• 検索結果がありません。

平面型風レンズがある場合の VAWT 周りの流れ場

第 4 章 周辺付加物を用いた VAWT に関する

4.2 風レンズ(つば付きベンチュリ形状の付加物)の適用

4.2.1 平面型風レンズの適用

4.2.1.1 平面型風レンズがある場合の VAWT 周りの流れ場

まず流れの可視化実験によって得られた結果をもとに考察を行う.風車単体の場合と同 じく,翼まわりの流れ場に着目して考察する.可視化に用いた風レンズは,風車あり,な しの場合ともに長いディフューザで縮流部が風車中心,20°開き,50%つばのものである.

まず流れの構造に焦点を当てて考察を行う.最初

は λ=1.0 である.狙い通り,風車単体のときと比べ

て風レンズの集風加速効果によって増速しており,

上流で発生した乱れが流れ去るのも早い.その結果,

270°よりも少し小さな角度で,乱れのない流れがブ レードに当たりはじめている(図4.19 参照).また,

315°あたりでまず前縁からの流れ込み渦が発生する (図4.20 (a)参照).その後すぐ後縁からの流れ込みに よる渦が発生しはじめ,前縁からの渦は下流側に押 しやられる(図4.20 (b)参照).そうして下流側に押し やられた渦は先に放出され,後縁から発生した渦は 風車内部で成長して,135°付近でブレードに衝突し,

砕ける.次にλ=2.0であるが,これは流れの構造は,

2 枚単体のときとそれほど変わらない.違う点は,

シアによる渦が放出されようとするときに,壁が存在するので,主流と垂直方向の移動が 制限されるところである.最後にλ=3.0であるが,270°付近から乱れのない風にあたり,135°

付近でシアによる渦を形成・放出する.

風速については風車単体の場合と同じで,周速比が高くなるほど減速する.λ=3.0のとき は,風レンズ付きの 2 枚翼風車の場合でさえ,風車内部で煙が停滞するほど減速している 様子が観察された.

図4.19 流れ場の可視化(λ=1.0)

51

集風体を設置したときに,風車周りの流れ場に起こった変化をまとめる.集風体を設置 したときの変化は大きく2つである.1つは風レンズの集風効果による,風車流入風速の上 昇.もう 1 つは構造体壁による流路の制限である.まず流入風速の上昇であるが,これに よって上流側をブレードが通る際の,渦のできかたが変わる(具体的には,風レンズ風車で

λ=1.0のときに,風車単体のλ=0.5のときのような渦の形成のされ方をする).これによって,

高周速比側でもトルクが発生するようになったものと思われる.次に構造体壁による流路 の制限であるが,例えば上流側の風車内部で,ブレードのシアによる渦がしばしば作られ る.これは風車単体の場合,まっすぐ主流方向に放出されるのではなく,主流と直交する 方向の速度成分も持って,斜め後ろに放出される.したがって主流は主流と直交する速度 成分をもつが,風レンズをつけた場合は,風車中心(スロート部)で主流直交方向に流れるこ とができない(すなわち流路が狭い).このことも出力増加に関係している可能性がある.

変わって,図4.21に風レンズ風車(2枚翼)つば後ろの流れを可視化したものを示す.大規 模渦放出が起こっていることが確認できる.また,この後ろの観察で,ディフューザ内部 を流れてきた流れが,つばの後方に逆流して流れ込む様子も確認されている.翼枚数が 2 枚でも3枚でもこの様子は観察できた.この渦の生成により,水平軸型風車の場合と同様,

つばの背後に低圧域が生成され,流れを引き込んでいると考えられる.

次に,時間平均場の視点から流れ場を考察する.図 4.22に風レンズ風車前面での流速分 布を示す.つば前面では風レンズのみのときと比較して大きな差異はない.しかし,やは り風車の部分(-2.4<y/c<2.4)はλ=1.0のときでも集風体のみのときと比べてu/Uが0.2程度 減速しており,この時点で非対称性が現れている.そして,風車単体のときと同様,周速 比が高くなるほど,減速と非対称の傾向は著しい.

図4.20 ブレードから形成される渦の挙動(λ=1.0)

(a) (b)

52

図4.21 つば後方流れの可視化(2枚翼,λ=2.0)

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

u/U∞

y/c

2bWL_1.0_front 2bWL_1.5_front 2bWL_2.0_front 2bWL_2.5_front 2bWL_3.0_front

図4.22 周速比を変化させたときの,風レンズ風車前面流速変化

53

図 4.23に,CFD で得られた2枚翼風レンズ風車まわりの時間平均流線図を示している.

今回計算を行った風レンズ形状は,φ=20°と開き角が大変大きいものである.もし風車がな ければ,ディフューザ壁面で流れの剥離が起こる形状であるが,λが2.2までは壁面に流れ が付着していることが分かる.これには2つの理由が考えられる.1つ目は,垂直軸型風車 前面での流れの減速である.これによってディフューザ内を通る流速が遅くなり,剥離は 起こりにくくなっていると考えられる.もう一つは,スロート部のクリアランスを吹きぬ ける風による流れの付着である.風レンズ効果によって風は風レンズ内に引き込まれるが,

垂直軸型風車は大きな抵抗体であるため,風は風車とスロート部壁面の隙間に増速して流 れ込む.これがディフューザ壁面に流れを付着させる原因となっている可能性がある.

そして,このディフューザ壁面での流れの剥離は出力と密接な関係を持つことが分かっ

た.図4.23では,λ=2.5でディフューザ壁面での剥離が起こっているが,剥離が起こるこの

周速比になると出力は大きく低下する.これは 3 枚翼風レンズ風車の場合も同様で,時間 的に調べた場合でも同様であった.というのは,2枚翼風レンズ風車λ=2.2の計算では,流 れは時間によってディフューザ壁面から剥離していたり付着していたりするが,その際の 出力を調べると,付着している時間帯では出力が高く,剥離している時間帯では出力が低 い.このことから,水平軸型風車の場合と同様[2],ディフューザ壁面での剥離が出力に大き な影響を与えることが分かった.ディフューザ壁面での剥離の原因は,垂直軸型風車まわ りの流れの非対称性であると考えられる.その理由は,剥離は常にブレードが流れに逆ら う側で起こるからである.また,3枚翼風レンズ風車のほうが2枚翼風レンズ風車よりも低 い周速比で剥離が起こるからである.この剥離が起こってしまうと,図 4.23から見て取れ るように,流れが片方に寄ってしまい,ディフューザ形状による効果がなくなってしまう.

これが出力低下につながる.

以上が風レンズ型周辺付加物を取付けた場合の流れ場の基本的な特徴である.本項で述 べたことを踏まえ,次項以降でより高い出力増加効果が得られる風レンズ型周辺付加物の 形状について考察を行っていく.

54

(λ=1.0) (λ=1.5)

(λ=1.8) (λ=2.0)

(λ=2.2) (λ=2.5)

(λ=3.0)

図4.23 2枚翼風レンズ風車まわりの時間平均流線図

55