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促進炭酸化した ALC における熱特性の評価

第 1 節 概説 52 第 2 節 促進炭酸化した ALC の断熱性能の評価

2.1 概要 53 2.2 試験体寸法および試験体の促進炭酸化 53 2.3 熱伝導率の測定 53

2.4 試験結果および考察 54

第 3 節 促進炭酸化した ALC パネルの耐火性能

3.1 概要 55

3.2 試験体 55

3.3 試験方法 56

3.4 測定結果および考察 58

第 4 節 本章のまとめ 64

[参考文献] 64

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第 4 章 促進炭酸化した ALC における熱特性の評価 第 1 節 概説

本章では,促進炭酸化したALCパネルの熱性能の変化について検討する。

日本で広く一般的に使用されているALCは,珪石,生石灰,セメントを主原料に,

アルミニウム粉末の反応による70vol%超の独立気泡を有し,密度が500kg/m3程度で,

建築物の構造部材として用いられている窯業系建築材料としては極めて軽量であると ともに,断熱性も高いとされている。

ALCパネルは,昭和54年の省エネルギー法制定後に省エネルギー協力製品として 通産大臣から指定され,同年のJIS A 5416 オートクレーブ養生された軽量気ほうコ ンクリート製品 の改正では,断熱性能に関する規定が追加されている。

建築基準法に規定される耐火性能も有し,建築基準法施行令第107条の規程に基づ く昭和39年建設省告示第1675号の制定以来,今日まで耐火構造として指定され,高 度成長期以降の建築物の防災化に大きく寄与してきた。このようにも ALC の耐火性 は高く評価されており、近年の建築基準法における技術基準の見直しである「基準整 備促進事業」における耐火構造の例示仕様追加に幾種かの仕様が追加されている。

ALC パネルの特筆すべき性能として,このような断熱性,耐火性があげられるが,

建築材料の耐久性に対する関心が高くなる中で,経年変化によるそれら性能の変化に 関する知見も求められているが,炭酸化による熱特性の評価に関する報告は少ない。

そこで本研究ではALCの熱特性について,促進炭酸化したALCの断熱性能ならびに,

小型炉を用いた加熱試験に基づく耐火性能の評価を行った。

- 53 - 第 2 節 促進炭酸化した ALC の断熱性能の評価

2.1 概要

ALC の炭酸化の進行度合いと熱伝導率の関係を確認するため,ALC の促進炭酸化 を行い,熱伝導率を測定した。

2.2 試験体寸法および試験体の促進炭酸化

試験体は,各試験体の密度に大きな差異が生じないよう,製造時の発泡方向に対し てほぼ中央部より採取した同一型枠で製造されたALCブロック(無補強)を,25×200

×200(mm)を目標寸法となるように採寸したものとした(図 4.1 参照)。なお,試験体 表面はパネル製造時のピアノ線切断面ではなく,表裏ともにピアノ線切断面を切削し て厚さを調整し,気泡が露出した平滑面とした(写真4.1参照)。

試験体の促進炭酸化は,密閉された容器(約0.8m3 ,内部撹拌送風機付)で,湿度90%, CO2濃度1.0%の大気圧下にて行った。

本試験に用いたALCは,JISに適合するALCパネルと同一型枠から採取したもの で,促進炭酸化前の絶乾密度が489 kg/m3のものである。

2.3 熱伝導率等の測定

促進炭酸化した試験体は,20℃,相対湿度60%にて質量変化がなくなるまで乾燥し,

熱伝導率の測定に供した。熱伝導率は,JIS A 1412-2:1999 熱絶縁材の熱抵抗および熱 伝導率の測定方法‐第2部熱流計法(HFM法)により測定し,各試験体の熱伝導率は3 回測定した値の平均値とした。なお,試験体の含水率は,熱伝導率測定直後に実施し た105℃48時間による乾燥前後の質量差を基に算出した値とするとともに,試験体寸 法から絶乾密度を算出した。

各試験体の炭酸化進行度(CPD)は,絶乾密度の測定後,試験体中央から表裏を貫通 するように10φ程度の試料を採取し,第2章の手順に従い測定した。

発泡方向

採取用 ALC ブロック

600 300

300 200 200 25

測定用試験体

図 4.1 熱伝導率試験体採取状況 写真 4.1 熱伝導率試験体表面性

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y = 0.7511x + 480.34 R2 = 0.9938 440

480 520 560

0 20 40 60 80 100

炭酸化進行度 CPD(%) (kg/m3 )

2.4 試験結果および考察

図 4.2 に,熱伝導率と CPD の関係を,各試験体の含水率とともに示す。各試験体 の含水率は2.05~2.23wt%で,試験体温度は20℃であった。一般に気温 20℃,相対 湿度60%におけるALCの平衡含水率は2wt%前後とされ1,試験体は平衡含水状態に 近い含水率と判断される。促進炭酸化した ALC の熱伝導率は 0.129~0.135W/m・K の範囲にあった。ただし,ALCのCPDと熱伝導率変化との間には明確な相関関係は 確認されない。

JIS A 5416 ALCパネル:2016では断熱性能は熱抵抗値で規定され,断面が均等な熱性 能と仮定した場合の熱伝導率換算値は0.19W/m・Kである。ALCパネルには内部に補 強鉄筋を有しており,塩出ら 2)の研究により,補強鉄筋の配筋量が多くなると熱抵抗 値がわずかであるが小さくなる傾向がある。

本試験の結果では,促進炭酸化の有無ならびにCPDの大きさに関わらず,JIS規格 値を満足する結果が得られた。また,断熱設計を行う場合に一般的に用いられるALC の熱伝導率値(λ=0.17W/m・K) 3)に対しても,全ての測定値ならびに平均値(0.13 W/m・K)は,設計値に対しても大きく満足する値となった。これらのことから,促進 炭酸化によるALCの熱性能変化は,ALCの断熱性能の評価に影響を与えないと判断 される。

図4.3に,試験体の絶乾密度とCPDの関係を示す。前述のようにALCの炭酸化は,

主要鉱物であるトバモライトが空気中の CO2 と反応し,シリカゲル(SiO2・nH2O)と CaCO3を生成することであり,空気中のCO2の吸収と生成されるH2Oの蒸散による 質量差が,炭酸化によるALCの絶乾時質量の増加分となる。ALCの経年変化が進む と密度が大きくなり,本試験結果でも炭酸化が進行すると密度が比例的に増加するこ とが確認された。

図 4.3 密度と炭酸化進行度 図 4.2 熱伝導率と炭酸化進行度

0.10 0.12 0.14 0.16 0.18 0.20

0 20 40 60 80 100

炭酸化進行度 CPD(%)

熱伝導率(W/m・k)

0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0

(wt%)

熱伝導率 含水率

▲設計値(0.17W/m・K)

▲JIS換算値(0.19W/m・K)

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第 3 節 促進炭酸化した ALC パネルの耐火性能の評価

3.1 概要

ALCパネル(厚形パネル)を用いた建築物は,建築基準法第2条第7号の規定に基づ き,非耐力の壁は1時間(75mm厚以上),床は1時間(100mm厚以上),屋根は30 分

(75mm 厚以上)の耐火構造として指定されている。耐火構造として必要な性能に,遮

熱性,遮炎性そして非損傷性があり,それぞれ部位に応じた性能が必要とされている。

耐火構造の性能評価は,公的試験所などが定める防耐火性能・評価業務方法書に基 づく耐火試験の結果により行われる。本研究では,促進炭酸化した ALC パネルの小 型耐火試験炉(水平炉)を用いて、一般社団法人 建材試験センター発行による防耐火性 能・評価業務方法書に準拠した加熱試験を行い,促進炭酸化した ALC パネルの遮熱 性能,遮炎性能について検討する。

3.2 試験体

図4.4に加熱試験に供したALCパネルを示す。試験体は,JIS A 5416の規定に適合す るALCパネルの端部から切り出した,寸法が t:100×w:600×ℓ:400(mm)のALCパネルと し,CO2濃度0.3vol.%,相対湿度90%にて,表層部のCPDが50%(試験体No.2),70%(試 験体No.3)および90%(試験体No.4)を目処とした促進炭酸化を行った3種類の試験体およ び,促進炭酸化を行わない試験体(No.1)の,計4体の試験体を加熱試験に供した。

図 4.4 試験体パネル

400 100

パネル長さ方向

パネル幅 600

被り15

横筋 主筋

横筋 加熱側主筋

主筋 加熱面⇒

- 56 - 3.3 試験方法

加熱試験は,LPG を熱源とした小型水平炉(内法:515×515×530(mm))に試験体と なるALCパネルを水平に載置し,ISO834に準拠した標準加熱曲線に従い,試験体の 下面に 1 時間の加熱を行った(以下,耐火加熱という)。試験体両側には塞ぎ材として セラミックファイバーを介して ALC 材を配置した。各部の温度測定は,試験開始後 から加熱終了後2時間まで測定した。小型水平炉および試験体設置状況を図4.5に示 す。

試験体のALCパネルには,加熱側および加熱側裏面に,主筋(5φ)が配置(設計被り 寸法15mm)されている(図4.4参照)。本試験では,試験時における双方の主筋の温度 を測定するとともに,加熱面(炉内)および加熱裏面のALC温度ならびに,試験内部の 温度として加熱面より15,30,45,55,70,85(mm)の各位置の温度変化を測定した (図 4.6 参照)。試験体内部の温度測定は,試験体の加熱側裏面より測定位置深さまで 削孔(20φ)し,孔底あるいは鉄筋(防錆材は部分除去)に接するように熱電対を設置した。

その後欠損部にセラミックスファイバーを密実に充填し,表面を無機質系の断熱パッ トとアルミ粘着テープで密閉した。熱電対の設置状況を図4.7に示す。温度測定は各 位置について2箇所とし,最高温度の高い方を当該深さ位置の測定温度とした。なお 温度測定は,全ての測定点の温度上昇の停止を確認した上で終了した。

図 4.5 小型水平炉および試験体設置状況

開口寸法 750

試験体 セラミック

ファイバー

熱伝対

ステンレス管

バーナー (L.P.G.)

530 515 850

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図 4.7 熱伝対設置状況

試 験 体

セラミック ファイバー 断熱パット

熱伝対 断熱パット アルミテープ

▲加熱面

測定器へ

非加熱面側鉄筋

試験体ALC 熱伝対

加熱面側鉄筋 15 30 45 55 70 85

横筋

加熱面 (mm)

図 4.6 温度測定位置

図 4.8 試験体断面の炭酸化進行度

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 10

←加熱裏面 深さ位置(mm) 加熱面→0

CPD(%)

No.1 CPD 9.3%

No.2 CPD50.0%

No.3 CPD72.1%

No.4 CPD93.9%

- 58 - 3.4 測定結果および考察

1) 試験体の炭酸化進行度

各試験体の断面のCPDを図4.8に示す。フィールドにおける大気下のALCパネル の炭酸化では,断面の CPD は表層部と中心部の差異が小さいことが第2 章の調査に より確認されている。また,CO2濃度が大気の 10 倍程度の比較的低濃度における促 進炭酸化であっても,表層部と中心部の炭酸化の進行度合いに明確な差異を生じるこ とが第 3 章の研究で確認されている。本試験においても,表層部と中心部の差異が,

表層部CPDが50.0%の試験体No.2で17.2%,同じく72.1%の試験体No.3で20.9%、 同じく 93.9%の試験体 No.4 で 27.5%の違いを生じ,促進炭酸化を行っていない試験 体No.1についてはその差異は6.4%程度であった。

2) 炉内温度

本試験における試験体の加熱面温度(炉内温度)と ISO834 に規定される標準加熱曲 線を,試験体 No.3 を例に図 4.9 に示す。本試験における加熱温度は,防耐火性能・

評価業務方法書(前出)に規定される許容誤差内に有り,他の試験体の加熱面温度につ

いてもISO834の標準加熱曲線に対する誤差は小さく、許容値内にあった。

0 200 400 600 800 1000

0 30 60 90 120

時間(分)

加熱温度()

標準加熱曲線

炉内温度曲線

図 4.9 加熱温度曲線(試験体 N0.3 の例)