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化学物質の管理

ドキュメント内 旭化成エレクトロニクス株式会社 (ページ 63-69)

第 4 章 環境関連物質の管理

4.1 化学物質の管理

環境に悪影響を与える物質を、生産活動で環境中に拡散させないのはもちろん、製品を通して環境中 に拡散することも避けなければなりません。従って、当社は「法令による使用禁止化学物質」、「環境 負荷物質」、「企業倫理として不適切な物質」及び「顧客要求管理物質」を明確にし、製品、包装材に 含有しないように確実に管理しています。また、「情報伝達が必要な化学物質など」の情報もサプライ チェーンを通じて迅速に入手し、顧客などへ積極的な情報開示とコミュニケーションを行います。

半導体デバイスはさまざまな物質を使用しています。環境負荷物質の使用を可能な限り避け、特性上 やむを得ず使用する場合にはその存在を明示し、適切な管理に努めます。

4.1.1 環境負荷物質の管理

化学物質に関する規制は、日本国内では化学物質審査規制法 (化審法) 、化学物質排出管理促進法 (化 管法:PRTR法) 、労働安全衛生法、毒物および劇物取締法などが制定されていますが、欧州議会、理事 会指令で欧州連合 (EU) 域内での使用制限・含有禁止などに関する指令・規則が国際的に広がっていま す。EUでの規制事項に適合しない製品をEU加盟国内で販売することができません。EUのRoHSや

REACHといった厳しい規制は、欧州委員会で制定されます。

製品だけではなく、生産にかかわる原材料や物流に関する資材についても、環境負荷となるような物 質が含まれないことを求められます。当社では、化学物質管理の指針を定め、製品 (サンプルも含む) や 包装材に環境負荷物質を含有させない管理を行っています。

また、環境負荷物質と基準値を定め、製品や包装材を構成する物質に関して以下の三つの区分に分け、

明示しています。

1) RoHSや化審法など国内外法規制対象物質

2) ハロゲンフリー製品に適用する基準 3) REACHのSVHC (*1) 候補物質

これらの物質の規制のうち、1) および2) は意図的な使用 (*2) を禁止しています 。また、3) につい ては製品中に0.1wt% 以上意図的に含有している物質が監視対象となります。

(*1) SVHC:Substance of Very High Concern (高懸念物質)

(*2) 「非意図的な使用」となるのは、製法上やむを得ない不純物の場合のみ。

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このように、当社で設けている基準とは別に、ご要望に応じてお客様や各国、地域、業界における規 制、基準への対応についても検討いたします。また、製品環境に関する各種問い合わせ (顧客指定様式、

JAMP AIS、JGPSSI、JAMA/IMDS、成分表、不使用証明書など) についても対応いたしますので、ご指

定がありましたら当社営業担当までご連絡ください。

国際的な規制としては現在、欧州連合 (EU) が制定したものが主流となっていて、以下のようなもの があります。

4.1.1.1 RoHS指令

RoHS (Restriction of Hazardous Substances) 指令は、2006年7月に施行された欧州議会・理事会指 令でEUの電子・電気機器に含まれる有害物質の使用制限を規定しています。カドミウム、鉛、水銀、六 価クロム、ポリ臭化ビフェニル類 (PBBs) 、ポリ臭化ジフェニルエーテル類 (PBDEs) の6物質につい て定められ、その含有率が定められた規制値 (それぞれの規制値については表4-1-1をご参照ください) を超える製品はEU加盟国内に供給、販売することができません (一部技術的に代替が困難な場合など適 用除外あり) 。

参考:改正RoHS (RoHSⅡ)

RoHS指令は、2011年7月21日にRoHS2.0として改訂、発効されました。この中で従来の6物質に 対する規制に加え、新たに4物質に対して優先評価物質として扱うことが定められています。また、制 定時期は未定ですが、これら4物質について禁止物質に追加することが検討されています。

優先評価物質 (追加候補物質):① HBCDD (ヘキサブロモシクロドデカン) ② DEHP (フタル酸ジ-2-エチルヘキシル) ③ BBP (フタル酸ブチルベンジル) ④ DBP (フタル酸ジブチル)

表4-1-1 RoHS指令対象物質と規制値

物質名 規制値

カドミウム 100 ppm以下

鉛 1,000 ppm以下

水銀 1,000 ppm以下

六価クロム 1,000 ppm以下 ポリ臭化ビフェニル類 (PBBs) 1,000 ppm以下 ポリ臭化ジフェニルエーテル類 (PBDEs) 1,000 ppm以下

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4.1.1.2 REACH規則

REACH (Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals) 規則は、2007年6月に 発効された化学物質の使用に関する規則です。EU加盟国内で生産、あるいはEU加盟国内に輸入する化 学物質 (あるいは製品に含まれる化学物質) が年間1t 以上である場合、それらの化学物質を欧州化学物 質庁に登録したうえで危険性の評価を行い、その結果を公開することが求められます。また、高懸念物 質 (SVHC) として分類される化学物質については登録だけではなく欧州化学物質庁 (ECHA:European

Chemicals Agency) の認可を受ける必要があります。

RoHS指令とREACH規制の内容を比較については、表4-1-2をご参照ください。

表4-1-2 RoHS指令とREACH規則の比較

RoHS指令 REACH規則

対象物質 6物質 (2006年07月01日現在) SVHC (高懸念物質) は138 種類 (2012年09 月03日現在)

将来的に約1,500物質になると推定される

対象部位 均質材料 製品

規制値 1,000 ppm以下 (Cdのみ100 ppm以下) 1,000 ppm以下

含有確認 分析可能 分析確認困難

規制内容 含有禁止 情報伝達義務 (B to B)/情報開示義務 (B to C) 届け出義務 (EU当局:ECA)

罰則 違反した場合製品回収 罰金などの罰則が予測される (各国法) 経営リスク ブランドイメージダウン ブランドイメージダウン

対象業種 電気電子機器 全業種

その他 ・分析データの定期1年更新が業界に定着

・IEC62321規格に基づく分析方法

・EDXなどの簡易測定は不可

・分析機関は、ISO17025の認証取得が必須

・2020 年までに使用、製造での化学物質の悪 影響の最小化

4.1.1.3 ELV指令

ELV指令 (End-of-Life Vehicles Directive) は、2000年10月21日に発効されたEU域内で使用済み自 動車の再使用や再資源化を推進するための指令です。

この指令の目的は、

a) 車両から廃棄物が発生することを防止する。

b) 使用済み自動車およびその部品の、再使用や再資源化を推進する。

c) 廃車解体、処理業者のように、車両のライフサイクルに関与する事業者の環境保護を促進する。

となっています。

自動車の部品に有害な物質が使用されていると、再使用や再資源化などの妨げとなるため、SOC (Substances Of environmental Concern:環境負荷物質) と呼ばれる物質群を対象として使用を制限して います。ELV指令の対象物質と規制値については表4-1-3参照をご参照ください 。

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表4-1-3 ELV指令対象物質と規制値 物質名 規制値

カドミウム 100 ppm以下

鉛 1,000 ppm以下

水銀 1,000 ppm以下

六価クロム 1,000 ppm以下

4.1.1.4 WEEE指令

WEEE (Waste Electrical and Electronic Equipment) 指令は、2003年2月に公布、施行された電気・電 子製品の廃品に関する指令です。EU加盟国内で販売する電気・電子機器 (EEE:electrical and electronic

equipment) について生産者に対して、以下の対応を求めています。

a) 廃棄物になった場合環境に悪影響を及ぼさないよう配慮する b) 回収、リサイクルについて責任を持つ

4.1.1.5 EuP指令

EuP (Energy-using Products) 指令は2005年に発効された、エネルギー (電力や化石燃料など) を使用 する製品 (たとえば冷蔵庫や洗濯機など) について環境に配慮された製品設計、いわゆるエコデザインの 実施を求める指令です。この指令に適合した製品にはCEマークが付与され、EU加盟国内ではCEマー クの無い製品を販売することができません。

EuPに適合し、CEマークを取得するには、原材料の採取からエンドオブライフ (使用後の廃棄) まで、

すべてのライフサイクルについて重要な環境側面を特定し、環境負荷を低減しなければなりません。

現在、EuPはその適用範囲をエネルギーに関連する製品 (窓や断熱材、節水弁など) まで広げたErP (Energy-related Products) 指令として拡大され、2010年11月20日に発効されています。

4.1.1.6 ハロゲンフリー製品に適合する基準

特定の物質 (群) に対する規制や使用制限も、国際的に広まっています。

その中でもハロゲン物質や三酸化アンチモンおよび赤リンは半導体製品にもかかわりが深く、原材料 の選定に際して留意が必要です。ハロゲンフリーについては業界標準が広く定着しています。ハロゲン フリー製品の管理に関する当社の基準については、表4-1-4をご参照ください。

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表4-1-4 ハロゲンフリー製品に適用する基準

対象物質 社内管理値 JPCA-ES01などの基準 (参考) 臭素、塩素、およびその化合物 Br 0.09wt% (900ppm) 未満 Br 0.09wt% (900 ppm) 以下

Cl 0.09wt% (900ppm) 未満 Cl 0.09wt% (900ppm) 以下 Br+Cl 0.15wt% (1,500ppm) 未満 Br+Cl 0.15wt% (1,500ppm) 以下 アンチモンおよびその化合物 Sbとして0.1wt% (1,000 ppm) 未満 -

赤リン Pとして0.1wt% (1,000 ppm) 未満 -

ハロゲン物質のうち臭素と塩素 (およびその化合物) は生体蓄積性が高く、燃焼によりダイオキシンが 発生する可能性があるなど、環境への悪影響が懸念されます。そこで、日本電子回路工業会

(JPCA-ES01:ハロゲンフリー銅張積層板試験方法) 、国際電気標準会議 (IEC 61249-2-21:Reinforced

base materials, clad and unclad-Non-halogenated epoxide woven E-glass reinforced laminated sheets of defined flammability (vertical burning test), copper-clad) 、米国電子回路協会 (IPC-4101:Specification for Base Materials for Rigid and Multilayer Printed Boards) といった機関、団体がそれぞれハロゲンフリーに ついて定義をし、試験方法を定めています (すべて共通の定義となっています) 。当社でもこれらの定義 に準拠して基準を定めています。

アンチモンは古くから毒性が知られていて、例えば難燃助剤として用いられる三酸化アンチモンは毒 性が小さいものの劇物に指定されるなど、化合物の中にも危険性を有するものがみられます。これらア ンチモンおよびその化合物は、環境負荷物質 (禁止物質) ではありませんが、PRTR (Pollutant Release

and Transfer Register) 法で第一種指定化学物質に指定されていて、材料中に0.1wt%以上含有する場合

にはMSDS (Material Safety Data Sheet:製品安全データシート) への記載が義務付けられています。よ

って、従来難燃助剤として用いられていた三酸化アンチモンですが、ハロゲンフリー製品には臭化エポ キシ樹脂 (難燃剤) とあわせて使用を制限しています。

また、赤リンは難燃剤として用いられていますが、長期間放置すると空気中の水分や酸素と反応、化 学変化を起こし電子機器中の配線が腐食断線に至ることや、トラッキング現象を起こし発火に至る可能 性があるため、成形用樹脂には赤リンを含有しないこととしています。

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4.1.2 グリーン調達

環境負荷の少ない製品をお届けするためには、当社単独の取り組みだけではなく、サプライチェーン 全体での取り組みが不可欠です。そこで、当社では必要な資源の調達・購入に際しては、より環境負荷 物質の少ない原材料や資材を優先的に調達・購入するグリーン調達に取り組んでいます。原材料や資材に ついて危険性や有害性、法規制について調査、確認を行いますが、当社が直接購入するものだけではな く、外部委託先についても同様の配慮を求めています。また、購入先に対しては必要に応じ調査を行う など、厳重な管理を行い、法規制の順守ならびに環境保全に努めています。

RoHS、REACHなどで対象となる化学物質については、サプライチェーンを通じて電気・電子業界の

情報伝達ツールであるJIG (Joint Industry Guide) 、業界横断的な情報伝達ツールであるMSDSplus/AIS の最新版を用いて管理しています。

JAMP (Joint article management promotion consortium:アーティクルマネジメント推進協議会) は、

業界横断的に化学物質情報伝達を行うため、2006年09月に日本で設立され、その情報伝達ツールとし て、物質・調剤についてはMSDSを補完する目的でMSDSplusが、成型品 (アーティクル) については AIS (article information sheet) が使用されています。

これらはサプライチェーン上の情報交換プラットフォームとして、欧州化学品庁 (ECHA) にも高く評 価され、紹介されています。

当社はJAMP設立当初からの会員で、MSDSplus/AISの伝達を、より効率的に、よりタイムリーに行 うよう開発された仕組みであるJAMPツールのITシステム基盤、JAMP-GP (Global Portal) にもいち早 く取り組んでいます。

なお、当社のグリーン調達の詳細については、当社WEBページの該当記事をご参照ください。

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