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ドキュメント内 仙鱒 (ページ 66-85)

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(2)有機物の添加効果

図3-7に第5章で透過実験の透過溶液として用いる0.05mol/dm3のn-ブチルアルコールおよ

びtert-ブチルアルコールの水溶液中でのPGN膜の膨潤度温度変化を示した。一般に、

poly(NIPAAm)ゲルを含めた高分子ゲルは混合溶媒中ではその溶媒の混合比に応じた膨潤度を 示す。たとえばpoly(NIPAAm)ゲルはDMSO-水混合溶媒中で低DMSO濃度領域ではDMSO濃

度が増加するにしたがい、膨潤度は低下し、ある濃度域で急激に収縮する。しかし、この実験に おけるブチルアルコールの濃度は0.05mol/dm‘であるので、その影響はほとんどなく、イオン

交換水中での膨潤度温度変化との差は見られなかった。さらに高い濃度ではその膨潤度および相 転移温度は変化するものと思われる。

(3)尿素の添加効果

尿素は水素結合を破壊する物質として知られている。PGN膜の膨潤度が水素結合に大きく支 配されているのであれば、尿素水溶液により影響を受けると考えられる。図3-8に0.1および 0.5mol/dm3尿素水溶液中でのPGN膜の膨潤度温度依存性を示した。10~30℃の範囲ではイオ

ン交換水中での膨潤度に比べてやや低い値となった。ゲル中の高分子鎖間の水素結合が切断され るのであれば、高分子網は広がりやすくなり、その膨潤度は増加することが推測できる。ここで 膨潤度が低下したのは尿素水溶液の浸透圧に基づくものと思われる。しかし、体積相転移温度に 大きな差は見られず、実験に用いた程度の濃度ではPGN膜の膨潤度や相転移温度にはほとんど 影響はないものと確認された。

3.4まとめ

PVAにNIPAAmをグラフト重合する際に疎水性、親水性、あるいはイオン性のモノマーを導 入することにより膨潤度や相転移温度を変化させることができた。疎水性のモノマーを導入する

ことにより、高分子は疎水化され、脱水傾向となり膨潤度および転移温度は低下した。また、親 水性またはイオン性のモノマーを導入することにより、高分子鎖の親水性は増大し、膨潤度およ び転移温度は上昇した。しかし、カルボキシル基を有するメタクリル酸を導入するとゲルはある

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6

3.5文献

D⑳司りの①刀印9町、②町

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1 4

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温度範囲で大きく膨潤するという特異的な膨潤挙動を示した。この興味深い結果については次章 にて詳しく検討を行う。

橋架けされた通常のpoly(NIPAAm)ゲルと同様にPGN膜でもゲル溶媒中に存在する塩などの

影響を受け、相転移温度や膨潤度が低下することが確認された。その影響は、主に膨潤したゲル 内外の浸透圧差によるものが大きな割合を占めており、高濃度の塩などでゲルは脱水され、膨潤 度は低下し相転移温度は低くなった。しかし、Ⅳ-イソプロピルアクリルアミドなどの感温性ゲル の相転移においては高分子鎖の水和水(凍結水や不凍水など)の振る舞いが変化し、その水和水 に対する塩の効果がアニオン種によって異なっており、チオシアンイオンなどでは、ゲルの膨潤 度および相転移温度は高くなることが知られている7)。このアニオン種の違いによる相転移温度 への影響の差異は本実験では見いだすことはできず、いずれの塩の水溶液中でも同程度の相転移 温度変化を示した。この原因は明らかになっていないが、感温性高分子の相転移の現象は、多く の要因から成り立っており、複雑な関係により引き起こされると思われる。

第4章MACを導入した感温性高分子の特異的膨潤挙動

4 . 1 は じ め に

第3章でMACが導入されたPVA弓9-(NIPAAm-MAc)共重合体が特異的な膨潤挙動を示すこと

を明らかにした。MAC含量が低い共重合体から作製したPGN-MAc膜は水中で低温から温度を 上昇させていくと、約25℃前後で膨潤度が上昇する。さらに温度を上昇させると約35℃で最大 の膨潤度を示し、さらに高温では収縮する回帰型の膨潤挙動を示した。また、MAC含量が高い膜 の膨潤度は温度に関わらず低くなった。

岡野らはアクリルアミドとアクリル酸を含むゲルで、アミド基とカルボキシル基間の水素結合 が温度の上昇によって可逆的に解離し、膨潤度が急激に変化する現象を報告している''2)。この PGN-MAc膜でも同様な構造が生じていることが推測される。つまり、高分子鎖の膨潤において、

カルポキシル基が関与した水素結合とMACのα-メチル基が関与する疎水‘性相互作用および poly(NIPAAm)の相転移などの影響を受け、この様にユニークな膨潤一収縮挙動を示すと考えら

れる。この章では、この推測に基づき、種々の検討を行った。

4.2実験

4.2.1 合 成

第3章の3.2.1で述べた方法と同様に表3-1の試料No.9-14の仕込み比に従いMACを導入した 感温』性高分子PVA-g-(NIPAAm-MAc)を合成し、この共重合体から作製した膜を以下PGN-

MAcとし、そのあとに添える数字は仕込時におけるモノマー中のMAC含量を示す。例えば PGN-MAclOは仕込モノマー総量(NIPAAm+MAC)の10wt%がMACであることを示す。

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4.3結果と考察

4.3.1PGN-MAc膜の温度変化に基づく膨潤挙動

第3章の表3-1の試料No.9-12に基づき、カルポキシル基を有するメタクリル酸(MAC)を NIPAAmと共にPVA上にグラフト重合した共重合体より膜を作製した。各温度でのこれらの膜 の膨潤度は第3章で図3-4に示した。

カルボキシル基の導入により親水性が増加し、相転移温度および膨潤度は上昇するものと考え たが、第3章で図3-4に示したようにMAC量の増加に伴い、30℃以下での膨潤度は低下した。

また、MAC仕込量が多い試料No.11,12の膜は温度に関係なくほとんど膨潤せず、温度変化に伴

う膨潤一収縮も示さなかった。また、実験を行った温度域内で膜は白濁し、不透明な状態であっ

一方、試料No.9,10のPGN-MAc5およびPGN-MAclO膜において特異的な膨潤挙動が観察さ

れた。30℃以下の低温ではPGN膜より膨潤度は低いが、温度が上昇するとPGN膜では収縮が起 っている30℃以上の温度で膨潤度が増加し、35℃以上では低下した。

4.3.2PGN-MAc膜の特異的膨潤挙動におけるNIPAAmとMAC間の水素結合の影響

岡野らの報告によるとポリアクリルアミドとポリアクリル酸を含むゲルで、アミド基とカルボ キシル基間の水素結合が温度の上昇によって可逆的に解離し、膨潤度が急激に変化する現象が見 いだされている''2)。我々のPGN-MAc膜でも同様な構造が生じていると考えられる。図3-4に

表されるようにPGN-MAc5およびPGNNAclOの膜では約25℃以上では水素結合の解離によ り膨潤度が増加するが、35℃以上ではNIPAAmのLCSTに基づくグラフト鎖からの水の放出が 起こり、膨潤度が低下するものと考えられる。また、昇温過程に引き続き、降温過程での膨潤度

を測定したが、昇温過程に見られた特異的な膨潤挙動は観察されず、温度が低くなるにつれ膨潤 度は大幅に上昇し、約25℃以下で膜の膨潤が過大となり崩壊してしまった(図4-1)。降混過程

においては、30℃以下でNIPAAm感温性に基づき膨潤すると考えられるが、昇温過程の結果か ら明らかなように、この温度では水素結合は形成できない。この状態で降温を続け、水素結合が 形成されやすい25℃以下の温度になったときには膜の膨潤度は過大で、MACのカルボキシル基

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とNIPAAmアミド基の間、あるいはカルポキシル基同士の距離が大きいために再び水素結合を 形成できなくなるためと思われる(図4-2)。低温における膨潤度の著しい増大は、水素結合から 解放されたカルボキシル基の親水性によるものと、さらにその一部が解離し、浸透圧が高くなっ

た結果と思われる。膜を0~50℃で0.01mol/dm3の水酸化ナトリウム水溶液に浸した場合に大

きく膨潤することからも、解離したカルポキシル基間に基づく浸透圧の増大が降温過程での大き な膨潤に寄与していることが明らかである。

昇温過程の特異的な膨潤挙動における水素結合の存在を明らかにするため、低温で収縮状態に あるこれらの膜を、水素結合を破壊する事が知られている尿素の2mol/dm3水溶液に約30℃で

浸したところ、白色であった膜は透明になり大きく膨潤した。つまり、水素結合が破壊されるこ とにより膨潤度が増加していることを示している。このことからも、PGN-MAc5およびPGN-

MAclO膜の特異的な膨潤挙動にはカルボキシル基による水素結合が関与していることが示唆さ

れた。

一方、MAC含量の多いPGN-MAc20およびPGN-MAc30膜の膨潤度は、PGN-MAc5および

PGN-MAclO膜に比べて非常に低く、O~90℃の範囲では温度変化に伴う膨潤度変化も観察され

なかった。前者の膜は高温でも膨潤度が増加しないことから、水素結合だけにより膨潤度が低下 したとは説明し難い。

J・Eliassafはメタクリル酸のα-メチル基による疎水性相互作用について報告している鋤。α-

メチル基はその存在量および温度に応じて疎水性が増加することが考えられ、イオン化していな い多量のメタクリル酸により疎水性が増加し、膨潤度が低下したものと考えられる。また、これ

らのPGN-MAc20およびPGN-MAc30膜も尿素の2mol/dm3水溶液により白色であった膜は

透明になり、膨潤・溶解した。W、Bruningらは尿素は疎水性相互作用も阻害すると報告してい

るの。尿素は水素結合のみならず、疎水性相互作用も抑制するため、尿素添加により膜の膨潤度 が増加したと考えられる。これらのことから、MAC含量の多いそれらの膜では水素結合だけでな

くメタクリル酸のα-メチル基に基づく疎水性相互作用により膨潤度が低下していることが考え

られる。

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