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Elution (mL)

A 280

0 f100 f200 ff 300 f400 f 500 0.8

0.6 0.4 0.2 0 1.0 1.2

図 5.10 Mu gp49+ Mu gp50H をゲル濾過クロマトグラフィーSephacryl S-300HR で精製し、

溶出液の 280 nm の吸光度を測定した(左)。吸光度が高かった 280 mL の画分を 15 %ポリ アクリルアミドゲルを用いた SDS-PAGE で分析し、Mu gp49 と Mu gp50H が 260 mL 付近 の同じ画分に溶出したことを確認した(右)。

(A) (B) kDa

30 42 66

20

Mu gp49

Mu gp50H

93

5.3.4 ヘテロな組み合わせの共発現系を用いたシャペロンの特異性の確認 5.3.4-1 Mu gp49 + Mu gp51H、Mu gp52 + Mu gp50H の発現の確認

Mu ファージはテイルファイバーとシャペロンをそれぞれ 2 つ持ち、Mu gp49 + Mu gp50、

Mu gp52 + Mu gp51 の組み合わせで発現すると言われていた。ここまでに Mu gp50 と Mu gp51 がテイルファイバーMu gp49 と Mu gp52 の可溶化に必要であることを示し、それぞ れの複合体の単離精製に成功した。ここでは更に、Mu gp50 と Mu gp51 が Mu gp49 と Mu gp51 に特異的であるかを検討するため、ヘテロな組み合わせの共発現ベクターMu gp49 + Mu gp51H、Mu gp52 + Mu gp51H(H: His-tag)を作成し(図 5.11)、大腸菌 BL21(DE3)pLysS 株を形質転換して発現菌を作成し、Mu gp49 と Mu gp52 の可溶性を確認することにした。

発現菌を Ampicillin を終濃度 50 µg/mL で加えた LB 液体培地に植菌し、20℃で振とう 培養した。15 %ポリアクリルアミドゲルで SDS-PAGE を行い、PVDF 膜に転写して Western-blot で発現を確認した。一次抗体は、マウス由来 anti- Mu gp49 + Mu gp50H 抗血 清またはマウス由来 anti- Mu gp52 + Mu gp51H 抗血清(50,000 倍希釈)を使用し、二次抗 体は抗マウス IgG 抗体(HRP labelled、15,000 倍希釈)(GE Healthcare, U. K.)を使用し た。詳細な手順は Appendix に記載した。結果を図 5.12 に示した。一次抗体として使用し たマウス由来 anti- Mu gp49 + Mu gp50H 抗血清とマウス由来 anti- Mu gp52 + Mu gp51H 図 5.10 Mu gp52+ Mu gp51H をゲル濾過クロマトグラフィーSephacryl S-300HR で精製し、溶出液

の 280 nm の吸光度を測定した(左)。吸光度が高かった 280 mL の画分を 15 %ポリアクリ ルアミドゲルを用いた SDS-PAGE で分析し、Mu gp52H と Mu gp51 が 260 mL 付近の同じ 画分に溶出したことを確認した(右)。

(A) (B) kDa

30 42 66

20

Mu gp52H

Mu gp51

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6

0 100 200 300 400

140806 S'+U' complex

Elution (mL)

A 280

(A) k(B)

0 f100 f200 ff 300 f400 f 500 0.4

0.3

0.2

0.1

0

0.5

0.6

94

抗血清の両方が、テイルファイバーMu gp49 と Mu gp52 に対する交差反応性を示した。ヘ テロな組み合わせであるにも関わらず、Mu gp49 + Mu gp51H、Mu gp52 + Mu gp50H の 両方で、テイルファイバーgp49 と gp52 が可溶性に発現し、シャペロンによる違いは見ら れなかった。続いてヘテロな組み合わせのテイルファイバーとシャペロンについて、単離精 製を試みた。

図 5.11 ヘテロな組み合わせのテイルファイバーとシャペロンの共発現ベクター

(A)Mu ファージのテイルファイバーMu gp49 とシャペロン Mu gp51H の共発現系

(B)Mu ファージのテイルファイバーMu gp52 とシャペロン Mu gp52H の共発現系

(B)

(A)

図 5.12 Western-blot によるテイルファイバーの発現の確認

(A)Mu gp49-gp50H、Mu gp52-gp51H、Mu gp49-gp51H、Mu gp52-gp50H の発現菌に おける各サブユニットの発現を、マウス由来の anti-gp49-gp50H 抗血清を一次抗体とした Western-blot で検出した。抗血清の交差反応性により Mu gp52(52.6 kDa)が検出され、

Mu gp51H(21.1 kDa)は検出されなかった。

(B)同様に、Mu gp49-gp50H、Mu gp52-gp51H、Mu gp49-gp51H、Mu gp52-gp50H の 発現を、マウス由来の anti-gp52-gp51H 抗血清を一次抗体として検出した。抗血清の交差 反応性により Mu gp49 (55.3 kDa)が検出され、Mu gp50H(21.1 kDa)は検出されなかっ た。

Mu gp49+gp51H

S

fP S P S P S P

Mu gp52-gp51H

Mu gp49-gp50H Mu gp52+gp50H

kDa

32 44 70

27 17

(A)

Mu gp52 Mu gp49

Mu gp50H

Mu gp49+gp51H

S

fP S P S P S P

Mu gp52-gp51H

Mu gp49-gp50H Mu gp52+gp50H

kDa

32 44 70

27 17

(B)

Mu gp52 Mu gp49

Mu gp51H

95

5.3.4-2 Mu gp49 + gp51H、gp52 + gp50H の単離精製

Mu gp49-gp51H 発現菌と Mu gp52-gp50H 発現菌を、Ampicillin を終濃度 50 µg/mL で 加えた LB 液体培地に植菌し、IPTG を終濃度 1 mM で加えて発現誘導し、20℃で 24 時間 振とう培養した。回収した菌体を超音波破砕し、Ni-NTA カラムとゲル濾過カラム Sephacryl S 300H(カラム体積 450 mL)で単離精製した。最終精製段階であるゲル濾過カラムの移動 相には 0.05 M Tris-HCl (pH8.0), 150 mM NaCl を用いた。

Mu gp49-gp51H の最終精製段階であるゲル濾過カラムについて、250 mL 付近のピーク の頂点に対応する画分で、SDS-PAGE で Mu gp49 と Mu gp51H の分子量と一致したバン ドが確認できたことで、Mu gp49-gp51H が複合体を形成したことがわかった。同様に Mu gp52-gp50H は 250 mL 付近に Mu gp52 と Mu gp50H のバンドが見られ、Mu gp52-gp50H が複合体を形成したことがわかった。

以上の結果は、先に述べた Mu gp49-gp50H、Mu gp52-gp51H の結果と一致しており、

シャペロンである gp50 と gp51 がテイルファイバーである gp49 と gp52 に非特異的に働く と結論した。それぞれのゲル濾過クロマトグラフィーのパターンと SDS-PAGE の結果を図 5.13 にまとめた。

A B

図 5.13 テイルファイバーとシャペロンの組み合わせによるゲル濾過クロマトグラフィーの 溶出パターンの比較

(A)ゲル濾過クロマトグラフィーの結果を示した。シャペロンである Mu gp50 の溶出 位置に対して、複合体の溶出位置が高分子量側に移動したことがわかった。

(B)ゲル濾過クロマトグラフィーの矢印で示した画分を SDS-PAGE で分離し、複合体が 得られたことを示した。

Elution (mL)

0 100 200 300 400 500

96 5.4 本章のまとめ

Mu gp49 + Mu gp50、Mu gp52 + Mu gp51 の複合体を単離精製することができた。この 結果から、Mu ファージのテイルファイバーはどちらも、2 つのサブユニットの複合体によ って形成されていることが判明した。Mu ファージのネックのようにサブユニットの配置の 決定までは行えなかったが、多くのファージのテイルファイバーが 1 つのサブユニットの 3 量体から構成されていることを考えれば、本研究で 2 つのサブユニットから構成されるテ イルファイバーを新たに発見したことは大きな成果であると言えるだろう。加えて、Mu gp35 + Mu gp36 の複合体形成に利用した共発現が、ネックサブユニット以外でも安定な複 合体の形成に利用可能であることを本章の実験で示した。なお、本研究で作成した発現系を 用いて当研究室で結晶化に成功し、その後トロント大学の研究グループとの共同研究によ って X 線結晶構造解析に成功したことで、Mu ファージのテイルファイバーは Mu gp49 が ベースプレートに連結し、反対側の末端に Mu gp50 が結合していることが判明した。これ により、Mu ファージのテイルファイバーのサブユニットの配置と構造解析が完了した。今 後は他のファージのテイルファイバーについて同様に配置の検討と構造解析を進めること で、ファージ間の比較検討が可能になるだろう。

5.5 参考文献

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98 第 6 章 総括

6.1 本研究の結果

バクテリオファージは細菌に感染して増殖するウイルスであり、テイルの外観から、

Myoviridae、Siphoviridae、Podoviridae

の 3 つの Family に分類されている[1]。ファージは ヘッドとネック、テイル、テイルファイバーから構成されている。近年のタンパク質の構造 解析に関わる技術の進歩から、ヘッドのサブユニットはファージ間で共通した立体構造を 持ち、テイルのサブユニットはテイルの全体構造が大きく異なる Family 間だけでなく、同 じ Family に属するファージの間でも異なる立体構造を持つことがわかってきた。ヘッドと テイルを連結する構造であるネックのサブユニットについてはほとんど構造解析が行われ ておらず、しかしヘッドと隣接したネックサブユニットであるポータルについては、構造既 知のポータルサブユニット全てで立体構造に相同性が見られること、ポータルの直下に位 置するネックサブユニットであるコネクターサブユニットについては SPP1 ファージとλ ファージ(ともに

Siphoviridae

)の間で立体構造に相同性が見られないことがわかっていた。

このことから、3 つの Family で共通して円筒構造を形成するネックサブユニットは、ファ ージの Species ごとに異なる立体構造のサブユニットで構成されると予想される。構造解析 によって、ネックの多様性や 3 つの Family を超えたファージ間の関連性を知ることができ ると考え、研究対象とした。

同じ構造を持つヘッドと、ファージの Species ごとに異なるテイルを連結するネックのバ リエーションは、サブユニットの立体構造だけでなく、ネックサブユニットの配置にも見る ことが出来る。ネックは 3 つの Family の間で共通して円筒構造を形成するが、円筒を形成 するサブユニットの種類の数は、ファージごとに異なり 1~5 種類と幅がある。将来的に多 数のファージのネックの構造解析が行われれば、その多様性とファージ間の関連も、同じ構 造を持つヘッドを多様なテイルに連結する仕組みも知ることができる。しかし多数のファ ージで完全なネックの構造解析を行うことは現在の技術では難しく、そのためネックサブ ユニットの数や配置の決定と比較は、将来的に構造解析の対象を選択する際に 1 つの方針 となるのではないかと考えた。同様に、テイルファイバーは 3 つの Family の間で類似した 繊維状構造を持ち、構成するサブユニットの数や配置も Species によって異なることから、

サブユニットの数や配置を研究することにした。

本研究ではファージのネックサブユニットの配置の決定を行うこととし、対象として当 研究室で全構造サブユニットの立体構造の決定を目指して 20 年近く研究を続けている、Mu ファージを選択した[2–5]。Mu ファージのネックサブユニットは 5 つ存在すると言われて おり、これは現在ネックサブユニットが同定されたファージの中で最もサブユニットが多 いネックの 1 つであった。また、Mu ファージのテイルファイバーは多くのファージが 1 種 類のサブユニットが 3 量体を形成したテイルファイバーを持つことに対して、構成するサ ブユニットが 2 種類存在する可能性があり、またテイルファイバー自体も 2 種類存在する 点で特徴的であった。以上の性質から Mu ファージのネックとテイルファイバーを研究す