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第七章では,音楽担当教師による浄瑠璃の語りや三味線と人形にふれる体験の場を組み 込んだ授業を実践し,生徒の認識の深まりについて考察した 。1)

第一節 授業実践の概要

実践は,平成

19 2007

( )年

10

12

日から

11

13

日にかけて,徳島県小松島市

A

中学 校の第一学年( 学級

6 236

人)を対象として行った。この実践では,筆者が生徒の実態に 即して指導計画を作成し,指導にあたった。実践における第一次(

1

時間)は,阿波人形 浄瑠璃が徳島の伝統的な芸能であることを意識させた。第二次(

1

時間)は,阿波人形浄 瑠璃の代表的な演目《傾城阿波の鳴門 〈順礼歌の段〉を語る体験をさせた。第三次(》

2

時 間)は,地域の太夫や三味線,人形座による〈順礼歌の段〉と〈十郎兵衛内の段〉の実演 を鑑賞し,語りなどの体験をさせた。

第一項 浄瑠璃の語りや三味線と人形にふれさせた授業の指導計画と指導内容 この授業実践における指導計画は,以下のようなものである。

◯題材 地域の民俗芸能「阿波人形浄瑠璃」

◯教材 阿波人形浄瑠璃《傾城阿波の鳴門 〈順礼歌の段〉》

◯題材の目標

①地域の民俗芸能「阿波人形浄瑠璃」に興味や関心を持つようになる。

②太夫の語りの特徴や登場人物の心情を感じ取る。

③速度の変化や声の音高,音色を変化させて登場人物の心情を語る。

◯指導計画

第一次( 時間)

1

阿波人形浄瑠璃の歴史と代表的な演目を知る。

第二次( 時間)

1

太夫になったつもりで 〈順礼歌の段〉を語る。,

第三次(

2

時間) 阿波人形浄瑠璃の実演を鑑賞し,自分の考えや感じたことを書く。

伝承者から指導を受け,語りや人形遣いの体験をする。

◯指導内容と指導方法

第一次( 時間) 第二次( 時間) 第三次( 時間)

1 1 2

意識化) ( ・内面化) ( ・内面化)

段階体験 体験

指導内容:日本の伝統音楽:速度の変化や声の音高,音色をよりどころとした楽音構造の知覚と

指 導

登場人物お弓お鶴の心情の感受,およびその心情の表現

内容

・阿波人形浄瑠璃の歴史を知る。 ・お弓お鶴になったつもりで語る。 ・太夫竹本友和嘉,三味線豊澤

・代表的な演目 傾城阿波の鳴門 ・教師の語り方の特徴を把握し,模 町子,人形勝浦座による《傾城 主 〈順礼歌の段〉を鑑賞する。 倣して語る。 阿波の鳴門 〈順礼歌の段〉と

。〈

な ・ 順礼歌の段〉のあらすじをつ録音して 太夫の語りと比較する 十郎兵衛内の段 を鑑賞する 学 かむ。 ・お弓やお鶴の情を伝えることがで太夫から直接指導を受けて,

習 ・人形浄瑠璃の音楽,義太夫につ きるように語る(語り方の工夫 。 順礼歌の段 の一部分を語る 活 いて理解する。 ・ 順礼歌の段〉を鑑賞する。 ・勝浦座の人からの指導を受け 動 ・ 太夫 の語り方の特徴 を把握す音高や音色,速度を変化させて, て,お弓やお鶴の人形を遣う。

る。 お弓お鶴の気持ち表現する。 ・ 三 味 線 弾 き か ら 指 導 を 受 け

・ 順礼歌の段〉の一場面を,模 ・ お弓とお鶴の悲哀が表現されて て 「テンテン」と弾く。 倣によって語る。 いる場面(「さわり」)を鑑賞する。伝承者に質問する。

・この悲哀が表現されている場面の ・本学習を通して感じたことや 一部分を,模倣によって語る。 思ったことを書く。

・本時の学習のまとめをする。 ・本時の学習のまとめをする。 ・本時の学習のまとめをする。

筆者による一斉指導 筆者による一斉指導と小集団指導 伝承者による指導( )

指導 T2

筆者による一斉指導( )

形態 T1

指 ・江戸時代から阿波の徳島の人々教師の語りを模倣して 語らせる ・太夫の顔や息の遣い方に注目 導 は,人形浄瑠璃と深く関わってい ・お弓やお鶴の立場にたって,気持 しながら,鑑賞させる。

上 ることを理解させる。 ちを込めて語るようにさせる。 ・三味線の豊かな音色を感じ取 の ・代表的な演目 傾城阿波の鳴門 どのように語ると聴いている人に らせる。

〈順礼歌の段〉を映像で鑑賞さ お弓やお鶴の心情が伝えられるか考 ・太夫と三味線と人形とが一体 意 せ,この浄瑠璃では親子の別れが えさせる。 となって,親子の情愛と悲哀を

でお弓やお鶴の心情を語っている 動させる。 る。

ことを理解させる。 ・語る速度や声の強弱,音高,音色 ・上演者から直接指導をうけ

・ 父さんの名は十郎兵衛、母様 を変化させて,親子の情愛と悲哀を ながら体験することによって, はお弓と申します~聞いてびっく 表現できるように支援する。 登場人物の心情やその表現に関 り」という部分を,模倣によって ・語った場面を鑑賞させる。 する理解を深めるようにする。

語らせる。 ・阿波人形浄瑠璃の魅力や地域

・お弓とお鶴の語り分けができる の伝統文化について,自分の考

ようにする。 えを書く。

・本時のまとめをする。 ・本時のまとめをする。 ・本時のまとめをする。

評 ・郷土芸能の阿波人形浄瑠璃に興太夫になったつもりで,声の音高意欲的に,鑑賞や表現をして 価 味 や関 心を持って取り 組んでい を変化させてお弓とお鶴の心情を語 いる。

計 る。 っている。三業一体を理解している。

画 ・阿波人形浄瑠璃の歴史を理解し ・言葉を大切にし,お弓お鶴の心情鑑賞や体験を通して,深く,

ている。 が 聴 き 手 に 伝 わ る よ う に 語 っ て い 親子の情愛と悲哀を感じ取って

・ 傾城阿波の鳴門 順礼歌の段る。 いる

の内容を理解している。語る速度や声の強弱や音色を変化 ・阿波人形浄瑠璃の魅力を他の 意欲的に 〈順礼歌の段〉を語 させて,親子の情愛と悲哀を表現し 人に伝えることができている。

っている。 ている。 ・地域の伝統文化を受け継いで

いくことを大切に思っている。

この実践において,親子の情愛と悲哀を生徒にふれさせる手だては,次のようなもので ある。第一次では,阿波人形浄瑠璃の歴史を学習した後で 〈順礼歌の段〉を鑑賞し 「シ, , テ其親たちの名は 何といふぞいの(中略)ときいてびっくり」という詞章を模倣して語 る(表現)ことを通して,お弓の子への情愛にふれされる 2)。第二次では 「ご詠歌」と徳, 島との関わりが具体的に示されている場面と 「悲しいことは一人旅じゃてて, どこの宿 でもとめてはくれず(中略)逢ひたいことじゃ 逢ひたいことじゃ 逢ひたい」という詞 章を模倣して語る(表現)ことを通して,生徒にお鶴の親への情愛とお弓の子への情愛,親 子の別れという悲哀にふれさせる。第三次では 《傾城阿波の鳴門》八段目の実演を「通, し」で鑑賞し,その後で語りや人形遣いなどの体験をすることを通して,生徒のお弓お鶴 の人間感情のイメージが深まっていくようにする。

以上のように,本実践では,生徒に親子の情愛と悲哀を意識させるために,体験の場を 組み込んで,鑑賞と表現との関連を図った。第一次から第三次において,語るという表現

活動(語りの体験)を継続して行った。特に,第三次では,伝承者から直接指導を受けな がら表現活動をすることによって,生徒の認識が深まっていくようにした。

第二項 生徒の活動の様子

この実践における生徒の活動の様子は,以下のものであった 。3)

第一次では,当初,生徒は,徳島には,阿波踊りの他に阿波人形浄瑠璃という芸能があ ることや,阿波人形浄瑠璃の起源が江戸時代であることなどを知って,非常に驚いた表情 をしていた 4)。また,生徒は,現在も神社で人形浄瑠璃が奉納されていることを知って,

「徳島の人々は昔から人形浄瑠璃を大切にしている」という思いを持つようになった。そ して 「こんな凄いものがあるのを今まで知らなかった」と述べていた。,

代表的な演目《傾城阿波の鳴門 〈順礼歌の段〉を鑑賞して,

次に,阿波人形浄瑠璃の 》

「三人で語っている 「何を言っているのかわからない」と述べた。中に

生徒は,最初, 」,

は,あまり阿波人形浄瑠璃に関心を示さない生徒もいた。

しかし,〈順礼歌の段〉の内容を把握し,次に鑑賞した時には,このような生徒も関心

「お鶴がかわいそうだ 「どうしてお弓 を少し示すようになってきた。そして,彼らは, 」

は母と名乗ってだきしめてやらないのか」と述べた。また,別の生徒は 「太夫の語り方, には,親に逢いたい気持ちが凄く出ている 「三味線の音が太い、阿波踊りの楽器とは違」 う音だ」と捉えていた。生徒は,ワークシートに 「今までの声と感じが違う 「太夫は, 」 いろいろ声を変えて語っている 「こんなに器用に声をコロコロ変えて語ることはすぐで」 きるものではない 「すごい声だ」と記述していた。」

その後,生徒は 「ととさんの名はじゅうろべ, かかさんなおゆみともうします とき いてびっくり」の部分を語った。ここでの生徒の語り方は,一本調子であった。つまり,

,お弓とお鶴の声の音高を同じにし,緩急をつけずに語っていた。そこで,お弓 生徒は

とお鶴の語り方を工夫するように働きかけた。その結果,生徒はお弓の声をお鶴の声よ りも低くし,語る速度を変化させて,お弓の気持ちを表そうとするようになった。この

「語るのはおもしろい 「物語に引き込まれていく」と述べるようになった。

経験から, 」

つまり,意欲的に語ろうとする生徒の姿がみられるようになった。このように,第一次で は,生徒は,阿波人形浄瑠璃の歴史的背景を知り,代表的な演目の鑑賞と表現を通して,

阿波人形浄瑠璃に興味や関心を次第に示すようになった。

第二次では,生徒は,教師の語りを模倣して語り,その後,親子の情愛と悲哀が表され ている部分 「サワリ」を鑑賞した。ここでは,次のような生徒の姿がみられた。当初,,

「ご詠歌」をうたった時に,生徒は,教師が「ふウウ―るウウ―さーア とオオオ―オオ