第3章 資産の測定基礎の分類
第 1 節 FASB/IASB 概念フレームワークプロジェクトにおける分類
1. FASB/IASB ( 2007 )における分類
測定フェーズの中途段階の成果として 2007 年に公表された『マイルストーンⅠ要約レ ポート 測定基礎の候補の一覧および定義』(以下、FASB/IASB(2007))では、歴史的 原価や公正価値といった従来の測定基礎の分類方法ではなく、まったく新しい分類方法が 提案されている29。そこでは、「過去、現在、未来のうち、いずれを指向するか」、「価格(price)
であるか、価値(value)であるか30」、および「入口価格であるか、出口価格であるか」、 という3つの基本的特性から分類された9種類の測定基礎が挙げられており、現在広く用 いられている用語との対応関係も示されている。かかる測定基礎を示すと、以下のとおり である。
(1)過去入口価格(past entry price)
(2)過去出口価格(past exit price)
(3)修正過去金額(modified past amount)
(4)現在入口価格(current entry price)
(5)現在出口価格(current exit price)
(6)現在均衡価格(current equilibrium price)
29 概念フレームワークプロジェクトでは、現在、FASB/IASB(2007)の分類方法に変更を加えているが、測定 基礎の分類を検討するにあたって、FASB/IASB(2007)における議論も参照するため、後述する新しい提案と 併せて概観したい。
30 FASB/IASB(2007)では、価値が個人または企業固有のものであるのに対して、価格は市場によって決定さ
れ、資産または負債に関する個人または実体のいかなる経済的価値(economic worth)にも影響されないとし ている。
(7)使用価値(value in use)
(8)将来入口価格(future entry price)
(9)将来出口価格(future exit price)
また、9 種類の測定基礎は、その基本的特性の違いから、つぎの表3-1 のように分類で きる。
表3-1 測定基礎の基本的特性
時制
価格/価値
過去 現在 将来
価格 (1)過去入口価格
(2)過去出口価格
(4)現在入口価格
(5)現在出口価格
(6)現在均衡価格
(8)将来入口価格
(9)将来出口価格
価値 ―― (7)使用価値 ――
どちらでもない (3)修正過去金額 ―― ――
(FASB/IASB(2007)に基づき筆者作成)
以下では、それぞれの測定基礎の定義についてみていく。
(1) 過去入口価格
資産の過去入口価格は、①付随する価格(related prices)を伴わないものと、②付随する 価格を伴うものの2つの類型に分けて、つぎのように定義されている。(FASB/IASB 2007, Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を購入するための交換において実体が過去に支払わなければならなかったで あろう価格(取得に関連した商品またはサービスに支払わなければならなかったであ ろういかなる価格も含めない)。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、歴史的原価(historical cost)
および過去購入価格(past purchase price)であるとされている。
② 付随する価格を伴うもの
「資産を購入するための交換において実体が過去に支払わなければならなかったで あろう価格に、取得に関連した商品またはサービスに支払わなければならなかったで あろう価格を加えた額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、付随する価格を伴わないもの
と同様に、歴史的原価(historical cost)および過去購入価格(past purchase price)であると されている。
(2) 過去出口価格
過去出口価格は、①付随する価格を伴うものと、②付随する価格を伴わないものの2つ の類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を売却するための交換において実体が過去に受取ったであろう価格(処分に関 連した商品またはサービスに支払わなければならなかったであろういかなる価格も 含めない)。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、過去売却価格(past selling price)
であるとされている。
② 付随する価格を伴うもの
「資産を売却するための交換において実体が過去に受取ったであろう価格に、処分に 関連した商品およびサービスに支払わなければならなかったであろういかなる価格 も差引いた額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、過去出口価値(past exit value)
であるとされている。
(3) 修正過去金額
修正過去金額は、以下の4つの類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 累積されたもの
「組立、建設、または改良のために、長期にわたって過去に支払われたすべての入口 価格の総額(取得に関連した商品またはサービスのために支払われた価格を含む)。」 なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、歴史的原価であるとされてい る。
② 配分されたもの
「過去の入口価格を複数の項目へ配分した後の、資産へ割当てられた額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、歴史的原価および配分原価
(allocated cost)であるとされている。
③ 償却されたもの
「資産の当初の過去入口価格の残余、または、償却もしくは減価償却の会計ルールに 従って以後の会計期間にその価格の一部を割当てた後の過去入口価格の残余。」 なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、歴史的原価、減価償却後原価
(depreciated cost)および償却原価(amortized cost)であるとされている。
④ 組合わされたもの
「過去の価格の累積、配分、および/または償却の組合せをつうじて資産に割当てられ た額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、歴史的原価であるとされてい る。
(4) 現在入口価格
現在入口価格は、①付随する価格を伴わないものと、②付随する価格を伴うものの2つ の類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を購入するための交換において実体が現在支払わなければならないであろう 価格(取得に関連した商品またはサービスに支払わなければならないであろういかな る価格も含めない)。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、現在原価(current cost)、市場
価格(market price)および市場価値(market value)であるとされている。
② 付随する価格を伴うもの
「資産を購入するための交換において実体が現在支払わなければならないであろう 価格に、取得に関連した商品およびサービスに支払わなければならないであろう価格 を加えた額。」
さらに、付随する価格を伴う現在入口原価は、(ⅰ)同一の代替、(ⅱ)同一の再生産、
(ⅲ)同等の代替、および(ⅳ)生産能力の代替の4つに分けられるとしている。
(ⅰ)同一の代替:「購入によって既存の資産を同一の資産で代替する現在入口価格。」
(ⅱ)同一の再生産:「再生産によって既存の資産を同一の資産で代替する現在入口 価格。」
(ⅲ)同等の代替:「既存の資産を同等の資産で代替する現在入口価格。」
(ⅳ)生産能力の代替:「既存の資産の生産能力を入手可能な最新の技術で代替する 現在入口価格。」
FASB/IASB(2007)では、このうち、(ⅱ)同一の再生産の場合の現在入口価格の類義
語として現在広く用いられている概念は再生産原価(reproduction cost)であり、その他の 3 つの場合の現在入口価格の類義語として現在広く用いられている概念は再調達原価
(replacement cost)であるとされている。
(5) 現在出口価格
現在出口価格は、①付随する価格を伴わないものと、②付随する価格を伴うものの2つ の類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を売却するための交換において実体が現在受取るであろう価格(処分に関連し た商品またはサービスのために支払わなければならないであろういかなる価格も含 めない)。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、公正価値、市場価格および市 場価値であるとされている。
② 付随する価格を伴うもの
「資産を売却するための交換において実体が現在受取るであろう価格に、処分に関連 した商品またはサービスのために支払わなければならないであろういかなる価格も 差引いた額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、現在現金同等物(current cash
equivalent)、現在出口価値(current exit value)、現在市場価値(current market value)、およ
び(正味)実現可能価値((net) realizable value )であるとされている。
(6) 現在均衡価格
現在均衡価格は、つぎのように定義されている。(Appendix C)
「効率的、完備、かつ完全な市場において行われた、知識ある自発的な独立第三者間 取引において、資産が現在交換されうる単一の均衡価格。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、公正価値であるとされている。
(7) 使用価値
使用価値は、つぎのように定義されている。(Appendix C)
「実体が自身の資産に置く価値。最も洗練された形態(most sophisticated form)とし ては、資産の最終的処分からのキャッシュフローを含む、資産の使用によって受取る ことを実体が期待する正味の割引キャッシュフローの額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、将来キャッシュフローの割引 価値(discounted value of future cash flows)、投資価値(investment value)、現在価値(present
value)、および将来キャッシュフローの現在価値(present value of future cash flows)である
とされている。
(8) 将来入口価格
将来入口価格は、①付随する価格を伴わないものと、②付随する価格を伴うものの2つ の類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を購入するための交換において実体が将来支払わなければならないであろう 価格(取得に関連したいかなる商品またはサービスも含まない)。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、将来原価(future cost)である とされている。
② 付随する価格を伴うもの
「資産を購入するための交換において実体が将来支払わなければならないであろう 価格に、取得に関連した商品またはサービスのために支払わなければならないであろ ういかなる価格も加えた額。」
なお、この類義語として現在広く用いられている概念は、将来原価および将来入口価値
(future entry value)であるとされている。
(9) 将来出口価格
将来出口価格は、①付随する価格を伴わないものと、②付随する価格を伴うものの2つ の類型に分けて、つぎのように定義されている。(Appendix C)
① 付随する価格を伴わないもの
「資産を売却するための交換において実体が将来受取るであろう価格(処分に関連し