第 5 章 Au M 吸収端付近の反射率測定
5.2 測定システム
5.2.2 測定装置
可搬式持ち込みチェンバー
本反射率測定では、金の臨界角が3.5keV で1.2 °であり、その周辺の微小角について測定を 行うため、反射鏡の角度の精度が重要である。本測定では専用のステージ制御装置やサンプル、
検出器を真空に引くことが必要なため、可搬式真空チェンバーを持ち込んだ。このチェンバー には極めて精度の高い (誤差1 秒角以下) ゴニオメーターと複数のサンプルが設置できるサン プルホルダーを備えている。万が一の際にビームラインの汚染を防ぐ為にチェンバーとビーム ラインは薄い(5µm) ポリプロ膜で遮断した。この可搬式測定チェンバー は実際に岡崎分子科 学研究所、SPring-8 といった放射光施設で使用した経験があり、十分な実績がある。
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真空系
今回使用するX線(2∼4 keV )は、大気中の分子による吸収や散乱が大きく寄与するため測定 チェンバーを高真空にする必要がある。そのため持ち込んだ測定チェンバーに粗びき用のスク ロールポンプ (図5.7左)とターボ分子ポンプ (TMP)(図5.7右) を接続し、真空引きを行った。
粗びき用のスクロールポンプでは∼10−1 Torrまで真空引きし、ターボ分子ポンプで∼10−5 Torr まで真空をひいた。二種類のポンプの切り替えは三方弁で行った。これらの装置を用い、
真空を引く操作は全て手動で行った。
図 5.7: 真空計。粗引き用スクロールポンプ(左)と高真空用のターボ分子ポンプ(右)
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検出器
• I1モニター
検出器として浜松ホトニクス製の光電子増倍管 (PMT: PhotoMultiplier Tube)R515(図 5.8)を使用した。動作原理としては、PMT前面のガラス窓から入射した光子は光電面内 の電子を励起し光電子が真空中に叩き出され、集束電極の電場に沿って光電子が第一ダ イノードに集束し、ダイノード間に印加された電圧に応じて複数の二次電子に増幅され る。再び、二次電子は後段のダイノードに向かって集束、印加電圧に応じて増幅、という 過程を繰り返し、最後に陽極(アノード)上に集められた電子がパルス信号として出力さ れる。表5.2に光電子増倍管R515 の仕様を示す。
図 5.8: 光電子増倍管R515。
表 5.2: 光電子増倍管R515の仕様。
ダイノード段数 16
ダイノード構造 ボックス
ダイノード材質 Cu-BeO
開口部寸法 8 x 6 mm
印加電圧 2400 v
ゲインTyp. 1.0 x 106
上昇時間 Typ. 9.3 ns
陽極-他全電極間 静電容量 4 pF 最大定格 陽極-第1ダイノード間 電圧 4000 V
最大定格 陽極 最終ダイノード間 電圧 350 V 最大定格 平均陽極電流 10 μA
最大定格 動作真空度 133 × 10−4 Pa
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• I0モニター + スリット
Photon Factoryから供給されるビーム強度の時間変動を観測するためのI0モニターとし
てサンプルの上流にTiフィルムを貼った。TiフィルムにX線が照射されるとオージェ電 子が叩き出され、それを電流値として検出することで入射X線の強度モニターの役割を 果たす。しかしこのTiフィルムでは検出したX線の信号がバックグラウンドに埋もれて しまうほど検出効率が低かったので、ビームの強度変動の測定にはBL11-b既設のI0モ ニターを利用した。BL11-b既設のI0モニターは四極スリットより上流に位置しており、
統計的に有利であることからこちらではバックグラウンドに埋もれずに強度モニターを することができた。検出原理は持ち込んだTiフィルムと同様である。
測定チェンバー内の X 線の光路に0.3 mmのスリットを挿入することで、BL11-B 既設 の四極スリットと合わせてビームの発散を抑えた。スリットの設置位置がチェンバー内で あるため、 BL11-B 既設のI0モニターで検出できる X 線 (Is) とスリットを通してサン プルに入射するX 線 の強度は同じではないが、ビームの変動をモニターする分には問題 ないと判断した。これは反射率が反射光とダイレクト光の割り算で表されるためのX線 の正確な強度が必要でないためである。
また微小な入射角でも測定を行うため、X線が散乱してしまうと入射角が一定でなくなっ てしまいデータの評価に困難が伴うので、Tiフィルムの裏にHorizontal方向の0.3 mmス リットを設置して拡散光を遮断した。このスリットを挿入することで、サンプル上での ビームの発散角は計算上で0.115°である。
図 5.9: モニターとスリット。
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測定サンプル
本反射率測定に使用したサンプルはNASA/GSFCにてSXTの反射鏡製作時に同様の製法で つくられたものである。Alの基板にレプリカ法を用いてAuを成膜し、その厚さは2000 ˚Aで ある。この反射鏡サンプルは望遠鏡2段目の動径方向に80枚目のものを使用した。このサンプ ルを図5.11のサンプルホルダーに設置して測定を行った。
図 5.10: 測定サンプル。
図 5.11: サンプルホルダー
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