296億円(56%)増となっている。これは、土地が基準年度の3年度目に当た り負担調整による額が少なかったものの、家屋及び償却資産が増加したためで
ある2')。
前掲表5-7に示されたように、昭和62年度の都税のうちわけをみると、固 定資産税は全体の14.2%(5,592億円)を占めるにすぎない。金額でみると、
前年度よりも5.6%ほど増大しているにもかかわらず、構成比では、前年度よ
り2ポイントも下がっている22)。都税全体が前年度よりも20%も伸びたにもか
かわらず、固定資産税が地価高騰を十分に反映せず、伸びなやんだからであろ う。
東京都における固定資産税の税収の変動をみると、驚くべきことに、地価高 騰下の昭和60年代(60~63年度)に入ってからも、年平均85%の伸びにすぎ ず、それまでと較べて目立って伸びたとはいえない。
表5-10東京都における固定資産税の推移
(単位:形)
HEfD51年度5457606360/5763/6C
表5-11固定資産税の構成
(単位:形)
償却資産
HLl*、51〆
50
(注)東京都主税局『都税収人の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)87ページによる。
表5-11に明らかなように、固定資産税収に占める土地の割合は年々低下傾 向にあり、償却資産が上昇傾向にあるのと対照的である。
表5-12固定資産税の項目別年平均伸び率
(単位:影)
=償却資産
7.48.710.3
(注)東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)87ページによる。
表5-12において項目別年平均伸び率をみても、やはり、土地の伸び率は、
昭和60年代に入ってから低下傾向にある。
-110-
可
土地 家屋 償却資産 純固定資産合計 昭和54/51年度
57/54
8.4 5.3
8.1 10.5
6.8 9.7
8.1 7.5
60/57 9.1 7.9 9.7 8.8
63/60 6.9 8.3 14.6 8.5
63/51 7.4 8.7 10.3 8.2
土地 家屋 償却資産 固定資産税合計
57.1 57.5 54.1 54.5 52.3
30.5 30.5 33.1 32.3 32.1
12.4 12.0 12.7 132 15.6
100.0 100.0 100.0 100.0 100.0 低下 57年度以降iihi;( 上昇
表5-13固定資産税項目の全体に対する増加寄与度
(単位:%)
土地家屋償却資産
一司回 ■旧囚田
純佶1管頂 lHホロ60/55田
(注)東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)87ページによる。
表5-13をみると、土地項目の固定資産税全体に対する増加寄与度も、昭 和60年代に入ってから、低下傾向にある。
表5-14東京都と全国の固定資産税伸び率の比較
(単位:%)
nIiirI篭
償却資産8.07.77.68.28.28.5(注)1.竃…地方財政計画ベース
2.東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成息元年5月)89ページによる。
表5-14に示されているように、昭和50年代には、東京都の固定資産税の年 平均伸び率は8.脇であり、全国の伸び率10.3%を下回っている。そのため、固定 資産税の東京都のシェア(都/全国)は、低下傾向を示している。昭和60年代 に入ってからは、横這い傾向を示している23)。
なお、近年の固定資産税の特徴は、償却資産のウェイトの増大にある。これ は、土地評価額に対して相対的に高い伸びを示している。航空機やコンピュー
-111-
土地 家屋 償却資産 純固定資産合計 昭和60/55年度 55.7 29.3 15.0 1000
63/60 441 31.6 243 100.0
ターの発達によってV機械設備投資(輸送十機械器具等)を中心とした総固定資 本形成が拡大したためか償却資産の設備投資に占める割合が高まっている。ま た、情報産業を中心とした東京への集中により、償却資産が伸びている。リー ス業の評価額全体に占めるウエイトが急増し、リース業20社で評価額の約20%
を占めるに至っている24)。いずれにせよ、土地の評価額が地価の実勢に比して 低く抑えられていることが、以上のような結果をもたらしていると考えられる。
都市計画税の税収の推移をみると、昭和60~63年度の伸び率は、東京都独自 の土地に対する都市計画税の軽減措置により、マイナス1.3%となっている。
表5-15都市計画税の推移
(単位:億円、形)
(注)1.
2.
3
※地方財政計画ベース 昭和63年度は補正予算額
東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)89ページによる。
Ⅳ小括
地価高騰下の用地費負担について、自主財源の面からまず第一に指摘される ことは、本来基本的に地価上昇に連動すべき固定資産税などの税収が十分に増 徴されていないことである。富と経済が東京に-極集中するにつれて、地価が
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都市計画税
伸び率
|割
跣シェア土地
|伸び率
家屋 51年度 500 8.8 22.2 391 8.9 109
|伸び率
8.354 879 9.9 20.7 672 10.0 207 9.8
57 1,060 10.0 19.1 779 9.9 281 100 60 1,346 9.0 18.7 1,002 10.1 344 6.0 61 1,466 8.9 18.5 1,089 8.7 377 9.5 62 1,511 3.8 16.1本 1,096 0.7 415 10.0 63 1,296 △14.2 858 △21.7 437 5.3 年平均
伸び率
60/57 63/60
8.3
△1.3
8.3
△5.0
7.0 8.3
高騰し、住宅や都市基盤整備の負担が増大し、都市基盤整備事業が滞るという 皮肉な現象が生じている。経済の発展と集中によって地価が高騰することが、
傾向的に不可避であるなら、地価高騰につれて固定資産税などの税収が増加す るような弾力的な税制が必要である。ところが、現行の固定資産税においては、
評価額や様々の減免措置によって、地価の水準が十分に反映されない仕組みに なっている。近年の地価の暴騰期において、経済の集中を反映した「償却資産」
の伸びもあって、「土地」項目のウェイトが低下するという奇妙な現象が生じ
ているのである。生活資産に配慮したうえで、土地や家屋などの固定資産税を適正な水準まで高めることは、投機の対象など生活に不用な不動産を手放させ、
供給を増やすために必要な措置である。それのみでなく、都市基盤整備などの 行政活動によって地価が上昇した部分も存在するとすれば、その費用を回収す
るための適切な方法でもある。
現行の財政調整制度は、大都市の行政需要の増大と資金不足に逆行する面を 有する。地方交付税の基準財政需要額の算定要因として地価水準を考慮に入れ ていないため、用地費負担などの大都市の行政需要に対する配慮が全く欠落し ている。各々の都市における地価の水準は、経済の発展と集中の指標と考えら
れる。地価の水準を考慮に入れるということは、用地費負担に対応するという限定的な意味だけではなく、経済の発展・集中にともなって生じる行政需要に 広く対応できるという意味でも、検討に値すると思われる。
現行の財政調整制度は、誤まった資源配分によって、一方では、大都市の住 宅や交通手段等の都市基盤の貧困をもたらしている。また他方では、筆者の勤 務地である沖縄を代表とする地方において、節約のインセンティブのはたらき にくい資金を大量に供与することによる資源の浪費や行政需要の乏しい地域開 発による環境破壊などを引き起こす誘因になっている。財政移転が多い沖縄は、
後者の研究テーマの「宝庫」なので、これについては今後の研究課題としたい。
富と経済の東京への-極集中は、東京に豊かさをもたらすのではなく、住宅 や都市基盤の貧困という問題を引き起こしているという視点が、重要であろう。
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<注>
D東京都『マイタウン東京’89』東京都総合実施計画17ページ。
2)東京都『都政’88』365ページ。
3)東京都『データが語る今曰の都財政』(昭和63年10月)18ページ。~’
4)東京都『東京の土地1988(土地関係資料集)9ページ。
5)東京都『都財政の歩みと今後の課題』(昭和61年10月)16ページ。
6)東京都『データが語る今日の都財政』(昭和63年10月)9ページ。
7)前掲資料10ページ。
8)前掲資料11~12ページ。
9)前掲資料12ページ。
10)東京都『都財政の歩みと今後の課題』(昭和61年10月)38~39ページ。
11)東京都『データが語る今日の都財政」(昭和63年10月)24ページ。
12)東京都『東京都は富裕団体ではない』(昭和59年8月)6~9ページ。
13)東京都主税局『東京都税務統計年報昭和62年度』(平成元年7月)
概観6ページ。
14)前掲資料概観7ページ。
15)前掲資料概観7ページ。
16)東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)9ページ。
17)前掲資料18ページ。
18)東京都『都民所得統計年報昭和62年度』(平成元年3月)13~14ページ。
19)東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)19ページ。
20)前掲資料26ページ。
21)東京都主税局『東京都税務統計年報昭和62年度』(平成元年7月)
概観9ページ。
22)前掲資料概観8ページ。
23)東京都主税局『都税収入の推移と背景及び今後の見通しに関する調査』
(平成元年5月)88ページ。
24)前掲資料92ページ。
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おわりに-用地費と情報公開一
道路・住宅・霊園の各々の用地費負担とそれにまつわる制度上の問題点など
については、各章の「小括」にまとめられており、第7章で財政制度面での考え方を示し、全体のまとめと位置づけているので、反復は避けたい。
この論文を書いている間にも、東京都の用地取得難は、深刻化の一途をたど
っている。例えば、「四季の丘」の分譲を手がけた東京都住宅供給公社では、
平成に入ってからは、用地取得難によって、着工住宅戸数ゼロの「都住宅非供
給公社」になってしまったことが、明らかになった。公社は、東京都が進める公共施設の併設(合築)計画による若干の賃貸住宅建設しか計画できない状態
である。現在の地価高騰下では、民有地を購入して住宅を建てることは、高価格、高家賃をまねくので、もはや不可能に近い状態である(『読売新聞』平 成2年1月6日)。その後、東京都住宅局では、ここ4年間民有地取得がゼロ であったことにより毎年1,500戸分の住宅新設という長期計画の達成が困難に なったので、「最後の手段」として、初の新聞広告による土地募集を、決定し た。市街化区域内の3,000平方メートル以上の土地の公共住宅用地としての譲 渡を呼びかけたことが報道されている(『朝日新聞』平成2年2月22日)。し
かし、思わしい反応は乏しかったとのことである。今回の地価高騰が引き起こした最大の問題の一つは、本文で明らかにしたよ うに社会資本の整備のおくれである。東京都品川区が昭和63年3月に行なった
「地価高騰に関する意識調査」には、地価高騰に対する住民(品川区民)の考 え方が示されている。例えば、「地価高騰で道路や公園など、社会資本の整備 がむつかしくなっているが、社会資本の整備のためには、区は無理をしても土 地を購入すべきだと思いますか」との問いに対しては、「そう思う」と答えた 人が最も多く、38.5%を占めている。また、「地価高騰の責任はどこにあると
思いますか」との問いに対しては、「土地問題に真剣に取り組んでこなかった政府」という選択枝を選んだ人が最も多く、57.5%にのぼっている。地価高騰 の責任が政府の「土地無策」にあるとすれば、せめて都内に残された国有地は、
その大半を住宅用地などとして、東京都などに提供してはどうかと思う。
今回、この論文を書くにあたって、最も苦労した事は、用地買収価格につい
ての資料を収集することであった。行政側の一部には、用地の買収価格につい-115-