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 人工林 2000年

図一3.3.2 我が国の森林利用及びその他の土地利用の変遷13)

 クリェーション、美しい景観や生物の生息・生育環境の提供など様々な公益的な機能を有し ている。しかしながら近年の経済発展の申で、農山村地域からの人口流出による担い手不  足や、第一次産業から第二、第三次産業への産業構造の変化、食料の海外輸入の増加など  によって、特に中間・山間農業地域において耕作放棄地の割合が高いなど、農用地の適切な 維持管理に困難な状況がみられる。そのため、伝統的な農業と共存してきた生物の生息・

 生育環境への影響、田園景観の荒廃、活気のない農村生活、耕作放棄地への廃棄物の不法 投棄、処分場の無秩序な立地などの問題が生じている。

8)人と水との関わりの希薄化

 水田耕作や漁業などの生業、水汲みや洗濯などの暮らし、水泳や魚採りなどの遊興、灯  篭流しや流し雛などの伝統行事、舟運による物資輸送など、水とは切っても切れない日々  の営みの中で我が国固有の文化が形成されてきた。ところが、治水や利水に偏重した河川  整備の進展による自然環境や河川景観の改変、舟による輸送・交通の衰退、利水システムの  高度化、身近な水辺と直接に接する機会の減少などによって川と人との関わりが希薄化し  ている。また、河川整備よって水害や土砂災害が減少したものの、一方では人々の川に対  する畏怖や畏敬の念が薄れ、伝承されてきた水害・土砂災害に対処する教訓や知恵も忘れ去  られようとしている。このように、人々と川や水との直接的なっながりが認識されにくく  なったことで、水環境に対する危機感や責任感が希薄化し、水環境の保全に対する態度と  行動を減退させている。そして、人々の無配慮な行動が集積してさらなる水質悪化を招く  という悪循環が繰り返されるなど、問題解決を困難にしている。

3,3.3 諸問題に対する流域住民の「参加と連携」の関連性

  ここでは、前項で示した水環境に関連する諸問題に対して、流域住民の参加と連携によ る取組みの関連性(必要性、意義、可能性等)を整理する。具体的には諸問題毎に、①流 域単位で取組むことの必要性と、②流域住民の参加と連携の関連性の2つに分けて整理す  る。なお、後述する5.3では市民活動の実態を考慮した上で、水環境保全における参加  と連携の可能性と課題点について詳細に分析・考察するため、ここでは諸問題から想定で  きる参加と連携の関連性の大要を確認するにとどめる。

1)「水域及び地下水の水質汚濁」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 水質汚濁は局地的な問題ではなく、上流地域や支流域での影響が集積して下流地域に伝 播するという構造を有しており、流域単位での取組みが必要不可欠である。対策としては、

 河道内や湖沼内における直接浄化対策もあるが、それ以上に発生源における汚濁負荷の削  減や汚水処理対策を流域各地で取組むことが重要である。具体的には流域の各家庭や事業  所での汚水軽減、農地、道路、森林などの面源からの汚濁物質の流出抑制、下水道や農業  集落排水、合併処理浄化槽設置などの処理対策を流域単位で連携して行うことが必要であ

 る。

②流域住民の参加と連携の関連性

 汚水軽減には流域住民や事業所等の水環境への関心を高め、水環境に配慮した行動を促  すことが必要である。また、多くの流域住民の参加と連携があれば、流域各地の水質を広  範囲に監視することも可能である。有害化学物質の影響についても流域単位のモニタリン  グが欠かせず、流域住民の参加と連携の意義が想定できる。さらに、上下流住民の交流を 促進することで互いを思いやる気持ちを育み、水質保全に対する配慮や行動を促したり、

住民意識の高まりによって流域自治体の水質改善関連の施策を促すという効果も期待され

 る。

2)「通常時の河川流量の減少、湧水の枯渇」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 通常時の河川流量の減少、湧水の枯渇に対処するには、流域を単位とした健全な水循環  系の再構築を図っていくことが必要である。流域の開発を抑制したり、雨水浸透施設の普  及を図る、森林の水源酒養機能の適正な保全・管理を図る、地下水の分断要因を解消する、

利水システムの見直しを図る等、流域が〜体となって取組む必要がある。

②流域住民の参加と連携の関連性

 流域住民に、流域の大地と河川がつながっているという認識を促すことが必要である。

そして、雨水浸透桝の設置等で雨水を大地に染み込ませる行為を促していくことが必要で  ある。また、流域で行われる開発行為について、流域住民の監視を強めていくことも重要  である。さらに、流域の森林保全の維持管理作業や、水源基金等に流域住民の参加と連携  を促すことも有効であると考えられる。

3)「水生生物の生態系の変化」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 水生生物の生態系の保全・復元を行うには流域の水循環を考慮した対応が必要である。

 水質や流況の改善、上下流の水域の生態ネットワークを保全・復元していくこと等が重要  である。また、開発行為に対する生態系への影響を流域単位で捉えることにより、適正な  ミティゲーションを徹底していくことも必要である。個別の多自然型川づくりやビオトー  プ整備などの諸事業を流域という単位で組み合せていくことも重要である。そして、場と  適合した多様な環境要素を、流域の地形や水系を基盤にネットワーク化させていく必要が

 ある。

②流域住民の参加と連携の関連性

 流域住民の生態系に対する関心を高めるとともに、問題点に対する正確な理解を促すこ  とが必要である。また、川づくりやビオトープの保全・整備等に流域住民の意見の反映を  図ったり、生態系のモニタリングや、適正な管理への参加を図ることが可能であると考え

 られる。

4)「土砂に関する諸問題の顕在化」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 流送土砂の問題については個々の地点における対応では限界があり、土砂が移動する場  全体(流砂系)を考えた対策20)が必要である。そのため、今後は各地点での対策を総合的  に組み合せたり、土砂移動が可能な砂防対策、ダムの排砂対策、流況の調整、動的な土砂  移動を考慮した河道整備、砂利採取の規制など、流域が一体となった取組みが必要である。

②流域住民の参加と連携の関連性

 矢作川で行われている21)ように、流域住民の参加と連携により流域の開発行為を監視  し、土砂流出の抑制を促すように誘導したり、流送土砂に対するモニタリングを行うこと  が可能である。また、水生生物の生態調査等への参加を通して、土砂バランスの変化によ  る環境の応答を広範にモニタリングすることもできる。

5)「廃棄物、河川ゴミに関する問題」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 流域を一っの環境単位として廃棄物問題に取組むことが考えられる。廃棄物による水汚  染や河川ゴミは、水の流れを介して下流に伝播するためである。社会・経済活動や生活と

廃棄物の関係について、流域を単位に目に見える形にすれば廃棄物の減量化や循環利用を

促すことができる。

②流域住民の参加と連携の関連性

 不法投棄や処理場の水環境汚染に対する影響については、流域住民による監視が有効で  あると考えられる。また、河川ゴミの問題に対しては、上流地域の住民の意識向上を促し

てゴミ投棄を減らしたり、流域一斉河川清掃への参加促進の取組みが必要である。

6)「森林管理の不足」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 森林は流域面積の多くを占めており、森林には水源酒養や洪水抑制機能、生態系の維持  などの多面的な役割があるが、その管理については上流地域だけでは限界が生じている。

 その多面的な役割を流域全体で共有し、上下流が一体となった取組みが必要である。

②流域住民の参加と連携の関連性

 上流地域の森林機能が多面的であり、その機能の保全は下流地域にとっても重要である  という認識を促す必要がある。そして、上下流交流によって、森林ボランティアに都市住  民の参加を促すなどの対応が有効であると考えられる。また、間伐材を活用した産業振興  や、営林のため広く資金協力を募るなど、参加と連携による取組みが効果をあげる可能性  が高い。

7)「農用地の管理不足」に対する関連性

①流域単位で取組む必要性

 農地のほとんどは個人資産であるが、その管理については農村地域だけでは限界が生じ  ている。農地が有する公益的機能を流域全体で共有し、流域単位での保全と管理が必要で

 ある。

②流域住民の参加と連携の関連性

  上下流交流によって地域の活性化を図ったり、都市農村交流により流域の産品を流通さ  せる、下流地域の住民の参加により援農を促すなどの方策が考えられる。

8)「人と水との関わりの希薄化」に対する関連性

①流域単位で取組む必要1生

  人と水との関わりは地先の水辺だけではなく、流域全体の水の循環とのつながりにおい  て醸成されるべきである。流域各地で展開される人々の生活や社会・経済活動の人為が集  積・累積して、流域の水環境に影響するという構造が存在するためである。かつての我が国  では、川を介した上下流の往来が盛んであり、それらが固有の風土を育んできた点も見逃  してはならない。

 ②流域住民の参加と連携の関連性

  流域文化を学習や各種イベントなどで再発見する試みを行うことで、流域住民の連帯感  を醸成することが期待できる。また、上・中・下流のそれぞれの魅力を活かした川での環  境学習等も意義深いと考えられる。その他、様々なイベントの展開や親水利用等の活発化  によって、流域と流域住民の様々な新たな関わりを創出していくことも重要であると考え  られる。

 以上の整理から、今日の水環境が抱える様々な諸問題に対して、流域を単位とした流域 住民の参加と連携の取組みの関連性(必要性、意義、可能性等)を概略確認することがで きた。それらは、水環境に対する意識向上、流域の連帯感の醸成、水環境の監視・モニタ

リング、意見提示、保全・管理への具体作業、資金協力等であった。

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