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数値計算から得られた流速分布の実験結果との比較

第 3 章 数値計算法

3.2 風洞実験と数値計算の結果の比較検証

3.2.1 数値計算から得られた流速分布の実験結果との比較

この項ではまず,実験と計算それぞれで得られた流速を比較する.

図3.7,図3.8に風車単体前面における,流速の比較を示す.周速比が変化したときの流速 変化が良く再現されており,値自体も良い一致を示している.

風レンズ風車に関する流速を比較する前に,風レンズのみの場合に関する流速を比較す る.図3.9に風レンズ前面・後面・スロート部での流速の比較を示す.これを見ると,スロ ート部,ベンチュリ流入部前面,ベンチュリ流出部後面で,計算による流速が実験と比べ て速い.すなわち計算結果では,風レンズ内部流量が実験より多い.風車単体の場合に,

傾向や値の良い一致が得られていることから,実験方法に問題がないと考えると,計算に 問題があることになる.これは以下に述べるように,2次元計算であることが主な原因と考 えられる.

2次元計算では,風が構造体鉛直方向に逃げることがないので,インレットから流入した 流れは必ず構造体内部を流れる.また,渦の 3 次元的な拡散がないため,強い渦が形成さ れる(これを渦に対する2次元的効果と呼ぶことにする).よって,つば背後に形成される渦 も強力で,強い引き込み効果が生まれ,流入風がより増速する.さらに,今回の計算では ブレードを精度良く表現するために,非常に細かい格子を切っている.すると非常に細か い渦まで再現できることから,渦に対する2次元的効果はさらに強まる.

上記の理由が正しいかどうかを確かめるためには,風レンズのみの 3 次元計算を行って みることが必要である.しかし,再度図3.9を見てみると,流速分布形状はどの比較位置で も類似している.よって,風レンズをつけた場合でも定性的な議論ができるほどの精度は あると考えられる.

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

u/U

y/c

2b_1.0_exp 2b_1.5_exp 2b_2.0_exp 2b_2.5_exp 2b_1.0_sim 2b_1.5_sim 2b_2.0_sim 2b_2.5_sim

図3.7 実験・計算で得られた流速分布の比較(2枚翼風車単体前面)

30

次に風レンズ風車の場合に関してである.図3.10,図3.11は,風レンズ風車前面での流 速分布である.図 3.10を見ると,周速比が低い場合は,計算による流速が速い.しかし,

周速比が高くなると値が一致してくる.ここまでに,

1. 風車単体 → 良い模擬ができている

2. 風レンズのみ → 計算の構造体内部流速が過大して見積もられる

という結果が得られている.これらのことをふまえると,図3.10,図3.11の結果は妥当な ものである.すなわち,低周速比では,現象に対する風車の影響が小さいため,構造体に よって引き起こされる現象が大部分を占める.したがって,上記 2 の結果に近いものが得 られる.しかし,高周速比になってくると,現象に与える風車の影響が大きくなってくる

図3.8 実験・計算で得られた流速分布の比較(3枚翼風車単体前面)

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

u/U

y/c

3b_0.5_exp 3b_1.0_exp 3b_1.5_exp 2b_2.0_exp 3b_0.5_sim 3b_1.0_sim 3b_1.5_sim 3b_2.0_sim

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

-0.6 -0.2 0.2 0.6 1.0 1.4 1.8 2.2 2.6

u/U

y/c

WL_exp(front) WL_exp(throat) WL_exp(back) WL_sim(front) WL_sim(throat) WL_sim(back)

図3.9 実験・計算で得られた流速分布の比較(風レンズのみ)

31 ため,良い模擬ができてくると考えられる.

別の視点から見ると,これらの結果は「垂直軸型風車まわりの流れは,かなり 2 次元性 が強い」ということを示している.2次元性が強い理由は,ブレードが回転していることに よるものと予想できる.物体まわりに形成された渦は次第に拡散していき,そのときに 3 次元的拡散も起こる.しかし,垂直軸型風車のブレードは,回転するにつれて刻一刻風に 対する状況が変わるため,異なる渦が次々と生み出され続ける(3.2.2項参照).その結果,ま だ2次元性を強く持った渦が多く存在し,2次元性の強い流れ場になるものと考えられる.

いずれにせよ,少なくとも流速分布形状は今回の実験・計算で良く一致している.(3 枚 翼の場合では大きな差があるように思えるが,分布形状は類似している.今回の平均時間 は,どの場合も無次元時間40,実時間にして1秒しかとっていない.また,高周速比での 計算においては,流れ場の安定に十分な計算時間をとれていない場合もあるので,それも 差の要因になっていると考えられる.)

図3.10 実験・計算で得られた流速分布の比較(2枚翼風レンズ風車前面)

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

u/U

y/c

2b_1.0_exp 2b_1.5_exp 2b_2.0_exp 2b_2.5_exp 2b_3.0_exp 2b_1.0_sim 2b_1.5_sim 2b_2.0_sim 2b_2.5_sim 2b_3.0_sim

図3.11 実験・計算で得られた流速分布の比較(3枚翼風レンズ風車前面)

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8 10

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

u/U

y/c

3b_2.0_exp

3b_2.0_sim

32