故障解析ではさまざまな装置を使用しています。表3-2-1 にその主な装置を示します。表中に示した 以外にも、電気的な評価を行うための各種計測器があります。これらの解析装置を駆使し、故障原因の 解明を行っています。
表3-2-1 当社の故障解析装置
分類 装置名 用途 装置写真 解析事例
非破壊 X線透過装置 パッケージ内部の観察を行う (ワイヤーボンディングの状態など) P.3-3 P.3-3 超音波探傷装置
(SAT) パッケージ内部の観察を行う (剥離の状態など) P.3-4 P.3-4
半破壊 モールドオープナー モールド樹脂を溶かし、電気的に破壊せずに開封する - - レーザーオープナー レーザーを用いてパッケージ樹脂の除去 (開封) を行なう - - 回路解析 エミッション顕微鏡 チップで発生する微小発光を検出し、異常リーク箇所などを特定する P.3-5 P.3-5
EBテスター 電子ビームを用いて回路の電気的動作を解析する (非接触)
ボルテージコントラスト像や動作波形を取得できる P.3-6 P.3-6 マニュアルプローバ 針 (プローブ) を直接接触させ、回路の電気的動作を解析する - -
OBIRCH解析装置 レーザー照射時の電流変化を検出する (レーザーによる局所加熱) 、
ショート箇所特定に使用する。 P.3-8 P.3-8, 9 ロジックテスター ディジタルテストパターンを用いて、ディジタル機能評価を行なう - -
回路修正用FIB 回路内の配線修正、プロービングパッド作成などを行なう P.3-10 - 裏面研磨機 チップの裏面露出、研磨を行う
(エミッションやOBIRCH解析の前処理) - -
ナノプローバー SEM式プロービングシステム、MOSの静特性測定、EBAC法での
配線解析を行う P.3-10 P.3-11
物理解析 光学顕微鏡 チップの光学観察 - P.3-12
RIE装置 SiN膜やSiO2膜の除去を行う、プラズマを使用した
ドライエッチング - -
ドラフトチャンバー ウェットエッチング処理を行うための局所排気装置 - - 走査型電子顕微鏡
(SEM) チップ表面形状の詳細観察を行なう P.3-12 P.3-13
FIB/SEM装置 FIBで加工しSEMで観察する、チップの断面観察を行う P.3-13 P.3-14
EDX 特性X線検出での元素分析を行なう - P.3-15 走査型透過電子顕微鏡
(STEM) (*1) 透過電子を用いてチップの断面観察を行なう - P.3-14
切断機 パッケージ断面観察に使用する、大まかな切断加工を行う - - 研磨機 パッケージ断面観察に使用する、研磨加工を行う - -
(*1) 当社グループ内関係会社にて所有
以下に、当社で使用している主な故障解析装置と、解析/観察事例について説明します。
第 3 章 故障解析と解析技術
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(1) X線透過装置
X線透過装置は、X線による透過技術を用いて製品内部を非破壊で観察する装置で、主にワイヤーボン ディングやインナーリードの形状などの観察に活用しています。本装置は、マイクロフォーカスX線 管を採用したタイプであり、低倍から高倍までシャープな映像の観察が可能です。CT機能を備えた装 置もあります。
X線透過装置の装置写真と観察画像は、図3-2-1と図3-2-2をご参照ください。
図3-2-1 X線透過装置
図3-2-2 X線透過装置での観察事例 CT 機能付き
金ワイヤー
リード部 金ワイヤー断線故障
第 3 章 故障解析と解析技術
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(2) 超音波探傷装置 (SAT:Scanning Acoustic Tomography)
超音波探傷装置は、超音波を使用した観察装置です。パッケージの表面から内部に向かって超音波パ ルスを送り、その反射波を検出します。この技術により、パッケージ内部の欠陥 (ボイド、クラック、
界面剥離など) を観察できます。本装置は、パッケージの耐湿・耐熱性の信頼性評価にも活用していま す。
超音波探傷装置の装置写真と観察画像は、図3-2-3と図3-2-4をご参照ください。
図3-2-3 超音波探傷装置 (SAT)
図3-2-4 超音波探傷装置での観察事例
タブの剥離あり 正常品
第 3 章 故障解析と解析技術
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(3) エミッション顕微鏡
エミッション顕微鏡は、チップからの微小発光を検出します。故障が存在すると、チップ内部に異常 電界ができることがあります。この異常電界によって加速されたキャリア (ホットキャリア) は正孔・
電子対 (hole-electron pair) を生成し、この正孔・電子対が再結合すると発光現象が起こります。この 発光を検出することで、電流リークなどの異常を捉えることができます。本装置は、操作が非常に簡 単であり、また視覚的に現象をとらえることができます。故障解析では非常によく使われる技術です。
エミッション顕微鏡の装置写真と観察画像は、図3-2-5と図3-2-6をご参照ください。
図3-2-5 エミッション顕微鏡
図3-2-6 エミッション顕微鏡での観察事例
・2箇所で異常発光確認
・発光は異物による配線ショートによるもの
(黄色矢印で示した箇所が発光箇所)
第 3 章 故障解析と解析技術
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(4) EBテスター (EB:Electron Beam)
EBテスターの原理はSEMと同じで、電子ビーム照射時の2次電子を検出します。2次電子検出量は チップ上の配線の電位に依存し、この現象から配線の電位挙動を知ることができます。取得できる情 報としては、配線電位像や動作波形となります。本技術は、ディジタル回路の解析に使われます。非 接触で電位測定ができるという利点の反面、ロジックテスターに同期した繰り返し波形しか測定でき ないという欠点も有ります。
EBテスターの装置写真と観察画像は、図3-2-7と図3-2-8 (差像解析) 、図3-2-9 (波形解析) をご参照 ください。
図3-2-7 EBテスター
図3-2-8 差像解析事例 (ボルテージコントラスト像を利用した解析)
Pass条件 Fail条件 差像
*あるアドレスでのボルテージコントラスト像をPass/Fail条件で取得。
*Pass/Failの差像を取ることで、論理が異なっている箇所を視覚的に捉える。
第 3 章 故障解析と解析技術
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図3-2-9 波形解析事例
(5) OBIRCH解析装置 (OBIRCH:Optical Beam Induced Resistance Change)
OBIRCH解析とは、レーザーを照射した箇所を局所的に加熱し、この加熱による抵抗/電流変化を捉え
る解析です。非常に微小な電流変化を捉えることができます。この原理を用いることで、リーク箇所 の特定が可能です。また、本装置とロジックテスターとの組み合わせで、ディジタルファンクション のマージナル故障の解析も行なうことができます。これをSDL (Soft Defect Localization) と呼びます。
OBIRCH解析装置の装置写真と観察画像は、図3-2-10と図3-2-11 (OBIRCH解析) 、図3-2-12 (SDL 解析事例) をご参照ください。
制御信号
Node A
Node B
Node A
Node B
Pass 条件
Fail 条件
動作異常
*任意の箇所での波形を、同じタイミングで観測することができる。
*緑色網掛け部分の論理が、Fail条件では動作異常になっている。
第 3 章 故障解析と解析技術
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図3-2-10 OBIRCH解析装置
図3-2-11 OBIRCH解析装置での解析事例 (左:表面解析、右:裏面解析)
※黄色矢印で示した箇所がOBIRCH反応箇所
※いずれの事例もMOS Gate酸化膜リークでの事例
第 3 章 故障解析と解析技術
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図3-2-12 SDL解析事例
(6) 回路修正用FIB装置 (FIB:Focused Ion Beam)
FIBとは、イオンビームを利用した局所的な加工装置で、エッチング加工やデポジション加工を行えま す。回路修正用FIBでは、より加工精度を上げるため、ガスアシストでの加工を使用しています。こ の技術を用い、回路修正やプロービングパッドの作成を行います。EBテスター解析やメカニカルプロ ービング解析の前処理として、不可欠な技術です。本装置は、設計開発段階での回路デバッグにも使 用しています。
回路修正用FIB装置の装置写真は、図3-2-13をご参照ください。
※黄色矢印で示した箇所がSDL反応箇所
※SDL反応は、レーザー加熱でPass/Fail状態が変わる箇所を示す
第 3 章 故障解析と解析技術
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図3-2-13 回路修正用FIB装置
(7) ナノプローバー
ナノプローバーは、SEM式プロービングシステムです。SEMを使用しているため、ナノレベルでのプ ロービングを実現しています。代表的な測定は、単体MOSの静特性測定です。露出したコンタクトへ 直接プロービングすることで、チップ上の単体MOSの静特性測定を行うことができます。
また、ナノプローバーは吸収電流法による解析も行うことができ (EBAC:Electron Beam Absorbed
Current解析) 、EBAC解析では配線のショート/オープンを見つけることができます。
ナノプローバーの装置写真と観察画像は、図3-2-14と図3-2-15 (MOS静特性測定) 、図3-2-16 (EBAC 解析) をご参照ください。
図3-2-14 ナノプローバー
第 3 章 故障解析と解析技術
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図3-2-15 MOS静特性測定解析事例 (左:プロービングの様子、右:測定結果)
図3-2-16 EBAC解析事例
*コンタクト層まで研磨露出させ、コンタクトを直接プロービングしてMOS静特性を測定する。
断線箇所
*ViaチェーンTEGでの断線箇所の解析
*断線箇所では、EBAC像のコントラスト差が大きくなる
第 3 章 故障解析と解析技術
3-12
(8) 光学顕微鏡
光学顕微鏡は、可視光および可視光近傍の波長域の光を利用する顕微鏡です。可視光を利用するため、
色の情報が得られる反面、波長の関係から分解能に限界があります。
光学顕微鏡での観察画像は、図3-2-17をご参照ください。
図3-2-17 光学顕微鏡での観察事例
(9) 走査型電子顕微鏡 (SEM:Scanning Electron Microscopy)
SEMは、電子ビームを照射した際に発生する二次電子や反射電子を検出します。チップ表面の凹凸像、
組成像など取得することができます。高倍率、高解像度での観察が可能です。SEMの中にはEDX (Energy Dispersive X-ray Spectrometer) を搭載しているものも有ります。EDXは、特性X線検出を用 いた元素分析装置です。
SEMの装置写真と観察画像は、図3-2-18と図3-2-19をご参照ください。
図3-2-18 SEM装置
*GaAsホール素子での焼損事例 焼損部位
第 3 章 故障解析と解析技術
3-13
図3-2-19 SEMを用いた解析事例
(10) FIB/SEM Dual装置 (FIB:Focused Ion Beam, SEM:Scanning Electron Microscopy)
FIB/SEM Dual装置は、1つの試料室の中に、FIB鏡筒とSEM鏡筒の2つが入った装置です。FIBにて
の加工を行ない、SEMにて観察を行なうことで、チップの断面観察を迅速且つ的確に行なうことがで きます。本装置は主にSEMでの断面観察に用いていますが、走査型透過電子顕微鏡 (STEM) 用の試 料作製にも使用しています。
FIB/SEM Dual装置の装置写真と観察画像は、図3-2-20と図3-2-21をご参照ください。
図3-2-20 FIB/SEM Dual装置