第 6 章 Au M 吸収端付近の反射率の応答関 数への導入
6.4 原子散乱因子の考察
6.4原子散乱因子の考察
Crab nebula
「Crab nebula」は超新星残骸であり、高エネルギーの電子が磁場で軌道を曲げられたときに 発する「シンクロトロン放射」によって安定かつ高輝度のX線を放射している。上記の性質か ら「Crab nebula」は軌道上の較正線源として様々なX線天文衛星の軌道上較正に用いられて きた。「ASTRO-HのCrab nebulaを用いた軌道上較正」については後の章で紹介する。「Crab nebula」はシンクロトロン放射起源の強力なX線放射をしており、スペクトルは単純な冪関数で 表すことができることも軌道上線源として用いられる所以である。「Crab nebula」のXISデー タに対し、スペクトル解析を行う中で、M吸収端由来の残差の構造が「すざく」f1とKEK f1 でどのように異なるかを検証した。スペクトルフィットの結果が図6.12で、その際に用いたモ デルとχ2に値を表6.4に示す。図6.12の上は「すざく」f1であり、下がKEK f1である。特に 吸収の深いM4, M5吸収端(2100 - 2300 eV: 左から1, 2本目の赤の点線)のエネルギー領域で の残差が改善されていることがわかる。スペクトルフィットの結果でも、「すざく」f1と比較し てKEK f1はχ2が向上していたことから、f1の値としてはKEK f1のほうが正しいと言うこと ができる。
表 6.4: Crab nebulaのスペクトルフィットのモデルとχ2 ターゲット フィッティングモデル 原子散乱因子 f1 χ2 Crab nebura phabs(powerlaw) Suzaku 1.227
2014KEK 1.104
4U1630-472
「4U1630-472」はX線で輝くブラックホール連星であり、「すざく」で大きな質量放出の瞬 間を捉えた観測データを用いてf1の検証を行った。そのスペクトルフィットの結果が図6.13で ある。また表6.5にモデルとχ2をまとめた。「4U1630-472」でも「Crab nebula」と同様にM4、
M5吸収端での残差がKEK f1の方が「すざく」f1と比較して小さくなっており、χ2の値も向 上していた。
表 6.5: 4U1630-472のスペクトルフィットのモデルとχ2 ターゲット フィッティングモデル 原子散乱因子f1 χ2 4U1630-472 Wabs(disk BB) Suzaku 1.464
2014KEK 1.226
6.4原子散乱因子の考察
図 6.12: Crab nebulaのスペクトルフィットの結果。上がすざくの応答関数(図 6.10の赤)を使 用。下は今回測定して得たf1(図 6.10の黒)を使用。
6.4原子散乱因子の考察
図 6.13: 4U1630−472のスペクトルフィットの結果。上がすざくの応答関数(図 6.10の赤)を使 用。下は今回測定して得たf1(図 6.10の黒)を使用。
6.4原子散乱因子の考察
6.4.3 結論
「すざく」衛星の「Crab nebula」と「4U1630-472」の解析を行うことで、今回取得したf1が
「すざく」XRTの応答関数に組み込まれているf1と比較して吸収端領域の構造を正確に捉える ことができたと考えられる。XISのエネルギー分解能ではSXSで見ることのできる微細な輝線 構造を捉えることができるような原子散乱因子f1を取得できたかは軌道上でSXSを運用し、そ のデータを見てみるしか方法は無いが、打ち上げ前に「すざく」衛星の応答関数よりも高精度な 原子散乱因子を取得することができたといえるだろう。さらなる検証は次の章の「ASTRO-H」
軌道上の性能評価で行うとする。