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非行抑制要因としての恥意識の国際比較

1・2.調査項目と恥意識尺度(国際版)

 3力国を対象にした本章の研究は、質問紙調杏によ って行われた。恥意識の国際比較において、新たに作 成されたlnternational Shalne−Consciousness Scale

(ISCS、試案)を用いた。恥意識を測定する質問項日 は、第3章の国内研究で使用された恥意識尺度、さら に日本、アメリカ、イランの小学生を対象に国際比較

を行った橋本(1987)と橋本と清水

(Hasimoto&Shimizu,1988)の荒恥感情の態度測定項 目を参考に,恥意識尺度16項日(国際比較版,「非常 に恥ずかしい」、「恥ずかしい」、「恥ずかしくない1、

「全く恥ずかしくない」の4件法)として新たに作成 したものである。橋本(1987)は、日本、アメリカ、

イランの児童に共通した墓恥状況として、親や先生か らの叱責状況をあげていたことから、本研究の質問項 日にもその「叱責」状況を反映させている。

また、尺度作成にあたっては、第1章における本研究 の恥意識の定義「他者の日あるいは理想的自己を意識

したときに、非難の対象となり得るような自己の行為 に対して生じる気持ち」に従った。

 恥意識は、各個人において、自己が対象とする準拠 集団の規範、もしくは自分自身の規範からの逸脱認知 により生起する不安のひとつであろうという仮説のも とに質問項日を作成した。さらに、準拠集団としては、

5タイプの規範からの逸脱に対応した恥状況項目を設

定した。

 本研究では、3力国の恥意識構造の相違を調べること が目的であるが、日本の恥意識構造において、このよ うに事前に想定された5タイプの規範からの逸脱状況 への態度に対する回答が、結果として、同じように5 つの恥潜在因子としてまとまるどうかについても検討

する。

2.日本・アメリカ・トルコの恥意識構造の差異 2−1.恥意識尺度(国際版)の因子構造

表4−1 本研究で想定する中高生における  準拠集団タイプと恥規範に影響する対象者    準拠集団   恥規範に影響する対象者

ユ)家族集団 2)学校集団

3)イ中贋1集[di

4)社会集団 5)なし(自己)

>﹀>﹀>

先生 友人

他者全般(公共)

自分(理想自己)

表4−2 恥意識の質問項目と規範逸脱との関係    1)親との関係における規範逸脱

恥項目 Ol:家の手伝いをしないで親にしかられたとき

恥項目 06;友達と遊んで夜遅く帰って、親にしかられたとき 恥項目 11:親に口答えをしてしかられたとき

   2)先生に関する規範逸脱

恥項目 02:学校に遅刻してきて先生にしかられたとき 恥項目 07:授業中にさわいで先生にしかられたとき 恥項目 12:友達とけんかをして先生にしかられたとき

  3)友人に関する規範逸脱

恥項目 03:誰もが持っている流行の品物を持っていないとき 恥項目 08:みんなが知っていることを自分だけ知らなかったとき 恥項目 13:自分だけみんなと違うことをしてしまったとき

恥項目 16:テストで自分だけ高い点数をとったとき

  4)社会(公共)に関する逸脱規範

恥項目 04  静かな病院の中で大声で話しをしてしまったとき 恥項目 05 道徳にはずれたことをしてしまったとき

恥項目 09 並んでいる列に知らずに割り込んでしまったとき 恥項目 14 道ばたにゴミを捨ててしまったとき

  5)自分に関する規範逸脱

恥項目 10 自分で立てた目標が達せられなかったとき

恥項目 15 自分の意見をみんなにはっきり言えなかったとき

 本調査で使用された国際用の恥意識尺度(試案)は、

恥を感じる場面として、「親」、「先生」、「仲間(友人)」、

一社会(公共)、、一自己」の5つの関係を想定し作成さ れた。この5つの場面の仮説に基づき、恥意識におい て、主成分分析で共通性の低かった1項ll(Q9−16:

テストで自分だけ高い点数をとったとき)を除外し、

因子分析(最尤法、プロマックス回転、5囚f指定)

を行った。

 その結果、単純構造解として5つの囚fが得られた。

表4−3は、その因子分析結果と各因f別の質問項目

である。

表4−3 3力国全体恥意識の因子分析結果(N=2154)

no. 恥意識項目

Ill皿】医7V共通性

1親の叱責因子

11親二口答えをして叱られたとき .939 一.105 .089 025 一103.718 06友達と遊んで夜遅く1わて、親に叱られたとき .772 一.029 二〇〇3 027 078 .687 01家の手伝いをしないで親に叱られたとき .733 .111 「045 .058 一.132.545 12友達とけんかをして先生に叱られたとき .512 一〇32 .058 一.036 .319 .531

ll社会規律違反因子

09並んでいる列に知らずに割り込んでしまったとき 一,∞4 .662 .075 一.047 一.056 .418 04静かな病院の中で大声で話をしてしまったとき 「005 .633 「010 .042 .030 .438 14道ばたにごみを捨ててしまったとき .204 480 一、218 ,171 .040 493 05道徳に外れることをしてしまったとき .161 .280 一.053 .264 ,122 .409

皿同調不全因子

08みんなが知ってることを自分だけ知らなかったと O3誰もがもっている流行の品をもっていないとき P3自分だけみんなと違うことをしてしまったとき

一.004 D052 D017

一.079

│.025 D427

.689

D544 D461

.221 .121 .121 D013 .013−,067

│.230−.230「059

IV自己内省因子

10自分で立てた目標が達せられなかったとき   180 −039 048 15自分の意見をはっきり言えなかったとき   一133 358 160  V先生の叱責因子

.620

393

一〇52491

−037331 07授業中に騒いで先生に叱られたとき      121 027 −004 −017 755 02学校に遅刻をしてきて先生にしかられたとき  287 238 −003 rl23 416

725 581

固有値 分散の96 累積%

因子抽出法:最尤法,プロマックス回転

4.783  1.588   .554   .536  .202

31.890 10.584  3.694  3.575 1.348 31.890 42.474 46.168 49.74351.091

 第1因子は、親から叱責や非難を受けて恥ずかしい と思う場面から、「親の叱責」因子である。第2囚fは、

公共マナーや社会で遵守すべきルールから逸脱するこ とで恥を感じる「社会規律違反」囚子である。また、

第3因子は、友人や周囲の仲間と同じでないことから

恥ずかしさを覚えるF同調不全]囚J ・であり、第4囚 子は、自己の規範から逸脱し不甲斐無い自分を恥じる

「自己内省」であり、第5因子は、先生から引難や叱 責を受けて恥ずかしいと感じる場面であり、1先生の

叱責」因子と命名した。

 「親の叱責」因子において、項目12「友達とけんか をして先生に叱られたとき」が、「先生の叱責」因r・に も高い負荷量を示してはいるものの、非難するのが先 生であるにもかかわらず「親」の囚yに最も高い負荷

量を示している。これは、先生に叱られる 」11項ではあ るが、のちに親にも叱られて恥を感じるといった学校 よりもむしろ家で恥を感じる場面であると考えられる。

2・2.日本の恥意識構造

 調査対象である3ヵ国全体の分析では、仮説通り、

規範に関係するであろう5つの因fに分かれた。本節

では、各国別に探索的因子分析を行い、

それぞれの国の恥意識構造の内容についてみることに する。また、その恥意識構造の内容が文化によって異 なるのかについてもあわせて検討する。

各国別の分析では、EI本は、ほぼ3力国全体の囚チ構

造と同様なまとまりを示した(表4−4)また、表4

−5は、その日本国の因子相関行列結果である。

他の国と比較すると、アメリカ・トルコが高い説明率 を示す第1因子(アメリカ:分散%=28.773, トルコ

=分散%=30.094)に、「社会規律違反」囚子として公 共マナーからの逸脱を示す項目が高い因子負荷量を示

した一方で、日本は説明率の高い第1因r・は親・先生 からの叱責(分散%=33.459)であり、公共マナー逸 脱の因子は、説明率の低い第2因子(7.639%)にとど まった。しかしながら、「親・先生からの叱責」囚fは、

「社会規律違反」因子と正の高い相関関係(.673)を 示し、恥意識の構造としては異なるものの、共通して いる部分も大きいことが示された。

また、「同調不全」因子と「社会規律違反」囚子の間 に中程度の正の相関(.375)がみられたことから、日

本の中高生においては、仲間と同調できないことと公 共マナーからの逸脱による恥に、少なからず関係があ

ることが示されたといえよう。

 そして最後に、「自己内省」因了・であるが、 親・先生 からの叱責」因子や「同調不全」といった仲間と1, ij調 できないことに対する恥ずかしさとは相関関係が顕著 にみられなかったことから、「自己内省」因了が、親・

先生や仲間関係とはまた異なった恥規範を獲得する傾 向が示唆されたのではないだろうか。

表4−4 日本の恥意識の因子分析結果(N=1242)

no, 恥意識項目 1

ll

N  共通性 1親・先生からの叱責因子

06 友達と遊んで夜遅く帰って、親に叱られたとき .808 一、100 」00 一.027 .629 11 親にロ答えをして叱られたとき .805 「255 」67 .087 .566 12 友達とけんかをして先生に叱られたとき .643 .082 一.098 」02 .463 01 家の手伝いをしないで親に叱られたとき .555 .029 .205 一.070 .478 02 学校に遅刻をしてきて先生にしかられたとき .547 .369 一戊33 一.016 .616 07 授業中に騒いで先生に叱られたとき .472 .436 一.148 一.031 .589

ll社会規律違反因子

04静かな病院の中で大声で話をしてしまったとき 「086 .670 」43 .003 .460 05道徳に外れることをしてしまったとき .010 .592 .181 .006 .475 09並んでいる列に知らずに割り込んでしまったとき 「133 .536 」46 .048 .299

14道ばたにごみを捨ててしまったとき .221 .375 .329 「196 .557 皿 自己内省因子

10自分で立てた目標が達せられなかったとき 15自分の意見をはっきり言えなかったとき

 N同調不全因子

101   088    531

006    242    515

033  400 101  446 08みんなが知ってることを自分だけ知らなかったと

O3誰もがもっている流行の品をもっていないとき P3自分だけみんなと違うことをしてしまったとき

一.0臼

D044 D057

.037

│.078 D340

」69

│.007 黹?S3

.716

D590 D421

.560 D332 D381

5,019 1」46 .601 .485

分散の%

累積%

因子抽出法 :主因子法,プロマックス回転

33.459  7、639  4.004  3.232 33.459 41、097  45。101  48.333

表4−5 日本国恥意識因子相関行列

1 H

1親・先生からの叱責 ll社会規律違反 皿同調不全 rv自己内省

.673 妬37 弓O丈∨ 脳m⑭