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マンガにしかない特殊なエンターテイメント

ドキュメント内 『ドラゴンボールの贈りもの』 (ページ 52-58)

75) ビッグバン・アタック:ベジータの必殺技。片手で偉そうに撃つのがコツ。

←偉そうな顔をするとポイント高し。

76) ファイナル・フラッシュ:ベジータの必殺技。両手を合わせて発動させる。

←セルを相手に使用。ちなみに全くのノーダメージであった。

77) ファイナルシャインアタック:GTにて使用されるベジータ曰く「俺様の神必殺技」。

シャインという単語と技の関連性は全く不明。たぶん語呂の良さとかそんなの。

しかし、ここにこそドラゴンボールが愛される究極の理由が隠されていると私は考えて いる。ドラゴンボールは、マンガにしかないエンターテイメントを極限まで体現した作品 なのだ。ドラゴンボールという、ある意味いい加減な作品に隠された魅力。それを解析す ることで、第三章の締めくくりとする。

週刊連載が生んだその場しのぎ

ジャンプの看板として活躍したドラゴンボール。同じく、現在ジャンプの看板作となっ

たONEPIECE82)。その作者である尾田先生83)は、毎週「次はどうなるんだ」とわくわくし

ながらドラゴンボールを愛読していたそうだ。

(「ドラゴンボール ランドマーク」鳥山明 163ページ 2003年)

しかし、次はどうなるかが分からなかったのは読者だけではない。作者もよく分かって いなかったのだ。鳥山先生自身が毎週「次どうしよう…」と悩みながら作っていたそうだ。

その場しのぎな設定や、物語の矛盾が大量発生するはずである。週刊連載だからこそ生ま れる弱点だと言えるだろう。

だが、この弱点はドラゴンボールにとって大いなる武器となったのでは、と私は考える。

完璧でないからこそ、矛盾やいい加減な設定が大量にあるからこそ、ドラゴンボールは接 しやすいのではないか。

完璧ゆえの固さ

映画というものは基本的に一話完結である。約 120 分の間に物語が完結するように作ら れるのだ。そして、映画は完成してから初めて視聴者に与えられるものだ。何が言いたい かというと、映画はマンガと違って矛盾やらおかしな設定を出来る限り減らすことが可能 なのだ。先の見えない週刊連載マンガでは、鳥山方式でやると矛盾やおかしな点がいくつ も見つかってしまう。それに比べ、物語を完成させてから視聴者に公開するタイプの映画 では、脚本の時点でそういった矛盾を消すことが可能なのだ。これは、一話完結である映 画の強みである。

しかし、どこか固さが出てしまうのも事実だ。完璧であればある程、矛盾やふざけた内 容が尐ない程、どこか固い雰囲気が出てしまうと私は考える。完成度が高い作品は、それ なりの近づき難さを放ってしまうのだ。それに比べ、ドラゴンボールにはそういった固さ が全くないように感じる。なぜか。それはやはり、矛盾やら後付け設定やら、遊び半分な 内容がところどころに見られるからだ。

尾田先生はドラゴンボールを「週刊連載という日本独特の文化が生んだマンガ」と表現 した。週刊連載ゆえの矛盾、後付け、悪ふざけ、いじりやすさ。これを良しとするかどう かは人それぞれだろう。しかし、これらの要素によって、ドラゴンボールは確実に接しや

すい作品となっているのでは、と私は思う。遊びでつけたようなキャラクター名、いい加 減な設定、ふざけているような変身ポーズ、矛盾、真似したくなるようなダサい必殺技…。

こういった要素が、ドラゴンボールという作品の敷居を低くしていると私は感じる。それ はつまり、ドラゴンボールという作品に触れやすいということだ。

更に、ドラゴンボールにはあまり頭を使うような物語はない 84)。物語を隅から隅まで見 ていなくとも、何となくで楽しめる作品なのだ。これもやはり、作品から固さを消すとい う意味で重要になっている。完璧に作り上げられた作品の場合、物語を集中して見ていな いと、分からなくなるようなことがあるだろう。しかし、ドラゴンボールは多尐見ていな くても、特に問題なく楽しめる。たくさんの人々が細かいことを気にせず楽しめる作品、

それがドラゴンボールなのだ。

マンガだけが持つエンターテイメント

ここから先は、かなり個人的な考えを基に書かせていただく。マンガに求められるエン ターテイメント性とは何だろうか。質の高さだろうか、作品としての完成度の高さだろう か。色々な答えがあるとは思うが、私は「文化性の低さ」だと考えている。映画や小説の 様な文学的なものや、高い文化性は必要ないと私は考える。マンガとはもっと身近で、手 頃で、適当な文化でいいのだ。あまり頭を使わず、心構えも必要とせず、土曜の昼にカッ プメンでも食べながら片手に楽しむ程度の文化でいいと感じている。もちろんマンガにも 色々なジャンルがあるので、それが全てだとまでは思わない。しかし、ドラゴンボールの ように多くの人々に愛される作品となる為には、そういった「いい意味での適当さ」が重 要となるのでは、と思う。週刊連載ゆえの適当さ、そして元ギャグマンガ家ゆえの親しみ やすさ、尐々ださいゆえの敷居の低さ。偶然かもしれないが、ドラゴンボールはマンガに しか出せないエンターテイメント性を極限にまで引き出していたのである。

ドラゴンボールは、世界一の「マンガ」なのだ。

[注]

78) サイヤ人:戦闘種族を名乗る宇宙人。基本的に皆地獄に落ちる可愛そうな種族。

79) ナメック星人:緑色の人たち。触角が生えている。頭さえ残っていれば再生可能。

水だけで生きられるうえ、性別というものが存在しない。ん?ということは、ピ ッコロさんは雌雄同体?

80) 悟空の兄:名前はラディッツ。主人公の兄という重要なポジションにも関わらず、

出番も扱いも性格も戦闘能力も態度も口も何もかも悪い。スカウターが良く似合

う。

←悟空や父親にはあまり似ていない?

81) 精神と時の部屋:部屋の中と外では時間の流れが違う特別な場所。

82) ONEPIECE:1997年より、週刊尐年ジャンプにて連載されているマンガ。作者

は尾田栄一郎。海賊王を目指す尐年が主人公の、海洋冒険マンガ。ジャンプの現 在の看板作である。日本で一番売れているマンガである。

83) 尾田栄一郎:1975年生まれ。ONEPIECEの作者。ドラゴンボールの大ファンで

もある。

84) 頭を使わないマンガ:ボーっと読んでるだけでも面白いよ!是非機会あればご一読 を…。

おわりに:夢の神

どんな願いも叶えてくれる不思議な玉、ドラゴンボール。作中において、様々なキャラ クターが色々な願いを頼もうと試みていた。ある者はギャルのパンティーのために、ある 者は世界を支配するために、ある者は不老不死のために、ある者は彼女へのプレゼント、

ある者は素敵な彼氏…。皆自分に正直である。

どんな願いも叶えてくれ、人々に夢を与える。

「ドラゴンボール」というマンガも、そんな作品だったのでは、と私は思う。日本だけに 留まらず世界で活躍したことや、リバイバルブームを巻き起こしたこと。他のマンガには そう簡単に真似できないあらゆることを、ドラゴンボールはやってのけた。ドラゴンボー ルは、日本のマンガ界に大きな希望や可能性を贈ってくれたのだ。

今回の研究で、改めてドラゴンボールは尐年マンガなのだと認識させられた。ヒーロー と悪、必殺技やセリフ、演出など、どこをとっても尐年の為に作られた尐年漫画なのだ。

正直なところ、私自身もかなり尐年の気持ちに戻ってこの論文を書いていた。そのため、

ところどころ暴走気味で意味不明になっているが、どうかご容赦いただきたい。

最後になりましたが、この場で我らがヒーロー富田先生と、共に学んだ富田ゼミの戦士 たちにお礼を言いたいと思います。皆と共に戦えたこの2年間は本当に楽しいものでした。

いつもいつも皆や先生からは元気をもらってばかりでした。もし僕が元気玉を作れるなら、

特大のものが出来あがっていただろうと思います。きっとフリーザ様なんて粉々にできた でしょう。ええ。あんな雑魚楽勝ですよ。

それでは本当にありがとうございました。特に富田先生!本当に色々とお世話になりま した!最後に孫悟空の名台詞をお借りしてこの論文を締めたいと思います。

「サンキュー!!富田ゼミ!!!またな!」

[参考文献など]

 毎日新聞 『まんたんWeb』 2009年2月16日

 NZGamer.com『Armageddon 2008 Preview』 2008年4月14日.

 集英社『DRAGON BALL大全集―鳥山明ワールド(2)』 1995 鳥山明インタビュー

 「集英社、コミック単行本『Dr.スランプ』絶好調──第6巻初版220万部、業界新」

『日経産業新聞』1981年12月21日付、4頁

 鳥山明『ドラゴンボール ランドマーク尐年編〜フリーザ編』2003年

 フリー百科事典『Wikipedia』

 「親の顔がみてみたい 夏休み企画3 週まるまる ドラゴンボールスペシャル」『週刊 ファミ通』、エンターブレイン刊、2006年

 『STUDIO VOICE』 2008年2月号

 鳥山明『とびっきりの最強対最強』集英社 1991年

 オオイシナホ『Vジャンプ』 2009年

 『アタリ、「ドラゴンボール」のライセンス問題で 350 万ドルを支払い』 INSIDE NEWS ARTICLE 2007年12月11日11時55分

 『バンダイプレスリリース』2005年4月18日

 『CESAゲーム白書』 2003年

 Dragon Ball Z Season One the Number One Anime Seller『ANIME NEWS NETWORK,』May 17th 2007.

 鳥山明『ドラゴンボール フォーエバー 人造人間編〜魔人ブウ編』2003年

 『〈ふたつのM-マンガと村上春樹1〉北欧に響く「かめはめ波」』

 鳥山明「燃え尽きろ!!熱戦・列戦・超激戦」集英社 1993年

 鳥山明「地球まるごと超決戦」 集英社 1990年

 鳥山明「復活のフュージョン!!悟空とベジータ」 集英社 1995年

 鳥山明「銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴」 集英社 1994年

 鳥山明「極限バトル!!三大超サイヤ人」集英社 1992年

 「神龍通信 第1号 歴代担当者座談会」『ドラゴンボール大全集』別冊付録、集英社、

1995年

ドキュメント内 『ドラゴンボールの贈りもの』 (ページ 52-58)