1とImax/Iminの間に明確な相関は見られなかっ た。ただし、比Imax/Iminが平均値+ 1σより大きい素子のIminはI1全体の中でリーク電 流の大きい方から40 %内に分布している。

リーク電流の揺らぎ

秒∼分程度の短時間におけるリーク電流の揺らぎに関して調べた。まず各素子の1分 間ごとのリーク電流の平均を90分間のデータについて計算した。時刻T−1分からT分 までの平均をITとして定義する。この1分間平均を結ぶ折れ線を考え、その折れ線に対 するリーク電流の揺らぎを示す偏差 σを式(5.1)に従って計算した。これはリーク電流 の振る舞いの1分間のトレンドを差し引いたときの揺らぎを表している。式中に現れる tはt =60×(T− 12)で表される、測定開始からの経過時刻T−1分を単位を秒として表し た物であり、i(t)は測定開始からt秒後のリーク電流の値を表す。IeT(t)は式(5.2)に示す 通りで、リーク電流の1分間のトレンドを示している。これらの値に関して、図5.12に 実際の測定結果から求めた例を挙げる。各素子におけるこのσの90分間の最大値σmax の分布を図5.13に示す。約80 %の素子がこのσの値が0.2 nA以下で、50 %以上の素子

[nA]

I1

10 15 20 25 30

min/ImaxI

0.8 1 1.2 1.4 1.6 1.8

vs I1

/Imin

Imax

図5.11: SGD CdTe Pad素子でバイアス電圧印加90分間のリーク電流値の1分間平均の 最大値Imaxと最小値Iminの比。横軸にI1を、縦軸にImax/Iminを取った相関図。

がσが0.1 nA以下に分布している。

σ2(T)= 1 60

59

τ=0

(IeT(t)−i(t+t))2

(5.1) IeT(t)=(IT+1−IT)×(t+t)+IT (5.2)

ACRORAD社のデータとの比較

ACRORAD社のデータと今回の試験結果を比較した。図5.14に各バイアス電圧での

ACRORAD社とのデータと今回取得したデータの比の分布を、図5.15にリーク電流値の

相関を示す。リーク電流の値は測定中の平均である。ACRORADで行われた出荷前検査 と今回行われた試験の結果は良い相関を示した。各バイアス電圧における比の分布は平 均値1.3∼1.4となっており、その標準偏差も0.25∼0.27とバイアス電圧ごとの違いは見 られなかった。

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