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東、西、南の三面が海に接する韓国の海岸線の長さは 13,509km である。領海面積は

86,891 km²で、EEZ の17%、国土面積の87%を占める。西海岸は潮の干満の差が大きいため

干潟が広い。リアス式海岸の南海岸では豊富な沿岸資源が分布する。岩盤海岸の東海岸は 海岸線が単調である。全国民の 26.9%が沿岸で居住し、人口密度は 417 名/km²で、全国平 均(498名/km²)よりやや低い1

韓国の海洋政策は最上位関連法である海洋基本法の下で策定された海洋水産発展基本計 画を最上位計画とする。同計画の下で、各分野の長期計画と中期計画、そして年度別の施 行計画に基づき実施されている。

5 年任期の大統領制国家であるがゆえに、政権交代による政府組織の改編が多く行われ、

海洋関連組織はこの10年間、海洋水産部から国土海洋部と農林水産食品部への分化、そして 海洋水産部の復活という、大きな変化があった。しかしながら、グローバル化した国際海洋 秩序および持続可能な沿岸管理のための施策は継続され、各部門別に中長期計画の策定と施 行が行われている。また、近年では北極政策の策定と推進における顕著な動きが見られる。

1.海洋基本法令

(1)

海洋水産発展基本法

韓国の海洋政策は2002年に制定された海洋水産発展基本法に基づいて行われる。同法は 第1条で定めているように、海洋および海洋資源の合理的な管理・保全および開発・利用 と海洋産業の育成のために必要な政府の基本政策と方向を定めることを目的とする。海洋 水産に関する他の法律を制定、または改定する際には、同法の目的と基本理念に従うこと が規定されている(第4条)。また同法の 第6条は、上記の目的を効率的に達成するため、海 洋および海洋資源の合理的な管理・保全、開発・利用および海洋産業の育成に関する中長 期的な政策目標と方向を設定し、大統領令の規定により10年ごとに海洋水産発展基本計画 を策定し、施行することを明記している。

2.海洋基本政策

(1)第二次海洋水産発展基本計画(OCEAN KOREA 21

2

)

①法的地位と背景

1 韓国海洋水産部『第二次沿岸統合管理計画』2011年、31−33頁。

2同計画の全訳については、以下を参照のこと。『平成24年度総合的海洋政策の策定と推進に関する調査 研究 各国および国際社会の海洋政策の動向報告書』(平成25年) 307-450頁。

海洋水産発展基本法第6条に定めた、10年ごとの政策方針と目標を策定する中長期計画 であり、二期目にあたる現在の計画は通称「OCEAN KOREA 21」と呼ばれる。

韓国の領海および管轄海域、そしてグローバルな海洋開発の先端として、必要によって は沿岸地域までを計画の対象範囲にする。

同計画は計画策定に関連するすべての政府組織3が参画し、海洋水産発展委員会と国務会 議の審議を経て策定した海洋資産分野における国家総合計画であり、10年の施行期間中に 海洋関連の他国家計画との連携と効果的な推進を目指す政策計画である。また毎年海洋水 産発展委員会は海洋水産発展施行計画を策定し、その施行成果を一年ごとに分析・評価す る。

海洋水産発展基本計画は海洋水産分野の最上位総合計画として2000年、第一次海洋水産 発展基本計画を策定し推進した。2000年から2010年の施行期間とした第一次計画は、海洋 科学技術の開発、海洋環境および沿岸管理、海洋文化および海洋観光の振興、水産業の育 成と漁業資源の管理、海運物流の促進と港湾建設、海上安全、海洋外交等を包括した、海 洋の合理的な開発・利用・保全に関する国家基本指針として活用された。

二期目である第二次計画の施行期間は2011年から2020年までであり、2008年の政府組織 改編により従来の「総合海洋行政体制」が海洋と国土を統合管理する「統合国土管理体制」

へ再編されたことによる政策的な需要に対応する必要性が浮上した。また、国連海洋法条 約の発効以降、「海洋の自由利用時代」から「海洋分割管理時代」への転換が行われる中、

国家間の海洋境界の画定問題、資源管轄権の確保問題が重視されるようになった。

②主な政策目標と戦略

2020年までの海洋韓国のビジョンとして、第二次計画は「世界を主導する先進海洋強国 の実現」を掲げている。そのために、①持続可能な海洋環境の管理と保全、②新海洋産業 の育成と伝統的な海洋産業の高度化、③新海洋秩序の能動的な対応できる海洋領域の拡大 を三大目標と定めた。目標達成のための推進戦略としては、①健康で安全な海洋の利用と 管理の実現、②新成長動力の創出のための海洋科学技術の開発、③未来型の高品格海洋文 化観光の育成、④東アジア経済の台頭により海運・港湾産業の先進化、⑤海洋管轄権の強 化とグローバル海洋領土の確保を提示している。具体的な推進計画として、海洋水産発展 のための26個の重点課題、222個の実践課題を定めている。

3 参画組織は企画財政部、教育科学技術部、外交通商部、統一部、国防部、行政安全部、文化体育観光 部、農林水産食品部、知識経済部、環境部、雇用労働部、国土海洋部、気象庁、海洋警察庁。組織名は計 画策定時であった201012月のものであり、その後一部変更があった。とりわけ、海洋水産業務を担当 してきた農林水産食品部と国土海洋部は、2013年の政府組織改編により海洋水産部として統合された。

3.海洋政策推進体制

(1)

海洋水産発展委員会

任期 5 年の大統領が描く国家運営構想により、韓国の政府組織は変動が多く、李明博大 統領の政権政府組織改編により 2008年から 2013年の間、海洋水産業務は農林水産食品部 と国土海洋部へ分割されていた。そして朴槿恵政権は海洋水産部を復活させている。

とりわけ、海洋水産発展基本計画および重要海洋政策等の審議機構である海洋水産発展 委員会は、海洋水産部の復活にともない海洋水産分野政策の総括・調整機能を強化するた めの改定を行なった。海洋水産基本法の一部改正(2014 年)により、同委員会の委員長を海 洋水産部長官から国務総理へ格上げし、委員は次官級から長官級公務員へ変えた(海洋水産 基本法第 7条、8条)。また同委員会の審議事項として、従来には除外されていた水産分野 関連事項を追加した(海洋水産基本法第9条)。

4.沿岸域総合管理

(1)沿岸管理法

1999 年に制定された沿岸管理法は、沿岸の効率的な保全と利用および開発に必要な事項 を規定することで、沿岸環境を保全し、沿岸の持続可能な開発を図ることで、沿岸を快適 で豊かな生活空間として醸成することを目的とする。同法は第 3 条において沿岸管理が以 下の基本理念に基づいて保全・利用および開発されるべきであると定めている。

1. 公共の利益に相応し生態的・文化的・経済的価値が調和し共存できるように、総 合的で未来志向の観点に立つ保全・利用、および開発すること

2.沿岸の利用および開発は沿岸環境の保全と調和・均衡を図ること

3. 国民の沿岸環境の保全・管理に対する政策参加と健全な利用機会を拡大すること 4. 気候変化による津波、浸食等に対応し、海岸を効率的に管理すること

5.沿岸総合管理を実現するために南北韓国協力および国際協力を増進すること

また、沿岸の総合管理のために海洋資産部長官を中央沿岸管理審議会の審議を経て10年 ごとに沿岸統合管理計画を策定することを規定している(第 6 条)。 各地方自治体は管轄沿 岸の効率的な保全・利用および開発のために必要な地域に対して、沿岸総合管理計画の範 囲における沿岸管理地域計画を策定することが可能である(第 9 条)。また海洋資産部長官 は、地域計画の体系的な策定と管理のために必要な指針を策定し、各地方自治体の長に通 達することができる。

他にも同法は沿岸用途海域の指定と管理(第3章)、沿岸整備事業(第4章)、沿岸管理審議 会(第5章)、沿岸の効率的な管理(第6章)に関する規定を含めている。

(2)

第二次沿岸統合管理計画

(2011

2021)

①背景と目的

前節で述べたように、沿岸管理法第6条は10年ごとの 沿岸統合管理計画の策定を規定し ている。2000年に第一次沿岸統合管理計画が策定され、現在は2011年から 2021年を施行 期間とする第二次沿岸統合管理計画が実施されている。第二次計画は、第一次計画の懸案 事項であった「環境保全と開発との調和と均衡」に加えて、「気候変化と災害対応」を包 括する管理計画を図った。そのために沿岸海域を 4 つの用途に区分・管理する沿岸用途海 域制、海岸の計画的管理のための自然海岸管理目標制と基本政策等を提示した。また沿岸 管理の状況変化を反映して、5 年ごとに妥当性を検討し統合計画を修正するように定めた。

第二次沿岸統合管理計画は、「訪ねたいエコー(ECHO)沿岸、共存と協力の海洋領土」を ビジョンとして定め、創造のための基本目標を 4 つに設定している。具体的な目標として、

① 計画的管理により調和をなす「統合沿岸」(Integrated Coast)、② 生態系の価値を維持し 高める「生命沿岸」(Eco-based Coast)、③ 快適で安全に暮らしたい「定住沿岸」(Attractive

Coast)、④ 参加と責任により共に培う「協力沿岸」(Co-managed Coast)を掲げている。その

指針のために、①新沿岸管理制度の適用、②生態系の健康性および沿岸景観の増進、③ 気 候変化および災害対応に対する強化、④ 沿岸ガバナンスの構築を推進戦略として設定した。

②推進体系

同計画は、 計画の実効性確保のために沿岸区分および沿岸管理地域計画の策定・施行す ることにした。とりわけ、 第一次統合計画の「圏域」の限界であった、執行体系の一致性 が不十分であることと執行力の限界を克服することができるよう、行政区域を中心に区分 した。具体的には海洋の自然環境および海洋経済の特性、沿岸陸地部の社会経済的類似性 を考慮して部分調整し、地域区分の名称を「圏域」から「沿岸」に変更した。

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