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親疎水性の異なるブチルアルコール異性体の透過

ドキュメント内 仙鱒 (ページ 99-116)

. 3皿

5.3.4 親疎水性の異なるブチルアルコール異性体の透過

poly(NIPAAm)は相転移により、高温では疎水性が高まることが知られている。この疎水性の 増加に伴い、poly(NIPAAm)などの水溶性の高分子は水に不溶になり、poly(NIPAAm)を含んだ

ゲルは脱水・収縮する。これを利用して高温で有機物を吸着し、低温で脱着する吸着剤などの研

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究が行われている8)。この吸着剤などにおいては、低温の方が溶媒を吸収しやすいが、被吸着物

質の疎水性が高い場合には、収縮した状態のゲルに対しても、疎水性相互作用に基づき吸着しや すい。つまり、ゲル中に溶液として溶媒と共に吸収されるのではなく、ゲルの高分子鎖自体に吸 着するようになる。吸着された物質は低温で高分子鎖が親水化することにより、水分子の吸着が 優位になり、脱着される。

本研究で用いたPGN膜でも、高温での脱水・収縮が見られることや蛍光プロープによる観察 から高温では疎水性が増加していることは明らかである。物質透過における、膜の疎水化の影響 を検討するために、疎水性の異なるプチルアルコールの異性体を用い、透過実験を行った。

透過実験は、-プチルアルコールとtert-プチルアルコールのそれぞれの0.05mol/dm3水溶液

を用い、PGN-A膜で温度を変えて行った。得られた左側でのプチルアルコールの経時濃度変化 より、それぞれの温度での透過速度を求め図5-15に示した。2種のプチルアルコールは他の透 過物質と同様に35℃以上の高温で透過が抑制された。、-プチルアルコールとterトプチルアルコ ールの透過速度を比較すると、35℃以下の低温ではtert-プチルアルコールの方がわずかに速い が、高温では、-プチルアルコールの方が速くなっており、、-プチルアルコールの透過速度の低 下の程度は他の無機塩などに比べても小さいものであった。この差を検討するために、各温度で terトプチルアルコールの透過速度に対する、-プチルアルコールの透過速度の比を求め、図5-16 に示した。30℃以下では透過速度比はほぼlで両者の差は小さいが、35℃以上ではその差は大き くなり、n-プチルアルコールの透過速度がtert-プチルアルコールに比べて大きくなっているこ とが分かる。ここで、、-プチルアルコールとtert-プチルアルコールのそれぞれのPGN-A膜に 対する吸着量を20℃と40℃で測定した(表5-1)。2つの温度でterトプチルアルコールの吸着 量はあまり差が見られなかったが、、-プチルアルコールの吸着量は20℃に比べ40℃ではその値 がほぼ2倍となっており、ゲル内へのn-プチルアルコールの分配が大きくなっていることが分か った。この時の、-プチルアルコールおよびtert-プチルアルコールの0.05mol/dm3水溶液中で

の膨潤度はほとんど変わらないことが第3章で明らかになっているので、n-プチルアルコールが 収縮し疎水化した高分子鎖に吸着されていることが分かる。つまり、30℃以上の高温ではPGN三A

膜の膨潤度が下がり、ゲルの密度が高くなり透過速度は低下しているが、相対的に疎水性の高い

、-ブチルアルコールは疎水化したゲルに吸着されるので、terトプチルアルコールに比べゲル内

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に浸入しやすくなっている。侵入・吸着された、-プチルアルコールは左側の水にその濃度勾配に

より溶出しているものと思われる。

このようにPGN~A膜では高温では膜が疎水化する事により疎水性が高い物質の透過が起きや すくなり、温度を変えることにより疎水性の異なる物質の分離が可能であることが示唆された。

5.3.5メタクリル酸を導入した膜の物質透過性

前章の4.3.4で得られたカルポキシル基を含むPGN-MAc5-GA膜の透過性の検討を行った。

5.3.1~5.3.4で述べたようにPGN膜の物質透過性はその膨潤度に大きく依存し、低温では膨潤

度が高いため透過速度は大きく、高温では膜の収縮に伴い、透過速度が低下した。ここで、

PGN-MAc5やPGN-MAclOから作製した膜を透過に使用した場合、膨潤度が大きくなる30~

40℃の温度範囲において、物質の透過速度が高くなることが予測される。このような一定温度範 囲のみ大きな物質透過性を示す高分子ゲル膜はこれまでに報告例はなく、様々な応用が期待でき る。そこで、これらの膜による物質透過の温度依存性の検討を試みた。しかし、PGN-MAc5膜 の膨潤は過大であり、そのままでは物質透過膜として使用できなかった。PGN膜を透過膜とし て使用する際には、膨潤度を低下させ強度を与えるために膜に熱処理を施した。しかし、4.3.3 で述べたように熱処理により膨潤度は低下したが、機械的強度が得られず、脆い膜となった。そ

こで、PGN-MAc膜を透過膜として使用するためにGA処理を施し、適度の膨潤度と強度を持つ PVA-g-(NIPAAm-MAc)-GA膜(以下、PGN-MAc-GA膜と略記する)を得た。前章の図4-4

にPGN-MAc5-GA膜の膨潤度の温度依存性を示した。GA処理を行っていないPGN-MAc5膜

にみられた特異的な膨潤度の温度依存性は消失し、通常のPGN膜と同様に低温で膨潤し、高温 で収縮する性質を可逆的に示した。しかも、120℃で10時間熱処理を施した膜より低い膨潤度を 示した。期待された特異的な膨潤挙動を示す強度の高い感温性高分子膜を得ることはできなかっ たが、この膜はカルポキシル基を有するカチオン交換膜であり、PGN膜と異なる物質透過性を 示すことが考えられた。

そこで、PGN-MAc5-GA膜の塩化リチウムの透過性を検討するために受容槽にイオン交換水、

供給槽に0.01mol/dm3の塩化リチウム水溶液を満たし、様々な温度で透過実験を行った時のU+

の透過速度を温度に対して示した(図5-17)。膨潤度の温度依存性と同様にpoly(NIPAAm)の

102

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5 - 1 7 TemperaturedependenceofpermeationrateofLi+fromLiClsolution throughthePGN-MAc5-GAmembrane.

103

相転移点である約32℃を境に低温で透過速度は高く、高温では低下した。なお、熱処理したPGN 膜では25-35℃において透過速度の上昇が見られたが、この膜では膜の膨潤度が低いため、この 上昇傾向は見られなかった。

先に、本研究室において、メタクリル酸を含むイオン交換膜を通して、受容槽に塩酸水溶液、

供給層に水酸化アルカリ水溶液を用いることにより、アルカリイオンの濃度勾配に逆らった輸送

(上り坂輸送)が起こることを見いだして、報告した9)。そこで、受容槽に0.005mol/dm3の塩 酸、供給槽に0.005mol/dm3の水酸化リチウム水溶液を満たし、様々な温度で透過実験を行った。

この時のLi+の透過速度と最大透過率を温度に対して示したのが図5-18である。透過速度は poly(NIPAAm)の相転移点以下の30℃までは温度上昇とともに増加し、30℃で最大の透過速度

を示したが、それ以上では大きく抑制された。この透過実験の系では、供給槽に水酸化リチウム 水溶液、受容槽に塩酸を使用しているので、膜は受容槽側では収縮、供給槽側では膨潤している ことが考えられるので先の供給槽に塩化リチウム、受容槽をイオン交換水とした場合より供給槽 側でのLi+の膜への侵入速度は大きくなり、PVA-g-NIPAAm膜を熱処理した場合と同じく、20

~30℃では温度の上昇にともなって、透過速度が増加したものと考えられる。また35℃以上で は、透過速度は大きく減少した。これは、これらの温度範囲では膜が収縮しイオンが拡散しにく くなったためであると考える。図5-19には両セル間のpH差(△pH)を示した。35℃以下で は、pH差が時間とともに急速に小さくなり、40℃および45℃では、長時間pH差が保たれてい ることがわかった。これは、H+やOH~が膜を拡散しにくくなったことを示す。また、24時間以 内の最大透過率は透過速度が高くなった25℃および30℃では50%を超え、上り坂輸送を行った

ことを示している。しかし、この温度以上では徐々に低下した。この様に、PGN-MAc5-GA膜

を用いてのLi+の透過は温度により大きく影響を受け、また温度によっては上り坂輸送も可能で あることがわかった。

5.4まとめ

様々な物質の透過を感温性高分子膜であるPGN-A膜とPGN-GA膜を用いて検討した。物質 の透過は膜の膨潤一収縮に伴い、高温での透過は抑制された。その透過速度は膜の膨潤度と同様

104

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