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第 3 章 X線望遠鏡

3.5 ASTRO-H 搭載軟 X 線望遠鏡 SXT

r

結像位置を中心に方位角方向に積分

図 3.13: Point Spread Function (1 次元)。焦点面のイメージを動径方向に積分し(左)、1 次元 のPSFを作る(右)。

3. EEF(Encircled Energy Function) - 半径rの円内に含まれる光量

結像中心から半径rの円内に含まれる光量をEEFと呼ぶ。EEFは以下の関係式に示した ようにPSFの積分形となっている。

EEF(r) =

r

0

2πP SF(r)dr (3.2)

 EEF のプロットにおいて、縦軸が50%の時の横軸の値(半径)を2倍した値がHPDに 相当する。最後にPSF、EEF、HPDの関係について図??にまとめる。図??は、入射した X線の全光量を1と規格化した時のEEF、r= 0の時1になるようにしたPSFのr依存性 を表している。PSFのピークが鋭いもの、EEFの立ち上がりが鋭いものほど結像性能が 良いといえるが、これを定量的に表すためにHPDを用いている。図??の場合では、EEF が0.97分角の時に全光量の50%になっているので、HPDはその2倍の1.94分角となる。

3.5 ASTRO-H 搭載軟 X 線望遠鏡 SXT

3.5.1 光学系

2017年2月17日に打ち上げられたのASTRO-Hには、0.3 -12 keV の範囲のX線を捉える軟 X線望遠鏡(Soft X-ray Telescope:SXT) が搭載され、カロリメータと組み合わせることによっ て、今までにない高エネルギー分解能で宇宙の謎に挑む。その構造はすざく衛星などと同じ多 重薄板型が採用されており、図3.15に示すようにQuadrantと呼ばれる1/4円筒を4つ組み合 わせた構造になっている。さらに反射鏡を二段に並べたWolter-I型の構造を取っているため、

3.5ASTRO-H搭載軟X線望遠鏡 SXT

図 3.14: PSFとEEFとHPDの関係

た、Quadrantには反射鏡が203枚積層されており、反射率を稼ぐために金が表面に蒸着されて いる。望遠鏡の上段には迷光の漏れ込みを遮断するプリコリメータが載せられている。

図3.16と表3.1に、本論文で測定したSXT Flight Model(SXT FM)の外観と設計パラメータ を載せる。

図3.15: SXTの構造。左:SXTのQuadrantの領域。右:上から順番にプリコリメータ、Praimary、

Secondary。

3.5ASTRO-H搭載軟X線望遠鏡 SXT

図 3.16: SXT FMの外観。

表 3.1: SXTの設計パラメータ。

口径 450 mm

焦点距離 5600 mm

反射鏡積層数 203 枚

反射膜 Au

反射鏡の高さ 101.6 mm

反射鏡基盤の厚さ 79 枚目165 µm

153 枚目 241 µm

203 枚目 318 µm 入射角 0.15 0.59° 要求される有効面積 450 cm2 @ 1 keV

390 cm2 @ 6 keV 要求される空間分解能(HPD) 1.7 分角

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3.5.2 SXT の地上較正試験結果

地上較正試験はSXTのフライト品を用いて2013 2014年に実施され、SXT-I、SXT-Sの2 台分の「有効面積」、「結像性能」、「迷光」、「光軸」などの測定を行った。その結果、2台とも 要求値を十分満たしていることを確認することができた。またここで得た値を指標として応答 関数の構築を行っていく。特に応答関数の構築に重要な「有効面積」と「結像性能」について 表3.2にまとめる。

表 3.2: SXT-I/Sの地上較正試験の結果。

地上較正試験結果 SXT-I SXT-S 有効面積 @1.45keV 580 cm2 591 cm2 結像性能(HPD) @1.49 keV 1.26 分角 1.21 分角

3.5.3 SXT の応答関数とその構築

SXTで集光して検出器で観測したデータにはSXTの集光力や結像性能などの性能が畳み込 まれてしまう。つまり検出器で観測されるデータには真の天体情報に加えてSXTの性能(応答) の情報も混ざってしまっている。そこで観測データから真の天体情報を得るためには、様々な 条件下でのSXTの性能を正確に把握する必要がある。

観測データから真の天体情報を抽出するために、SXTの応答を記述した応答関数を用いる。

具体的には計算機内にSXTの光学素子などの様々な性能を記述して再現した仮想的な望遠鏡を 構築し、そこに光子を入射させることでSXTの応答を再現する。これにあたりモンテカルロシ ミュレーターであるRay-tracingプログラムをシミュレーションツールとして用いる。衛星を打 ち上げる前に、SXTの性能を正確に再現する応答関数(=Ray-tracing)を構築する必要がある。

そのためにSXTの性能を詳細に評価する必要がある。これには「地上較正試験」と「軌道上 較正試験」の2通りの方法がある。地上較正試験の利点はX線を人為的に制御して発生させる ことによって、様々な条件(エネルギー、入射角)で評価が可能である点である。欠点としては SXTを実際に運用するのは無重力かつ高真空な宇宙空間であり、地上では重力の影響を打ち消 すことができない。一方で軌道上較正試験は当然であるが宇宙空間での評価を行うことができ る。しかし線源として用いるのは実際の天体であり、X線を細かく制御することができず、ま た天体の放射するX線は変化する事があるために特定の条件でのX線評価を行うことが困難で ある。そこで応答関数構築の流れとしては

1. SXTのフライト品を用いた望遠鏡全体の性能評価。ここで評価した性能は応答関数構築

の指標となる。

2. Ray-tracingに組み込む望遠鏡を構成する光学素子などの性能評価。これは反射鏡単位で

の反射率や、反射光強度の角度分布(反射プロファイル)、迷光の要因である反射鏡背面、

プリコリメーターでの反射などである。

3.5ASTRO-H搭載軟X線望遠鏡 SXT

3. 光学素子の性能の情報などをRay-tracingに組み込み、地上較正試験の結果を再現するか の検証。ここまでが衛星打ち上げ前に行う必要のある地上較正試験である。

4. 衛星軌道上での性能評価。これを行うことで地上較正試験で構築した応答関数でSXTの 性能を衛星軌道上でも再現しているかを検証する。その結果から必要があれば応答関数 の修正を行う。

以上が応答関数構築のために行う必要がある較正試験のステップである。「SXTのフライト 品を用いた望遠鏡全体の性能評価。」に関しては2013年富川修論と2014年佐藤修論に詳細が まとめられている。「Ray-tracingに組み込む望遠鏡を構成する光学素子などの性能評価」はL 吸収端の反射鏡反射率について2015

年菊地修論にまとめられている。本修士論文では「Ray-tracingに組み込む望遠鏡を構成する光学素子などの性能評価」と「光学素子の性能の情報など

をRay-tracingに組み込み、地上較正試験の結果を再現するかの検証」、「衛星軌道上での性能

評価」を行った。