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図36C4読解図⑤(最終)
私はもしかしたら環境に取り返しのつかないことが起こるのかも しれませんが でも,原子力で電気を作るのに賛成です。理由は,
もし電気がなくなると,もっと大ぜいの人が困るからです。なぜ,
困るかは,家の電気が使えないと生活ができません。そして,家の まっくらなところでは,くらしていけないからです。だから きち んと 査して 配管を 交換していたらふせげた可能性が高いの だから きちんと 査していればもう こういうじこがおきない可 能性が盲いと思います。
でも,もう一つ困ることがあります。それは,お店の光がないと、
お店がくらくなってお店がやすみになってたべるものがすくなく なります。だから,私は,もうちょっとなら原子力発電をつくって もいいと思います。
ポストテストの結果について述べる。
まず,C1は,プリテストでは2つの意見の葛藤について何も 記述されたいなかった。しかし,下線部分が示すように,原子力 発電所に反対であり,新エネルギーの開発が行われていることを 記述した上で,新エネルギーの限界についても記述している。つ
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まり,ポストテストでは,この文章に書かれてある2項対立の図 式を意識できていると考えられる。しかし,その後に続く記述は 新エネルギーの限界は発電所の建設場所の問題であるかのよう な記述であることから, r経済性や安定供給に技術的な問題が 残っており,エネルギー供給に占める割合は1%に過ぎません。」
という文の意味は理解していない可能性がある。
C2は,原子力発電所に賛成の立場をとり,その理由を新エネ ルギーの現状,エネルギー資源の問題から記述している。しかし,
その後に原子力発電所の危険性について述べ,この文章に書かれ てある2項対立の図式を意識できていると考えられる。さらにC
2は,事故の原因についての自分なりの考えを述べ,原子力発電 に賛成という自分の意見の補強も行っている。
C3は,原子力発電所に賛成の立場をとっている。原子力発電 所の危険性にも触れているが,賛成の理由として,安全になるよ うに努力したらいいと述べている・その上で新エネルギーの導入 について,「新エネルギーだけで大じょうぶなように研究をすれ ば原子力発電所がそんなに電気をつくらなくてもよくなるので 事故もあまりおこらなくなると思います。」と,二つの意見の解 決策について述べている。読解図を見てみると,きちんと二つの 意見の対立が整理されていることから,意見の対立を踏まえたう
えで,発展的に自分の意見を記述することができたと考える。
C4は,プリテストでは,テレビが見れない,ゲームができな いという自分を基準とした理由を原子力発電に賛成の理由とし てあげていた。しかし,ポストテストでは,検査の徹底によって 事故が防げるという理由が加わっている。また,原子力発電の危 113
険性を前置きした上での意見表明になっているところに,意見の 深まりを見出すことができると考える。
《考察》
本研究の目的は,「図による読解および読解図にかかれた情報 を共有し,意見交換するという指導の枠組みの効果」を検証する ことであった。以下では,本実践で得られた,指導の効果を整理
し,今後の課題について述べる。
本研究は,研究1,2の反省を踏まえ,読解図読みをメタ認 知という枠組みから見直し,Bruer(1997)のいうメタ的気づき のある教授法へ転換させる方法について検討してきた。清河・犬 塚(2003)の事例をもとに,個人内で行われている読解の処理を 外化し,1人の指導者が「モニター役」と「評価役」を担当し,
児童は主にr課題遂行役」と適宜rモニター役」となるように学 習形態を組織した。その際,課題遂行役の児童の思考を反映し,
相互作用を促進する道具として読解図を位置づけ,この指導枠組 みの効果と授業に適用する上での示唆を得るための授業を行っ た。その結果,プリテストの児童の作文内容とポストテストの作 文内容を比較して,児童の読みが深まったことが示された。この ことから,研究1,2において読解図読みの効果が認められなか ったのは,読解図が本研究でいうところの課題役と評価役になり えるという誤解がその根本にあったと言えよう。自分の考えたこ とを紙に書いたり,メモしたりすることから,自分の理解不足を 見出したり,新たな疑問を見つけ出したりすることは,小学6年 生段階では困難であると思われる。本研究の仮説生成段階では,
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読解図を用いて文章読解という認知処理を行うとき,その付加が 少なくなることが期待された。しかし,認知処理の負荷が少なく なるのは,読解図によって顕在化された思考を他者と共有して分 かち持ち,認知処理を個人間で分離することによって達せられる
と考える。
また,本研究中,児童の傾向として顕著であったのが,自分勝 手な文脈の構築による文章の理解である。しかし,説明文の中か らすべての文章外情報を正確に推測したり,想像したりすること は不可能であろう。むしろ読み飛ばしながら読むことが必要な場 合もあるし,通常我々が文章を読むとき,読み飛ばしていること のほうが多いこともある。このように考えると西林(1991)の言 う「読み飛ばしている」という状態の明確な基準が曖昧になって くる。本研究では,読解図が読み飛ばしを防ぎ,それが教材説明 文から発展的な学習課題を見つけるという観点で指導した。しか し,それにこだわると,かえって大事な部分の読み取りとのバラ ンスを欠くことになる。本研究の例で言えば,原子力発電の仕組 みについて詳しく整理させる必要があったのか。大まかな理解で 保留し,文章から得られる情報と得られない情報を区別・整理し,
今後の課題として残すスキルを身に付けさせることも読み飛ば しを防ぐことになるのではないだろうか。そして,このスキルを 明示的に指導する必要性の検討や,指導法の検討については,本 研究から導き出された今後の課題であると考える。
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【総合考察】
本研究の目的は,図を用いた(文章のキーワード及びその関連 を図示する)読解が,文章理解(要点理解,問いの生成,また学 習方略)に与える影響を検討することであった。また,実践上の 示唆を得るために,その習熟訓練が文章理解に対してどのような 有効性を持つかについて検討した。
その結果,研究1,2では,本研究の仮説は支持されず,文 章理解に対する有効性は示されなかった。今回の研究では,読解 図を描くことが,読解力の低い児童には難しく,文章理解に対す る効果は認められないぱかりか,逆効果になっている可能性が示 唆された。また,統制群の比較においても,有意な差は部分的,
間接的には認められたものの,直的な効果としての明確な根拠を 見出すことはできなかった。これらの結果を受け,図を用いた読 解について,教育的位置づけ,指導法の見直しなどを再検討した 結果,方略知識を与えたのみで,方略知識の活用方法と体験が決 定的に不足していると考えた。方略知識の活用方法と体験を保障 するためにはメタ認知研究の知見が有用である。本研究3では,
研究1,2の結果と清河・犬塚(2003)のメタ認知モニタリングを 促進するための読解指導事例を参考にして,児童の読解図を児童 間の相互作用を促進する道具として位置づけた。さらに,相互交 流の場で,それを描くことの効果から,「描くこと,使うこと」
まで広げて,指導枠組みとして効果を検討した。その結果,児童 の授業中の様子や作文に思考の変化が認められ,本実践の有効性 と教育現場への適用可能性が示唆された。そして,研究1,2,
3得られたすべての結果から,「読解図は,個人内の思考を時間 116
的・空間的に効率よく共有化するワークスペースとして説明文読 解指導の価値と効果を有し、教育現場への適用は,他者との相互 作用の中で用いられることによってその可能性を持つ。」という 結論へ達したのである。
最後に,本研究の教育に対する意義と今後の課題について述べ
る。
まず,本研究を通じて筆者が強く感じたことは,「文章理解力 を把握することの困難さ。」である。これは,子どもたちは本当 に読解力を身につけているか,また,教師はそれを客観的に把握 する手段を教師が持っているかという問題である。本研究では,
読解力別の分析から,読解力上位の児童に読解図作成の効果が現 われても,中位,下位の児童には効果は認められなかった。また,
児童の書いた図と読解力を対応させてみると,読解力の高い児童 は図をかけて,読解力の低い児童は十分な図がかけていない。こ の差は一体何によるものであろうか。読解力はどのような過程で 身についていくのだろうか。この差の要因はいかなるものなのか を検討するとき,本研究のような方法は,すべてとはいえないが 児童の読解力の一面を把握するのに有用であると考える。同時に それは,評価材料となり得る可能性を持っていると言える。
また,本研究で示された読解図作成の認知コストの高さは教育 にとって,マイナスの側面しか持たないと切り捨ててしまうのは 早計であろう。実験ではその効果を促進するために,統制群の繰 り返し読む効果を防ぐように読解時間を設定した。しかし実験を 終えた今振り返ってみると,たとえ読解図を描くのに十分な時間 を与えたとしても,統制群は10回,20回と意欲の低下もせず機 117