第 6 章 Au M 吸収端付近の反射率の応答関 数への導入
6.1 モデルフィットによる原子散乱因子導出の流れ
SXTの応答関数では、反射率を原子散乱因子f1,f2, 反射鏡表面の粗さ、入射X線のエネル ギー、入射角などから算出する。KEKでの反射率測定では、反射鏡の表面物質である金の吸収 端構造を応答関数に反映するために、吸収端付近のエネルギー領域での反射率から原子散乱因 子の導出行うことが目的である。
まずは原子散乱因子f1,f2が反射率にどのように寄与するかを図6.1に示す。定性的に、f1は 分散、f2は吸収を表し、図6.1(右)では反射率曲線の裾(大角度側)に大きな変化を与え、f2は 反射率曲線の肩(臨界角)に大きな変化を与える。図6.1から、f2と比較してf1のほうが反射率 曲線に大きく影響を与える事がわかる。本測定では原子散乱因子f1,f2両方の導出を目的として いたが、ダイレクトの不定性などの誤差が多く存在するため、モデルフィットでは反射率曲線 への影響の少ないf2を固定することで、より信頼度が高いf1のみの導出を行うと方針を変更 した。
図 6.1: 左: f1の変化による反射率の変化。黒はHenke’1993のf1、赤はHenke’1993のf1を0.6 倍したもの、緑はHenke’1993のf1を0.3倍したもの。右: f2の変化による反射率の変化。黒は Henke’1993のf2、赤はHenke’1993のf2を0.6倍したもの、緑はHenke’1993のf2を0.3倍した もの。
6.1モデルフィットによる原子散乱因子導出の流れ
反射率の測定結果から原子散乱因子f1の導出までの流れを図6.2に示す。測定で得た反射率 曲線から、原子散乱因子f1を取得するため、反射率曲線のモデルフィット(カーブフィット)を 行うことで、原子散乱因子f1、f2、反射鏡粗さ、角度オフセットなどのパラメーターを算出す る。解析は大まかに2ステップで行い、1. 角度スキャンのモデルフィット、2. エネルギースキャ ンのモデルフィットである。以下に簡単な解析の目的と方法を述べる。
1. 角度スキャンのモデルフィット
角度スキャンのモデルフィットでは、測定に固有である「反射鏡粗さ」と「角度オフセット」
を算出し、後のエネルギースキャンのモデルフィットに使用することで算出する「f1」の信頼性 を高めることが目的である。そこで、角度スキャンのデータに対し、「原子散乱因子f1, f2」を
henke’1993で固定してフリーパラメーターを少なくすることで信頼性が高い反射鏡粗さと角度
オフセットを算出する。
2. エネルギースキャンのモデルフィット
エネルギースキャンのモデルフィットでは、まず測定したエネルギースキャンの結果を各エ ネルギーごとに横軸を入射角とした入射角-反射率曲線に変換する。そして測定したエネルギー の数(約1600点)だけの入射角-反射率曲線をモデルフィットする。このとき、角度スキャンの モデルフィットで得た「反射鏡粗さ」と「角度オフセット」で固定し、更に「原子散乱因子 f2」
をhenke’1993で固定して、「原子散乱因子f1」の導出を行った。
6.1モデルフィットによる原子散乱因子導出の流れ
① 角度スキャン解析
10−5 10−4 10−3 0.01 0.1 1
Reflectivity
f1=73.47 (72.13 74.90), f2=12.747 (12.712 12.784) NC=8.21 (8.13 8.30), angle=0.442 (0.421 0.464) Au, 2000At, pha_ref_take1_2100eV_direct_aft.pha, 2100 eV, chi=1.6759 108
0 1 2 3
0.9 1 1.1 1.2
Ratio
angle [degree]
f1’=47.2801 (1.554) f2’=9.70685 (1.313)
角度スキャンモデルフィット
原子散乱因子
- f1 (henke’1993 で固定 ) - f2(henke’1993 で固定 ) 反射鏡粗さ
角度オフセット
エネルギースキャンでの 固定パラメーターとして 利用
パラメーター
② エネルギースキャン解析
f2(henke’1993 で固定 ) 反射鏡粗さ
角度オフセット f1
エネルギースキャンモデルフィット
導出
2000 2500 3000 3500 4000
40506070
f1
Energy [eV]
f1
横軸
エネルギーから 入射角に変換
図 6.2: 反射率測定結果から原子散乱因子f1導出の流れ。