ランジス国際市場を図3.11.1、写真3.11.1に示す。かつてパリ市内に魚、肉、花、青果 などの各市場が分散していた。1969年に現在のランジスに移転、集約された。水産物・食 品棟の建物面積は26,000m2である。場内の室温は空調設備で調整(0~
2℃
まで低温ではな い)されているが、氷で冷やすことで魚体の温度を0~2℃に管理している。氷で魚体が焼 けないように、魚体を透明のフィルムで覆った上から薄い氷の小片を載せている。魚体の 温度は、魚体に計測器を差し込んで確認している。約30社の卸売業者が取引を行っている。卸売会社間の売買や、購入に来るスーパーや鮮 魚販売店に対する販売が行われている。卸売会社は約8割が事前に注文をもらっており、
市場でその商品を集め(購入し)、注文者へ発送する。
夏場は国内産のものが多く、冬場は輸入ものが多い。輸入先は、北欧の国々、オラン ダ、スペインであり、魚種によっては例えばエビの場合、エクアドル、インド、アフリカ 産が多い。マグロはインド洋、スペイン(地中海産、養殖もの)から輸入されてくる。数量 で見ると、ここで取引きされた商品の仕向け地は約65%がパリ、約25%がパリ以外の国 内、約10%が輸出向けである。仕向け先については、約40%が鮮魚販売店、スーパー、レ ストランであり、約50%が加工場、約10%が輸出向け(輸出先国において鮮魚販売店、ス ーパー、レストラン鮮魚)である。
市場における販売・取引等の時間帯は次のとおりである。
(市場における販売・取引等の時間帯)
真夜中~
2:00(または3:00) 商品の搬入
2:00(または3:00)
~ 5:00(または6:00) 卸売販売・取引、梱包
~12:00
梱包・搬出・発送
6:00
~10:00場内清掃(床洗浄、ごみ収集)
図 3.11.1 ランジス国際市場
127
写真 3.11.1 ランジス国際市場
128
4. 考 察
(1)漁港・市場の役割と特徴
港は、商港、漁港やマリーナ等から構成され、陸揚げ・係留に利用される岸壁や泊地は すみ分けされており、市場および加工場等陸上の機能施設は、陸揚げ岸壁背後に集積して いる。
(漁港・市場の役割)
漁港や市場については運営者がwebサイトを開設し、漁港・市場の概要や市場取引に係る 情報の公開や事前登録している生産者やバイヤーへの提供を行っている。webサイトでは、
漁港・市場が、持続可能な形で国内や世界の消費者に対して、品質の高い水産物・食品の
表 4.1 漁港・市場の特徴
129
供給に努めていること、さらに水産物・食品の供給を通じて、漁業、水産加工業、物流産業、
電気機械設備・修理等船舶への海事サービス業、観光・レジャー産業など地域経済の維持・
発展に寄与していることを発信している。
漁港・市場がこうした役割を十分に果たすためには、漁港・市場だけでなく、背後地も 含めた港全体が有する物流機能(例えば国際複合一貫輸送システム、トラック輸送物流タ ーミナルなど)、海洋スポーツ・レジャーの拠点、ウォーターフロントの形成と密接に連 携することも重要とされている。
(漁港・市場の特徴)
漁港・市場の特徴を整理した一覧を表 4.1に示す。陸揚げ数量・金額でみると、過去
10
年間では上位5
漁港の順位に変化はなく、安定した地位を確保している。これら上位漁港 の特徴は次のとおりである。❶ブローニュ=シュル=メール
国内最大の漁港であると同時に、欧州最大の水産物・加工品生産物流基地(年間
30
万トン生産)となっている。漁港全体の雇用規模は約7,500
人である。カレ港は、国際 複合一貫輸送(フェリー&トラック)により英国とフランスはじめEU
各国とを結ぶ物 流拠点となっている。当該港を通じて、英国および北欧から水産物はフランス国内やブ ローニュ=シュル=メールに搬入される。陸揚げ数量・金額のうち、外国船によるものの 割合の全国平均は、数量5.0%、金額 17.0%であるが、本漁港では、各々34.5%、41.0%と
極めて高い割合を占めている。❷
ロリアン-ケロマン国内第
2
位の漁港であると同時に、水産加工基地となっている。施設の老朽化対策や 品質管理の向上のため、漁港の近代化や設備更新を行っているところである。漁港全体 の雇用規模は約3,300
人である。陸揚げ数量・金額のうち、外国船によるものの割合 は、各々15.4%、15.1%とブローニュ=シュル=メールに次いで高い割合を占めている。❸
ギルヴィネック国内第
3
位の漁港であると同時に、観光との連携(ガイドツアー・展示)を図ってい る。施設の老朽化対策や品質管理の向上のため、市場内をすべて低温管理化する再整備 が予定されている。❹サンゲノレ
国内第
4
位の漁港である。国内では最初に電子せりを導入した漁港である。しかし、老朽化対策やネット環境の改善、品質管理の向上のため、市場内をすべて低温管理化す る再整備が予定されている。
また、上位
6
位以下の漁港では順位に変動が見られ、このうち順位の下降した漁港の特 徴は次のとおりである。130
❺
レ・サーブ=ドロンヌ過去
10
年間に陸揚げ数量・金額とも増加、平均価格も上昇し、順位は16
位から11
位に上昇している。市場の利用者の利便性、効率化を図るために、アトリエとトラック ドックを拡張する市場の整備が行われている。❻コンカルノー
過去
10
年間に平均価格が上昇するものの、陸揚げ数量・金額とも減少し、順位は6
位から13
位に下降している。かつて遠洋マグロの基地港として栄えていた漁港である が、その後、陸揚げに貢献していた沖合漁業漁船は、他港を利用するようになったこと が陸揚げ数量・金額の減少の大きな理由である。このため、市場の利用者の利便性、効 率化を図るために、施設規模は同じであるが市場内のゾーニングを含め再整備が予定さ れている。(漁港・市場の管理運営)
港を国から地方へ譲渡していく方針の中で、漁港管理者は国から地方政府(日本の県に相 当する行政組織)に代わった。地方政府は漁港が所在する都市の商工会議所とコンセッショ ン契約を締結し運営権を与えている。しかし実際の漁港・市場の運営については、商工会議 所と都市が漁港運営公共企業体なる組織を設立して対応している。なお、コルヌアイユの漁 港については、地方政府がコルヌアイユの漁港・マリーナ公共企業体とコンセッション契約 を締結し運営権を与えている。しかし実際の漁港・市場の運営については、コルヌアイユを 包括する商工会議所が対応している。