1.国庫補助金整備の過程
地方自治制度復活以降、1990年代は、上記のように移転財源が増加するなかで、移転財 源の中でも地方交付税の比重が下落するのとは対照的に、国庫補助金の比重が急激に増加 していった。国庫補助金は、主に国が企画・推進する特定事業を地方自治団体支援に結び 付ける形態であり、国家の政策目標に地方自治団体の参与を誘導する手段として活用され る。
国庫補助金は、国が国家委任事務と施策事業への使用範囲を定め、その経費の全部ない し一部を補助する、あるいは財政上の援助を行うために資金を交付する制度である。これ は、国庫負担金、狭義の国庫補助金および国庫委託金に分けられる。
国庫委託金は、国家事務を地方自治団体に委任し、それに伴う経費を国が負担する。国 庫負担金は、地方自治団体が行う事業のうち、その性質上、国の責任程度によりその経費 の全部ないし一部を負担する。最後に、狭義の国庫補助金は、地方自治団体に対して特定 事業の実施を促す、あるいは、地方自治団体の財政を支援するものである。
国庫補助金の交付手続きは、まず地方自治団体行政安全部(廬武鉉政権当時は行政自治 部)68に一括申請し、それを受理した国側で基準補助率の適正可否、地方費負担能力などを 総合的に検討したうえ、関係政府部処に通報する。当該部処はこれをもとに企画財政部(廬 武鉉政権当時は企画予算処)と協議を行ったうえで予算案を確定し、10 月初めまで市・道 別(広域団体)内訳を行政安全部に通報する。安全行政部ではさらに基準補助率、地方費 負担能力、事業の適正性を総合的に再検討し、地方自治団体に
10
月15
日までに一括通知 する。このために、国庫補助金管理の電算システムが開発され、地方自治団体の申請段階 から予算編成段階までは電子政府として運営されている。また、補助金支給形態の類型でみると,「補助金の予算および管理に関する法律施行令 別 添1」に規定された
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個の補助金対象事業のうち、一部の定額補助金を除き、9割以上に 当たる82
個の事業が総額上限のついた定率補助金である。国庫補助金は、地方自治制度導入により地方自治団体に対する国の統制が弱化する状況 で活用され、特に
1998
年のIMF金融危機を契機に、国庫補助金による地方財源保障とい う傾向はさらに著しくなった。67 廬武鉉政権政権期全般の地方財政改革については、井上(2007)
pp.121-126
を参照せよ。68
2003~2008
年は行政自治部、2008~2013年は行政安全部、2013~現在は安全行政部。71
しかし、国庫補助金の多用自体は地方の財政自立性の阻害に繋がり、財源の非効率的運 営をも助長し、地方分権の理念に背くこととなる。また、国庫補助金事業のなかで地方費 負担を伴うマッチング補助金(定率補助金)が急増し、地方自治団体の財政負担増大による 財政運営の硬直性も問題になった。そもそも国庫補助事業はにおいて、国の事業決定は国 家的な観点をもって国の各政府部処の細部組織単位別に推進されるため、事業内容におけ る制約が非常に多く、小規模な分散投資事業が増加する傾向であるため、資源配分の面で も非効率性が表れる。また、地方自治団体側の歳入からみると、自主財源の比重が低いな かで、財源を確保するためには国庫補助金の支援に依存する選択肢しかないため、その事 業の優先順位が高くないにもかかわらず、当該事業を申請し、推進しなければならない状 況であった。さらに、全国単一の補助率で配分されるため、財政が豊かな地方自治団体と 財政が豊かではない地方自治団体との水平的不均衡を拡大させた。結局、財政分権ロード マップのなかでも、そのような国庫補助金の諸問題への認識をもとに、補助金事業の整備 および自主財源化と包括補助金化への改革を内容とする国庫補助金制度改善がその核心課 題として取り上げられた。
まず、2003年
7
月22
日、大統領主宰の国務会議で、政府革新地方分権委員会は国庫補 助金整備を公式的な場としては最初に議論した。この会議で廬武鉉大統領は「地方移譲す る特定な対象を探す方式ではなく、中央に必須的に残さなければならない事務以外は全て 地方に移譲する方式で推進すること」を指示し、積極的な改革を最初から主張した69。これ により、政府革新地方分権委員会は2003
年8
月19
日、第7
次財政税制専門委員会の会議 を通じて財政税制・地方分権・行政改革専門委員26
名からなる合同タスク・フォース組織 を構成し、国庫補助金整備推進方案及び日程を主要内容とする「国庫補助金整備計画」を 決定したのである。この計画に沿って、既存の国庫補助金事業533
個、12兆7
千億ウォン の事業を対象に、地方移譲事務と国に存続する事務に区分して、国庫補助金を「地方移譲(財源は地方交付税内に新設する分権交付税を通じてまかなう)」、「国庫補助金維持」、「国 庫均衡発展特別会計への移管」の
3
つに分ける作業が進められた。その過程を具体的にみ ると、2003年8
月末まで各政府部処から国庫補助金事業の実態および自主整備方案が通報 され、2004年2
月まで6
カ月間に政府部処説明会2
回、専門委員会8
回、タスク・フォー ス会議17
回を開催しながら整備の試案が作成された。そして、政府革新地方分権委員会傘 下である国家均衡発展委員会と企画予算処(日本の財務省に当てはまる)との会議を経て 最終整備方案が作成された。その基本原則は、国家事務ではない事業は地方自治団体が優69 韓国政府革新地方分権委員会(2008)pp.69-73。地方予算概要。
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先して推進し、国がその機能を補完する「補完性原則」、補助金をなるべく包括補助金にす る「包括的支援の原則」、財政運用の成果管理を強化して地方財政の責任性を確保する「成 果志向的自己責任原則」の3つである。
これらの国庫補助事業分類および整備方案作業において、可能な限り多くの事業を地方 に移譲しようとする政府革新地方分権委員会側と、国庫補助事業を維持しようとする方向 の政府部処側の間で、様々な論点が取り上げられていた。政府部処の公務員からみると、
各部処が本来から管理してきた補助金事業が地方に移譲される場合、予算・組織の縮小さ れる憂慮が反映されたと考えられる。そういうなかで、地方移譲をめぐる主な議論を大き く2つにまとめると、第1に、政府部処と特定事業の執行機関である公共団体側は、補助 金事業を地方に移譲すると地方自治団体によってはその事業の優先順位が低い場合がある ので、国家的に非常に重要な事業にもかかわらず十分なサービスが行われない恐れがある と主張した。特に公共図書館関連協会を中心とする文化・社会分野で反発があり、彼らは 公共図書館の国庫補助金事業を維持する必要性をタスク・フォースの委員らにも文書とし て配布する強硬な姿勢をみせていた。これに対して委員会は、住民の福利と密接に関連す る事業は基本的に地方自治団体の固有事務であり、そのサービス水準に関する決定は住民 の選好をもとに地方自治団体が決定すべきであるという点を強調した。特に、地方自治団 体の財政に大きな負担を発生させる主要施設物の建設費用については、国が一定費用を支 援する必要があるが、一旦建設された後の運営費用は基本的に地方自治団体が負担するこ とが妥当であることも強調された。第2に、社会保障のうち主に国庫補助事業として推進 されている社会福祉サービスの場合、ナショナル・ミニマムが保障されることが必要であ り、もし事業が移譲された場合、当該地方自治団体の財政状況によりその供給水準が異な るという問題が発生する点が認識された。このため、当初は地方移譲対象であった国民基 礎生活保障事業の場合、一部の地方自治団体と市民団体の反対を考慮し、国庫補助事業と して維持された。同じく保育関連事業(保育施設人件費等)の場合も、保育支援方式改編 が完成した後に地方移譲を事後に検討することとして保留となった。これには、地方移譲 された後に国庫補助がなくなることに既存の国公立保育施設の運営者側の反発が大きく、
さらに国からの人件費の支援が一律的に中断されることは現実的に困難であるという点が 考慮された。
結局、このような政府革新地方分権委員会と関係部処との議論を通じて、