タイルの接着強度に及ぼす影響
第 1 節 概説 75 第 2 節 試験体
2.1 ALC 76 2.2 タイルの張付け 76 2.3 促進炭酸化 77 第 3 節 試験方法
3.1 タイルの接着強さ試験 78 3.2 含水率及び CPD の測定 79
第 4 節 試験結果及び考察
4.1 タイル張り試験体の炭酸化進行度推移 80
4.2 タイルの接着強さ 81
第 5 節 本章のまとめ 84
[参考文献] 84
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第 6 章 ALC の促進炭酸化がタイルの接着強度に及ぼす影響 第 1 節 概説
ALC パネルは,建物の壁(非構造),床,屋根などあらゆる部位に用いられており,
中でも,鉄骨造建築物の外壁材としての用途割合が最も高いとされている。
ALCは,珪酸質原料,石灰質原料などの粉末原料にセメントを加え,水とアルミな どの発泡剤を混和し,発泡硬化後にオートクレーブ養生が施されトバモライトが生成 される。ALCの軽量性,断熱性は,内部に有する無数の気泡によるものであるが,吸 水性が高い。そのため,ALCパネルを外壁として用いる場合には,建物の美観上のみ ならずパネルへの雨水の侵入を防ぐため,屋外に接する面には防水性のある仕上げを 行う必要がある 1),2)。これら仕上げには,建築用仕上塗材が一般的に用いられてきた が,近年では,用いる材料ならびに施工技術の発展により,タイル張り仕上げも多く 用いられてきた。
ALCパネルのタイル張り技術は,委員会などにより数多くの試験が実施され,その 研究成果に基づき,施工仕様の確立が図られている 3)。委員会の研究では経年劣化を 考慮し,温冷繰り返し,乾湿繰り返し試験などの耐久性試験が行われ,報告もされて いる。しかし,これらの試験報告には,炭酸化による ALC の経年変化に関するもの が含まれていない。前章までの研究により,ALCは一定以上の炭酸化により強度が低 下することが確認されている。また,ALC の炭酸化は,ALC が多孔質で呼吸性があ ることより,パネル内部も大気と接触面と同様に炭酸化が進行することも確認されて いる。従って,気密性が高いと予想されるタイル張り仕上げであっても,パネル裏面 からの炭酸ガスの進入を考慮し,ALCの炭酸化とタイル張り強度に関する検討が必要 と考える。
本研究は,タイル張り仕上げが施された ALC の炭酸化状況を確認するため促進炭 酸化を行い,炭酸化進行状況の確認を行うとともに,タイルの接着強度と ALC の炭 酸化進行度との関係について検討する。
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図 6.1 試験体の採取および試験体 ALC ブロック
ALC パネル
タイル張付け面 発泡方向
試験体 ALC ブロック
300 100
300
シ-リング材 シ リ コ - ン
第 2 節 試験体
2.1 ALC
試験に供するALCは,JIS A 5416:2016(軽量気泡コンクリートパネル)に適合する品 質のALCパネルを製造する同一型枠の無筋のALCブロックから,発泡方向の中央部 より寸法が300mm角となるように採取し(図6.1参照),試験体小口四周をシリコ-ン 系シーリング材で密閉したものとした。
2.2 タイルの張付け
試験体 ALC ブロックへのタイルの張付けは,ALCパネル現場タイル張り工法指針・
同解説:2010 (日本建築仕上学会) 3)に準じ,以下の手順で実施した。タイル張り付け後の
タイル張り試験体を写真6.1に示す。
1) 吸水調整材施工:張付け面にエチレン酢酸ビニル系ポリマーディスパージョンの5 倍希釈液を刷毛で2回塗布した。
2) 下地調整施工:JIS A 6916:2010(建築用下地調整塗材)に適合する既製調合ポリマー セメントモルタルを用いて,しごくように1mm程度塗り付けた。
3) タイル張付け:タイルは JIS A 5209:2010(陶磁器質タイル)に適合する大きさが 45mm角のものを,JIS A 6916:2010(建築用下地調整塗材)に適合する既製調合ポリ マーセメントモルタルを用い,目地幅が5mmとなるように張付けた。
4) 目地詰め:目地詰めは,タイル張り後に水粉比 20%の既製調合目地モルタルを用 いて,目地深さが0mmとなるように行った。
5) 養生:目地詰め後,温度20℃,湿度60%R.H.の恒温恒湿室で28日間静置し,促 進炭酸化開始まで気中にて養生を行った。
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写真 6.1 タイル張り試験体(目地詰め前) 2.3 促進炭酸化
タイル張りを行った試験体の促進炭酸化は,密閉された容器(約0.8m3,内部撹拌送 風機付)で,湿度90%R.H.,CO2濃度3.0vol.%の大気圧下にて行った。
タイル張り試験体の炭酸化進行度の管理は,モニター用試験体の促進炭酸化をタイ ル張り試験体と同環境で同時に行い,モニター用試験体のタイル張り面の ALC の CPDが目標とするCPDになったときにタイル張り試験体の促進炭酸化を停止し,試 験に供した。なお,タイル張り試験体の CPD は,試験終了後にタイル張り試験体か ら測定用試料を採取し,CPDを測定した。
- 78 - 第 3 節 試験方法
3.1 タイルの接着強さ試験
タイルの接着強さ試験は,炭酸化進行度毎に,1試験体につき 6箇所のタイルにつ いて行った。
試験方法は,『ALCパネル現場タイル張り工法指針・同解説 第3版』に規定される 5.3 接着強さ試験に準じ,実施した。試験に先立ち,試験の対象となるタイルの目地 に沿って,5mm程のALC部への切込みを入れた。接着強さ試験は,タイル面が上側 となるように水平面に設置し,タイルに鋼製アタッチメント(40×40mm)をエポキシ 系接着剤で張り付け,接着剤の硬化後,建研式接着力試験機にてアタッチメントを,
テンションロットを介して垂直に荷重を徐々に加え,破断したときの最大荷重を読み 取った。試験方法の概要を図6.2に示す。なお,試験機を試験体に装着するときの試 験機の台座は,接着強さ試験の対象とならないタイル上に位置するようにした。
タイル張り試験体
切り込み 試験対象タイル
加力方向
油圧ジャッキ
試験架台設置位置
建研式接着力試験機
図 6.2 試験方法の概要
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図 6.3 タイル張り試験体の炭酸化進行度測定試料採取
10mm×10 箇所
※含水率測定用 試料寸法
100mm
タイル張り試験体
※含水率測定後に 切り分け
3.2 含水率測定および CPD の測定
タイル接着強さ試験の終了後,タイル 1 枚分の ALC を試験体から切り出し,試験 体を絶乾状態としたときの前後に測定した質量をもとに,試験体の含水率を算定した。
CPD の測定は,試験体厚さ方向に 10mmづつに試料を切り分け,パネル厚さ位置 毎のCPDを第2章に示す手順にて測定した(図6.3参照)。
- 80 - 第 4 節 試験結果及び考察
4.1 タイル張り試験体の炭酸化進行度推移
促進炭酸化によるタイル張り試験体の断面の炭酸化進行度を,図6.4に示す。
片面をタイル張りしたALCにおいても,断面全体の炭酸化の進行が確認されるが,
タイル張り面はタイル張り裏面に比較し,著しく遅れて炭酸化が進行する。本試験に おける促進炭酸化では,CO2吸収面となるタイル張り裏面に近いほど炭酸化進行度が 高くなるが,タイル張り裏面から70mm以上深くなると,明確な差異が確認できなく なる。なお,長時間促進炭酸化を行いCPD90%となる試験体においては,タイル張り 面付近の炭酸化が内部より高くなる傾向がみられ,タイル張り面からCO2の透過があ ると推定される。
第 2 章で示した建物に使用されている ALCの炭酸化の進行状況(P27,図 2.8 等参 照)では,屋外側面を気密性の高い複層仕上塗材で仕上げた壁面であっても,パネル断 面の炭酸化進行度に大差がなく,ほぼ均一に炭酸化が進行する様が示されている。本 研究におけるCO2濃度3.0vol.%での促進炭酸化では,図6.4に示すように炭酸化の進 行程度に偏りが確認されるが,フィールドにおいてはタイル張りされた ALC パネル では,断面がほぼ均一に炭酸化すると考えられる。
促進炭酸化時間と試験体断面各部のCPDの関係を図6.5に示す。なお,第5章第3 節図5.2に示した,同じCO2濃度での促進炭酸化における両面が素地の試験体の,表
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
0~10 10~20
20~30 30~40
40~50 50~60
60~70 70~80
80~90 90~10
0
←素地面 タイル張り面→
採取位置(mm)
炭酸化進行度 CPD(%)
64 日 105 日 85 日 70 日 52 日 44 日
32 日 22 日
0 日 10 日 促進炭酸化時間
図 6.4 断面の炭酸化進行度
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層部と中心部の促進炭酸化時間との関係を合わせて示す。両試験に用いた ALC は製 造工場が同じで,製造時期もほぼ同時期の,同じ製造履歴のALCであり,表層部ALC の促進炭酸化時間と CPD の関係は極めて近似している。しかし中層部(40~50mm) は,タイル張り試験体のほうが,表裏が素面の試験体より炭酸化の進行が遅れる傾向 を示した。片面に気密性の高いタイル張りを行ったため,CO2の供給がタイル張り裏 面の1面だけとなったことと,試験体全体の透気性が低くなったためと推察する。促 進炭酸化では,片面を透気性の低い仕上げを施した場合には,試験体内部の炭酸化の 進行が遅れる傾向を示すと考えられる。
4.2 タイルの接着強さ
タイル張り試験体の,炭酸化進行度とタイルの接着強さの関係を図 6.6 に示す。
なお,図中には測定された値の範囲を縦線に,測定値の平均値を◇で示している。
タイルの接着強さは,接着面の最も強度の弱い部分での破断となり,ALCパネルの タイル張りの場合には,一般的にALC母材で破断することを,接着モルタルとALC の接着性の適否の判断目安とされている3)。ALC は炭酸化が一定以上進行すると曲 げ強度が低下する傾向が,第3章において確認されている。曲げ強度の傾向はALC の引張強度の傾向と同等であると考えられるため,ALCの引張強度も炭酸化が進行 すると低下する傾向にあると判断される。
促進炭酸化を行う前の試験体張付け面の炭酸化進行度は9.4%で,接着強さは平均 値で0.64N/mm2であった。促進炭酸化したALCのタイル接着強さは,CPDが13.0
~79.5%の 範 囲 で は 0.44N/mm2~0.54N/mm2(平 均 値)で ,CPD89%に な る と 0.35N/mm2と(同)となり,低下傾向を示す。
本研究に用いたALCパネルの炭酸化収縮率は,第3章第2節図3.2(P36)に示した
が,CPD80%程度までは高い相関を有する二次の回帰式で示されるが,CDP80%を
超えると炭酸化収縮率の増加が著しく大きくなり,CDP90%を超えると規則性が確 認できなくなる。本試験では,CPD80%を超えると明確な低下の傾向を示したが,
0 20 40 60 80 100
0 20 40 60 80 100
促進炭酸化時間(日)
炭酸化進行度 CPD (%)
タイ ル張裏面表層 タイ ル張中心部 タイ ル張り面 両面素地表層 両面素地中心
図 6.5 試験体各部の促進炭酸化時間と炭酸化進行度