促進炭酸化の影響
第 1 節 概説 85 第 2 節 試験体
2.1 ALC および補強鉄筋の諸性質 86
2.2 曲げ強さ試験体 86
2.3 ALC パネル内部のひずみ測定試験体 89 第 3 節 促進炭酸化
3.1 促進炭酸化 90 3.2 試験体パネル断面の炭酸化進行度測定結果 90 3.2 促進炭酸化によるパネルのひび割れ状況 91
第 4 節 試験方法
4.1 パネル曲げ強さ試験 92 4.2 パネル内部のひずみ測定試験 93 第 5 節 試験結果および考察
5.1 試験結果の概要 94 5.2 パネル曲げ強さ試験の荷重-たわみ曲線 96 5.3 曲げひび割れモーメント 98 5.4 曲げ剛性 101 5.5 Mc の低下とパネル内部のひずみの関係 104 第 6 節 本章のまとめ 107 [参考文献] 108
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第 7 章 ALC パネルの曲げ性状に及ぼす促進炭酸化の影響 第 1 節 概説
ALCパネルの曲げ強さと炭酸化の進行度合いの関係については,フィールド調査に より,一定量以上に炭酸化が進行すると ALC パネルの曲げ強さが低下することが報 告されている1)。しかし,フィールドにおけるALCの経年変化の要因には,炭酸化以 外にも,SOx,NOxなどとの化学反応や,乾湿・温冷繰返し,凍結融解なども考えら れる。また,炭酸化したALCは乾燥収縮率が大きくなることも報告されており2),炭 酸化したALCパネルの乾湿繰り返しが及ぼすALCの強度変化も大きくなると推定さ れる。フィールド調査の結果をもとに ALC の性状変化と炭酸化との関係を検討する 場合には,それら複合的な炭酸化以外の要因の影響を除外する必要がある。本章では,
炭酸化の進行度合いとALCパネルの曲げ強さの性状変化について検討を行うために,
ALCパネルの促進炭酸化を行い,パネルの曲げ性状の変化の確認を行った。
本章の研究方法は,以下のとおりである。
まず,ALC パネルの促進炭酸化を行い,ALC パネルの曲げ強さ試験により,曲げ ひび割れモーメント(以下,Mcという)および曲げ剛性の変化を確認した。そして,パ ネル曲げ強さ試験の実施後に試料を採取し,炭酸化の進行度合いと曲げ性状変化の関 係を考察した。
それら試験結果に基づき,Mcの低下はALCの強度低下に加え,炭酸化によるALC パネル内部のひずみの変化が要因の一つと推定した。そこで,ALCパネルの促進炭酸 化を行い,炭酸化の進行度合いと ALC パネルの内部応力の変化の関係を測定し,内 部応力変化の要因の一つと考えられる炭酸化収縮との関係を基に,Mc の変化と促進 炭酸化との関係を考察した。
以上の検討結果をもとに,パネルから採取した小片の炭酸化進行度測定に基づき,
促進炭酸化したALCパネルの曲げ強さの推定式を検討した。
なお,第3章でも示したが,高濃度化における炭酸化と実環境下での炭酸化とでは,
炭酸化による結晶構造の変化に違いがあり,ALCの性状変化にも違いが予想されてい る。本研究では,一般的な促進炭酸化のCO2濃度5.0vol.%(JIS A 1153:2012 コンクリ ートの中性化試験方法 等)ではなく,その濃度の 1/10以下で,大気の10倍程度とな るCO2濃度0.3vol.%で炭酸化をおこない,パネルの曲げ性状の変化を確認した。
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表 7.1 ALC の諸物性
密 度※1 圧縮強度※1 曲げ強度※2 ヤング係数※3 496kg/m3 5.21N/mm2 1.08 N/mm2 1,976N/mm2
※1 JIS A 5416:2016 ALCパネルの圧縮強度及び密度試験に準じた。
※2 JIS A 1106:2006コンクリートの曲げ強度試験方法に準じた。
※3 ヤング係数は引張応力-歪み度曲線における応力度が1.0N/mm2 と1.5N/mm2の2間を結んだ直線の勾配とした。
表 7.2 曲げ強さ試験の ALC パネル試験体種類 試験体
シリーズ
配 筋
(圧縮側・引張側-径φ)
引張り鉄 筋比:Pt (%)
Mc(計算値)
(N・m)
Ec・Ig(計算値)
(kN・m2) 促進炭酸化種類
Ⅰ 3本・3本-5.0φ 0.119 1,292 113.009 CPD20~95%,11種
Ⅱ 5本・5本-5.0φ 0.198 1,486 130.016 CPD50,75% 2種
Ⅲ 7本・7本-5.0φ 0.278 1,680 147.022 CPD50,75% 2種
Ⅳ 5本・5本-7.0φ 0.394 1,895 165.782 CPD50,75% 2種
Ⅴ 7本・7本-7.0φ 0.551 2,253 197.095 CPD50,75% 2種 第 2 節 試験体概要
2.1 ALC および補強鉄筋の諸性質
本試験に用いたALCパネルおよびALC母材の諸物性(試験値)を表7.1に示す。な お,内部の補強鉄筋はJIS G 3532:2011に規定されるSWM-Pが用いられている。
2.2 曲げ強さ試験体
曲げ強さ試験に供したALCパネルは,JIS A 5416:2016の規格に適合する100mm厚 さで,引張り鉄筋比(以下,Ptと記す)の異なる5種類のパネルとした。表7.2に用い たALCパネルの種類ならびに断面性能を示すとともに,図7.1にALCパネルの寸法 および配筋状況を,Ⅰシリーズ試験体を例に示す。表7.2に示すパネルの Mc(曲げひ び割れモーメント)および曲げ剛性(Ec・Ig)の計算値は,ALCパネル構造設計指針:2013 (ALC協会) 3)に基づき計算により算出した値とした。曲げ剛性は,鉄筋を考慮した断 面二次モーメントとALCのヤング係数の積とした。計算方法は(1)にて示す。
促進炭酸化は,Ⅰシリーズについては,20,30,40,45,50,55,60,70,75, 85,95%を目標(以下,目標CPDという)に,それぞれ1枚,Ⅱ~Ⅴシリーズについて は,50,75%を目標にそれぞれ1枚行ない,それぞれのシリーズの促進炭酸化前のパ ネルを合わせて,Ⅰシリーズ試験体は12枚,Ⅱ~Ⅴシリーズ試験体は其々3枚のパネ ルを試験に供した。
- 87 - (1) 計算方法
パネルのMc(曲げひび割れモーメント)および曲げ剛性の計算値は,ALCパネル構造設計
指針:2013 (ALC協会) 3)に基づき,以下の方法により算出した。
a) 材料の定数
表 7.3 許容応力度(N/mm2) 材料 応力の種類 長期 短期
圧縮 1.3 2.0
ALC せん断 0.08 0.12
補強筋 引張り及び圧縮 120 180
表 7.5 ヤング係数(N/mm2) 材料 ヤング係数
ALC 1.75×103
補強筋 2.05×105
表 7.4 曲げひび割れ時の ALC の曲げ応力度(N/mm2) 曲げひび割れ時の ALC の曲げ応力度 1.0
2700
30 140 350 700 700 610 140 30
2700
30 840 700 480 620 30
45
75 600
90 390 45
75 600
180 300
横筋 4φ
主筋 5φ
※ 配筋Ⅰシリーズ(圧縮側 3 本,引張側 3 本)の例
※ 主筋径 5φ,横筋径 4φ,主筋の設計かぶり 15mm
図 7.1 曲げ強さ試験用パネルの配筋例
- 88 - b) 計算方法
曲げひび割れモーメント(Mc)および曲げ剛性を算出するための計算は,下記によ り行った。
g : 重心軸(mm) Ig : 鉄筋を考慮した
b : パネル幅(mm) 断面二次モーメント(mm4)
D : パネル厚さ(mm) fb : 曲げひび割れ時の ALC の曲げ応力度 n : ヤング係数比 (1.0 N/mm2) ac : 圧縮鉄筋の断面積(mm2) Ze : 鉄筋を考慮した断面係数(mm3) at : 引張鉄筋の断面積(mm2)
n・ac・dc + n・at・(D‐dt)+(b・D2/2) g =
n・( ac + at ) + b・D
fb = M
Ze Ze = Ig
, D‐g より Mc = fb・Ig
(D‐g )
Ig = ( D3-3・D2・g + 3・D・g2 ) + n・ac・(g‐dc)2 +n・at・(d‐g)2 3
b
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写真 7.1 試験体 及び ひずみゲージの張付け状況
横筋 主筋
切断
切断
45 75 90
390
45 75
180
300
1490 850
210 430 210
320 320
100 15 15 鉄筋歪測定
▼ 表層歪測定 ▼
図 7.2 内部歪み測定用試験体パネル 2.3 ALC パネル内部のひずみ測定試験体
本試験に供したALCパネルの形状および配筋状況を図7.2に示す。ALCパネルは,
100mm厚で5φの補強鉄筋(主筋)を表裏に3本づつ配置したものとし,横筋による主
筋拘束の影響を小さくするために,長さ方向中央部に横筋が1箇所のみ残置するよう
に,長さ1,490mmのパネル両端を切除して,850mmの長さとし,促進炭酸化前のパ
ネルを含めて 10 枚のパネルを試験に供した。写真 7.1 に,試験体パネル並びにひず みゲージの張付け状況を示す。
促進炭酸化は,20,30,35,40,45,50,55,60,65%を目標にそれぞれ1 枚行 ない,オートクレーブ養生により生じるパネルの補強鉄筋および表層部 ALC のひず みの変化を測定した。
- 90 -
0 20 40 60 80 100
0-10 10-20
20-30 30-40
40-50 50-60
60-70 70-80
80-90 90-100 採取位置(mm)
炭酸化進行度 CPD(%)
Ⅰシリーズ
Ⅱシリーズ
Ⅲシリーズ
Ⅳシリーズ
Ⅴシリーズ
0 20 40 60 80 100
0-10 10-20
20-30 30-40
40-50 50-60
60-70 70-80
80-90 90-100 採取位置(mm)
炭酸化進行度CPD(%)
第 3 節 促進炭酸化
3.1 促進炭酸化
ALCパネルの促進炭酸化は,気温20℃,湿度90%R.H.,CO2濃度0.3vol.%に設定 された促進炭酸化室(w:3.6×L:3.0×h:2.4(m))にて行った。炭酸化進行状況の確認は,
モニター用ALCブロック試験体(t:100×w:600×L:400(mm))の表層部のCPDが目標 値に達した時に試験体とする ALC パネルを促進炭酸化室より取出し,パネル曲げ強 さ試験に供し、パネル曲げ強さ試験の終了後に試験体パネルより試料を採取し CPD を測定した。
3.2 試験体パネル断面の炭酸化進行度測定結果
各試験体の目標 CPD におけるパネル断面の炭酸化進行状況を,図 7.3(Ⅰシリーズ 試験体)および図7.4(Ⅰ~Ⅴシリーズ試験体)に示す。CPDは,パネル表裏をコルクボ ーラーにて厚さ方向に貫通するように試料を採取し,10mm毎に分割し,測定した。
ALCパネルは透気性が高く,パネル断面全体が徐々に炭酸化した。本促進炭酸化で は,中心部より表層部のCPD が高く,Ⅳシリーズ試験体の表層部がCPD72.1%時の 中心部と表層部との差が21.9%が最大値となった。第2章の調査結果では,フィール ドにおける炭酸化では,厚さ方向の CPD の差異が,促進炭酸化より小さくなる傾向 となっており、フィールド並みとするためには,CO2濃度をより低くする必要がある が,炭酸化時間が著しく長くなることが懸念される。
本研究では19枚のパネルを同時に促進炭酸化したが,目標CPD50%など,同時期 に促進炭酸化室から取出した複数の ALC パネルの炭酸化進行状況は,ほぼ近似した 状態であった(図7.4参照)。なお,曲げ強さ試験体のCPDは,パネル表裏2か所の表 層部(深さ0~10mm)の平均値とした。
図 7.3 パネル断面の炭酸化進行状況 (Ⅰシリーズ試験体)
図 7.4 パネル断面炭酸化進行状況 (Ⅰ~Ⅴシリーズ試験体)
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写真 7.2.1 パネルのひび割れ状況 写真 7.2.2 パネルのひび割れ状況
写真 7.2.3 パネルのひび割れ状況 3.3 促進炭酸化によるパネルのひび割れ性状
パネル内部と表層部の炭酸化の進行度合いに差異がある場合には,表層部に引張ひ ずみが作用していることが推察される。そこで,パネル曲げ試験の前に,試験体表面 のひび割れ発生の有無を,目視により確認した。
パネルに発生した亀裂の状況を写真7.2.1~7.2.3に示す。目標CPD70%までの試験 体には,目視可能な亀裂は確認されなかったが,目標 CPD75%では全てのシリーズ のパネルを炭酸化したが,全ての試験体パネルの端部小口のみに,微亀裂が確認され た。また,目標CPD85%のⅠシリーズ試験体では,小口以外に微細であるが亀裂が確 認され,目標CPD95%では確認容易な亀裂がパネル全体に確認された。
( Ⅳシリーズ 5・5-7.0φ CPD75%の例 ) ( Ⅰシリーズ 3・3-5.0φ CPD85% )
( Ⅰシリーズ 3・3-5.0φ CPD95% )
- 92 - 第 4 節 試験方法
4.1 パネル曲げ強さ試験
ALCパネルの曲げ強さ試験方法は,JIS A 5416:2016 軽量気泡コンクリートパネルの 9.5 パネルの曲げ強さ試験に準じて行った。図 7.5 に試験方法の概要を示すとともに 写真7.3に試験の実施状況を示す。
試験は,単純梁状に試験体パネルを装置に載置し,支点間長さ 2600mm で 4 等分 点 2 線集中荷重にて曲げ荷重を加え,載荷荷重,パネル長さ方向の中央部のたわみ,
ならびに載荷裏面中央部の ALC 表面のパネル長さ方向のひずみを測定した。パネル のたわみは,幅方向2点の測定値の平均値とした。
写真 7.3 パネルの曲げ強さ試験の実施状況
加力ビーム 変位計
荷重
試験体パネル 歪みゲージ
650 650 650 650
50 2600 50
図 7.5 パネル曲げ強さ試験方法の概要