第 7 章 量子重力の物理状態 101
7.3 BRST 演算子と物理状態の条件
7.3. BRST演算子と物理状態の条件 111
RghM N = −cMb†N + c†NbM +ϵMϵN (c−Nb†−M −c†−Mb−N)
−∑
L
(cLMbLN −cN LbM L), QghM = −2cMb−cbM −∑
L
(2cLMbL+ cLbM L), QghM† = 2c†Mb + cb†M +∑
L
(
2cM Lb†L+ c†LbLM) (7.3.1) を構成することが出来る。以下ではこのゴースト部分を含めた共形変換 の生成子を
H = H+Hgh, RM N =RM N+RghM N, QM = QM +QghM, Q†M =Q†M +QghM†
と表すことにする。ここで、H、RM N、QM、Q†M は前節で求めた生成子 の和である。
背景時空R×S3上で定義された一般座標変換(6.2.4)のBRST演算子は QBRST = cH+∑
M
(
c†MQM + cMQ†M)+ ∑
M,N
cM NRM N +1
2cHgh+1 2
∑
M
(
c†MQghM + cMQghM†)+1 2
∑
M,N
cM NRghM N で与えられる。さらに変形すると
QBRST = cH+ ∑
M,N
cM NRM N−bM − ∑
M,N
bM NYM N + ˆQ
と書き換えることが出来る。ここで、HとRM N は上で定義したすべて のモードを含む生成子である。その他の演算子項は
M = 2∑
M
c†McM, YM N = c†McN +∑
L
cM LcLN, Qˆ = ∑
M
(
c†MQM + cMQ†M)
で定義される。この式を使うと冪ゼロ性は、共形代数(4.1.8)を用いて、
Q2BRST = Qˆ2−MH −2∑
M,N
c†McN
[
RM N+∑
L
(cLMbLN −cN LbM L)
]
= Qˆ2−M H−2 ∑
M,N
c†McNRM N = 0
7.3. BRST演算子と物理状態の条件 113 と示すことが出来る。
BRST演算子と反ゴーストモードの反交換関係は
{QBRST,b} = H, {QBRST,bM N}= 2RM N, {QBRST,bM} = QM,
{
QBRST,b†M
}
=Q†M
で与えられことから、冪ゼロ性はすべてのモードを含む共形変換の生 成子とBRST演算子が [QBRST,H] = [QBRST,RM N] = [QBRST,QM] = [QBRST,Q†M] = 0のように交換することを表している。
BRST変換は一般座標変換のゲージ変数ζµをゲージゴースト場cµに置 き換えたもので与えられる。それはいまBRST演算子との交換関係を用 いて、
i[QBRST, ϕ] =cµ∇ˆµϕ+1 4
∇ˆµcµ
のように表される。その他の場についても同様である。ゲージゴースト 場の場合は反交換関係を用いて
i{QBRST, cµ}=cν∇ˆνcµ で与えられる。
物理状態はBRST不変な状態として表される。以下では、それを|Ψ⟩ として、
QBRST|Ψ⟩= 0 を満たす状態を構成することを考える。
はじめに、真空状態をいくつか定義する。ゲージゴースト部分とその 他の部分に分けて、先ず後者についてaJ M やbJ Mなどの消滅演算子及び Riegert場のゼロモードpˆで消えるFock真空を|0⟩と書く。さらに、ゲー ジゴースト部分を除いた共形変換の生成子H、RM N、QM、Q†Mのすべて に対して消える共形不変な真空を
|Ω⟩=e−2b1ϕ0(0)|0⟩
と書くことにする。ここで、ϕ0(0) = ˆq/√
2b1である。真空Ω⟩及びその Hermite共役⟨Ω|はどちらも背景電荷としてRiegert電荷−2b1 を持つ。
そのため共形不変な真空がもつ全背景電荷は−4b1である。この電荷は Riegert-Wess-Zumino作用の線形項に由来する。
ゴースト部分のすべての生成子(7.3.1)に対して消える共形不変な真空 を|0⟩ghと書くことにする。これはすべての反ゴーストに対して消えるが、
ゴーストに対しては消えない真空である。一方、消滅演算子cM とbM を 作用させると消えるFock真空は共形不変な真空を用いて∏McM|0⟩ghと 表される。
Hamilton演算子HはゴーストのcとcM N、反ゴーストのbとbM Nを 含まない。そのため、ゴースト真空∏cM|0⟩ghは縮退している。縮退の相 棒はこの真空にcや∏cM Nを掛けたものである。その内積構造について は後で議論する。
便宜のため、Riegert電荷γを持つFock真空
|γ⟩=eγϕ0(0)|Ω⟩ ⊗∏
M
cM|0⟩gh
を導入する。この状態はH|γ⟩= (hγ−4)|γ⟩を満たす。ここで、−4はゴー スト部分に由来する。また、ipˆ|γ⟩= (γ/√
2b1−√
2b1)|γ⟩を使った。
物理状態はこのFock真空にa†J Mやb†J Mなどの生成演算子、ゴースト系 の生成演算子c†M とb†M及びゼロモードpˆを掛けて構成される。ゼロモー ドpˆについては適当な数に置き換えても良い。Fock真空はbとbM Nを掛 けると消えること、及び{QBRST,b}=H、{QBRST,bM N}= 2RM N が成 り立つことより、物理状態として単に
H|Ψ⟩=RM N|Ψ⟩= 0, b|Ψ⟩= bM N|Ψ⟩= 0 (7.3.2) を満たす部分空間を考えればよいことが分かる。この部分空間上では、
BRST不変な状態はQˆ不変な状態と同じになる。
部分空間7.3.2)上で構成される物理状態として、しばらくの間
|Ψ⟩=A(p, aˆ †J M, b†J M,· · ·)|γ⟩ (7.3.3)
7.4. 物理状態の構成 115