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鳥山マジック

ドキュメント内 『ドラゴンボールの贈りもの』 (ページ 43-47)

57) 人造人間13号:地球の半分を破壊するほどの必殺技「SSデッドリィボンバー」を 使用可能。でも地球の半分ってあんまり大したことない…?

(「極限バトル!!三大超サイヤ人」 鳥山明 1992年)

←ベジータですら地球を壊せるのに…。

58) 久保帯人先生:1977年生まれの日本のマンガ家である。代表作は「BLEACH」。

ドラゴンチルドレンとしてドラゴンボールにコメントを寄せた。

59) 絶対に負けないために戦う:ベジータの名シーンである。

←やっとライバルが自分より上だと認めた。おせーよ。

るのだ。左右反転させた時に狂いが尐ない人は、絵が上手な人だと言われている。

どうでもいいことのようだが、これは重要なのである。なぜなら、海外向けに翻訳され て出版する際、左右反転してから発行されるのだ。文化の違いからくる問題だが、海外で はマンガを左から右に読んだりすることがよくある。そう考えると、絵が下手な人にとっ ては致命的な問題となる。どうにかごまかせていたにも関わらず、反転されると絵の下手 さや歪みが際立ってしまうのだ。

そんな理由から、多くのマンガ家は自分の原稿を反転されることを嫌うそうだ。が、鳥 山先生の絵は違った!彼の絵は左右反転させても違和感を与えないのだ。担当編集であっ た鳥嶋氏いわく

「バランス力に優れており、背景などを描かなくても画面が持つだけの構成力とデッサン 力を持っている」

と評価している。さすが幼いころから絵の勉強をしていただけある。基本的な技術はやは り高水準であったのだ。

(「神龍通信 第 1 号 歴代担当者座談会」『ドラゴンボール大全集』別冊付録、集英社、

1995 年)

鳥山先生の絵は、作品名だけが先行することにより、技術の割に評価されることがどう も尐ないように感じる。しかし、世界一のマンガとして評価されるだけの描写技術は確か にあるのだ。

組み立てられたどつきあい

ドラゴンボールといえば、なんといってもバトルである。筋肉を鍛え上げた男たちがそ れはもう派手にどつきあいをするのだ60)。膝や肘、はがいじめなど結構何でもアリである。

実に痛そうだ。

そんな殴り合いがメインとなるマンガだが、ここにも鳥山先生ならではの技術力が多く 隠されている。これは言葉では中々説明がしにくいことだが、コマ割、構図、演出におい ての技術力が飛びぬけているのだ。

マンガにおいてこれらの要素が重要視されるのは、読者の「視線誘導」に関わってくる からである。マンガを読む際に何となく見ている人は多いと思うが、この「視線誘導」が できているかどうかで読みやすさ、しいては面白さに違いが出てくるのだ。読みにくいマ ンガというのは、これが出来ていない場合が多い。

これはもう言葉で説明するよりも絵を見ていただいた方が早いので、図(ドラゴンボー ル完全版16巻230話 2003年)で紹介する。

ドラゴンボール完全版16巻84ページ

「ギッ」「グアッ」「ボッ」「ギャンッ」という効果音が、読者の視線を上手く誘導している。

最後のコマは、悟空を左上に回り込ませることで、視線を左のページに誘導している。

ドラゴンボール完全版 16巻85ページ

2コマ目から3コマ目には、「フッ」という効果音と、ベジータのセリフで視線を左に流し、

左上からの悟空の攻撃に繋げている。

当たり前のように見えるかもしれないが、このように、読者の視点を無駄に止めること なく、すらすらと読ませることが重要となるのだ。この点において、ドラゴンボールはか なりの高水準を保っている。こういった視線誘導がしっかりとできていることで、「静止画 なのに動きがある」ように見せることが可能となるのだ。

紙面上にて繰り広げられるドラゴンボールの大迫力バトル。何も派手な技やエフェクト で誤魔化しているわけではなく、鳥山先生ならではの組み立てられたどつきあいなのであ る。

最終形態の不気味さ

悪役について述べた時に尐し語ったが、ドラゴンボールの悪役はやたら変身をする。変 身が持つ意味については上記で語ったので省略するが、ここでも鳥山先生の技術力やアイ ディアが見事に生かされていると感じた。

普通、敵役が変身するとなればどんどん凶悪に、おぞましくなるのが普通である。もし くは巨大化するというのもよく見られる変身である。ドラゴンボールの悪役、フリーザ様 もそのように変身していた。しかしである。フリーザ様は最後の変身、最終形態になる時 に意表を突いた変身をしたのである。それまで巨大化し、凶悪な姿になる変身を続けてい たが、最後の最後に小さくなり、さっぱりした姿に変身をしたのだ61)

この意外な変身は、当時としてはかなり斬新だったように思う。大きく凶悪になるのが 当たり前だっただけに、逆にインパクトが強かったのだ。しかもこのデザイン、余計なも のを省略し、あえてシンプルなデザインにしたからこそ、不気味さが際立っている。鈴木 央先生62)も、「シンプルで、かっこよくて、強そうで、圧倒的な恐怖を感じさせるデザイン」

と評している。

(「ドラゴンボール ランドマーク」 鳥山明 180ページ 2003年)

セルや魔人ブウも同じように、最後はスマートで不気味さや恐怖さを感じさせる変身を行 っている。この意表を突いた変身、そして不気味さや恐怖を感じさせるアイディアとデザ インセンスこそ、魅力的な悪役を作る上での糧となった技術力だと感じる。

[注]

60) 派手にどつきあい:そのたび、服もボロボロになる

↑ただし、ズボンだけは何があっても破けない

61) スッキリしたフリーザ様:巨大化、怪物化を経て、さっぱりしました。

←一番左が最終形態。あれ、パンツが…。

62) 鈴木央先生:1977年生まれのマンガ家。代表作は「ライジングインパクト」。

ドキュメント内 『ドラゴンボールの贈りもの』 (ページ 43-47)