第3章 資産の測定基礎の分類
第 1 節 FASB/IASB 概念フレームワークプロジェクトにおける分類
2. 分類方法の変更
2009年1月に行われたFASBおよびIASBの合同会議ならびに6月に行われた両審議会 の合同会議において、前項で示した測定基礎およびその分類方法に関して、分類方法の変 更が提案されている。
(1) 価格か否かによる分類
FASB/IASB(2007)では、時制の視点から、測定基礎の候補を過去、現在、将来という
3つのグループへ分類していたが、新たに、「実際価格、擬制価格、および予測価格(actual,
estimated, and forecast prices)」ならびに「非価格金額(non-price amount)」の2つのグルー
プへの分類が提案されている(FASB/IASB 2009a, paragraph 6)。
① 実際価格、擬制価格、および予測価格
このグループは、「実際過去入口価格」、「擬制過去入口価格」、「擬制過去出口価格」、「実 際現在入口価格」、「擬制現在入口価格」、「擬制現在出口価格」、「将来入口価格の予測」、 および「将来出口価格の予測」を含み、それらの価格は、取引コストまたは他の調整が行 われる前の価格であるとしている(paragraph 6.a)31。それらの価格と考えられる調整との
31 過去入口価格および現在入口価格のみ実際価格と擬制価格の2つに分かれている理由として、FASB/IASB
(2009a)では、つぎのように述べられている。
「入口価格は、実際に用いられた取引価格と擬制された取引価格の2種類がありうる・・・実際の出口価格が 入手可能となるのは資産が処分される場合または負債が消滅する場合に限られ、そのような場合、かかる項 目は報告の対象外となるため、出口価格は、すべて擬制価格である。(paragraph 6.a)」
関係を示すと、表3-2のとおりである。
表 3-2 実際価格、擬制価格、および予測価格
考えられる価格 考えられる調整 備考 FASB/IASB(2007)
における候補 実際過去入口価格また
は擬制過去入口価格(建 設資産の価格及び原価 の累計額を含む)
a. 実際の取引コスト
b. 終末価値(terminal value)へ の計画的な増価または減価 c. 減損に関して許容される評価
取引コストを含んでいること以外は、歴 史的原価(または取得価額)と類似して いる
過去入口価格
見積過去出口価格 a. 実際の取引コスト
b. 終末価値(terminal value)へ の計画的な増価または減価 c. 減損に関して許容される評価
一部の減損に関して用いられている 過去出口価格
実際現在市場入口価格 または擬制現在市場入 口価格
実際の取引コストまたは見積取 引コスト
出口価格の代替としてしばしば用いら れており、あるいは、SFAS 157以前に設 定されたIFRSまたはGAAPのもとでの 出口価格の代替である
現在入口価格
擬制現在出口価格 a. 見積取引コスト b. 期限前弁済違約金 c. 中途解約違約金 d. 「特売」割引
e. 完成または販売のために要す るコスト
SFAS 157において定義されている「交換
の前提」のもとで計算される公正価値
現在出口価格
予測将来入口価格 見積取引コスト 使用価値の見積りへのインプットを除 き、現在用いられていない
将来入口価格
予測将来出口価格 a. 見積取引コスト b. 期限前弁済違約金 c. 中途解約違約金 d. 「特売」割引
e. 完成または販売のために要す るコスト
SFAS 5における偶発損失の認識の基礎 将来出口価格
(FASB/IASB 2009a, paragraph 6に基づき、一部加工して筆者作成)
② 非価格金額
このグループは、「使用価値」、「一定の現在価値の算定数値(prescribed present value
computation)」、および「公正価値類似額(fair-value-based amounts)」を含む。それらの非
価格金額について詳細を示すと、つぎの表3-3のとおりである。
表 3-3 非価格金額
考えられる非価格金額 説明 備考 FASB/IASB(2007)
における候補 使用価値 確率で加重平均され、現在へ割
引かれた、資産の使用によって 生成される将来キャッシュフロ ー
キャッシュフローは、市場に基づくもの または実体固有のものがありうる。市場 に基づく場合、当該測定値は、SFAS 157 における「使用の前提」のもとで決定さ れた公正価値にみえる。
使用価値
一定の現在価値の算定 数値
確率で加重平均された、または 最も生起しやすい、特定の利子 率で割引かれた将来キャッシュ フロー
財務会計基準書第114号『貸付金の減損 に関する債権者の会計処理―FASB基準 書第5号および第15号の修正』(SFAS 114)のもとでの、不良債権の処理に関 する選択肢の1つ
―
公正価値類似額 一定の現在価値の種類。SFAC 7 における公正価値計算と類似の 方法を用いるが、市場参加者が 考慮するであろう 1 またはそれ 以上の要因を無視している。
改訂版財務会計基準書第123号『株式報 酬』において用いられている。信用リス クの変動を加味しない公正価値は、この カテゴリーに該当するだろう。
―
(FASB/IASB 2009a, paragraph 6に基づき、一部加工して筆者作成)
(2) 現在の測定値か否かによる分類
FASB/IASB(2009a)では、(1)に示した分類の変更にくわえて、過去価格、予測将来価
格、使用価値、修正擬制過去出口価格、一定の現在価値の算定数値、および公正価値類似 額を測定基礎の候補から除外することが提案されていた。しかし、2009年6月に公表され たスタッフペーパー(FASB 2009b/IASB 2009c)では、除外が提案されていたすべての候補 が測定値の候補のなかに含められている(ただし、予測将来価格は「割引前将来キャッシ ュフロー」に名称が変更されている)。そのうえで、以下の 5 つの測定値への分類が提案 されている(FASB 2009b/IASB 2009c, paragraph ME22)。
a. 現在価格(current prices) b. 過去価格(past prices)
c. 現在価値(present value calculations)
d. 修正過去価格(adjusted past prices)
e. 割引前将来キャッシュフロー(undiscounted future cash flow)
さらに、FASB(2009b)/IASB(2009c)では、新たに、「現在の測定値か否か(current measures
or non-current measures)」による分類が提案されている。かかる分類規準をくわえて測定値
を分類したのが、以下の表3-4である。
表 3-4 混合測定値報告システムにおいて考えられる測定値
現在の測定値(current measures) 現在以外の測定値(non-current measures)
現在価格:
現在入口価格(実際または擬制)
現在出口価格(擬制)
過去価格:
過去入口価格(実際または擬制)
過去出口価格(擬制)
修正過去価格:
累積または融合(accreted)
配分または償却 組合せ
現在価値:
使用価値 公正価値類似額
その他の一定の現在価値の算定数値(other prescribed
present value computations) 割引前将来キャッシュフロー
(FASB(2009b)/IASB(2009c)paragraph ME23, Table 1に基づき筆者作成)