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急速な高齢化が進行しているわが国においては、日常生活において何かしらの支援や介 護を必要とする要支援、要介護者も増加の一途であり、このような方々に対しての支援体 制はより一層の充実が望まれる。在宅生活での介助や介護が必要になった障害者や高齢者 においては、家族介護者の支援が不可欠となる。これらの要介護者の在宅生活の継続を支 援するには、介護する主介護者の身体的および精神的な負担にも配慮する必要であり、介 護者にとっての精神的および身体的な負担感を軽減するための取り組みは重要な課題であ る。本研究の最終的な目的は、在宅で介護をしている家族介護者を対象に、介護負担の軽 減や心理状態の安定を図ることができるような介入方法を提案して、直接的に家族介護者 へ働きかけを行い、その効果を検証することとした。

はじめに、第 1 章では在宅介護の背景や現状、家族介護者に関する先行研究に触れ、本 研究の意義についてまとめた。在宅で生活する要介護高齢者が増加しており、特に日常生 活で介助や介護が必要になった障害者や高齢者においては、家族介護者の支援は不可欠と なる。その支援内容は、多岐にわたり、特に重度な要介護高齢者の介護においては、特別 な技能や知識を必要とする場合も尐なくはない。在宅介護生活においては、介護者の負担 増大による身体的および精神的なストレスの経験やそれに伴う要介護者の虐待、介護放棄、

介護生活を苦とした無理心中などの問題も絶えず、家族介護者の身体的および精神的な支 援はきわめて重要な課題となっている。家族介護者の介護負担には、さまざまな要因が関 連しており、これらの要因に対して包括的に働きかけることで介護者の身体的、精神的な 負担軽減のための方略を明確にすることが重要である。そのためには、まず在宅で生活す る要介護高齢者および障害者の身体機能状態を評価する指標を明確にする必要があると考 えた。これらの対象者の身体機能状態の評価を目的とした指標を確立し、その他のさまざ まな評価指標を用いて、家族介護者の介護負担感との関連要因を多面的な視点から明らか にする必要性があった。

そこで第 2 章では、介護者の負担感にも関連が強いと推測される特に在宅での重度要介 護者の動作能力を評価する指標について、先行研究における報告を十分にふまえたうえで、

新たな指標の開発を行い、その信頼性と妥当性を検証した。内容妥当性を満たした10項目

からなるBedside Mobility Scale(BMS)を作成し、在宅要介護者を対象に調査を行った結果、

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BMS には高い検者内および検者間信頼性が得られ、特に重度要介護者および日常生活自立 度の重度低下者の動作能力評価に適しており、臨床的意義が高いことが確認された。

次に第3章では、第2章で信頼性および妥当性が確認されたBMSのほか、さまざまな評 価指標を用いて調査を行い、家族介護者における介護負担感に関与する要因を横断的な分 析により検証した。その結果、要介護者の日常生活動作能力や基本動作能力は介護負担感 に影響を与える一因であることが示唆された。また、介護協力者や介護相談者の有無も介 護負担感と関係し、介護負担感が高い主介護者では主観的幸福感が低いことが示された。

しかし、第3 章の分析では、介護負担感により高負担群と低負担群の 2 群に分けて比較し た横断的な単変量解析の結果であり、介護負担に影響するさまざまな要因の相互関係性に ついては、検証がなされていないという問題が含まれた。

この問題を解決するために、第 4 章では介護負担感に関与する諸要因の相互関係を明ら かにするために再び調査を実施し、共分散構造分析を行った。要介護者の身体機能状態(BI、

BMS)、介護者の主観的幸福感(PGCモラール・スケール)、体力(MFS)、介護セルフ・エ フィカシー、年齢、介護協力者の有無、要介護者との続柄(配偶者であるか否か)、介護負 担感(J-ZBI_8)を変数として、それぞれの相互関係性を検証する構造モデルを作成して分 析した。その結果、モデル適合度が統計学的な許容水準を満たしたモデルにおいて、要介 護者の機能状態が介護負担感に関与し、介護負担感および介護者の体力は介護者の介護生 活を継続していく自信の程度と主観的幸福感に影響を与える要因である可能性が示唆され た。介護者の介護負担感の軽減や心理状態の安定に向けた取り組みでは、これらの要因に 対して包括的に働きかける必要が示された。

最後に第 5章では、第2章から第4章におけるそれぞれの研究結果をふまえて、要介護 者を在宅にて介護する家族介護者を対象として、介護方法や介護に関する情報提供を行い、

介護者の心理状態の向上が可能かを検討した。介入は、要介護者の介護度を層化して、対 象者を無作為に対照群と介入群に分類し、介入群に対して個別介入を 3 か月間実施した。

介入の実施は、訪問によるリハビリテーション時に行い、1回の介入は5分間程度とし、そ の他のサービスは両群とも継続した。その結果、介護負担感を有意に改善させるほどの十 分な効果は認めなかったが、介護者の主観的幸福感の指標としたPGCモラール・スケール が、対照群では低下したのに対して、介入群では向上を示し、有意な交互作用を認めた。

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この結果により、家族介護者に対する個別による情報提供などの教育プログラムの有用性 が示唆され、その必要性が確認された。

以上の一連の研究により、要介護者を在宅で介護する家族における介護負担感には、要 介護者の身体機能、介護者の主観的幸福感、介護を継続していく自信の程度、介護者の体 力レベルなどの要因が直接的、または間接的に関連しており、これらの要因の相互関係性 をふまえた介護に関する社会支援情報や介助方法、福祉用具、栄養、介護者向け体操など の各家族介護者のニーズに合わせた個別支援による教育プログラムは、心理状態の安定に 有効であることが示された。要介護者ならびにその家族介護者の在宅生活がより良い状態 で延伸するためには、家族介護者に対しても積極的な支援や個別介入を企画する必要があ り、その支援は多岐にわたるべきであり、重要性は極めて高いものと考える。

今後の課題として、家族への支援体制がより整備されるように長期フォローによる効果 の検証が必要である。また、わが国における家族介護者に対する十分にデザイン化された 介入プログラムの効果検証は不十分であり、今後の家族介護者への支援施策の確立のため にも、有用な資料となりうるエビデンスの構築が望まれる。

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謝辞

本研究の実施ならびに本論文の作成にあたり、早稲田大学スポーツ科学学術院の中村好 男教授には真摯なるご指導を賜り、深謝の意を申し上げます。また、審査員(副査)をお 引き受け下さり、本論文への貴重なご助言・ご指導を頂きました早稲田大学スポーツ科学 学術院村岡功教授、荒尾孝教授に感謝の意を表します。早稲田大学スポーツ科学学術院岡 浩一朗准教授からも本研究の発展に寄与する貴重なご教示を頂きました。ならびに、東京 都老人総合研究所の島田裕之博士、リハビリ推進センター株式会社の阿部勉代表取締役、

札幌医科大学保健医療学部理学療法学科の古名丈人准教授には、研究の計画から論文作成 まで懇切なるご指導を頂きました。ここに深く感謝の意を表します。

また、早稲田大学スポーツ科学研究科体力科学研究室の先輩、同級生、後輩各位には多 大なるご協力とご支援を頂きましたことに深謝致します。

最後に本研究にご協力頂きました対象者の皆様ならびにデータ収集に際して快くご尽力 頂きました板橋リハビリ訪問看護ステーション、にしなすのマロニエ訪問看護ステーショ ン、訪問看護ステーションはまなすの職員の皆様にはこの場をお借りして深謝致します。

なお、本研究の一部は、財団法人フランスベッド・メディカルホームケア研究・助成財 団による平成19年度研究助成を受けて実施した。

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引用文献

1) 平成18年版 高齢者白書

http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2006/gaiyou/html/ig110000.html(閲覧日2008年8月 20日)

2) 三浦文夫:図説 高齢者白書 2005 年度版,社会福祉法人全国社会福祉協議会,東京,

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ドキュメント内 介護負担感に関与する要因の相互関係性と (ページ 63-73)

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