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ALC の強度性状に及ぼす促進炭酸化の影響

第 1 節 概説 33 第 2 節 ALC の炭酸化収縮率

2.1 概要 35 2.2 試験体及び測定方法 35 2.3 測定結果 35 第 3 節 促進炭酸化した ALC の強度等の性状

3.1 概要 37

3.2 寸法の小さな試験体の促進炭酸化した

ALC の曲げ強度及び圧縮強度 37 3.3 促進炭酸化した 100mm 厚の ALC の強度性状 40

第 4 節 本章のまとめ 50

[参考文献] 51

- 33 - 第 3 章 ALC の強度性状に及ぼす促進炭酸化の影響 第 1 節 概説

ALCは,一定以上に炭酸化が進行することにより圧縮強度が低下する傾向があるこ とが,建物に使用されていたALCの調査結果が報告されている1)。しかし,第1章お よび第2章に記したように,ALCの炭酸化性状はその製造履歴により異なるとともに,

飽和炭酸化状態における式(2.1)に基づく炭酸化度も,各々異なることが予想されてい る 2)。従って,フィールドにおける炭酸化の進行度合いと強度物性を検討する場合に は,採取したALCの製造履歴を考慮する必要がある。また,ALCの物性変化の要因 には炭酸化のみならず,温冷・乾湿繰り返し,凍結融解,塩害,あるいは炭酸ガス以 外による化学反応などの他要因もあり,炭酸化の進行度合いと物性変化を検討する場 合には,それら他の要因を排除する必要がある。

本研究では,製造履歴が明確な同一製造ロットのALCを用いて,ALCの性状変化 の要因を炭酸化に限定するために促進炭酸化を行い,ALCの炭酸化進行度(CPD)と強 度性状の関係を確認する。なお,ALC の高濃度下(3.0vol.%)での促進炭酸化と,大気 中における炭酸化では ALC のトバモライトの結晶構造の変化に違いが生じ,例えば 炭酸化した ALC の乾燥収縮率が,大気中での炭酸化よりも促進炭酸化の方が大きく なる傾向がある事が報告されている3)

本研究では,実環境下での炭酸化は,100倍もの高濃度下での促進炭酸化とは,ト バモライトの結晶構造の変化に違いが生じること,ならびに目標となる炭酸化進行度 までの促進期間を考慮し,実環境下のCO2濃度の10倍程度となる0.3vol.%による促 進炭酸化を行った。

本研究が対象とする主たる ALC パネルは 100mm 厚さのものである。前章の研究 により,フィールドにおける100mm ほどの厚さのパネルでは,パネル断面内の炭酸 化進行度の偏りは小さいことが確認されているが,促進炭酸化による場合では炭酸化 速度が速いため,表層部と中心部の炭酸化の進行度合いに差異があることが予想され る。

この試験体内部の炭酸化進行度の偏りが ALC の強度変化に及ぼす影響を確認する ため,試験体内部の炭酸化進行度の偏りが小さくなると予想される寸法の小さな試験 体の強度試験結果との比較も併せて行う。

ALCの炭酸化による強度変化は,主鉱物の珪酸カルシウム水和物であるトバモライ トの組織変化に起因すると考えられる。ALC は炭酸化により収縮し,ALC の炭酸化 収縮率とトバモライトの結晶構造の変化の段階に関しては既往の知見がある4)

ALC中のトバモライトの結晶は,SiO4四面体の単鎖がCa-Oのシートを挟んだ基本 単位層からなり,層間にCaイオンとH2O分子を含む層状構造である(図3.1参照)5)。 既往の研究3)によれば,ALCの炭酸化初期は,基本単位層間のCaイオンの選択的抽 出によるCaCO3化であり,収縮量が小さいとされる。その後,基本単位層中のCa-O

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シート中のCa の CaCO3化が進むと収縮量が増加する。ALC の炭酸化収縮のメカニ ズムの一番の要因は,トバモライトの基本単位層中の Ca-Oシート中の Ca の溶脱に よる分解とされている。

本章では,ALCの強度変化とトバモライトの結晶構造の変化の段階についても,強 度試験に供したALCの炭酸化収縮率を介して,検討を行う。

コンクリートは ALC に比べて透気性が低く,乾燥は表層から徐々に進行するため 乾燥収縮はコンクリートの表層から進行する。コンクリート内部と表層部の含水率の 差異は乾燥収縮の差異を生じ,コンクリート断面にひずみを生じる。コンクリートの 乾燥収縮に起因するひずみは,コンクリートの強度に影響を与えることが既往の研究

6)により報告されている。ALC の炭酸化では,進行度合いに応じて徐々に収縮率が大 きくなる。フィールドにおける ALC の炭酸化は,通気性が高いため一般的に,断面 の進行度に大きな偏りはないことが前章にて確認されているが,CO2濃度の高い促進 炭酸化では炭酸化速度が速いため,表層部と中心部とでは炭酸化の進行度合いに差異 を生じるものと推定される。この場合,炭酸化収縮率の差異により,ALC内部にひず みを生じると考えられる。

このような促進炭酸化により生じる ALC 内部のひずみの発生は,コンクリートの 乾燥収縮により生じるひずみの発生と類似の現象と考えられる。本研究において,促 進炭酸化による ALC の強度と炭酸化進行度との関係を検証するうえで,コンクリー トの乾燥収縮が強度に与える影響に関する既往の研究により,多くの示唆を得られて いる。

図 3.1 トバモライト結晶構造

SiO4四面体単鎖

SiO4四面体単鎖

Ca-Oシート 基本単位層

基本単位層

層間のCa2+ H2O

- 35 - 第 2 節 ALC の炭酸化収縮率

2.1 概要

本研究に用いたALCの,促進炭酸化における炭酸化進行度(CPD)と炭酸化収縮率と の関係を明らかにする。なお,既往の研究4)では,ALCの促進炭酸化による長さ変化 に及ぼすCO2濃度は0.3vol.%と3.0vol.%間に大差はないとされている。本研究におけ る各試験では,幾種かのCO2濃度による促進炭酸化を行っている。本節による炭酸化 収縮率の測定は,CO2濃度1.0vol.%にて行ったものであるが,他のCO2濃度による促 進炭酸化した強度試験体の炭酸化収縮率も,本測定結果と同等と考えられる。

2.2 試験体および測定方法

炭酸化収縮率の測定には,強度試験に用いるALCと同じ生産履歴を有するALCを 用いた。試験体(寸法:40×40×160(mm))の促進炭酸化は,温度 20℃,湿度90%R.H.

の環境試験機内で質量変化がなくなり,平衡含水状態となった事を確認した後に,CO2

濃度1.0vol.%で促進炭酸化を行った。促進炭酸化は,次節に示す強度試験体と同時に

行った。なお試験体は,幅600mmのALCパネルが製造される同一型枠のALCブロ ックの発泡方向のほぼ中央部から採取した。試験体の炭酸化収縮率は,JIS 1129-3:2010 モルタル及びコンクリートの長さ変化試験方法-第 3 部ダイヤルゲージ法 に基づき 測定した。試験体の炭酸化進行度(CPD)は,長さ変化測定用試験体と同時に用意した 同寸法の試験体を同時に促進炭酸化を行い,試験体中心部より試料を採取し,CPDを 測定し,それを以って長さ試験体のCPDとした。

2.3 測定結果

図 3.2に,促進炭酸化による長さ変化率(炭酸化収縮率)の測定結果を示す。ALCは 促進炭酸化により収縮する傾向を示し,CPD20%程度までは炭酸化による収縮率は小 さく,その後,CPDが大きくなるに伴い収縮率は大きくなる。またCPDが80%を超 えると,収縮率が不規則に大きくなる。本試験データに基づくCPD22.3~82.6%の範 囲では,CPDと炭酸化収縮率との間には規則性が確認され,高い相関を有する二次の 回帰式(式(3.1))を得ることができ,ALCの炭酸化収縮率は,CPDが高くなるほど線形 的に大きくなる傾向を示す。

炭酸化収縮率 (×10-6) = -0.20χ2 + 2.10χ-30.7 (3.1) ただし、χ: CPD(%),22.3%≦χ≦82.6%

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図 3.2 ALC の炭酸化収縮率

y = -0.20x2 + 2.10x - 30.7 R2 = 0.9984 22.3% ≦x ≦82.6%

-3000 -2500 -2000 -1500 -1000 -500 0

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 炭酸化進行度 CPD(%)

炭酸化収縮率(×10-6 )

- 37 - 第 3 節 促進炭酸化した ALC の強度等の性状

3.1 概要

本節では,促進炭酸化した100mm厚さのALCについて,炭酸化進行度(CPD)と密 度,曲げ強さ,圧縮強度およびヤング係数の関係を確認する。なお,促進炭酸化にお いてはALC断面の表層部からの位置の違いによりCPDの差異が生じることが推定さ れる。CPDの差異は炭酸化収縮率の差異となるため,試験体断面のCPDの差異が強 度性状に影響を及ぼすことも考えられる。試験体断面の CPD の差異を小さくするた めに,断面の小さな試験体を用いた強度試験も合わせて行った。

3.2 寸法の小さな試験体の促進炭酸化した ALC の曲げ強度および圧縮強度 1) 試験体及び促進炭酸化

前節の炭酸化収縮率の測定に用いた試験体と同寸法(40×40×160(mm))の ALC 試 験体の促進炭酸化を行い,強度試験に供した。試験体のCPDは,強度試験終了後に 試験体から測定試料を採取し,中心部と表層部の2か所の測定値の平均値とした。

試験体の促進炭酸化は前節と同様に,密閉した養生器(0.8m3)にて20℃,90%R.H.

の大気圧下で,炭酸化進行度85%までは CO2濃度 1.0vol.%で,それ以上は CO2濃 度2.0vol.%で行った。

2) 試験方法

圧縮強度および曲げ強度の試験は,JIS R 5201 セメントの物理試験方法に規定さ れる10.強さ試験 に準じ行った。

3) 試験結果および考察 a.炭酸化進行度

試験体の促進炭酸化時間と炭酸化進行度(表層部及び中心部)の関係を図3.3に示す。

本試験体では,中心部と表層部との炭酸化進行度の著しい違いは確認されず,CO2

濃度 1.0vol.%でも,試験体全体がほぼ一様に炭酸化が進行することが確認された。

本促進炭酸化は,大きな試験体を促進炭酸化し,その後試験体を採取したのではな く,試験体の形状寸法(40×40×160(mm))をそのまま促進炭酸化に供した。従って,

本試験体の体積(256,000mm3)に対し,CO2吸収面となる表面積(28,800mm2)が大き く,試験体断面全体に十分なCO2が供給され,断面がほぼ一様に炭酸化したものと 考えられる。前節の炭酸化収縮率の測定においても,断面がほぼ一様に炭酸化した と推定され,試験体全体がほぼ均等に収縮したものと考えることができる。

また,本項における試験体は,試験体断面にCPDの違いに大差がなく,炭酸化収 縮による試験体断面の大きなひずみは生じていないものと考えられ,強度試験結果 に炭酸化収縮によるひずみの影響はないものと判断される。