介護負担感は、要介護者の問題行動の程度や介護者の精神的な疲労、不安感、抑うつな どとの関連が報告されている8),12),46)。一方、要介護者の身体機能や生活機能と介護負担感と の関連に関する見解は統一しておらず52),59)、検討の余地があると考えられる。本研究では、
特に在宅要介護者の運動機能および生活機能に着目し、主介護者の介護負担感に関連する 要因を検討した。要介護認定を受けて、在宅での訪問によるリハビリテーションを実施し ていた要介護者を対象とし、J-ZBI_8得点から介護負担の低い群と高い群の2群に分けて比 較した結果、要介護者の運動機能および生活機能は、主介護者の介護負担感と関連を有す ることが示唆された。一方、両群間で年齢や性別といった基本属性に有意差は認めず、ま た、機能状態を大分類するカテゴリ変数による評価指標である要介護度や寝たきり度では、
高負担群と低負担群で有意差は認めなかった。そのため、本研究の対象者である発症後の 経過期間が長い慢性疾患患者においては、BIやBMSによる詳細な機能状態の評価を行うこ とで、介護負担感と関連した動作能力や生活機能を把握することができると考えられた。
また、介護者調査項目ではADL介助負担度、PGCモラール・スケール、介護を手伝って くれる人の有無、介護相談者の有無で低負担群と高負担群との間に有意な差を認めた。介 護者の能力として、介護にあたって問題が生じた際の解決能力が介護負担感を左右すると 報告されており、その問題解決能力の向上にはソーシャルサポートが重要であるとされて いる 60)。本研究においても、介護負担感が低い群では、高い群に比べて介護協力者や介護 相談者がいる割合が多く、ソーシャルサポートの必要性が支持される結果であった。J-ZBI_8
は、Personal strain(介護を必要とする状況(または事態)に対する否定的な感情の程度)と
Role strain(介護によって(介護者の)社会生活に支障を来たしている程度)の2つの因子
構造により成り立ち61)、心理的負担や社会的負担の側面に関する評価が中心となっている。
本研究では、実際のADLにおける介助負担度を介護者の自覚的負担度としてVASを用いて 評価した結果、J-ZBI_8 得点から分類した高負担群のほうがすべての ADL 介助場面におい て有意に大きな負担を感じていることが明らかとなった。その他に介護負担感との関連が 示唆された変数として、介護者の主観的幸福感が挙げられ、介護負担の大きい群では主観 的な幸福感が低い結果であった。この結果からは、大きな介護負担感を有するものが主観 的な幸福感が低く感じているのか、または主観的な幸福感が低い者が介護負担感を大きく 感じているのかといった介護負担感と主観的幸福感の因果関係を推定することはできない。
しかし、このように介護負担感が大きい介護者は心理的問題を抱えており、積極的な支援 の必要性が示唆された。一方、高負担群と低負担群で介護者の体力に有意差を認めなかっ
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た。本研究で用いたMFS は両群ともに平均得点が 10 点以上であり、今回の対象者におい ては、天井効果を示したため、体力の差異を明らかにするには不十分な内容であった可能 性も考えられた。
介護負担の軽減を目的として、褥瘡予防や栄養指導、歩行介助、コミュニケーション、
移乗・移動介助の技術指導などの介護者への介入を行うと、介護者の介護負担感が軽減す ることが無作為化比較対照試験により明らかにされている 62),63)。このような包括的な介入 方法をより効果的かつ効率的に計画するためには、介護負担感に影響する要因を明らかに したうえで、介護者が有する問題を明らかとし、介入方法を検討することが必要であると 考えられる。本研究の結果から、介護負担感は要介護者のADL能力や動作能力との関連性 が示唆され、横断的かつ単変量解析結果であるという限界はあるが、要介護者の機能状態 の差異が介護者の負担感にも影響を与える一因となり得るのではないかと考える。さらに、
介護者自身の要因としては、ソーシャルサポートや介護者の主観的幸福感が介護負担感と の関連が示され、これらの要因に着目した介入方法の検討も課題であると考える。
本研究の限界として、対象者がPTまたはOTの訪問によるリハビリテーションを実施し ている者に限られている点がある。2004 年での居宅サービス利用者のうち、訪問看護また は訪問リハビリテーションを利用している者の割合は 13%程度であり 2)、本研究の結果を 一般的な在宅要介護者、介護者の代表集団として捉え、一般化するには注意が必要である。
介護負担感の軽減に対する公的サービスの重要性に関する報告もある 64)が、本研究では居 宅サービスによるサポート状況には言及できていない。また、本研究では、J-ZBI_8得点か ら中央値と平均値を参照に介護負担感を便宜的に低負担群(10点未満)と高負担群(10点 以上)とに分けた解析結果であるために、カットオフに関する根拠が不十分であることも 限界点のひとつであると考える。
本研究では、要介護者のADL能力や動作能力は主介護者の介護負担感に影響を与える要 因である可能性が示唆された。また、介護協力者や介護相談者の有無も介護負担感と関係 し、介護負担感が高い主介護者では主観的幸福感が低いことが示された。今後は、介護負 担に影響するさまざまな要因の相互関係性や介護負担の軽減に向けた介入方法の検討につ いて引き続いて検討していくことが課題である。
3-5 まとめ
第 3 章では、在宅要介護者の運動機能および生活機能はじめ、主介護者の体力や主観的
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幸福感、主介護者のソーシャルサポートなどの多面的な視点から介護負担感に関与する要 因について検証した。その結果、要介護者のADL能力や動作能力は主介護者の介護負担感 に影響を与える要因である可能性が示唆された。また、介護協力者や介護相談者の有無も 介護負担感と関係し、介護負担感が高い主介護者では主観的幸福感が低いことが示された
65)。しかし、本章では介護負担感により、高負担群と低負担群に分けて比較した横断的な単 変量解析の結果であり、介護負担に影響するさまざまな要因の相互関係性については、検 証がなされていない。第 4 章では、本章で用いた評価指標のほか、介護を継続していく自 信の程度を指標のひとつに加え、介護負担に影響するさまざまな要因の相互関係性を明ら かにすることを目的に再調査を行い共分散構造分析により検証した。
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