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BsLBDH 、 KpmBDH および cLBDH の安定性と立体構造について . 102

第 5 章 L -2,3-butanediol dehydrogenase の安定性に関係する要因 101

5.3 結果および考察

5.3.2 BsLBDH 、 KpmBDH および cLBDH の安定性と立体構造について . 102

第3章でcLBDHの結晶構造が決定されたので、安定性に影響を及ぼすと考えられてい

るイオン結合数、水素結合数、空隙数および体積、溶媒接触面、サブユニット間接触面積 [Bhuiyaet al., 2005; Schallmeyet al., 2013]BsLBDHKpmBDHおよびcLBDHにつ いて算出し、比較した (5.1)。イオン結合数はサブユニット内、サブユニット間そして サブユニット間の水素結合数は、KpmBDHcLBDHBsLBDHの順に多く、安定性に相 関があると推測された。しかし、サブユニット内の水素結合数、空隙数およびその体積、

溶媒接触面積、サブユニット間の接触面積は、相関がなかった。以上の三酵素間の比較よ

り、BsLBDHおよびKpmBDHの安定性はイオン結合およびサブユニット間の水素結合の

関与が示唆された。

また、表面電荷の分布を変えることで安定性を改善したという報告があることから [Grim-sley et al., 1999; Loladze et al., 1999; Perl et al., 2000; Spector et al., 2000; Lee et al., 2005; Permyakov et al., 2005; Gribenko and Makhatadze, 2007; Strickler et al., 2006;

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

25 30 35 40 45 50 55 60

Residual activity (%)

Temparature (˚C)

native L-BDH meso-BDH chimera-L-BDH

図 5.1: BsLBDH、KpmBDH および cLBDH の熱安定性。各タンパク質溶液は 0.01 mg/mL、100 mM Tris-HCl、10mM NaCl (pH 8.0)に調製して測定した。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

0 5 10 15 20 25 30 35 40 45

Residual activity (%)

Incubation time (h)

native L-BDH meso-BDH chimera-L-BDH

図 5.2: BsLBDHKpmBDHおよびcLBDHの保存安定性。各タンパク質溶液は0.01 mg/mL、100 mM Tris-HCl、10mM NaCl (pH 8.0)に調製して測定した。

表5.1: BsLBDHKpmBDHおよびcLBDHのイオン結合数、水素結合数、空隙体積、溶 媒接触面性およびサブユニット間接触面積。

BsLBDH cLBDH KpmBDH No. of ion pairs

Intrasubunit 58 64 68

Intersubunit 0 16 24

No. of hydrogen bonds

Intrasubunit 2219 2046 2212

Intersubunit 55 58 70

No. cavities 25 17 21

Total cavity volume (˚A3) 245 190 438 Accessible solvent area (˚A3) 9885.5 9812.6 9885.1

Subunit contact area (˚A3)

Subunit A-B 491.8 474.6 452.2

Subunit A-C 52.4 44.3 54.3

Subunit A-D 432.3 470.1 443.1

Schweiker et al., 2007]BsLBDHKpmBDHおよびcLBDHの表面電荷を描画した( 5.3)。この結果、BsLBDHの表面電荷はKpmBDHおよびcLBDHと比較して、顕著に負 に帯電していることが確認された。一般に、好塩性酵素はそのホモログに比べてアミノ酸 配列内の酸性残基の数が塩基性残基のそれよりも過度に多いことが知られていることから [Pieper et al., 1998]、BsLBDH、KpmBDHおよびcLBDHの酸性残基と塩基性残基の数 を確認したところ(表5.2)、KpmBDHでは酸性残基と塩基性残基はほぼ同数であったの

に対し、BsLBDHは酸性残基が1.5倍と多かった。この表面電荷とアミノ酸配列内の酸

性残基と塩基性残基の数の比較から、BsLBDHは好塩性酵素であり、他の好塩性酵素同 様、測定条件が10 mM NaClの低塩濃度であったために急激に失活したことが推測され た[Lanyi, 1974; Jaenicke, 1981]。また、三葉ドメイン (domain A-C)および基盤ドメイ ン (domain D)ごとに比較すると、KpmBDHは三葉ドメイン、基盤ドメインともに酸性 残基と塩基性残基がほぼ同数であるが、BsLBDHでは三葉ドメインは酸性残基が3個、基 盤ドメインでは8個多く、BsLBDHの酸性残基の過多はその7割が基盤ドメインによるこ とから、基盤ドメインをKpmBDH由来としたcLBDHが、低塩濃度でもBsLBDHのよ うな急激な失活を示さなかったのは、酸性残基の過多が軽減されたことによるためと推測 された。

5.3.3 BsLBDHの安定性に及ぼす塩濃度の影響

BsLBDHの安定性は溶液の塩濃度に影響を受けると推測されたため、BsLBDHの熱安

定性と保存安定性の塩濃度依存性を検証したところ、塩濃度を上げるにつれて安定になり、

1M NaClでの熱安定性は45では残存活性が80%であり(図5.4、保存安定性においては、

250 mM NaClでは残存活性が70%、500 mM NaClではインキュベート直後の失活を示

図5.3: BsLBDH (A)、cLBDH (B)およびKpmBDH (C)四量体の表面電荷。赤が負電荷、

青が正電荷を示す。

表5.2: 各ドメインの酸性・塩基性残基の数 BsLBDH cLBDH KpMBDH No. of acid residues

domain A 4 4 3

domain B 0 0 1

domain C 7 7 7

domain D 21 15 15

Total 32 27 26

No. of base residues

domain A 2 2 2

domain B 2 2 3

domain C 4 4 6

domain D 13 16 16

Total 21 24 27

さず、残存活性が80%あった (5.5)。 以上から、BsLBDHの低塩濃度では不安定であ り、高塩濃度 (> 500 mMNaCl)で安定であることが確認された。好塩性酵素の安定性に 塩濃度依存性があることは、酵素表面に多く分布する酸性残基が低塩濃度では静電力によ り互いに反発する作用が強く(charge-charge intraction)、酵素が膨張し、酵素分子内の水 素結合や疎水性相互作用を減少させるが、塩濃度を上げると陽イオンが酸性残基に結合す ることでcharge-charge intractionが緩和されて安定になるためと考えられており[Lanyi,

1974]BsLBDHの安定性に塩濃度依存があることもこの作用によるものと考えられる。

cLBDHの熱安定性は塩濃度に大きな依存性を示さなかった(5.6)cLBDHdomain Dによってcharge-charge intractionの影響が小さくなったためと考えられる。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2

25 30 35 40 45 50 55 60

Residual activity (%)

Temparature (˚C)

10 mM NaCl 100 mM NaCl 250 mM NaCl 500 mM NaCl 1000 mM NaCl

図5.4: BsLBDHの熱安定性に及ぼす塩濃度の影響。タンパク質溶液は0.01 mg/mL、100 mM Tris-HCl (pH 8.0)に調製して測定した。