(5)自然現象・災害予測における利用とインパクト実現プロセス (地球シミュレータの例)
11 災害原因発生後の
シミュレーション※
経済的インパクト
社会的インパクト
国民生活へのインパクト シミュレーションによる
自然現象や災害被害の
予測 予測精度の向上
・空間分解能の向上
(従来100kmメッシュ
→10kmメッシュに)
・時間分解能の向上
・非静力学への対応
計算時間の 短縮化
津波発生後の到達状況 予測(1日レベル)
地球温暖化等の 環境問題への 対応進展
(CO2等抑制・削減政策、
温暖化対策)
国民生活の 安全確保 台風発生後の進路・規模
等高精度予測(数日レベル)
原子力事故災害の予測
(汚染物質拡散等)
長期の将来予測
エルニーニョ現象と影響予測
(1年レベル)
地球温暖化の影響と 対策効果の予測(長期)
地震災害・被害の予測
農業・漁業被害縮小
都市・インフラ等の 災害被害縮小と 早期復旧 都市・インフラ等や 人的被害に伴う 経済損失の縮小
タンカー事故等による 原油流出・被害の予測
(数日レベル)
・気象予測(台風、津波等)
・地震やその被害予測
・地球温暖化の影響予測
・事故による災害・被害の 予測
等
災害発生想定による予防研究※
(高精度のハザードマップ実現等)
※これらの応用は技術的には目途がついており、
関係機関の体制整備およびシステム構築等がなさ れれば、近未来にインパクト実現が期待される。
高演算速度の超並列型コンピュータ:
地球シミュレータ(ベクトル型)の応用例
・約1000の方程式による現実世界の再現
有効な対策:避難勧告︑予防策︑復旧策等
4.
まとめ
(1)総括
12
■ベクトル型技術を主とする日本の並列スーパーコンピュータ技術は、世界をリードする水準に達し ている 。
■公的研究開発・支援はこの技術の進展に、主として公的機関による調達、公的機関による研究開 発および民間への研究開発資金提供等により寄与したと見られる。
(公的研究開発・支援がなければ、日本に独自のスーパーコンピュータ技術はなかったであろうと の専門家による見方がある。また、地球シミュレータ計画がなければ、日本のベクトル型スーパー コンピュータ技術の開発は進まず、その市場は大きく縮小したであろうとの専門家による見方もあ る 。)
■当該技術は基盤技術として経済・社会および国民生活に幅広いインパクトを有している。技術進歩 により価格/性能比の向上に応じて利用分野や用途を拡大している :
・当初はサイエンスにおける利用が主
・産業分野では、重厚長大分野から自動車等の機械産業に利用が拡大し、今後は映像・アミューズ メント、スポーツ、医療等の、ソフトや生活関連分野への拡大が見込まれる。
・非産業分野(公共サービス等)でも、現状では地球温暖化影響等の長期の将来予測に用いられ、
今後は災害発生想定による予防研究(原子力事故災害や地震災害・被害)や、災害原因発生後 のシミュレーション(津波や台風等)への展開が見込まれる。
125
4.まとめ
(参考)指摘された課題・今後の研究開発・支援のあり方等についての意見
13
①全般的課題
■ 1990年代に米国が当該技術への公的研究開発・支援を強力に進めた。日本では公的研究開発・支援を米国ほ どには拡大できず、米国に対して相対的に縮小したことも影響し、当該技術分野における日本の全般的地位が 低下している(世界1位の地球シミュレータはあるが) 。(学識経験者)
■プロセッサを米国に大きく依存するスカラー型への対応や、ベクトル型の将来も含めて、アーキテクチャー戦略が 欠如している(戦略性のあるまとまったポリシーがない)。(学識経験者)
■人的基盤が弱い(大学で当該技術の実用的な利用経験が不足し、産業界で当該技術の人材不足が指摘される)。
(自動車メーカー 研究者)
②今後の研究開発・支援のあり方についての意見 技術戦略について
■情報科学およびスーパーコンピュータ技術は、科学技術計算やコンピュータ関連技術の向上を通じて、幅広い産 業技術や社会基盤技術のための基礎となり、これが経済・社会・国民生活に多様なインパクトを生み出すサイエ ンスの重要分野である。 (学識経験者)
■当該技術分野はマーケットが限られ、民間企業のみでは事業として成立し難い分野であり、公的研究開発・支援 を継続的に実施し、技術基盤の維持・発展を図っていくことが望まれる。 (学識経験者、コンピュータメーカー・マ ネージャー)
■当該技術について、ハードウェアは米国と日本のみが競合しており、米国は当該技術を国家戦略上の重要技術 として研究開発を進めている。日本も当該分野を重要分野と位置付け、この競争を継続することで、世界の技術 進歩促進に貢献するという効果もある。(学識経験者)
■ベクトル型の将来については、以下のような見方があった。
・日本では、強みであるベクトル型技術や、それに関わるソフト等の蓄積も活かすべき。(学識経験者、コン ピュータメーカー・マネージャー )
・市場の広がりやコスト面で不利な従来のベクトル型に固執せず、新たな技術のトレンドに対応することも検討し ていく必要がある 。(学識経験者)
■日本はスカラー型プロセッサについても、上記のベクトル型の将来の検討とも合わせて、戦略的な考え方をもっ て、公的な投資をする必要がある。(学識経験者)
4.
まとめ
(参考)指摘された課題・今後の研究開発・支援のあり方等についての意見(続き)
14 ソフトウェアの重要性
■ソフトウェアが弱い(これも米国への依存度が大きい。衝突解析やプレス性等の民生用ソフトも、米国軍事技術 開発の中で開発されたものが応用される。またソフトに応じて使用できるハードが限定されてしまう面もある)。
(自動車メーカー・研究者)
■ソフトウェアも課題であり、ソフトとハードを含めた良いシステムを、戦略的に提案し、適切な公的資金を投資して いく必要がある 。(学識経験者)
継続的な公的研究開発の重要性
■調達も含めた継続的公的研究開発・支援により、製品価格に反映するメーカーの開発コストを低減する。(コン ピュータメーカー・マネージャー)
■複数のメーカーを支援・育成対象とすることにより、市場競争原理や多様な技術・アイディアの競合を通じて、性 能向上とともに低コスト化のためのイノベーションを促進する。(学識経験者)
■調達を研究開発政策に位置付ける。(公的機関による調達は、研究開発の前提となる継続的市場を提供すると ともに、開発スペックの向上を促進する。調達を単に民間で出来上がった技術・製品の購入と見るべきではな い。)(学識経験者、コンピュータメーカー・マネージャー)
126
(参考)今後の公的研究開発・支援の必要性とあり方
(インパクトアンケート調査結果より)
当該分野における今後の公的研究開発・支援の必要性は大きいと見られる
(必要性大および中を合わせて、回答者の約65%)
15 必要性が
大〜小の場合:
今後の公的研究開発・支援の必要性
大, 28%
中, 37%
小, 28%
なし, 7%
(N=66)
当該技術
情報技術分野(実現)平均
30% 27%
23% 20%
今後求められる公的研究開発・支援
21%
9%
14%
17%
9%
11%
12%
9%
5%
5%
0%
0%
26%
12%
21%
23%
9%
9%
11%
15%
14%
10%
0%
0%
10%
7%
16%
19%
6%
5%
9%
16%
5%
10%
0%
0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70%
当該技術
情報通信分野(実現)平均
当該技術
情報通信分野(実現)平均
当該技術
情報通信分野(実現)平均
当該技術
情報通信分野(実現)平均
当該技術
情報通信分野(実現)平均
当該技術
情報通信分野(実現)平均
公的研究開発民間への資金研究施設・設備研究交流人材その他
大 中 小
(N:当該技術=63 実現技術数=24)
(参考)これまでの公的研究開発・支援の寄与の内容と今後の必要性
(インパクトアンケート調査結果より)
公的研究開発・支援の形態としては、公的機関による研究開発が寄与の内容が特に大きいと評価され、今後の必要性も寄与 内容程の高い評価ではないが、第1に評価されている。
次いで、民間への資金提供が、寄与の内容および今後の必要性ともに、大きいと評価される。
16
公的研究開発・支援の寄与の内容と今後の必要性
公的研究開発
民間への資金
研究施設・設備 研究交流
人材
0% その他
10%
20%
30%
40%
50%
60%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
寄与の内容
今後の必要性
127
2.3 オゾン層を破壊せず地球温暖化の点でも影響が少ないフロン・ハロン代替品製造・
利用技術(環境)
(1)事例分析に当たって
①対象とした技術の概要
本事例分析では、当該技術を以下のように捉え、調査・分析の対象とした。
・冷媒・発泡・洗浄等の用途で利用される CFC(フロン)および消化剤として利用されるハロン の代替品である HCFC(ハイドロクロタフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフロロカーボン)、
HFE(ハイドロフルオロエーテル)等の製造技術および利用技術。
・炭化水素系、水系、二酸化炭素、不活性ガス等の非フッ素系の代替技術を含む。
・フロン利用工程の削減技術を含む(洗浄分野)。
②調査方法および対象
本事例分析のための調査は、当該技術に関する専門家等へのインタビュー調査を主とし、さらに文 献調査・統計データ分析等を実施した。
インタビュー調査の対象を以下に示した。
・学識経験者(東京大学名誉教授)1名
・公的研究機関(産業技術総合研究所・フッ素系等温暖化物質対策テクノロジー研究センター)
研究者 2名
・関係産業団体等(オゾン層・気候保護産業協議会、日本冷凍空調工業会、ウレタンフォーム 工業会、日本産業洗浄協議会、日本消火器装置工業会)10 数名
・企業(空調機メーカー、総合電機メーカー、洗浄機器メーカー、化学品メーカー)8名
(2)技術動向
1970 年代にフロンガスによる成層圏オゾン層破壊問題が指摘され、さらに 1980 年代にオゾンホー ルの観測等を通じて、オゾン層保護機運が高まり、1987 年にモントリオール議定書(オゾン層破壊物 質規制)が締結され、オゾン層破壊物質として、CFC(フロン)、ハロン類等全廃にむけた規制措置 が導入された。さらに、1997 年には、地球温暖化問題への対応として京都議定書(COP3:温暖化物質 の規制)が締結され、温暖化物質として、HFC(主として HCFC からの代替物質)削減が関連産業の自 主規制等により目指されている。
フロン(CFC)は、洗浄、発泡、冷媒およびエアゾール等の用途で用いられていたが、1995 年末に 全廃を達成した。代替フロンとしては主に HCFC および HFC がある。またフロン系以外の代替として、
水系、炭化水素系の技術が用いられた。HCFC も 2020 年に実質全廃にむけて着実に進んでおり、この 代替物質として HFC が利用されている。また HFC においても、地球温暖化への影響が小さい製品が開 発されるとともに、また HFC の代替物質として地球温暖化への影響が小さい HFE も開発され、今後の 普及が見込まれる。
ハロンに関しては、その生産は 1994 年に全廃された。ハロン代替品としては、HFC、不活性ガス(主 に窒素)、CO2が利用される。HFC は地球温暖化ガスであるため、使用を限定するための国際的な自主 基準(METI、米国 EPA、UNEP)が設けられ、使用量は減少傾向にある。さらに、既存のハロンについ