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手だての具体化にむけて

 第2章においては、美的視覚は知識に助けられた感覚であることが確認された。

また、知識や経験は鑑賞行為を行う道具の役目を持ち、それを得ることのみでは鑑 賞行為は成立しないと、鑑賞を捉えた。そして、作品理解への手だてと考えられる

ものは、鑑賞行為における知覚・解読の操作をスムーズに行えるように「見る」枠 紐みを開いたり、認知不安をコントロールするなどといった機能を担うものであっ

た。また、その活動は鑑賞者側の状態と密接に関わりをもち、効果的な手だてを考 えていくには、「見られる」作品の観究に加え、「見る」主体者としての鑑賞者に対 しても関心をもつことが必要があると考えた。

 そこで第3章では、鑑賞者がどのように知覚し、解読をすすめ、またどのような 点に関する手だてを必要と考えているのかを探るための視点を見つけたいと考える。

 第1章において、美術館の機能は教育的役割を為すものであり、 現在では生涯教 育の拠点として教育全体の視野に立つことがのぞまれていることも確認した。そこ

には当然、子どもたちへの配慮も含まれることになる。また、次代を担う子どもた ちにどのような影響を与えていくかは、将来の美術館の社会認知にも直結する重要 な問題とも考えられる。

第1節 絵をみることに関する調査

1.調査の目的

本調査の目的は、美学・美術史などの知識や鑑賞に関する教示といった手だてと よばれるものが何も与えられていない状態で、児ij ・生徒がどのように作品を見る のかに関して、発達上の特性の基礎情報を得ることである。これは手だての具体化 にむけて、「子どもが絵をみる場合、何が見やすく、何がみえにくいのか」「知覚し たものから、どのように思考を働かせようとするか」「どの要素に対して疑問をもつ のか」の実態を探るものである。このため作品の複製資料を児童・生徒に提示し、

関連する質問項目に回答してもらうアンケート調査を実施することにした。

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2.調査の方法

(1)調奪資料の選択

 上記のような調査月例を達成する上で暦象となる造形作晶は絵藤に限定して選定 することにした。その際、本調査に先立ち、大学生25人(教育系大学・美術専攻・

2回忌〉に対する予備調査から浮かび上がった以下の項目を考慮した。

1>人物が登場すると、何者であるかの解明に意識が向かう。

2)人物の服装に注目し、何者であるかの解明に向かおうとする。

3)不自然な配置のモチーフに注目する。

4>動きのある人物に対しては、その動きの動機や目的に関心をもつ。

5)不自然でない配置のモチーフにはそれほど、注目しない。

6>油彩・写実ではない絵には、技法や制作に関する興味を持つ。

7>二つ以上の生き物が登場する場合には、それらの関係に興味を持つ。

8)抽象的空間に配置されたモチーフで、正体の分かっているものは、意味を読もう

とする。

9)デフォルメが見られるほど、作者の心情に迫る質問がみられる。

10)自分たちと風習の違うことに対し、興味を覚える。

11)人物が登場する絵より、静物画の方が、図像学的読みとり促す傾向がある

作品の点数は、授業時間内に押さえるという条件で18点を提示することにしたが、

子どもたちの負担を考慮し9枚ずつ以下のA・Bふたつのグループに分けた。

Aグループ

a)クL〆一   『イェルク』

b)デュブイー『ニースの埠頭』

c)ドガ   『プリマ・バレリーナ』

d)シャガール『私と村』

e)ワイエス  『彼方へ 1952』

f)ファン・アイク  『アルノルフィニ夫妻の結婚j g)オキーフ 『赤いけし』

h>ポロック  『収敷 第10番』

i>フラ・アンジェリコ    『受胎告知』

Bグ;y 一プ

1>ルソー   『干れるジプシー女』

k)マティス  『ダンス』

1>アルチンボルド  『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世』

m)ムンク   『緋び』

n>ローランサン   『ポール・ギヨーム夫人の肖像」

0)ポジヤン  『五感』

p>ウtbeホル『神話;ミッキ・一・一マウス』

q)モネ    『睡蓮」

r>ラ・トゥール   『ダイヤのエースを持ったいかさま師」

(2)調査の対象

 アンケートの対象となった児童・生徒は表1のとおりである。なお、A・Bのグ ループ分けは、調査のためた用意した二種類の絵のグループに対応する。

     表1

グループ 学年 性別 人数 合計人数 所属

A

小1 男女 17 P9

36

B 小1 10 24 60

A

小3. 男女 15 P4

29 S小学校竹組

B

小3 男女 .9

P1

20 49 H小学校2組

A

小6

男女 、

14

¥6

30 N小学校4組 B 小6 男女 15

P6

31 61 N小学校2組

A

中3 男女 15

P9、

34 H中学校2組  、 B 中3 男女 12

P9

31 65 H中学校1組

235

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(3>質問紙の構成

 設問は、作晶毎に題名と作者に懸する質問の二点に分けて講成し。自由記述とし た。これら二つの項目には以下のねらいを反映させた。

⑦その絵に題名をつけるようになったとき、絵に含まれるどの要素に着眼するか

②その絵の作者に質問できるとしたら、どの観点からの情報を得ようとするのか

 まず①につVては、題をつけなければならない状況の設定によって、より絵をし っかりとみるようにしむけ、題をつけるという作業が、その絵の核となるものを抽 出しようとする思考に通じるのではないかと考えた。また、あえて題をつけるよう に指示したのは、小学校低学年・中学年の児童への抵抗が少なく意見が出るのでは ないかとの配慮からであった。そして、それを分析することにより子どもたちが絵 をみるときの着眼点、すなわち絵から何を読み取ろうとするのかを明らかにしょう

とした。

 ②については、どのような疑問を抱き情報を得たいと考えるかということと共に、

子どもたちが関心をしめす方向を明らかにしょうとした。

 その他、①・②の結果に影響があると予測される次の二点についても、付して回

答を得た。

③用意した絵の中で、聾感をもつ絵はどれか。また、最も好感をもつ絵とその理由。

④用意した絵の中で、既知(みた覚えがある)の絵はどれか。

(4)調査の手順

調査は、学校の授業時に教師に質問紙を配ってもらい、その場で記入のうえ、直 ちに回収してもらうという形をとった。

児童・生徒個々に、調査資料(A3版・カラーコピー)と質問及び回答用紙(B 4,版)各2枚を配布した。教示は5分、回答40分とした・

3.調査結果

(1)集計と処理

児童・生徒が記述した回答の文脈を、表2の観点から記述数を数えグラフにした。

ただし、この観点はあくまで概括的な比較を行う上で用い、各作晶における分析は、

それぞれの記述の内容を重視し、読み取るようにした。

表2 着眼点の分類観点 中心的対象物①

周辺的対象物②

背景③

色・数量④ 技法⑤

全体的状況⑥ 感覚・感情⑦ その他⑨

存在のみ① 様態・行為② 付随物③ 存在のみ① 様態・行為②

場所① 時間② 色① 数量②

 ここでは、クレーの『イェルク』とシャガール『私と村』を例に調査結果を示す ことにする。情報や教示が何も与えられていない状態において、絵の視覚的要素の 中の何に着眼し、どのような関心を示すかを、要素を分類した観点にそってみてい く。また、学年間の違いを明確にすることを狙い、各学年人数を分母にし、それぞ れの観点についての記述した人数の比率を参考とすることにする。

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参考図版

      イェルク

     パウル・クレー(1879〜1940年)

1924年制作,紙,水彩,ペン,23.5×28.5cm          フィラデルフィア美術館

①クレー『イェルク』に関して 観点からのグラフ化

着張点・クレu・一《学年劉〉

lQの。⑪露 墾5愈糠噺 90 Oij%

85⑪0砺 8000鰯 7500嚇 7000妬 650⑪賜

60 OO%

5500噺

5⑪0⑪冤

4500粥 4⑪OO暢 3500嚇 3000妬 2500蛎 2000嘱 1500嘱 1000妬 500粥 OOOI蔭

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