第 7 章 量子重力の物理状態 101
7.5 物理場の演算子
最後にゴーストの生成モードc†M とb†Mを含む物理状態について議論す る。例えばl = 2の場合、上記以外にBRST不変な状態として
{
−(√
2b1−ipˆ)2∑
M
ϵMb†−Mc†M + ˆh∑
M
ϵMa†1 2−Ma†1
2M
}
|γ2⟩ (7.4.1)
が存在する。ここで、ˆh= ˆp2/2 +b1である。しかしながら、これはすで に上で与えた物理状態とBRST同等になることが分かる。
そのことを示すためにH|Υ⟩=RM N|Υ⟩= b|Υ⟩= bM N|Υ⟩= 0を満た す新たな状態
|Υ⟩=(√
2b1−iˆp) ∑
M
ϵMb†−Ma†1 2M|γ2⟩ を導入する。この状態にBRST演算子を掛けると
QBRST|Υ⟩ =
{
−(√
2b1−ipˆ)2∑
M
ϵMb†−Mc†M + 4(√
2b1−ipˆ)b†00 +2ˆh∑
M
ϵMa†1 2−Ma†1
2M
}
|γ2⟩
となる。これより、ˆh|β⟩= 2|β⟩に注意すると、BRST不変な状態(7.4.1)は 1
2√
2S00† |γ2⟩+QBRST|Υ⟩
と書けて、物理状態S00|γ2⟩とBRST同等であることが示せる。
一般に、Aにゴーストモードが含まれる物理状態は標準形(7.3.3)で与 えられる物理状態とBRST同等になると思われる。そのため、本書では 標準形のみを考えることにする。
7.5. 物理場の演算子 121 カラー場から構成される。そのような演算子を求めるために先ずRiegert 場のn乗演算子
:ϕn:=: (ϕ>+ϕ0+ϕ<)n:=
∑n k=0
n!
(n−k)!k!ϕn>−k(ϕ0 +ϕ<)k の変換則について議論する。ここで、ϕ0 = (ˆq+ηp)/ˆ √
2b1はゼロモード、
ϕ<は消滅演算子部分、ϕ>(= ϕ†<)は生成演算子部分である。 n = 1の場 合はRiegert場の一般座標変換(7.2.2)である。
時間発展(dilatationに相当)とS3回転の変換則は i[H,:ϕn:] =∂η :ϕn:, i[RM N,:ϕn:] = ˆ∇j
(
ζM Nj :ϕn:)
で与えられる。これらの変換則に量子補正は現れない。これらに対して 特殊共形変換にはゼロモード部分から量子補正項が現れる。Riegert場の 各パートは特殊共形変換の下で
i[QM, ϕ>] = ζMµ∇ˆµϕ>+ζM0 ∂ηϕ0+1
4∇ˆµζMµ, i[QM, ϕ0+ϕ<] = ζMµ∇ˆµϕ<
と変換するこに注意すると、
i[QM,:ϕn:] =ζMµ∇ˆµ :ϕn: +n
4∇ˆµζMµ :ϕn−1:− 1
16b1n(n−1) ˆ∇µζMµ :ϕn−2: を得る。右辺の最後の項が量子補正で、ゼロモードの交換関係[ϕ0, ∂ηϕ0] = i/2b1から
∂η(ϕ0+ϕ<)k = k∂ηϕ<(ϕ0+ϕ<)k−1+k∂ηϕ0(ϕ0+ϕ<)k−1 +i 1
4b1k(k−1) (ϕ0+ϕ<)k−2
が成り立つこと、及び関係式iζM0 = ˆ∇µζMµ/4を使うと出てくる。
これらの変換則から最も簡単なプライマリースカラー場は Vα =:eαϕ:=
∑∞ n=0
αn
n! :ϕn:=eαϕ>eαϕ0eαϕ<
で与えられることが分かる。ここで、ゼロモード項はeαϕ0 =eqα/ˆ √2b1eηpα/ˆ √2b1e−iηα2/4b1 と定義される。その変換則はi[H,Vα] =∂ηVα、i[RM N,Vα] = ˆ∇j(ζM Nj Vα)、
i[QM,Vα] =ζMµ∇ˆµVα+hα 4
∇ˆµζMµVα,
で与えられる。共形次元hαは前章で求めたhα =α−α2/4b1(6.5.7)で与 えられる。VαがHermite演算子になるようにRiegert電荷αを実数とす ると、並進Q†Mの変換則は右辺のζMµ をζMµ∗に置き換えたものになる。こ れらの変換則はBRST演算子を用いると一つの式
i[QBRST,Vα] =cµ∇ˆµVα+hα 4
∇ˆµcµVα
で表される。
これより、hα = 4を持つプライマリースカラー演算子Vαを時空体積で 積分したものは
i
[
QBRST,
∫
dΩ4Vα
]
=
∫
dΩ4∇ˆµ(cµVα) = 0
のようにBRST不変になる。ここで、dΩ4 =dηdΩ3は時空体積要素であ る。この条件は場の演算子が15個すべての生成子と交換することと同等 である。さらに、前と同様に完全反対称テンソルで足をつぶしたゲージ ゴースト場の関数ω = (1/4!)×ϵµνλσcµcνcλcσを導入すると、この関数が BRST変換の下でi[QBRST, ω] =−ω∇ˆµcµと変換することから、積ωVαは
i[QBRST, ωVα] = 1
4(hα−4)ω∇ˆµcµVα = 0
のように局所的にBRST不変な場の演算子になる。Riegert電荷は前章の (6.6.2)で求めたα= 2b1(1−√1−4/b1)で与えられる。この値を持つVa
は量子補正を含んだ物理的時空体積要素である。
次に、Ricciスカラー曲率に相当する場の演算子を考える。微分を二つ 持つプライマリースカラー場は
Rβ = :eβϕ
(
∇ˆ2ϕ+ β hβ
∇ˆµϕ∇ˆµϕ−hβ β
)
:
= R1β + β
hβR2β− hβ β Vβ
7.6. 状態演算子対応と内積 123