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米国は、

19,924km

の海岸線を有し、本土の

48

州と、飛び州のアラスカとハワイの

2

州、連邦直属の首都ワシントン

D.C.から構成される。すべてが島で構成されるハワイ州

は、8つの島と

100

以上の小島からなる。さらに、海外領土としてプエルトリコ、アメリ カ領サモア、グアム、ヴァージン諸島など多くの島嶼を所有する。

本章では、2009年6月 12日付の大統領覚書により設定された省庁間海洋政策タスク・

フォースが、2010年7月に発表した最終報告を基に、国家海洋会議(NOC:National Ocean Council)の設置や、「沿岸・海洋空間計画(CMSP:coastal and marine spatial planning)」

の制定が行われ、海洋、沿岸域及び五大湖管理の国家政策の実施に向けた活動を開始した こと、以降、具体的な実施政策として 2013 年 4 月に「国家海洋政策実施計画(National Ocean Policy Implementation Plan)」を発表し、続けて同年 7 月に「海洋計画ハンドブッ ク(Marine Planning Handbook)」を発表したこと、などをふまえて米国の海洋政策につ いて記述する。また、米国の領海の管理や、海洋保護区、バラスト水への規制、北極圏関 連、安全保障について概要を説明する。

1.海洋基本法令

米国には、基本となる海洋法令はないが、大統領令 13547(2010): 省庁横断的海洋政 策タスク・フォース最終報告書に基づき基本的施策、国家海洋会議(NOC)の設置、沿 岸海洋空間計画(CMSP)等について規定している。また、例えば、海洋保護区制定には 1906 年に可決した連邦法、遺跡保護法 (Antiquities Act)を根拠とするなど、個別の政策に 応じた個別の法律で対応している。

2.海洋基本政策

(1)国家海洋政策(

NOP

National Ocean Policy

海洋政策としては、オバマ政権が掲げていた国家海洋政策(NOP:National Ocean Policy)を推進するため2009年6月12日付の大統領覚書により省庁間海洋政策タスク・フ ォースが設立された。タスク・フォースは、海洋政策委員会(Committee on Ocean Policy) に代表を派遣している省庁等の高官(senior policy-level officials)により構成され、環境会議 (CEQ:Council on Environmental Quality)議長が議長を務め、2010年7月に最終報告を公表 した。これに基づき、国家海洋会議(NOC:National Ocean Council)が設置され、海洋、沿 岸域及び五大湖管理の国家政策の実施に向けた活動を開始した。以降、具体的な実施政策 と し て2013年4月 に 「 国 家 海 洋 政 策 実 施 計 画 (National Ocean Policy Implementation Plan) 」 を 発 表 し 、 続 け て 同 年7月 に 「 海 洋 計 画 ハ ン ド ブ ッ ク (Marine Planning

Handbook)」を発表した。米国が直面している海洋における諸課題とそれに対処するた めに連邦政府が取るべき具体的政策が整理された形で記述されている。

(2)沿岸・海洋空間計画(

CMSP

coastal and marine spatial planning

国家海洋政策(NOP)は、NOC の設置のほか、「沿岸・海洋空間計画(CMSP:coastal and marine spatial planning)」の枠組みを提言した。これにより、米国の海洋空間は、

①アラスカ・北極地域②カリブ海地域③五大湖地域④メキシコ湾岸地域⑤大西洋中部地域

⑥北東地域⑦太平洋諸島地域⑧南大西洋地域⑨西海岸地域の、9 つの計画地域に細分され た。この地域区分は、大規模な海洋生態系に基づいて、米国の排他的経済水域(EEZ)及 び大陸棚の全体と、州又は地域の既存の海洋管理組織が組み込まれるよう決定されている。

(3)国家海洋実施計画(

National Ocean Policy Implementation Plan

2013年4月、国家海洋会議(National Ocean Council)は、「国家海洋政策実施計画

(National Ocean Policy Implementation Plan)」を決定し、発表した。これは、2009 年以来オバマ政権が「国家海洋政策(National Ocean Policy)」の下で推進している総 合的な海洋ガバナンス政策の具体的な実施計画として位置づけられる文書であり、米国が

図1:排他的経済水域(EEZ)と沿岸・海洋空間計画(CMSP)による計画地域区分

(出典:https://cmsp.noaa.gov/_images/cmsp_rpa.jpg

直面している海洋における諸課題とそれに対処するために連邦政府が取るべき具体的政策 が整理された形で記述されている。ここでは、7 章 32 ページの本文と、22 ページの付 属書(Appendix)からなる。5つの主要なテーマ(①海洋経済②安全・安全保障③海 洋・沿岸域のレジリエンス(回復能力)④地方的意思決定⑤科学と情報)と、214のアク ションが定められている。本文では、米国が直面している海洋における諸課題とそれに対 処するために連邦政府が取るべき具体的政策が記述され、付属書では、本文で述べられた 各政策を行うべき省庁及びタイムテーブルが記述されている。表1に、本文の目次および 概略を述べるが、全訳は「平成25年度 総合的海洋政策の策定と推進に関する調査研究 各国および国際社会の海洋政策の動向報告書(参考資料編)」に掲載しているので、適宜 参照されたい。

(4)海洋計画ハンドブック(

Marine Planning Handbook

2013 年 7 月 に NOC は 、 地 域 の 取 り 組 み を 支 援 す る た め に 「 海 洋 計 画 ハ ン ド ブ ッ ク

(Marine Planning Handbook)」を発行した。本ハンドブックは、地域の特性に合わせ た柔軟な海洋ガバナンスを実施するために創設される地域的計画機関のあり方についての 情報・指針の提供を目的とするものであり、実施計画の補完的文書として位置付けられた。

同ハンドブックは 22 ページからなる文書で、その章立ては表2の通りである 表1:国家海洋実施計画目次

Ⅰ.イントロダクション 文書の構成

Ⅱ.海洋経済

経済成長の支援、雇用の促進、熟練海洋労働力の開発

Ⅲ. 安全・安全保障

海域認識の向上、変動する北極における海上安全・安全保障の提供、港湾・河川にお ける安全・安全保障の向上

Ⅳ.沿岸域・海洋の回復能力

悪条件の低減、変化への備え、海洋の健全性の回復・維持

V. 地域的意思決定

地域的活動のためのツールの提供、地域的パートナーシップの強化、地域的優先課題

Ⅵ.科学・情報

海洋・沿岸域の系に対する理解の向上、海洋データ獲得及び情報提供の能力強化、情 報に基づく意思決定のための化学的基礎を有する製品・サービスの向上

Ⅶ.結語

表2:海洋計画ハンドブック目次

3.海洋政策推進体制

2010 年7月に発表された省庁横断的海洋政策タスク・フォース(Interagency Ocean

Policy Task Force: OPTF)の最終報告により、「国家海洋会議(NOC)」が設置された。

これは、従来の海洋政策委員会に代わって海洋政策調整の主導的役割を担う組織である。

その組織図を図2に示す。以下にその構成と活動について概要を示すが、詳細については、

「平成 22 年度 総合的海洋政策の策定と推進に関する調査研究 各国および国際社会の 海洋政策の動向報告書」に掲載しているので、適宜参照されたい。

従来の海洋政策委員会に代わって海洋政策調整の主導的役割を担う組織である国家海洋 会議 (NOC)は、2009 年 12 月に公表された沿岸・海洋空間管理計画の策定のために、「州 政府及び、アラスカ先住民の村を含む連邦政府によって認知された部族、その他の先住共 同体(ハワイ先住民など)と協働して、地域計画区域と一致する地域計画機関を作るこ と」が任務とされ、9 つの地域計画機関の構成員については、連邦政府、州政府、部族の 管轄官庁、その地域の沿岸・海洋空間計画(Coastal and Marine Spatial Planning:CMSP)

に関する管轄責任またはその他の利害(資源管理、科学、国土及び国家安全保障、運輸、

公衆衛生など)を持った先住共同体の代表者からなることが定められた。その主な活動は、

次の4つである。(1) 国の優先的な目的を定期的に更新し定める。(2) 政府の優先順位及 び副委員レベルからの提言に基づき、国家政策の実施目的に関する年間目標を再検討し提 示する。(3) 紛争の解決、及び副委員レベルでは解決できなかった問題の意思決定の場と

Ⅰ.イントロダクション

本ハンドブックの目的、海洋計画の概観

Ⅱ.地域的計画機関

地域的計画機関の目的、創設、メンバーシップ、共同リーダーシップ、意思決定、ワ ーキンググループ、会合、透明性、利害関係者の参加、基本文書(Charter)、活動資 源(Resources)、国家海洋会議との関係

Ⅲ.地域的参加

概観、部族・先住民グループ、漁業管理委員会(Fishery Management Councils)、

利害関係者の参加、参加の方法、専門的知識の資源、連邦諮問委員会法上の考慮

Ⅳ.海洋計画(Marine Planning)

海洋計画、計画枠組み、地域の能力と既存の取組み、地域的ヴィジョン、地域的・国 家的な目標・目的、活動計画、データ・利用・サービス・影響の分析、計画のオプシ ョン、海洋計画の起草、国家海洋会議の同意(Concurrence)

付属書:地域的計画機関の基本文書モデル

なる。NOC の活動は、大統領の指示を条件として、法律による別段の定めがない限り行 われ、沿岸・海洋空間計画を含むその国家政策の実施に対して全体的な責任を負う。

また、タスク・フォース(Interagency Ocean Policy Task Force: OPTF)の最終報告では、

NOC の 設 置 の ほ か 、 「 沿 岸 ・ 海 洋 空 間 計 画 (Coastal and Marine Spatial Planning:

CMSP)」の枠組みを提言した。これにより、米国の海洋空間は、①アラスカ・北極地域

②カリブ海地域③五大湖地域④メキシコ湾岸地域⑤大西洋中部地域⑥北東地域⑦太平洋諸 島地域⑧南大西洋地域⑨西海岸地域の、9 つの計画地域に細分された。この地域区分は、

大規模な海洋生態系に基づいて、米国の排他的経済水域(EEZ)及び大陸棚の全体と、州 又は地域の既存の海洋管理組織が組み込まれるよう決定されている。

国家海洋会議は、州政府および連邦政府と協働して、地域計画区域ごとに、地域計画機 関をつくる。地域計画機関は、その地域の沿岸・海洋空間計画に関係のある、連邦、州の 当局(資源管理、科学、国土・国家安全保障、運輸、公衆衛生)から構成される。この機 関は、パートナーとして沿岸・海洋空間計画を策定する協定を締結する。また海洋情報の 一元化のため、インターネット上に情報のデータと情報の提供のワンストップ窓口となる ポータルサイトを開設している。図3に概要をまとめる。

図2:国家海洋会議(National Ocean Council)組織図

(National Oceanographic Partnership Program のウェブサイトを参考に作成)

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