②シャガール『私と村』に関して 観点からのグラフ化
着眼点・シャガール(学隼別〉
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85 OO%
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∵ 言各学年ごとの傾向をまとめると、小3は、50.0%の子どもが「ひつじとおじさん がいる」「馬と人にみえる」「やぎとようかいがでてる」「大きい羊がいる」というよ
うに中心に描かれたものを挙げ、列挙している。そして、21.4%が「いっしょにし ゃべっている」「むきあっている」「見つめあっている」と動物と人物の様態に着眼 した。その周辺に描かれている「ケンカする男と女」「中にいる人」に着眼したのが 21.4%である。
小6では、中心的対象物に関して、小3に見られた「動物と人がいる」というよ うな着眼の仕方をした子どもは一人もいず、23.3%として数えられているものも、
「みどり色のはだをした人」とか「やぎのちぢをしぼっている人」…「いろんな人が かいてあるから」というように他の項目と重ねられていた。また、「向かい合ってい る」などの様態に着眼した子どもが多い。中心の人物だけでなく、周辺の対象物に 対しても「ヤギのミルクをしぼっている」「かまを持っている」といった行為に着眼 した子どもが36.7%もいること、また「いろんな絵がかさなったりしている」「馬が すけていて、人がみえる」「〜を大きくかいている」というような描かれ方に着眼し
た子どもが26.7%いることも他の学年には見られない。
中3では、58.8%と半分以上が、画面の中の状況を推測している。
小1では、4人の解答が得られた。「やぎがいること」に着眼した子が2名、「に んげんとしろやぎさんがおはなししている」1名、「おんなのこがたおれているから」
と周辺対象物に着眼した子が1名いた。
4.手だてへの利用にむけて
前では二作品を例に考察を示したが、全体結果の考察をまとめておきたい、,
画面の何に着目する傾向があるかについて、小1では、画面全体の印象や画面に 描かれた一部のものを限定的にあげるなど、直感的な把握がみられる。そのため鑑 賞というよりも作品との出会いによって表現された主題や主となる事物をもとにし たお話づくりなど、間接的な手だてで十分であろう。小3では、画面に描かれた意 味のまとまりのある形態個々に目が向き、それを列挙しようとする傾向がみられた。
これは表現においても、事物の関係性を十分表現できないことを裏付けるものであ
り、認知発達の上からも事物を統合的に把握できないことを示している。具体物を 示さない不定形に対しては、それを現実のものに引き寄せて具体釣なものとして捉
える傾向があること、また、一艦麟こは暗い、寂しいといったイメージのものをポ ジティヴな感覚として捉えるので、鑑賞対象としての具象抽象は視覚的にはあまり 問題視されず、どのような造形作晶でも楽しめるのではないだろうか。小6におい ては、行為や個々のものの関係を捉えようとするため、中心的なものばかりでなく、
周辺に配置されているものへも目が向くようになることが明らかになった。感覚的 なイメージも、ポジティヴなものとネガティヴなものが半々となり、感覚的な嗜好 判断がなされる傾向が芽生えて、鑑賞対象を吟味する知的準備が出来はじめている と考えられる。中3においては、表現された状況を読みとろうとしたり、画面に見 られ.る個々のものに意味付けを行おうとする傾向がみられた。また、具体的なもの さえ抽象的、象徴的なものとして捉える傾向もある。しかし、その読みも生徒の生 活経験からの推察にとどまっている。また、感覚移入の傾向としても他の学年には
みられない、微妙なニュアンスを持たせようとすることがうかがわれるなど、より 高度な鑑賞行為を期待できる。
作者への質問に関する設問で明らかになった傾向は、小1においては、語彙の少 なさが感じられ、一方的な問いでは十分に気持ちを引き出すことは難しいようだ。
小3においては、作者が実在するかのように話しかけ、作者の人間性と対話してい るような質問のしかたが多い。すなわち作品に対する興味よりも作者自身の方へ関 心が向かいやすい。従って鑑賞者と作品とが直接向かい合うような鑑賞設定よりも、
鑑賞を援助するエージェントとして作者を設定することで身近な鑑賞にすることが できるのではないだろうか。小6においては、作者と絵との距離を均等に保ちなが
ら会話をするような質問が多い。つまり、絵画への興味が中学年よりも増し、その ため、色づかいや描かれ方など技法面への関心を示し、自己の表現へ結びつけよう
とする。表現と鑑賞の関わりを重視した方向性が示唆されるだろう。中3において は、絵に描かれたものには何か意味があるはずだという前提での質問が多い。明ら かに花とわかっているものに対しても、何か意味をもち、何かを象徴しているに違 いないと考えている。表現意図や動機、形と象徴性の関係など造形の意味の探求的
5 fi
な鑑賞に関心を持つと考えられる。
再度整理して、手だてに闘する示駿をまとめると、次のようになるだろう。
抵学年二作晶全般、自己との関わりなど物語性に着目
中学年一多様な鑑賞対象、作品の部公への着目、エージェントの設定 高学年=感覚・感情表現作品、造形技法への着目、表現と鑑賞のバランス
中学生=イコノロジカルな作品など象徴性・記号性のある作品、造形動議・意図へ の着目、鑑賞の分析過程や批評
以上のような点をふまえて手だての具体化につなげていくとしたら、どのような ことが考えられるだろうか。例えば小1においては、おとぎ話の主人公を絵の中に 見つけ出したことから、既知の子どもたちのヒーU一を登場させたりして、親しみ
をもたせるといったことも考えられる。しかし、適切な誘導が必要であると考えら れる。小3においては、実在しない作者にさえ素直に接することのできる態度など から、作者や画中の登場者を実際に仮定させ、対話を楽しませたりすることもでき
るだろう。また、個々のものを拾い出す傾向からは、宝探し的な要素も有効である と考える。
小6においては、絵を描かれた世界であると捉えられたり、行為の行方や動機に 関して興味を持ったりすることから、絵の中の世界を想像させたり、お話をつけら せたりといった方法も考えられる。
中3においては、読みを行いたいという欲求を満足させるてあげたいと考える。
調査の回答から、彼らたちの経験からの導きだけでは処理できないと感じているよ うにも思えるため、別の文化の紹介など他者理解へつなげる方向性への手だてが考
えられる。
しかし実際に手だてを考えていくとする場合には、作品に対しての深い理解に支 えられていないと、ここから得られた子どもたちの要求に答えてあげることはでき ないことも考えられる。
また、そういった美学、美術史の分野だけでなく、今回取り上げることができな
かったが、理解を捉すということでは教育撹評の考え方なども考慮すべき課題であ ると考える。また、本調査では美術館における多様性の一つとして、年齢による発 達過程の違いを取りあげた訳であるが、鑑賞能力や美飽感情の発達に関する醗究も 加味しなければならないと感じる。
第2節 ワークシートの作成
作晶理解への手だてとなるワークシートを作成していくための視点をまとめた上 で、具体的な試案を行っていくことにする。
1.作成の視点
現在あるワークシート作成の観点と共に、次の六点を提案したいと考える。
①主体的な取り組みを促す
美術館は人々の生涯学習を支援するという役割を担っており、また今日、市民が 美術館を訪れる動機は多様化してきた。そのため美術館教育には、展示物に関する 専門的なことがらを学ぶ機会を利用者に提供する活動と同時に利用者の知的好奇心 を刺激したり、興味や関心を育む働きかけが求められる。そこで、押しつけでなく 自ら取り組みたいと思わせるようなワークシートの工夫が必要と考える。
まず遊びの要素を取り入れることによる「おもしろそう」「やってみたい」といっ た動機づけがある。次に、問題意識を高めることによって「どうしてなんだろう」
「その先が知りたい」という探求心を刺激することも考えられる。
具体例:クロスワード・パズル、宝さがしゲーム、
「男の子なのにドレスを着ているのは何故でしょう」など特別な内容に関する問い
②他者との交流の機会を設ける
セルフガイドの問題点として、「作られたものを手にとるだけの一方通行の活動に なりがちである」ということが挙げられた。他者に自分の考えを述べたり、他者の 意見を聞くことで考えを修正したり、.深めたりといった活動をワークシートに盛り 込みたいと考える。それには、従来の時闘や場を設定したものや、美術館側の人間