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HM彼女は,離別という普遍的な人間感情のイメージを深めていた。このように,生徒

の記述内容から,特に,声の音色に注意を向けながら楽音構造を捉え,これをよりどこ

, , 。

ろにして 親子の情愛 悲哀という人間感情の様態を感じ取っていたことが確認された 生徒

TM

は 「お弓は声が低め 「お鶴は高い声」と記述していた。つまり,彼女は,登, 」 場人物の声の音高を対照的に把握し 「低め 「高い」と捉えていた。また,生徒, 」

TM

は,

「お鶴はどこか悲しいような感じ」と記述していた。つまり,彼女は,登場人物の心情を 喩えた言葉で,お鶴の声の音色を表していた。さらに,生徒

TM

は 「太夫は声の大きさ, や音色で登場人物の心情を豊かに表していた」と記述していた。ここから,彼女が強弱と お鶴は,母がいなくて 声の音色に注意を向けていたことが認められる。特に,彼女は 「,

辛いことを話す場面では,弱く悲しそうな感じだった」と記述していた。つまり,彼女 楽音構造を捉え,これ は 「弱く」という強弱と「悲しそう」という音色に注目しながら,

をよりどころとして,特に,お鶴の辛さ,親に会いたいという親への情愛を感じ取ってい た。しかし,生徒

TM

のワークシートには,お弓の声の音色,および,お弓の心情に関す

。 。

る記述がみられなかった お弓お鶴親子の離別という悲哀に関する記述もみられなかった

「太夫は,心情によって言い方を変えていた。速く言ったりゆっくり言っ 生徒

MM

は,

たりしていた」と記述していた。つまり,彼女は,速度の変化に注目していた。特に,

彼女は 「お弓がびっくりしたところは速く言っていた」と記述していた。ここからも,, 彼女が,特に,速度の変化に注目していたことが認められる。また,生徒

MM

は 「お弓, 記述していた。つまり,彼女は,登場人物の声の音高 は,低い声 「お鶴は,高い声」と」

を対照的に把握し 「低い 「高い」と捉えていた。さらに,彼女は 「お弓は,大人っぽ, 」 , お鶴は,子どものような声」と記述していた。つまり,彼女は,登場人物の声の い声 「」

音色を対照的に把握していた。そして,生徒

MM

は 「お鶴が母の名を言ってお弓がびっ, くりした。この場面が一番心に残った」と記述していた。つまり,速度の変化に注目し ながら楽音構造を捉え,これをよりどころとして,お弓の驚いた心情を感じ取っていた しかし,彼女のワークシートには,お鶴の心情に関する記述がみら ことが確認された。

れなかった。お弓お鶴親子の離別という悲哀に関する記述もみられなかった。

太夫は心をこめてその役ごとに声を変えていて,お弓はお鶴よりも大き 生徒

YY

は 「,

な声だった」と記述していた。この記述内容には,彼が声の強弱に注目していたことが

表れている。特に,彼は 「お弓が我が子のお鶴と出会って,オロオロしていた場面が心, に残った」と記述していた。つまり,彼は,声の強弱に注目しながら楽音構造を捉え,

これをよりどころとして,特に,お鶴が自分の母の名を述べた場面において,お弓の動 揺した心情を感じ取っていた。また,生徒

YY

は 「お弓は,声を低くして,お鶴は声を, 高くしていた」と記述していた。つまり,彼は,登場人物の声の音高を捉えていた。さ らに,生徒

YY

は 「お鶴は,何か泣いているような感じ」と記述していた。つまり,彼, は,心情を喩えた言葉で,お鶴の声の音色を記述していた。しかし,生徒

YY

のワーク シートには,お弓の声の音色に関する記述がみられなかった。お弓の子への情愛,お鶴 の親への情愛,悲哀に関する記述もみられなかった。

生徒

MY

は 「お弓は,早口であった」と記述していた。つまり,彼は,速いという速, 度の変化を捉えていた。また,生徒

MY

は 「お鶴は,声が高かった」と記述していた。, つまり,彼は高いという音高を捉えていた。このように生徒

MY

は,速度の変化と声の 音高に注目していたことが確認された。しかし,彼のワークシートには,お弓の声とお 鶴の声の音色に関する記述がみられなかった。登場人物の心情に関する記述も全くみら れなかった。

以上のように,ワークシートの記述内容から,知覚された楽音構造をよりどころとし て,抽出生徒が登場人物の心情を感受していた状況が確認された。特に,音色に注意を向 けていた生徒が登場人物の心情,悲哀を感受していたことが確認された。それに対して,

お弓とお鶴の声の音色に注意を向けていなかった生徒には,お弓の子への情愛,お鶴の親 への情愛,離別を感受していたことが確認されなかった。したがって,生徒に登場人物の 心情,悲哀を感受させる上では,声の音色が最も重要な学習内容になっていたことが確認 された。

第三項 郷土の伝統文化の価値に関する生徒の認識

次に,第三の視点,郷土の伝統文化の価値に関する生徒の認識について,検討する。こ こでは,前項で抽出した生徒

HM,

生徒

TM

,生徒

MM,

生徒

YY

,生徒

MY

のワークシー トの記述内容から,阿波人形浄瑠璃《傾城阿波の鳴門》という郷土の伝統文化の価値を認 識しているかについて考察する。

郷土の伝統文化に関する記述は,次のようであった。

6 抽出生徒の楽音構造の知覚,登場人物の心情に関する感受と郷土の伝統文化の価値に関する認識 注 意 が 向 け ら れ た 登場人物の心情の感受 郷土の伝統文化の価値に関する認識 側面

・ 特 に , 音 色 に ・お弓お鶴親子の情愛 ・阿波人形浄瑠璃の傾城阿波の鳴門の学習をして,はかな H M

注目 ・離別という悲哀 い親子の話についてよくわかりました。

お 弓 と お 鶴 の 声 ・阿波人形浄瑠璃の傾城阿波の鳴門をこれからも大切にし

の音色 て,次の世代に伝えていくことが,私たち徳島県人の使命

だと強く思いました。

・特に,強弱と ・お鶴の親への情愛 ・阿波人形浄瑠璃は,声の大きさや音色で登場人物の気 T M

音色に注目 持ちを豊かに表している大切な徳島の伝統芸能です。

お 鶴 の 声 の 強 弱 ・これからもこの伝統芸能を守っていかなければと強く思

と音色 いました。

特 に , 速 度 の ・お弓の驚いた心情 登場人物の気持ちにあわせて声を変えていくところが

M M

変化に注目 この徳島の伝統芸能の魅力だと思う。

お 弓 の 声 の 速 度 ・この芸能は昔から長い間受け継がれてきたもので,もっ

の変化 と多くの人に紹介して,これからもずっと受け継いでいっ

て欲しい。

特 に , 強 弱 に 注 ・お弓の動揺した心情 阿波人形浄瑠璃はすばらしいものだと思いました。太

Y Y ・

夫,三味線,人形が一体になっていることがこの芸能のす

お弓の声の強弱 ばらしいところだと思いました。

・この芸能をいつまでも続けていってくれたらいいなぁと 思いました。

・速度の変化 登場人物の心情を感受し 記述なし M Y

・ お 鶴 の 声 の 音 ていたことが確認されな

かった。

郷土の伝統文化の価値に関する生徒の認識が表れている言葉に実線を筆者が付した )

阿波人形浄瑠璃の傾城阿波の鳴門の学習をして,はかない親子の話につ 生徒

HM

は 「,

いてよくわかりました」と記述していた。つまり,彼女は,阿波人形浄瑠璃《傾城阿波 の鳴門》の表現や鑑賞において,特に,声の音色に注目しながら楽音構造を捉え,これ をよりどころとして,お弓お鶴親子の情愛と離別という悲哀を深く感じ取っていた。そ して,彼女は 「阿波人形浄瑠璃の傾城阿波の鳴門をこれからも大切にして,次の世代に,

」 。 ,

伝えていくことが私たち徳島県人の使命だと強く思いました と記述していた つまり

彼女は,このような人間感情の様態を深く感じ取ったことをよりどころとして,阿波人 形浄瑠璃を受け継ぎ,次世代に伝承していくことが徳島県人として自分の任務と捉えて いた。ここには,生徒HMが郷土の伝統文化の価値を認識していたことが表れている。

このように,生徒

HM

は親子の情愛や悲哀という人間感情の様態を感じ取り,これをよ りどころとして郷土の伝統文化の価値を認識していたことが確認された。

生徒

TM

は,阿波人形浄瑠璃について,「声の大きさや音色で登場人物の気持ちを豊か に表している大切な徳島の伝統芸能です」と記述していた。つまり,彼女は,阿波人形 浄瑠璃《傾城阿波の鳴門》の表現や鑑賞を通して,お鶴の声の強弱と音色に注目しなが ら親への情愛を感じ取り,これを根拠として,郷土の重要な芸能と捉えていた。特に,

「これからもこの伝統芸能を守っていかなければと強く思いました」と記述 生徒

TM

は,

していた。つまり,彼女は,親への情愛という人間感情を感じ取り,これをよりどころ として,特に,郷土の伝統文化を受け継いでいかなければならないと捉えていた。ここ から,彼女が阿波人形浄瑠璃の価値を認識していたことが認められる。このように,生 親への情愛を感受し,これをよりどころとして 価値を把握し

TM

は 郷土の伝統文化の

ていたことが確認された。

「登場人物の気持ちにあわせて声を変えていくところがこの徳島の伝統芸 生徒

MM

は,

《傾城阿波の鳴 能の魅力だと思う」と記述していた。つまり,彼女は,阿波人形浄瑠璃

お弓の驚いた心情を感じ取り,

門》の表現や鑑賞を通して,速度の変化に注目しながら

これをよりどころとして,特徴を把握していた。そして 「この芸能は昔から長い間受け, 継がれてきたもので,もっと多くの人に紹介して,これからもずっと受け継いでいって 欲しい」と記述していた。つまり,彼女は,お弓の驚いた心情を感じ取ったことを根拠 として価値づけを行い,伝承者によって盛んに上演され,継承されていくことを期待す ると捉えていた。このように,生徒

MM

が登場人物の驚きという表面的な心情を感じ取 自分以外の人によって阿波人形浄瑠璃が継承されることを期待していたことが確認 り,

された。しかし,彼女が郷土の伝統文化を自律的に受け継いでいこうとするような程度に まで,阿波人形浄瑠璃の価値を認識していたと確認することはできなかった。

「太夫,三味線,人形が一体になっていること 生徒

YY

は,阿波人形浄瑠璃について,

がこの芸能のすばらしいところだと思いました」と記述していた。先に述べたように,

阿波人形浄瑠璃《傾城阿波の鳴門》の表現や鑑賞において,彼は,特に,お弓の声の強 弱に注目しながらお弓の動揺した心情を感じ取り,これをよりどころとして,太夫,三 味線,人形の三業が一体となって登場人物お弓の心情を表現していた点に魅力があると 捉えていた。そして,彼は 「この芸能をいつまでも続けていってくれたらいいなぁと思,