以下、1970年代のレコードを発表順に紹介していこう。
1970年代タンゴ探訪
エラディア・ブラスケス
〜その6
吉 村 俊 司
BUIENOS AIRES Y YO (RCA AVLP-3972)
【 曲 目 】1-1 DESNUDA LA CIUDAD* 1-2 CONTAME UNA HISTORIA* 1-3 SIN PIEL** 1-4 MARÍA DE NADIE
***1-5 QUÉ BUENA FE* 1-6 AMOR SIN AVENTURA**
2-1 HUMANO** 2-2 SUEÑO DE BARRILETE*** 2-3 DOMINGOS DE BUENOS AIRES** 2-4 MI CIUDAD Y MI GENTE* 2-5 RETAZOS*** 2-6 CERRAME LAS VENTANAS***
【メンバー】Eladia Blázquez (vo), * Osvaldo Berlingieri (arr
& dir), ** Raúl Garello (arr & dir), *** Trío Leopoldo Federico (arr & dir)
【発表】1970年、モノラル録音
ブラスケスにとっての最初のタンゴ・アルバム。曲はすべて彼女が作り、1-1はアルマ・ガルシア、
1-2、1-4はマリオ・イアキナンディ、2-1はオメロ・エスポシトが作詞、他は詞も彼女が書いている。
大ヒットした1-2、上述の最初のタンゴ作品2-2をはじめとして、1-3、2-4など作品は粒ぞろい。歌唱も 非常に表情豊かである。
伴奏はオスバルド・ベリンジェリ、ラウル・ガレーロ、およびレオポルド・フェデリコのトリオが担当。
詳細なメンバーは明らかではないものの、ピアノはすべてベリンジェリであることはまず間違いない。
単なる伴奏にとどまらず、演奏自体にも聴きどころは多い。
2007年にアルゼンチンのSony BMGからCD化されたらしいが、現在は入手は難しい模様である。
YO LA ESCRIBO Y YO LA VENDO
【曲目】1-1 PARA ENTENDERNOS 1-2 TE LLAMAN FUEYE 1-3 EL PRECIO DE VENCER 1-4 EL COSO QUE TIRA LA MANGA 1-5 EL CORO 1-6 SI BUENOS AIRES NO FUERA ASÍ 2-1 AL DE LA ZURDA 2-2 OYENDO TU VOZ 2-3 TU REBELIÓN 2-4 UN CABALLERO 2-5 EL MIEDO DE VIVIR 2-6 LA CARTERA DE ECONOMÍA
【発表】1973年
残念ながら入手がかなわず未聴であるため詳細は不明だが、やはり全曲彼女の作品で占められてい る(1-1はフェデリコ・シルバ、2-2はオスバルド・レケーナと共作)。これらの中では1-3が大ヒットし ている。
SOMOS O NO SOMOS ..? (TROVA JTX 60006)
【曲目】1-1 SOMOS COMO SOMOS* 1-2 A UN SEMEJANTE** 1-3 PATENTE DE PIOLA*** 1-4 VAMOS EN MONTÓN**** 1-5 EL COSO QUE TIRA LA MAGNA***** 2-1 EL CORAZÓN AL SUR** 2-2 LA PASIÓN DEL ESCOLAZO*** 2-3 LA BRONCA DEL PORTEÑO***** 2-4 DOÑA FIACA**** 2-5 POR QUÉ AMO A BUENOS AIRES*
RCA AVLP-3972
【メンバー】Eladia Blázquez (vo), * Raúl Garello (arr & dir), ** José Carli (arr & dir), ***
Roberto Grela (arr & dir), **** Jorge Kenny (organ), ***** Trío
【発表】1975年
収録曲はすべてエラディア・ブラスケスの単独作品で占めら れている。中では2-1が最も知られている曲であろう。ブラス ケス本人の生地アベジャネーダはブエノスアイレスの南に位置 し、「贅沢は運次第」というような土地だったようだが、そこ への想いを「私の心はいつも南を向いている」と歌い、大ヒッ トした。ブエノスアイレス市民にとっては、おそらくトロイロ の時代からの「南」のイメージともリンクするものがあったも のと思われる。
一方2-5は、前回取り上げたラウル・ラビエがアルバムのタ イトル曲に据えている。この時代のブエノスアイレスの声とし ての立場を確立していることが伺える。
伴奏は1枚目でも参加していたガレーロに加え、ホセ・カルリが2曲で担当。弦楽アンサンブルを 中心としたアプローチが新鮮である。2曲で単に「トリオ」とクレジットされているのは、それ以上 は全く情報がない。レコード会社の契約の問題であろうか(レオポルド・フェデリコのトリオのよう に聴こえるが…)。ロベルト・グレーラのギター・アンサンブルは味わい深く、ホルヘ・ケニーのハ モンドオルガン・ソロも面白い。全体にバラエティーに富んだスタイルとなっている。
近年CD化され(Random music, 1409296)現在も比較的手に入りやすいようである。
SI TE VIERA GARAY (EMI 8839)
【曲目】1-1 SI TE VIERA GARAY* 1-2 VE Y CORRE HASTA EL FUERTE NEGRA* 1-3 LA VOZ DE BUENOS AIRES**
1-4 UN CIELO DE SERENATA* 1-5 VIEJO TORTONI**
2-1 TU PIEL DE HORMIGÓN*** 2-2 INVIERNO PORTEÑO** 2-3 ABRIL EN MI CIUDAD** 2-4 Y SOMOS LA GENTE**** 2-5 VIVIR EN BUENOS AIRES***
【メンバー】Eladia Blázquez (vo), * José Carli (arr & dir)
, ** Raúl Garello (arr & dir), *** Juan Carlos Cirigliano
(arr & dir), **** Julián Plaza (arr & dir)
【発表】1980年
1980年の発表だが、1970年代の活動からの連続性もあるので、次作とともに取り上げることとする。
やはり2-2が本作の目玉であろうか。ピアソラの器楽曲に独自の歌詞をつけて歌うというのはかなりの 冒険であるが、ピアソラの楽曲の中でも一、二を争う美しいメロディーと叙情的な歌詞がうまくマッ チして、まずは成功しているといえるだろう。伴奏のラウル・ガレーロも見事な演奏である。なお、
EMI 8839 TROVA JTX 60006
前回取り上げたラウル・ラビエの同曲の録音は1979年で、本作に先立って発表されている。
これまでの作品での共作は、他者の詞を得て彼女が曲を書くことのほうが多かったが、本作では2-2 以外にも2-1でダンテ・アミカレリ、2-3でエミリオ・バルカルセ、2-4でオスバルド・プグリエーセと いった作曲家と共作している。自身の書くメロディーとは異なる楽曲での歌唱も新鮮で、特に2-4はバ ルスとタンゴが交錯する面白い作品。一方、タンゴ界のシンガーソングライターとしてブラスケスと 並ぶ存在であるエクトル・ネグロとの共作1-5は有名なカフェ・トルトーニをテーマにしたノスタルジ ックな内容で、ヒット曲となった。1-2はフェデリコ・ミテルバックとの共作で、パーカッションとコ ーラスを加えたカンドンベのスタイル。これらのほかは彼女の単独作品である。
伴奏陣には、上述のガレーロとホセ・カルリが前作から引き続き参加。カルリは前作よりもポピュ ラーな要素を増やし、親しみやすいアレンジを提供している。さらにフアン・カルロス・シリリアー ノがエレキギター、エレキベース、パーカッションを加えたスタイルで変化を加え、フリアン・プラ サは重厚な演奏を提供している。
ELADIA (EMI 6303)
【曲目】1-1 ADIÓS NONINO* 1-2 ESE MUCHACHO TONI**
1-3 HONRAR LA VIDA*** 1-4 EL CORAZÓN DE TU VIOLÍN* 1-5 GRACIAS A PESAR DE TODO**** 2-1 QUIERO AMARTE AQUÍ**** 2-2 EL MIEDO DE VIVIR*
2-3 FIESTA Y MILONGA** 2-4 MI DOBLE ROL* 2-5 EL AMOR TOTAL***
【メンバー】Eladia Blázquez (vo), * José Carli (arr & dir)
, ** Atilio Stampone (arr & dir), *** César Gentili (arr &
dir), **** Oscar López Ruiz (arr & dir)
【発表】1981年
シンプルに自身の名前をタイトルに据えた作品。前作に続きピアソラの器楽曲、しかも一番の代表 作に独自の歌詞をつけた1-1が冒頭を飾る。「ブエノスアイレスの冬」同様ラウル・ラビエの歌唱の方 が先に発表され、賛否を巻き起こしたが、ピアソラ自身がこの詞と歌唱を強く支持したのは前回の記 事のとおり。こちらの録音もホセ・カルリの弦と管を使った壮大な伴奏と彼女の力強い歌唱で、聴き 応えのある楽曲に仕上がっている。1-2、2-3は今回伴奏陣に加わったアティリオ・スタンポーネとの 共作で、いずれもキャッチーなメロディーによりヒット作となった。他は彼女の単独作で、1-3は代表 作の一つ。タンゴというよりポップス、バラード的な作品が多くなっている。
伴奏はホセ・カルリがシンフォニックなスタイル、アティリオ・スタンポーネがパーカッションを 加えてポップなスタイル。またアルベルト・コルテスやスペインの歌手ラファエルとの共演で知られ るセサル・ヘンティリ、ピアソラ五重奏団他のギタリストとして知られるオスカル・ロペス・ルイス がそれぞれの持ち味を生かした伴奏を提供している。