Q:きのこの特別展では、パネルではなく本 物の新鮮なきのこの採取し、展示すると 聞きました。自然相手の展覧会ですが、
そのための苦労を教えてください。
A:展示用のきのこは職員だけでなく、友の 会会員できのこ好きなメンバーが週末を利用 して採取して、持ってきてくれます。いずれ のきのこも約 3 日で展示に耐えられなくなる ので、協力して補充しています。やはり、自 然の生き物なので、その年の天候によって発 生が少なく、採取できないのではとヤキモキ することもあります。
Q:少ないスタッフでがんばっていらっしゃ います。顧問や学術委員の協力は不可欠 ですが、人間関係の苦労とか楽しさとか ありますか?
A:17名の学術委員は博物館に深い愛情を持 昭和38年、鳳来寺山の自然を愛する人々の
熱意によって、愛知県初の自然科学博物館が 開館した。今年めでたく40周年を迎えた鳳来 寺山自然科学博物館の歩みと未来について、
学芸員の加藤貞亨さんにお聞きしました。
〈加藤さんについて〉
Q:加藤さんはきのこの専門家とお聞きしま したが、館での専門はなんですか?
…なんと東京で過酷なサラリーマン生活を経 験してきた加藤さん。いつかは産まれ育った 鳳来町に戻ろうと思っていた時、博物館で欠 員があると聞き、迷うことなくUターン。大 学の専門は違っていても、子どもの頃から慣 れ親しんだ鳳来寺山の自然は体が覚えてお り、館の三本柱である、鉱物・植物・動物に ついて一から学ぶ必要があったとのこと。特 に「きのこ」への興味が深く、自らの専門と されました。加藤さんは子どもの頃、父親と 出かけたきのこ狩りで、形・色など多種多様 なきのこを発見する楽しさを実感し、きのこ に興味を持ったそうです。
Q:博物館は地学、植物、動物と分野が多岐 に渡っています。各学術委員がいらっし ゃいますが、学芸員は加藤さんひとりで、
館の収蔵品の管理・展示をされるには苦 労も多いと思います。どのような点が大 変ですか?
A:博物館の職員は館長、学芸員 1 名、臨時 職員 2 名の 4 名。この 4 名で、展示、教育普 及、資料の収集と保存、調査研究・報告、友 の会運営、来館者対応、清掃等の日常業務を 行っているため、特に収集と保存、調査研究 に対する時間と人の確保が出来ない。少人数 での博物館運営に対し、学術委員および友の 会の皆さんの協力は不可欠です。
Q:加藤さんが赴任されてから発刊が始まっ た手書きの「はくぶつかんだより」はと ても好評です。どうすればそのようにイ ラストが描けるのですか?
徳川美術館企画情報部係長
加 藤 啓 子
(教育普及)
鳳来町立鳳来寺山
加 藤 貞 亨
自然科学博物館学芸員(自然)
語 る 聞 く
鳳来寺山自然科学博物館 開館40周年を迎えて
物館利用講座」を実施されていますが、
反響はいかがですか? 今後、この講座 の展開をどのようにお考えですか?
A:近年、小・中学校が博物館を利用する回 数が減少しています。総合的学習など学校の カリキュラムが変わりましたが、先生方が博 物館の利用方法を知らないように思われま す。そこで、14年から 8 回講座を実施しまし た。鳳来町および東三河の教育委員会に講座 の案内を出しました。小中学校の先生が対象 ですが、圧倒的に小学校の先生の参加が多い。
これまでの講座の反響を確認するためにア ンケートを実施し、現在集計中です。参加し たかったが時間が合わなかった、時間に余裕 のある夏休みに実施してほしい、などの意見 がありました。反響としては、水性生物の調 査法など、すぐに活用できるカリキュラムが 実施されたり、小学 6 年生の地層の授業で、
実際に博物館に見学がありました。
今後は詳細で具体的な博物館および鳳来寺 山の見学方法を提示しないと、なかなか利用 されないので、それらのカリキュラムを作成 したい。博物館を利用した先生が次の先生に 引き継ぐことがないので、毎回利用方法を PRしなければなりません。
Q:鳳来町の児童生徒を中心に教育普及活動 を展開されていますが、今後の学校教育 への対応をどのようにお考えですか?
A:出張教室の要請が増えています。また、
学校から講座や講演の要請があれば、横山館 長や学芸員が日常業務に支障のない範囲で引 き受けています。
来年度は年度の初めに、鳳来町および東三 河、遠州地方の教育委員会に見学1日コース とか半日コースといった具体的な博物館利用 方法を行事案内と一緒に配布する予定です。
〈鳳来寺山自然科学博物館の友の会〉
Q:平成15年度は734名と多数の登録数に驚 きました。案内の発送や講座の実施など 運営が大変と思います。友の会はどのよ うに運営されているのでしょうか?
A:友の会の業務は臨時職員が担当し、受付 や発送作業を行っています。会では総会を開 催したり、「館長と歩く〜の自然シリーズ」
っていらっしゃいます。展示だけでなく、観 察会では講師として指導いただいています。
収蔵品の分類や収蔵なども手伝ってくれま す。特に、現在は横山館長はじめ職員の意欲 的な展示・企画を学術委員は快く応援してく れます。信頼関係も強く、とてもよい関係で す。
植物に関しては11年かけて収蔵標本の分 類・整理ができましたが、鉱物や動物、きの こなどはまだ分類および整理が出来ていませ ん。湿度・温度調整ができる大きな収蔵庫が ないのが悩みです。
〈鳳来寺山自然科学博物館での
教育普及活動について〉
Q:近年、月1回以上のワークショップを開 催され、年々参加者も増え、毎回内容も 充実されています。その中で「これはよ かった」と感動した企画はありますか?
A:まず、個人的な反省としては、講座を増 やしすぎたこと。この実施回数が当たり前と なり、企画・開催する側としてはきびしい。
講座については、自然相手なので、同じ講座 でも季節や時間で自然の変化を体験できるの で、飽きることがありません。参加者の 8 割 以上が友の会会員です。新聞等で講座開催の 告知はしていません。それでも、定員を上回 る状態となります。講座の情報を得るために 友の会に入会される方も多いです。
〈鳳来寺山自然科学博物館と
教育現場との関わり〉
Q:平成14年度から「先生のための自然と博
ています。協会が若い学芸員の活動の発表の 場を設けてはどうだろう。また、彼らが協会 の活動に快く参加・交流できるように加盟館 は働きかけていかなければならないと思う。
〈今後の鳳来寺山自然科学博物館〉
Q:家族形態も変わり、来館者・企画の参加 者も変わっていると思います。不安な現 代社会に対し、教育普及を通して、博物 館から何か発信したいことはあります か?
A:10年前の子どもと比べて、今の子どもが 変わったとは思いません。最近は仮想現実が あふれているが、本物に勝るものはありません。
自然に身を置き、自然を肌で感じてほしい。
Q:多くの鳳来寺山を自然を愛する人々によ って作られ、受け継がれてきた博物館を 維持し、後世に伝えていくのはとても大 変重い任務と思います。今後の館の運営 に対し、抱負をお聞かせ下さい。
A:足元の自然をしっかり見つめ、記録し、
伝えていくのが博物館の指命。博物館は建物 から始まったのではなく、鳳来寺山の自然を 愛する先人が博物館の必要性を感じ、設立し たものです。
新城市、作手村との市町村合併の話しが進 んでいます。合併後、博物館の運営方法も大 きく変わる可能性があります。館長および館 員は博物館の発足過程やこれまでの歴史、博 物館の在り方、必要性を積極的に伝えたい。
や「きのこ観察」などの講座を開催するよう になりました。
さらに平成15年からは「博物館協力隊」と いうボランティアグループが発足し、現在22 名の登録があります。あくまで、博物館のペ ースで、当博物館らしいボランティアを養成 していきたいと考えています。
Q:今後の博物館独自の友の会の活動予定は ありますか?
A:平成15年からはグループ会員制を新たに 導入しました。校長会やパンフレットを通し てグループの入会を推進しました。
平成17年、友の会発足から30周年を迎え、
記念式典を考えています。会員が増え、会員 との関わりが薄くなっているようにも感じま す。現状でいいのか、会員が希望する情報が 届いているのか、会員の目的は何かなど、コ ミュニケーションを計りながら、これからの 鳳来寺山自然科学博物館ならではの友の会の 姿を考えていきたいです。
〈愛知県博物館協会について〉
Q:博物館は愛博協の設立当初から加盟、活 動をされていますが、会議が名古屋で開 催されたり、参加するだけでも苦労があ ると思いますが、愛博協に対して要望は ありますか?
A:協会から奥三河の極小館の意見も反映す るために理事館になるよう要請あり、それを 受け入れ、現在に至っています。実行委員会 に参加することで、他館との交流ができ、他 分野の館の取り組みや情報が得られ、刺激に なっています。
Q:愛博協会員の他館との共同企画を希望さ れますか?されるなら、どのようなこと を企画したいですか?
A:これまで他館から作品を借りて展示する こともなく、交流があまりありませんでした。
平成14年に文化庁芸術拠点形成事業として
「愛知県博物館協会・子どもと博物館研究会」
の主催で、一宮市博物館において開催された
「伝えるということは?」展への参加は、展 示方法や企画進行など大変参考になりまし た。
最近は実行委員会にも若い学芸員が出席し
<インタビューを終えて>
地元の人々の鳳来寺山を愛する気持ちか ら博物館が開館し、40年間博物館を愛する 人々によって、博物館が維持・運営されて きたことがよくわかりました。現在の博物 館からは、横山館長や加藤さんはじめ館の 運営の携わる皆さんの優しさがにじみ出て いました。派手なジオラマや視聴覚機器が なくても、自然と人とのふれあいを大切に した、手作りの博物館らしい展示や企画が 継続されることを願います。