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風レンズと風車の相対位置

第 4 章 周辺付加物を用いた VAWT に関する

4.2 風レンズ(つば付きベンチュリ形状の付加物)の適用

4.2.1 平面型風レンズの適用

4.2.1.6 風レンズと風車の相対位置

つば付きベンチュリ形状の構造体である風レンズは,スロート部で最も風を増速させる.

よって,水平軸型風車に適用する場合は,スロート部に風車回転面を設置することで大き な効果が得られる.しかし,垂直軸型風車は風車回転面が主流方向に幅をもつため,増速 部であるスロートを風車のどこに位置させるのが出力増加に効果的であるかを調べる必要 がある(図4.33参照).そこで,風車に対する風レンズの相対位置を,主流方向に変化させ て出力性能の変化を調べた.風レンズのスロート部を風車前面(x=-Dwt/2=-0.35m),中心

(x=0m),及び後面(x=0.35m)に位置させた場合のそれぞれの結果を図4.34に示す.用いた風

レンズはL=1.14D,h=0.5D,φ=15°である.スロート部が風車中心に位置する場合に最も高

い出力が得られた.スロート部が風車前面にある場合は,広い周速比領域で出力を発揮す るものの,最大出力は最も低い.スロート部が風車後面にある場合は,風車前面の場合よ り最大出力が高い値をとるものの,風車中心の場合には及ばない.風車後面の場合の出力 曲線は,最大出力を発揮する周速比領域は非常に狭く,インレットがない場合の出力曲線 の形状とよく似ている.この理由としては,風車に対し風レンズを下流側に設置したこと で,インレットの効果が得られていないことが考えられる.図 4.35に風レンズ位置を変化 させた場合の流れ場の,時間平均流線図と速さを示す.スロートを下流側に置いた場合は,

実際にインレットがない場合と類似した流れ場となっており,風レンズによる集風加速は 風が風車を半ば通り過ぎた風車の下流側で発生している.

図4.36(a)には,種々の形状の風レンズを適用し,φを変化させたときの最大出力Cpmax

の変化をまとめた.スロート部が風車中心と風車後面にある場合は,φが大きくなるにつれ て出力が増加したのに対し,スロート部が風車前面に位置する場合は,φが大きくなるにつ れ,出力が低下する結果となった.φを大きくするにつれて風レンズの集風効果が高まるこ とは他の相対位置の結果から明らかであるが,それにもかかわらず出力が低下するのは,

スロートが風車前面にある場合,φを大きくすると風車とディフューザの間の隙間が大きく なり,風が風車の脇の拡大した隙間に逃げることが原因であると考えられる.図4.37には,

スロートが上流側にある場合で,ディフューザ開き角を変化させたときの流れ場の変化を 示している.Φが 5°の場合と比較して,Φが 15°の場合は,風車とディフューザの間の 流れが増速し,風が隙間から逃げてしまっている様子が見て取れる.

以上の結果より,垂直軸型風車に風レンズを適用する場合,スロート部が風車中心に位 置するように設置するのが最も効果的であることが分かった.

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(a) (b)

4.33 (a) 久米ら[46]による,風車なしの場合の主流方向速度分布の実験、計算結果(2003); (b)垂直軸型 風車の場合に考えられる風レンズの配置

4.34 風レンズの設置位置を変化させた場合の出力変化(L = 1.14D; h = 0.5D; φ = 15°)

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(a) スロートが風車中心位置の場合 (x = 0) (b) スロートが下流側の場合 (x = 0.5Dwt) 図4.35 風レンズのスロート位置を変化させた場合の流れ場の変化

(a) (b)

4.36 (a) 最大出力 Cpmaxφに対する関係; (b) スロートを風車の上流側に位置させた場合に風 が逃げる模式図

(a) スロートが下流側の場合(φ = 5 ) (b) スロートが下流側の場合(φ = 15 ) 図4.37 スロート位置が上流側でディフューザ開き角を変化させたときの流れ場の変化

63 4.2.2 曲面型風レンズの適用

平面型の風レンズのディフューザ開き φ を大きくしていくと出力は増加するが,ある φ 以上では出力増加は頭打ちとなり,高い出力を発揮する周速比領域も狭くなることを図4.29 で示した.これを防ぎながら,さらなる出力増加を目指したい.平面型風レンズは,は製 作の容易さを理由に,スロート部で形状がノズル型からディフューザ型へ急に変化する形 状とした.しかし,風車なしの場合の可視化実験を行った結果,スロート部で壁面からの 流れの剥離が起こりやすい形状であることが分かった.図4.38 に風車がない場合の風レン ズ周りの可視化実験結果を示す.可視化に用いた風レンズは,長いディフューザ(L=1.14D) で縮流部が風車中心,20°開き,50%つばのものである.インレットから風レンズ内に流入 した流れは,縮流部を通った後,片側のディフューザ壁面にのみ付着して流れるような流 れになった(すなわち反対側の面では剥離している).はじめ上流側から見て左側のディフュ ーザ壁面に付着した流れであったが,人間がそこに入って流れをブロックするなど,変化 のきっかけを与えてやると,反対側にくっついて安定した.今回出力試験などでも使用し たこの形状の風レンズは,縮流部で角度を持って曲がっている直線型ベンチュリ形状であ り,開き角も20°と大きい.おそらくそれらのことが原因で,この集風体自体では流れを剥 離させずに管内を流してやることができない,と思われる.

図4.38 風レンズまわりの流れの可視化

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上記の結果から,ベンチュリ形状内部で剥離などが起こりにくいであろう,ディフュー ザの開き角が連続的に拡大する曲面型の風レンズを考えた.これを適用し,出力性能実験 にて出力の変化を調べた.

図4.39に曲面型風レンズの概要を示す.φ=20°,L=0.57Dの平面型風レンズのつばの幅を 半分とし,その分ディフューザの開きを大きくしている.風レンズは木板で補強したアク リル板を用いて製作した.スロート部の幅D=0.8m,鉛直方向長さ W=1.79Dである.図 4.40に曲面型風レンズ適用風車の出力性能曲線を示す.風車形状は Type4 である.ディフ ューザ形状を曲面型にしたことで,全ての周速比領域にて平面型風レンズよりも高い出力 増加を得た.風車単体に対しては2.1倍の出力増加を達成した.以上より,ディフューザを 曲面型にすることは,広い周速比範囲にてより高い出力を得るのに効果的であることが分 かった.

(a) (b)

4.39 曲面型風レンズの形状: (a) 平面図 (b) 全景写真.

4.40 曲面型にした場合の出力の増加 (h = 0.25D) h=0.5D

Flat-panel-type diffuser Curved-surface-type diffuser

φ=20°

h=0.25D

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次に,数値計算結果から曲面型風レンズの方が高い出力を得られる理由を探った.図4.41 に平面型ディフューザと,曲面型ディフューザを用いた計算結果を示す.曲面型ディフュ ーザは,平面型よりつば後方の渦が小さく、ディフューザ内部の流れがより大きく拡大し ている.すなわち,ディフューザを曲面型にすることで,剥離を引き起こさず,かつディ フューザ出口を大きく開くことができ,ディフューザの効果が増している様子が見て取れ る.これが,スロート部で大きな加速効果が得られる理由と考えられる.

図4.41 平面型風レンズと曲面型風レンズの時間平均流線図