(1)目的
インパクト実現技術/未実現技術の事例分析の目的を以下に示す。
①インパクト実現事例
・インパクト実現に至ったプロセスを明らかにする
・上記のプロセスの中で公的研究開発・支援が有効に機能したのかどうかを明らかにする
②インパクト未実現事例
・インパクトが未実現である理由および現状について明らかにする
・インパクト実現のための課題、阻害要因を明らかにする
・上記のプロセスの中で公的研究開発・支援が有効に機能したのかどうか、今後どうあるべき かを明らかにする
(2)調査の視点
インパクト実現技術/未実現技術の事例分析の調査の視点を以下に示す。
表1.1.1 インパクト実現技術/未実現技術の事例分析の調査の視点
インパクト実現技術 インパクト未実現技術
技術動向
・技術の種類/内容
・技術開発の背景
・関連する社会環境変化
・インパクト実現までの技術動向
・技術の種類/内容
・技術開発の背景
・関連する社会環境変化
・インパクト実現に向けた技術動向にお ける現在までの位置づけ
公 的 研 究 開 発・支援の位置 づけ
・関連する公的研究開発・支援
・公的研究開発・支援の寄与
・関連する公的研究開発・支援
・公的研究開発・支援の寄与
技術の経済・社 会・国民生活へ のインパクト
・実現しているインパクトの種類・内容
・インパクトの実現プロセス
・上記の用途分野ごとの相違
・期待されるインパクトの種類・内容
・インパクトの実現プロセス
・インパクト実現のための課題・阻害要 因
・上記の用途分野ごとの相違
その他
・当該技術の置かれている状況
・これまでの公的研究開発・支援の課題
・今後の公的研究開発・支援のあり方
・当該技術の置かれている状況
・これまでの公的研究開発・支援の課題
・今後の公的研究開発・支援のあり方
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(3)調査方法
インパクト実現技術/未実現技術の調査に当たっては、以下を対象として調査を実施した。
・当該技術分野について俯瞰的な観点で把握していると考えられる大学、公的研究機関等(各 種委員会の委員、委員長経験者等)
・関連する公的研究開発・支援へ参加した大学、公的研究機関、企業等
・インパクト実現プロセスに関連する企業、業界団体等
なお、基本的には、上記に該当する対象者への面接ヒアリング調査を中心として調査を実施し、面 接ヒアリング調査の中で紹介を得た対象者に、さらに面接ヒアリングあるいは、電子メール、電話、
アンケート等を補足的に調査を実施した。さらに、文献調査等を実施した。
(4)調査対象事例
インパクト実現技術/未実現技術の事例調査の選定に当たっては、大きくは以下の2つの視点が挙 げられる。
・インパクトの大きさ
・公的研究開発・支援の寄与の大きさ
このうちインパクトの大きさについては、インパクトアンケート調査対象となった 310 技術自身が、
起点とした科学技術政策研究所「技術予測調査」の延べ 6,458 課題から中で、相対的にインパクトが 大きいとみて差し支えない技術から抽出されているため、インパクトがほとんどない、あるいは今後 ほとんどインパクトが期待されない技術は含まれていないと考えられる。そこで、公的寄与を判断の 材料として考える。以下のような考え方により、調査対象事例の選定を行った。
・事例選定は、インパクトアンケート調査結果およびインパクト調査検討会における検討に基づく。
・選定する技術の数は、以下の通り、各分野で4事例とする。
①インパクトが実現している技術、将来期待される技術を各分野2事例ずつ選定する。
①-1 インパクトの大きい技術を1事例含める(公的寄与の大小は問わない)
①-2 公的寄与の大きい技術を1事例含める ①-3 類似技術に偏らないように選定する
②32 事例において、以下の観点からバランスするように選定する ・経済的インパクト/社会的インパクト/国民生活へのインパクト ・公的寄与があった研究開発段階
・公的寄与の内容
こうして選定された技術について、次年度、関係者への聞き取りを中心に調査を進める。今年度は 調査事項や聞き取りを中心とする手法の妥当性など、調査の内容検討へのフィードバックを目的に、
6 事例を選定して先行的な調査を行った。6 事例は、アンケート結果に基づいた各種インパクト、公 的研究開発・支援の大きさ等によるランキング、また p. 74 に示した指数などを参考として、インパ クト調査検討会において選定した。
73
上記の過程を経て決定された本年度事例対象とした 6 事例とその特徴を表1.1.2に示す。事例 分析に当たっては、本年度は重点4分野を先行するという方針からライフサイエンス、情報通信、環 境、ナノテク・材料分野から実現技術を各 1 事例、ライフサイエンス、環境分野から未実現技術を各 1 事例選定した。
表1.1.2 本年度事例対象とした技術とその特徴
技術名 分野 技術の特徴
がんの早期発見、診断技術 ライフ 社 会 、 国 民生 活
が大 高演算速度の並列コンピュータ
情報通信 公的寄与が大
オゾン層を破壊せず地球温暖化の点でも問題がないフロン・
ハロン代替品製造・利用技術 環境 経済、社会が大
実現技術
リチウム電池の小型化・長寿命化技術 ナノテク・材料 経 済 、 社 会 、 国
民生活が大 幹細胞による培養自己組織を人工臓器・組織の材料として用
いる技術 ライフ 経済と公的寄与
が大
未実現技術
安全な廃棄物処理及びリサイクル技術 環境 経 済 、 社 会 、 国
民生活が大
「技術の特徴」とはインパクトの内容についての傾向
74
参考: 事例対象技術選定のための参考としての指数設定1
①各分野で経済的インパクト、社会的インパクト、国民生活へのインパクト、これまでの公的 研究開発・支援の寄与、今後の公的研究開発・支援の必要性の大きさを指数化。
(指数=「大」の回答割合×100+「中」の回答割合×50+「小」の回答割合×25+「なし」
の回答割合×0)
②-1 現在既にインパクトが実現している技術については、経済的インパクト、社会的インパク ト、国民生活へのインパクト、これまでの公的研究開発・支援の寄与の指数に対して、DEA2に
1 事例選定は、インパクトアンケート調査結果及びインパクト調査検討会における審議に基づくが、検討会における検討 のための参考としての指数を計算した。アンケート結果というデータの性格上、厳密な意味での信頼性は保証されない。
2 DEA は包絡分析法とも呼ばれ、1978 年に Charnes, Cooper and Rhodes(テキサス大学)によって提唱された効率性の 評価に対するシステムズアプローチである。
この手法は多次元の属性を持つ評価対象に対し、有効領域(efficient frontier)としてベストプラクティスを定義し、
個々の案件を一次元尺度で評価する手法であり、政府、学校、軍隊などの公共団体の評価手法として提唱された後、企業 や事業の効率性分析や政府のグラント型研究開発の評価等に利用されている。
評価 項目B
評価項目A 第1優先順位(=efficient frontier)
評価 項目B
評価項目A 第2優先順位
(=第1優先順位を除いたefficient frontier)
表 1 . 1.3 ライフサイエンス分野における事例調査対象候補と事例調査実施技術(インパクト実現技術)
75
表1.1.3 ライフサイエンス分野における事例調査対象候補と事例調査実施技術(インパクト実現技術)
① ② ③ ④ ⑦ ⑧ DEA
経済 社会 国民 公的寄
与 基礎 応用 開発 実用化 その他 公的研 究開発
民間へ の資金
研究施 設・設 備
研究交
流 人材 その他 海外寄 与
今後の 必要性
公的研 究開発
民間へ の資金
研究施 設・設 備
研究交
流 人材 その他
101 がん化機構解明(転移機構、一部解明を含む)と
その応用 49 50 55 64 83% 64% 10% 6% 2% 96% 18% 25% 18% 24% 1% 68 76 71% 40% 31% 48% 28% 2%
0.96 102 発がん過程を促進する環境要因の発見とそれに
基づくがんの予防策 49 58 62 64 81% 54% 14% 8% 1% 92% 20% 24% 25% 16% 0% 60 74 73% 44% 28% 42% 25% 0% 0.99 103 がんの早期発見、診断技術 64 66 74 63 67% 63% 32% 18% 4% 84% 41% 27% 23% 21% 0% 60 71 51% 66% 31% 43% 25% 0% 1.00 104 神経伝達物質、修飾物質等の相互関連・調節機
構の解明(一部解明を含む)とその応用 38 34 39 59 95% 34% 7% 4% 1% 96% 16% 15% 22% 27% 0% 62 62 73% 41% 26% 38% 26% 0%
0.87 105
遺伝子発現制御機構の解明(一部解明を含む)と 発生分化の分子機構の概要解明(シグナル伝達 分子の構造と機能の解明を含む)とその応用
43 41 35 65 92% 44% 12% 5% 3% 92% 18% 27% 26% 31% 0% 70 72 78% 41% 28% 43% 27% 0%
0.96 106 動脈硬化の発症機構解明(一部解明を含む)とそ
の応用 53 47 57 53 88% 47% 13% 7% 3% 89% 24% 15% 32% 17% 1% 61 62 64% 57% 20% 45% 18% 0% 0.84
107 高コレステロール症治療薬 67 53 62 38 68% 45% 20% 15% 3% 70% 38% 12% 36% 18% 0% 58 47 49% 62% 16% 52% 17% 0%
1.00 108 心筋障害に対する外科手術的治療法 38 39 49 45 51% 39% 31% 42% 3% 68% 19% 29% 19% 31% 0% 54 54 56% 42% 29% 28% 43% 0%
0.70 109 新興感染症の予防ワクチン 48 58 62 59 73% 60% 39% 31% 9% 86% 43% 24% 31% 21% 0% 61 74 69% 58% 38% 33% 26% 0%
0.92 110 免疫応答の分子生物学的機構解明(一部解明を
含む)とその応用 38 37 42 58 86% 47% 15% 7% 5% 89% 24% 16% 28% 23% 1% 65 65 81% 35% 28% 37% 29% 0%
0.85 111 各種感染症についての迅速な原因微生物同定に
よる診断技術 48 51 55 55 72% 55% 29% 21% 5% 79% 31% 29% 23% 19% 0% 60 70 76% 52% 34% 35% 29% 0% 0.84 112 AIDSの治療法 44 60 57 58 74% 55% 29% 24% 8% 86% 36% 28% 33% 22% 0% 75 70 75% 60% 35% 43% 30% 0% 0.92 113 ゲノム高速解析技術 (高速、高感度、小型DNA
シーケンサー等) 51 40 37 60 75% 51% 26% 18% 3% 80% 38% 27% 33% 28% 0% 74 66 65% 59% 32% 43% 35% 0%
0.92 114 個人の遺伝子多型等を検出する塩基配列決定
技術とその応用 (診断やオーダーメード治療) 44 48 50 69 78% 55% 27% 12% 0% 93% 28% 21% 35% 21% 0% 70 75 69% 53% 30% 52% 36% 0%
1.00 115 核酸、タンパク質の配列情報のデータベース蓄
積・管理とその応用 39 30 27 69 78% 51% 23% 15% 1% 91% 24% 34% 28% 21% 0% 72 69 67% 48% 37% 36% 37% 0% 1.00 116 プロテオーム解析技術 36 31 29 65 84% 54% 9% 5% 1% 89% 23% 26% 29% 23% 0% 72 67 73% 47% 32% 46% 32% 0%
0.95 117 タンパク質あるいは核酸の特異的な相互作用の
分子機構解明(一部解明を含む)とその応用 33 28 25 65 93% 47% 7% 4% 1% 94% 14% 24% 25% 20% 0% 67 65 75% 35% 31% 37% 25% 0%
0.95 118 DNA判別による動物・植物の品種同定技術 43 41 38 58 68% 63% 20% 26% 4% 90% 25% 18% 21% 22% 0% 55 56 59% 57% 22% 39% 20% 0%
0.87 119 主要植物の全DNAの塩基配列決定技術とその応
用 (主要な有用遺伝子の確保等) 43 36 35 64 78% 48% 16% 16% 1% 92% 24% 25% 17% 17% 0% 62 59 64% 52% 34% 35% 23% 1%
0.94 120 体細胞クローン牛・豚の作出技術 38 45 31 66 71% 56% 33% 29% 1% 86% 22% 20% 22% 21% 0% 67 58 60% 49% 25% 39% 27% 1%
0.96 121 動物培養細胞による医薬品等有用物質の生産技
術 60 42 49 49 70% 57% 26% 12% 4% 74% 35% 14% 32% 22% 0% 63 56 52% 63% 22% 44% 28% 1%
0.92 122 医薬品の有効性や安全性(変異原性、催奇形
性、毒性)の検定技術 43 44 47 53 70% 45% 18% 27% 4% 74% 31% 20% 38% 20% 0% 55 67 61% 58% 33% 49% 32% 0% 0.80
⑨/N(%)
⑥寄与の内容(%)
技術番号 技術
⑤寄与の段階(%)